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異世界の機兵騎士  作者: 龍神雷
第6章 真紅乃花嫁編
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第80話 エンドレス・マスカレード

「……そうですか。そういう結論に至ったのですね……」


 シンロード魔動学園の学園長であるイーグレットはシアニーから直接渡された招待状を見て、沈痛な面持ちを浮かべる。


「あなたが望むならば、アメイト家に仕えていた使用人を学園で雇い入れる事も出来ますが……」


 イーグレットは彼女の両親とは古い付き合いなので、アレスとの婚約、そしてその破棄の条件も知っている。

 その為にこれまで研鑚を積み、今、一番、主席の位置に居る事も知っていた。

 卒業まで後2年あるとはいえ、このままいけば婚約破棄はほぼ間違いが無いだろう事も。


「ありがたいお言葉ですが、使用人達はともかく、幼い頃から王家の人間として過ごしてきたお母様は王族の名を捨てて生きていく事は適わないでしょう」


 王位継承権第1位のアレスと結婚すれば、アメイト家を存続させるという確約を貰っている。

 もし断れば、当主不在のアメイト家は即取り潰される事となる。

 イーグレットに答えた様に、母のメアニーは先王の娘で生まれた時から王族として育ち、金銭的な苦労を味わった事が無い。

 貴族でも無い庶民上がりの騎士のミルフォードと熱愛の末に結婚し、庶民に対しても普通に接するようにはなっていたが、自身がその地位に落ちる事など今まで考えた事も無いだろう。

 自分で料理を作る事も、洗濯や掃除をした事も無いのでは、生活すらままならない。

 そんな母親をシアニーが見捨てる事など出来はしない。


「あなたは本当に強く優しく育ちましたね。ですが今回はその優しさが自身の首を絞める結果になるとは……皮肉な事です。あなたには称号持ちの騎士になってもおかしくない実力があると言うのに……」


 個人的にも、そして騎士養成学校の人間としてもこれ程の実力を持つ人物が騎士になれないのは悔しい。

 しかも本人が望んでいる訳ではない政略結婚なれば、尚更だ。


「学園長、安心して下さい。この学園を卒業して騎士になる事は諦めていません。結婚を承諾したら彼も譲歩してくれました。この度お渡しした招待状も婚前式の物。結婚式は卒業後に行われる為、それまではこれまで通り学園に通う事も許されました。流石に前線に派遣される事は無いでしょうが、騎士になる事も許されています」


 ただそれはお飾りとしての騎士に過ぎない。

 シアニーの夢の実現は不可能と言えるだろう。

 だがアメイト家が騎士の家系だという意義が生まれるなら、それだけでも十分に意味はあるのだ。

 ここだけはアレスに感謝をしていた。


「そうですか。その決意に揺るぎが無い事は分かりました。あなたの意志を尊重して、これ以上、余計な事は言わない事にしましょう」

「ありがとうございます。それでは私はこれで……」

「会ってはいかないのかい?」


 誰にとは言わない。

 2人ともそれが誰の事を言っているのか理解しているから。


「会う理由も必要もありません。それに私も婚前式の準備の為に忙しくてそこまで暇もありませんから」


 本音を言えば、会いたい。

 けれど会ってしまったらこの決意が鈍ってしまいかねないから、会いたくない。

 学園長室に来る前に闘技場に寄り、シルブレイドの不甲斐無い戦いぶりを見ただけで、被り直した仮面が剥がれ落ち掛けてしまったのだ。

 本人を目の前にしたら、こんな仮面など簡単に剥がれてしまう可能性が高い。

 ならばこの仮面が定着するまで会わない方が良い。

 婚前式という後戻り出来ない状況を受け入れたその時、この仮面は自分の本当の顔になるだろう。

 それまでは剥がれたりしたらいけないのだ。


「それでは失礼します」


 つい先日までの快活明朗な少女の姿は影を潜め、まるで人形のような感情の無い無表情で頭を下げると、シアニーは学園長室を辞する。

 イーグレットはその背中を見送りながら、大きく溜息を吐く。


「まるで別人ですね……いえ、彼に出会う前に戻ったと言うべきですか……。私の言葉では彼女には届かなかった。やはりあの凍てついた心を揺り動かせるのは彼だけなのでしょうね…きっと……」


 イーグレットはそう呟き、1人、大きな息を吐くのであった。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *



 ランキング戦を終えたショウマは格納庫に着くや否や、操縦席から飛び出し、一番近くに居たスパーナに詰め寄る。


「シアの奴は!」

「お、俺っち達も声を聞いただけで、こっちには顔を出してねぇよ」

「あいつ……まさか顔も見せねぇで戻る気なんじゃねぇのかっ!?」


 彼女なら有り得る話だ。

 チーム・キングスの面々は彼女が何故トップに拘り続けるのか、その理由を知っている。

 そしてこの2年間、共に闘い、トップの座を維持し続けてきた。

 やむを得ない理由があるのだろうが、理由はどうであれ、それを裏切る形になってしまった為、顔向けが出来ないとでも思ったのだろう。


「ちっ…あのバカがっ!!」


 ショウマはシアニーを探しに飛び出そうとする。

 だが1歩を踏み出した所で足を止める。


(シアを追い掛けて、それで会えたとして、俺は一体、何を言うつもりなんだ?)


 ずっと休学していた事に対して文句を言うのか?

 裏切ったと罵るのか?

 結婚する理由を問い質すのか?

 それとも結婚するのを止めろとでも言うのか?

 結婚するというのが、シアニーが思い悩み、考え抜いて出した結論だ。

 シンロード魔動学園を首席で卒業するという無理難題を乗り越えてでもアレスとの結婚を嫌がり、破棄しようとしていた彼女が下した決断だ。

 そこに至るまでにどれ程、苦悩した事だろう。

 自分の心を押し殺してまで嫌だった結婚を承諾するのは、相当な覚悟が必要だった事だろう。

 その覚悟に水を差す事などショウマに出来る筈も無い。

 そんな権利も資格も彼には無いのだ。


「ショウマさん……」


 立ち尽くすショウマを心配したのか、アーシェライトが側に寄って来る。

 そしてショウマ苦悩に満ちた表情を見た瞬間、彼女もまた1つの決断を下す。


「聞いて下さい、ショウマさん。僕はショウマさんが好きです!」

「え?!シェ、シェラ??」


 突然の告白にショウマは困惑する。

 困惑したのは何故このタイミングだったのかという事であり、彼女の気持ちにはずっと以前から気が付いていた。

 周囲から超鈍感と思われているショウマだが、実の所は違う。

 彼は相手の想いを知っていながらも気付かない振りをし続けていたのだ。

 理由は明確。

 ショウマ自身が異世界の人間であるからだ。

 この世界にどうやって来たのか、未だにその辺りの記憶は不鮮明だが、突然、なんの前兆も無くこの世界に跳ばされて来たのは、はっきりと自覚している。

 それは逆を言えば、いつ突然、元の世界に戻るかも分からないという事だ。

 愛する者との突然の別れ。

 その辛さと苦しさをショウマはフューレンの惨劇で経験している。

 それを他の人には味合わせたくなかった。

 人が生活していく以上、完全に関わりを断つ事は不可能。

 しかし一定の距離を保ち、深く関わりを持たなければ、その辛さや苦しさは半減とまではいかなくとも、それなりに緩和される。

 アーシェライトがどんなにショウマを好きでいたとしても、ショウマ側が彼女に興味を持っていないと思わせられていれば、失恋のショックは少なくて済むだろうし、傷心が癒えれば新たな恋に踏み出す事も出来るだろう。

 だが両思いと分かった後に永遠の別れが来たとしたら……。

 今のショウマのように、かつて愛した存在に囚われ、縛られ、そして悔恨を抱え続けて苦しみ続ける。

 だからこそショウマは自身に向けられた好意に気付きながら、目を瞑り続けた。

 しかしそれは彼自身の自己満足に過ぎない。

 本当にそういう思いならば、きっぱりとその好意を断ればいいのだ。

 だがショウマにはそれが出来なかった。

 相手を傷付けたくないなどと言葉を取り繕っても、結局の所、人との縁を絶ち切るのが怖かったのだ。

 好意に甘えていたかったのだ。

 単なる彼のエゴでしか無いのだ。

 けれどこうして面と向かって言われてしまっては、もう自分のエゴを通し切る事は出来ない。

 彼女の真剣な瞳を前に、言葉を濁して逃げる事は出来そうに無い。


「シェラ……俺は…………」

「何も言わないで聞いて下さい。僕はショウマさんが好きです。けど僕の好きは記憶の中にある憧れのあの人とショウマさんを重ね合わせて見ているからだと思います。それでも好きな気持ちに変わりは無いとずっと思っていました。だけど最近のショウマさんを見ていて、気が付いたんです。私が好きになったのはシアニーさんと一緒に居るショウマさんなんだって。シアニーさんに恋をしているショウマさんなんだって!」


 2人が口喧嘩をする様子を見て、2人がふざけ合って笑う姿を見て、2人が互いに認め合い、共に強くなろうと研鑚を積む姿を見て、羨ましく思いつつも、どこか穏やかな心情でその姿を見ている事が出来た。

 ショウマの事は好きだ。シアニーの事も好きだ。

 そしてそんな2人が共にいる姿がアーシェライトは好きだった。


「これが私の素直な気持ちです。だからショウマさんも自分の心を、想いを偽らないで下さい!素直になって下さい!」


 眼鏡の奥にある真摯な瞳に見つめられ、ショウマは気付かされる。

 アーシェライトは失恋すると分かっていながら告白した。しかもこんなに人の目がある所でだ。

 その上、失恋相手の恋の心配までしている。

 それは恐怖を恐れない勇気だ。

 悪夢獣に立ち向かうのとはまた別種の、ショウマには無い種類の勇気だ。


「早く行って下さい!きっとシアニーさんもショウマさんが来るのを待っています!!」


 そこまで言われてもショウマはまだ決断出来ずにいた。

 だがそんな彼の尻を物理的に蹴飛ばす人物がいた。


「痛っ!何すんだ!」

「何すんだじゃ無いよ。男だったらさっさと行ってきなっ!」

「だけど……」

「難しく考えなくて良いんだよ。今の彼女のように想いをそのまま口にすればいいんだよ。意外とそれでなんとかなるもんさ」


 レンチアがニカッと笑みを浮かべながら、ショウマの尻を叩く。


「ほら、行った行った!!」

「あ、ああ……」


 レンチアに急かされる様にショウマはシアニーを探しに駆け出していく。

 その背中にアーシェライトは、小さく「いってらっしゃい」と声を掛けた。

 胸が痛く、息苦しい。

 けれど、自分の想いを全て吐き出したおかげなのか、どこか心の中は清々しい気分だった。


「よく頑張ったな」


 その言葉と共にアーシェライトの頭の上にイムリアスの大きくて暖かな手が置かれる。

 その温もりに、これまで堪えていたものが零れ落ちる。


「…はい………はい……」


 イムリアスは頭を撫で続け、可愛い後輩が泣き止むその時を待ち続けるのであった。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *



「ようやく見つけたぜ」


 学園の校門から外に出る直前、シアニーはピクリと肩を震わせた後、その歩みを止める。

 その声の主は彼女が最も会いたくて、でも最も会いたくない人物だった。


「親友の俺にすら、顔を見せずに戻る気だったのか?」


 ショウマはシアニーがどこに居るか分からなかった為、他の生徒や教師の目撃情報を頼りに、ようやく追いついたのだ。

 もしアーシェライトとレンチアの後押しがほんの少しでも遅れていたら間に合わなかっただろう。


「別に用も無かったし、わざわざ顔を見せる理由も無いでしょ。今日は元々学園長に用があって来ただけなんだし」


 振り向く事無く、シアニーは背後のショウマへと冷たく言い放つ。

 そういう仮面を被っていなければ、絶対に感情が爆発してしまうだろう。

 こうして会話をしているだけでも、仮面に罅が入り、今にも感情が漏れ出しそうになっているのだ。

 だから顔を見せず、冷たい言い方をする事でなんとか保っていた。


「だったらなんで闘技場で声を掛けたんだ?お前が学園に居る事が知られなければ、俺だってこうして追って来てなんかいなかったはずだ」

「…それは……」

「本当は追って来て欲しかったんじゃねぇのか?」


 否定は出来なかった。

 ショウマとシルブレイドの戦い方が見ていられず、思わず声を上げてしまったのは事実だが、心のどこかで、声に気付いてショウマが来るのを願っていたのかもしれない。

 本心を見抜かれ、更に仮面に亀裂が走る。

 けれどそれは彼女の中の一部分だけの感情。

 本心だろうがそうでなかろうが関係無い。

 その感情に流される訳にはいかないのだ。

 彼女には守るべきものがあるのだから。


「…偶然、覗いたら、あんたが不甲斐無い戦い方をしていたからよ。それ以上でもそれ以下でも無いわ。用が無いなら、もう私は行くわよ。これでも来週の婚前式の準備で色々と忙しいんだから。それともう身分も第1王女とただの学生で大きく違うんだから、気安く声なんて掛けないでよね」

「ここはまだ学園の敷地内だ。ここでは身分に差なんて無い。今の俺達はどっちもただの学生で…親友で……た…大切な…………」


 想いを素直に口にすれば良いと言われたが、ショウマにとってそれは存外、難しい事だった。

 元々ショウマは頭で考えを纏めてから喋り、行動する方だ。

 思考能力が速い為、纏めるのも速く、対応も速い。

 しかしそれ故にどうしても想いをそのまま伝えて良いか考え、悩んでしまう。

 どうしても遠回しな言い方しか出来ず、未だ本当に伝えたい想いの1割も伝え切れていなかった。


「……身分に差が無い…ですって…………」


 ショウマが核となる想いを伝えるより前に、シアニーは彼の言葉に肩を震わせる。

 彼女を覆う仮面はもう罅だらけでボロボロと崩れ始めていた。


「…だったらなんで私だけこんな風になっちゃうの!なんで私だけがこんなに苦しいの!!それは私が王族だからじゃ無い!!王族として生まれた以上、その血からは逃れられないのよ!!!」


 仮面の綻び。

 その隙間から漏れ出した感情は一気に濁流となり、仮面を決壊させ、もう彼女自身にも止める事が出来なかった。

 それはショウマが出来なかった感情のままに本心をぶつける行為。


「戦う事しか出来ないショウマに何が出来るっていうのよ!私を連れて逃げ出す?そんな事は出来ないわ。フォーガン家はこの国だけじゃ無く、世界中のどこでも絶大な権力を持っている。どこに逃げたってすぐに見つかってしまうわ!!!」


 この世界で唯一フォーガン家の目の届かない所は禁忌の地くらいな物だろう。

 だがあそこは毒が蔓延し、無数の悪夢獣が蠢いている為、人の住める所では無い。

 ショウマとしてはもう1つだけフォーガンの威光が届かない場所を知っているが、そこはこの世界では無く、またどうやって行くのかも分かっていない。

 つまりこの世界に逃げ場所は無い。


「それにもしフォーガン家の意向に背けば、本人だけじゃ無く、家族や友人にまで害を及ぼすわ!嫌がらせを受けるだけならまだいい方よ!場合によっては、身に覚えの無い罪で投獄されたり、社会的に抹殺される可能性だってあるの!!」


 華やかさの裏には薄暗い部分もある。

 どの社会、どの世界にもそういう部分は必ずある。

 もしショウマが今回の結婚に異議を唱えたら、きっとアレスからの圧力が掛かるだろう。

 ショウマは直接アレスと対面した事は無かったが、王都テロ事件の際に少しだけ交わした言葉からは、高圧的で王侯貴族によくある選民思想の持ち主であろうと推測が出来た。

 そこから考えると、彼ならば目的の為ならどんな手段でも使うと予測が出来る。

 そして必要ならば、自分の手を汚す事も厭わない。

 学園に圧力を掛けて退学に追い込むかもしれないし、市場で買い物が出来ない様にするかもしれない。最悪の場合、暗殺者を送り込んで来る事も有り得る。

 だが彼女のこの言葉でショウマは確信に至る。

 シアニーは家族や使用人だけではなく、学友などの自分に関わった全ての人に被害が及ばない様に守ろうとしている。

 その中には当然、ショウマも含まれていた。

 彼女は自分を犠牲にする事で守ろうとしているのだ。


「分かったでしょ。だからもう私の事は放っておいて……」


 全てを守るという彼女の騎士としての誇り。

 民を守るという王族としての誇り。

 その誇りと覚悟に気が付いてしまった以上、ショウマはもう何も言えなくなってしまった。

 ここまで覚悟を決めてしまった彼女に、彼の本当の想いを話すのは酷な事だ。

 話してしまえば、彼女を更に辛く苦しませる結果となる。

 ショウマが黙っているのを肯定の意味と捉えたのか、シアニーは静かに歩みを再開する。


「大丈夫。どんなに嫌な相手でも笑顔を作る自信はあるから。それに卒業までは学園に居て良い事になってるし、騎士となる事も許して貰えているわ。アメイトの家だって、世継ぎ以外の子供が生まれたらアメイトの名を継がせても良いって言ってくれてるし、それまでオーレリア家が支援してくれる。だから全然大丈夫。心配なんてしないで」


 大丈夫。心配しないで。

 それはまるで自身に言い聞かせているよう。

 彼女はその言葉で剥がれた仮面を被り直そうとしている。

 これから先、シアニーはその生を遂げるまで仮面を被り続けるのだろう。

 そして他の皆の幸せの為に、他の皆が笑顔でいられる様に永遠とも言える時間、舞を踊り続けるのだろう。

 ショウマにはその覚悟に水を差す事も止める事も出来ない。

 彼にはそれを覆すだけの力が、権力が無いから。

 だから黙って見送る事しか出来ない。


「婚前式が終わって次に会う時にはきっともう私は別の私になっていると思う。だから最後に言っておくね」


 シアニーは校門を出るまで後1歩の所で立ち止まり、ゆっくりとショウマの方へ振り返る。


「優等生でも無い。王族でも無い。私の事を1人の普通の女の子として接してくれてありがとう。ショウマの事、大好きだったよ!」


 瞳に涙を溜め、でも精一杯の笑顔を向ける。


「さよなら」


 それだけを言うと、シアニーは校門脇に待機していた魔動馬車へと飛び乗る。

 立ち尽くすショウマを他所に馬車は出発し、あっと言う間に遠い彼方へと去っていく。

 ショウマはその姿が見えなくなるまでずっと見詰め続け、そして見えなくなった頃、天を仰ぎながら呟く。


「……あのバカ……なんでこんなタイミングで…言うんだよ…………」


 瞳の中のものが零れ落ちないよう、ショウマは空を見続ける。

 夕暮れ時の赤い空と雲はやけに目に染みるのであった。

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