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異世界の機兵騎士  作者: 龍神雷
第4章 王都炎上編
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幕間 悲しみは時の流れの中に

間違えて改稿前のものを投稿していた事に、今になって気が付いたので修正致しました

 王都フォーガンより西にある山岳地帯。

 両腕に巨大な鉤爪のある魔動機兵の肩の上に乗る銀髪の女が楽しそうに妖艶な笑みを浮かべていた。

 そんな姿を、もう片方の肩の上に座る黒髪の少女は嬉しそうに見詰めていた。


「お姉様、お祭りは楽しかったですね♪」

「ええ、本当に。色々と成果を見る事は出来たし、お土産まで手に入れる事が出来たわ」


 そしてそれ以上に嬉しい事が起こってくれたので、女は上機嫌だった。


「まさか私が手を下すまでも無く、勝手に覚醒段階を1段上げてくれるなんて。元皇帝様には感謝してもし切れないわね」

「ところでお姉様?これから何処に行くんですか?」


 足をブラブラとさせながら、少女は尋ねる。

 とはいえ、何処に行こうと少女は姉と慕う彼女に喜んで付いていくだけだ。


「西よ」

「西ですか。と言う事は私の魔動機獣を最前線に出すって事ですか♪」

「ええ。そこでもっと多くのデータを収集するわ。けれどそれはついで。本当の目的地は更に西」


 西方最前線。

 そこより更に西となると、あるのはただ1つ。


「かつて魔動具により栄華を誇った王国が存在し、そして悪夢獣が産み落とされたと言われる場所」


 草木も生えない不毛の地で悪夢獣以外は存在していないと言われ、何人たりともその地を踏む事は許されないとされている禁忌の地。

 だが彼女は知っている。

 そこには希望と絶望が詰まったパンドラボックスが眠っているという事を。

 そしてそれを手に入れる事が出来た時、彼女の大願は成就の1歩手前まで迫る事だろう。

 そしてその頃にはあの異世界の少年も立派な悪夢として育つ事だろう。


「それじゃあ、行きましょうか」

「はい、お姉様♪」


 2人を乗せ、鉤爪の魔動機兵は西方へと歩みを進める。

 妖艶なる銀色の女の願いの為に。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *



 ショウマが意識を取り戻したのは、事件終結後から3日目の事。

 イーグレットが事情を尋ねに行ってみたが、エスト・アースガルトがフォルテギガンティスに殴られた直後辺りから意識を失い、その後の記憶は一切無いという。

 無意識での事であれば、いつまた同じように悪夢化するか分からない。

 だが迂闊に悪夢の事を話して不安になり、情緒不安定になってもまた悪夢化を促進する可能性がある。

 本人に話しておけば、防ぐ事が出来る事態もあるかもしれないが、知らなければ悪夢化に怯える事無く、何事も起こらないかもしれない。

 リスク等を熟考した結果、イーグレットはショウマに悪夢の事を知らせない事にした。

 その結果が吉と出るか凶と出るかは、その時になってみないと分からない。

 それであれば無闇に不安にさせる事は無いと思ったのだ。


 それから2日後。

 イーグレットはショウマ達を伴ってシンロードへと戻って来ていた。

 未だ混乱の只中にあり、支援体制も整っていない状況の中、王都に留まっていても邪魔になるだけだったからだ。

 それならば被害の無いシンロードに戻って、王都への支援体制を整えた方が建設的であり、効率的だと判断したのだ。

 当然、王都の状況は伝わっており、イーグレットが戻ってきた頃には、医療チームは編成されて既に王都へ向けて出立し、食料や毛布などの支援物資の準備も整いつつあった。

 周辺町村や各国にも既にシンロード魔動学園の名で支援要請が出されている。

 アイリッシュを筆頭に、この街には有能な人物が多い事をイーグレットは実感する。

 この迅速な支援対応のおかげもあり、王都襲撃から1週間後には避難所が完備され、食料や水も十分に確保された。

 場所によっては既に建物の修復作業まで始まっているという。

 衣食住が確保されて精神的に落ち着き、復興の目処もたったという事で、王家は数日後には国王の葬儀、その翌日には王家筋や貴族の葬儀、更にその翌日以降は、それら以外の犠牲者の合同葬儀が開かれ犠牲者を悼む事となった。

 未だに行方不明者は多数だが、国王の葬儀を急ぐにはいくつか理由があった。

 1つ目は外交的な理由。

 フォーガン王国は大国であり、大陸全ての国と平和的な同盟関係を築いている。

 この機に乗じて攻め落とそうと考えるような国は無いだろうが、決して無いとも限らないし、今回のように再びテロを起こそうと考える者が出て来るかもしれない。

 それらを防ぐ為にも早い段階で葬儀を行い、次期国王の戴冠式を行って、新国王の存在を知らしめる必要があるのだ。

 2つ目は内政的な理由。

 フォーガン王国は王政ではあるが、各担当大臣達にはある程度の決定権を与えている。

 その為、国王がその案件に対して関わらない、あるいは承認するだけというものも多く存在する。

 だが重要な案件に関しては、国王を交えて協議する必要があり、決定権も当然、国王が有している。

 そのような案件を協議し決定する為にも、国のトップという存在は必要不可欠であった。

 特に今回のテロによる被害者やその遺族へのフォローやケアの為の費用、建造物の修繕・建築費用などは国家予算並みになると試算されている。

 各国からの支援があるとはいえ、それだけの額が必要となれば、必然的に国王の決定が必要となる。

 それらの理由から葬儀を断行する事を決定したのだ。

 次期国王はオーレリア家当主のアーガス。

 国王の交代に伴い、彼の兄弟は王位継承権を失い、その代わりに新国王をサポートする為に各所の要職に就く事となる。

 そして当然の事ながら継承権も代替わりする。

 アーガス新国王の第1子であるアレスが継承権第1位となり、シアニーも諸々の事情込みで20位にまで浮上する事となるが、彼女が末席である事には変わりは無かった。

 ちなみに西方最前線に居る彼女の兄は今回の事で第7位となっている。



 そんなフォーガン王国を揺さぶる大事件も、時が経てば薄れてゆくもの。

 3ヶ月も経てば、廃墟のような建物も撤去されて整地され、悲しみに包まれ寂れていた空気も復興に伴い、徐々にだが元の華やかな雰囲気を取り戻しつつある。

 激しく破壊された王城は未だ半ば手付かずで復旧の目処も立ってはいないが、それでも精力的な新国王の働きにより、人々の活気も取り戻しつつあった。

 王国祭はあの日の悲劇を忘れず、被害者への追悼の意を込めて、王国復興祭と名を変え、最初の2日間は今まで通りの建国の祭として華やかに賑わい、最終日は慰霊祭とする事が決定された。

 

 この事件はフォーガン王国、そして世界各国に大きな衝撃と不安、そして深い爪痕を残した。

 だがそれでも人々は前を向く。

 絶望に抗い、希望を求める想いがある限り。

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