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プロローグ

花の木学園と言えば、名門中の名門校。

入学の倍率は28倍、偏差値は日本一の83。

花の木学園に入学することが出来れば、大抵の企業に入社出来るとの都市伝説が出来るほどだった。まあ、これもあながち間違いでは無い。面接官も、まずは学歴に花の木学園の名前を探すからだ。

また、この学園は文武両道を掲げており、多くのスポーツ選手を輩出している。

そんな中、今年花の木学園に入学したのは、84名の生徒達だった。


◇◇◇


「皆さん。花の木学園へようこそ。そして、1年A組にようこそ」


そう言ってぐるりと教室を見回したのは、1年A組担任の前原結月(マエハラユヅキ)だ。


「これから1年間、場合によっては3年間、このクラスで過ごしていくことになります。クラス皆で、仲良くしましょうね」


前原はニコリと笑うと、すぐに真面目な表情になった。


「早速ですが、このクラスの委員長と副委員長を、男女で選出したいと思います。まず、立候補したい、と言う人は居ますか?」


………。

クラスを、沈黙が包んだ。しかし、その沈黙を破った者が居た。


「もし良かったら、僕がやります。委員長の仕事をこなせる自信は無いので、副委員長ですが……」

「貴方は確か、桜井晴輝(サクライハルキ)君……だったわね?副委員長、やってくれるのかしら?」

「はい。僕で良ければですが」


そう言って、晴輝は教室を見渡す。反対する者は居ない。


「では、副委員長は桜井君に任せたいと思います。委員長の立候補は、居ますか?」


暫くの沈黙。今度は、先程の様に手を挙げる者は居ない。


「……千景、やれば?」


晴輝が声を掛けたのは、一番後ろの席に座っている女子生徒。晴輝に呼ばれた途端、ビクリと肩を震わせた。


「はあ……。分かったよ。やれば良いんでしょ?」

「じゃあ、夜桜千景(ヨザクラチカゲ)さん。お願いします」


千景は、溜め息をついてから晴輝に小声で文句を言っている。晴輝にはその声が聞こえているであろうが、それに反応を示す気配は無い。


「では、2人には早速仕事をして貰うことになります。このホームルームが終わったら、ミーティングルームに来て下さい。詳しい仕事の内容などは、そこで聞いて貰います」

「分かりました」

「……はい」


千景は、自分が仕事を押し付けられたことにショックを受け、その後の前原の話など全く聞いていなかった。


「千景、ごめんっ!」


HRが終了し、晴輝は多数の生徒に囲まれながらも真っ先に、千景の方へとやって来た。口では謝りながらも、口元は少し笑っているのだが。


「あのさぁ。私は出来るだけ、学校に居たくない訳。なのになんで、あんなことするかなぁ」

「ごめんってば。だってあのまま行けば、絶対決まらなかったでしょ?それに、僕が知ってる女子、このクラスに千景しか居ないんだよ」


晴輝が言い終わると、千景は深い溜め息をついた。


「てか、どうせ千景は前原先生の話聞いてなかっだろ?何時にミーティングルーム集合か、前原先生ちゃんと言ってたけど……どうせ、知らないよね……?」


晴輝はおそるおそる、といった風に千景に問う。すると千景は、ニヤリと笑みを浮かべる。そして、その口を開いた。


「私が話聞いてると思う?普段ならまだしも、アンタに勝手に委員長にされた後だよ?」

「だ、だよね……。集合は、12時30分……って、あと20分も無いじゃん。そろそろ向かった方が良いかもね。一応、僕達後輩だし」

「分かった。……ミーティングルームって、何処にあるの?」

「……着いて来て」


何処をどう曲がってミーティングルームに辿り着いたのか、千景には全く想像出来ない。只単に晴輝の背中を追って歩いただけなのだから。


「失礼します」

「し、失礼します」


千景と晴輝が部屋に入ると、2年生は既に集まっていた。


「1年生ね?よろしく」


そう言って、優しい微笑みを浮かべながら2人に握手を求めてきたのは、2年A組の神﨑汐里(カンザキシオリ)だ。誰にでも優しく、信頼も厚い為、次期生徒会長との噂もあるほどだ。


「神﨑先輩。よろしくお願いします」

「これから、お世話になります」


千景と晴輝は続けて挨拶をし、汐里と握手を交わす。


「汐里……汐里先輩って、呼んでくれれば良いわ。名字で呼ばれるの、何だかくすぐったくて」

「は、はい」


汐里はニコリと笑いながら、席に着く。2人も、そっと席に腰を下ろした。

暫く経つと、1年生も3年生も全員が集まり、開始出来る状態となった。するとそこに、教師が一人入ってくる。


「私は担当の西村静香(ニシムラシズカ)です。皆集まった事ですし、そろそろ始めましょう」

「先生」


西村の言葉を遮って手を挙げたのは、3年B組の西園寺明梨(サイオンジアカリ)だ。彼女は西村を見つめ、そして口を開いた。


「『アレ』は、今年もやるつもりですか?」


2年生と3年生の表情が強張る。が、1年生には『アレ』の意味がさっぱり理解できず、きょとんとした顔をしている。


「……勿論、やるつもりです。それも、去年、一昨年よりも、ハードな内容を、と考えています」


2年生、3年生は平静を装ってはいるが、本当は座っているのもやっと、という状態だ。千景はそれにいち早く気付き、手を挙げる。


「『アレ』とは一体、何のことですか?私達1年にも分かるように、説明して下さい」

「本当の名前は、別にあるんです。『サバイバル』とね。今年は、難易度が上がりましたが」


すると、汐里が立ち上がって話し始めた。


「『サバイバル』は、各クラスの委員長、副委員長が廃校に集められ、二人一組……つまり、クラスごとに、猛獣を殺した数を競うんです。今までに、死者が出たことはありません。襲われそうになったら、周囲から麻酔銃が飛んで来て、猛獣からにげられるからです」


西村は頷いて、更に続けた。


「今までは、そうでした。ですが今年から、死者は必ず出ることになります。その代わり、猛獣はいません」


そう。それはつまり……。


「まさか……」

「察しの通り。やってもらうのは、殺し合いです」

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