第四話
「は?」
ニワトリのドキュメンタリー映画見させた後に焼き鳥食わせようかと思っていたのに、まさかの発言に潤也は驚愕する。
彼女はまたしても笑いながら、
「いやー、普通に放課後屋上に来てとか書いたら来てくれなさそうだって思って。ちょっと刺激するようなこと書いたら来てくれると思ったんだよ。」
「だ、だからって、あんな書き方ないだろ! ていうか何で俺の好きなキャラ知ってるんだよ!」
彼女は口に手をあてて大笑いした。
「同じクラスの人なら誰だって知ってるよ! まさかクラスメイトの顔も覚えてないの? 本当に三次元に興味ないんだね!」
「クラスメイトの名前覚えるならアニメのキャラの名前覚えるし… まあ、覚えてないのは悪かったよ」
潤也にとってはクラスメイトなんてただのモブキャラだ。ゲームにでてくるモブキャラの名前をいちいち覚えているだろうか。物好きなら覚えている人はいるだろうが、大半の人間は覚えてないだろう。
「それで、そんなことして呼び出したのは何の用なんだ? 俺はやく帰ってアニメ見たいんだけど」
昨日はもぬけの殻になっていたのでアニメも見ていない。自動録画機能で録っといてあるアニメを早く家に帰って見たくてしょうがないのだ。
彼女は手のひらを自分の顔の前に合わせてお願いするポーズをとり、
「単刀直入に言うけど、私とデートしてくれないかな?」
潤也が数えきれないほど言われてきた台詞である。
普通の男子からしたらこの状況はとてつもなく羨ましい物であるかもしれないが、潤也の返す言葉は決まっている。
「ごめん、三次元には興味ないんだ。じゃあ俺帰るわ」
彼は彼女の横を過ぎ去り、ドアを開く。
その瞬間、彼女が声をかけた。
「ねえ、昨日ってちゅきちゅききゃんでぃーのイベントの当選発表日だったでしょ?」
潤也の足が止まる。彼女は言葉を続け、
「当たった?」
彼は顔を青白くして細々と語った。
「いや… 落ちたけど… なんで、それを…?」
「実は私も応募しててね。チケット、二枚あるんだ。良かったら一緒に行かない?」
彼の頭の中はこんらんした。どうしてクラスの女子に隠れちゅきちゅききゃんでぃーファンがいるのか。どうしてチケットを二枚も持ってるのか。そしてなにより、どうして潤也がハズレたのを知っているかのように話してきたのか。
そんなことが頭の中をグルグルと駆け巡っているが、満面の笑みで彼は答えた。
「行こう!」