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異世界の機兵騎士  作者: 龍神雷
第3章 王都祭典編
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第49話 闘機大会開催

 ショウマ達の王国祭2日目は何事も無く終わった。

 早朝訓練で昨日出会った老騎士と再開する事は無く、街へ出ても誰1人逸れる事も無く露店を巡り、そして夜は遊び疲れて熟睡。

 祭の前にレリアやアーシェライトが妄想したようなショウマとの2人っきりでのデートというシチュエーションは無かったものの、全員が存分に王国祭を楽しんでいた。

 そして遂に王国祭は最終日を迎える。

 ショウマがこの王国祭で最も楽しみにしていた闘機大会が開催される日だ。

 選抜された4つの魔動機兵工房が造り出した魔動機兵同士による闘技会。

 それが闘機大会だった。

 その工房の1つ目はショウマ達がよく知り、世話になっているキングス工房。

 フォーガン王国のみならず他国でも多くのキングス工房製の魔動機兵が使用されている為、その知名度は高い。

 2つ目はフォーガン王国を後ろ盾に持ち、魔動技師であればそこで働くことが夢であると言われ続けている王立魔動研究所。

 過去の遺物であった戦闘用魔動機兵を現代に蘇らせ、今の魔動機兵の礎を築いたと言われる世界最高の魔動具の研究機関である。

 3つ目はエイボルフ商社。

 歴史的には長く、元々は作業用の魔動機兵をメインに扱っていたが、その長年のノウハウは戦闘用を造る上でも生かされており、機兵騎士の間では最も乗り易く、故障し難い魔動機兵を造る事で有名だ。

 そして最後は、近年になって魔動機兵業界に進出したばかりだが、高い性能を誇る魔動機兵を生み出し続けているクローブ商会。

 エイボルフ商社とは逆に高性能過ぎる為、乗りこなせる機兵騎士が限られてしまうが、その躍進には目を瞠るものがある。

 これら世界を代表する4つの魔動機兵工房が、採算度外視で1年の歳月を掛けて造り出した魔動機兵同士が戦うというのだから、男なら、いや例え女でも期待に胸を膨らませるはずだ。

 この闘機大会は王国祭のフィナーレを最も盛り上げるイベントとして定着しつつあった。

 どこが勝つか賭け事の対象となったり、魔動技師ならば最新鋭とも言える機体を見るだけでも勉強になり、これを観た子供達は騎士に憧れ、今回選ばれなかった魔動機兵工房は来年こそはと意欲を高めて、技術を高める努力をする。

 集客効果も高い事から、運営側はいずれは定期的に開催出来るようにしたいと考え、将来的には世界展開も考えているらしい。

 ちなみにシンロード魔動学園では既に似た事を授業項目に盛り込んであるのだが、授業という名目上、一般には公開はされていない為、知っている人間は少ない。

 そんな王国祭最大のイベントの最中、ショウマは何故か観客席ではなくシルブレイドの操縦席に座っていた。


「何故だ!なんでこうなったぁぁ~~~!!!」



 それは闘機大会が開始される4時間程前に遡る。

 ショウマ達3人は昨日一昨日と同じように露店をブラブラと見て回っていた。

 本来ならこんなにゆっくりなどしていられない。

 闘機大会が行われる会場は魔動機兵用の巨大な闘技場だ。

 シンロード魔動学園にある闘技場と同じく円形で、その周囲を10m程の高さの壁で囲われている。

 壁の上には階段状の客席がズラリと並び、更にその上には複数のバルコニー型の特別観覧席があり、それなりの人数を収容出来る事だろう。

 だが闘機大会の人気を考えると、これだけの規模の客席があろうと観戦出来ない者が出て来るのは当然。

 ある者は参加する魔動機兵工房に媚を売ったり、裾の下を渡したりして優先的に席を確保しようとし、またある者は数日前から徹夜で並んで当日券を手に入れようとし、更にある者は高額になる事を覚悟の上で、ダフ屋を探し回る。

 それくらい闘機大会の観客席を確保する事は難しいのだ。

 王都に着いたショウマがその事実に気付いた時には時既に遅しという状態であったのだが、キングス工房の職員の計らいで客席を確保する事が出来たのだ。

 ただしそれは罠であった。

 といっても最初から罠として仕掛けたものではなく、結果的に罠の役目を担ったに過ぎない。

 元々闘機大会に出場する予定だったキングス工房の魔動機兵の操縦者が突然の腹痛に見舞われてしまったのだ。

 魔動機兵は当然、その操縦者用に細かく調整が施されていた為、操縦者を変更したとしても、大会の開始までに調整作業が間に合わず、性能を発揮出来ずに負けるのが目に見えていた。

 そこで白羽の矢が立ったのが、ショウマとシルブレイドであった。

 元々シルブレイドはキングス工房で一から造られた物ではないのだが、操縦席と動力炉のある胸部以外はほぼキングス工房で修理再生されているので、問題は無いという見解だったのだ。

 キングス工房側としては、無茶な頼みであり、断られても仕方が無いという駄目元でショウマにお願いをした。

 ショウマとしても完全に観戦モードに入りつつあったし、流石に工房の代表というのは責任が重過ぎた。

 この闘いでの評判が最低でも1年は付きまとう訳だから、不様な姿は晒せないし、簡単に負けて終わりとする事も出来ない。

 正直な話、断りたかった。

 だが自分達の為に客席を確保してくれた恩義を返さなくては騎士の名折れ。

 ショウマに断る事など出来なかった。

 ちなみに、また無断で使用して学則違反で怒られるのも嫌だったので、イーグレット学園長に許可を取りに行った所、実力を試すのに良い機会であり、もしそこでそれなりに良い結果を残す事が出来れば、シンロード魔動学園が優秀な人材の育成に成功しているというアピールにもなるという事で、諸手を挙げて許可したのだった。



 そして今に至る。

 闘技場へと続く巨大な門の前でショウマとシルブレイドはその出番を待っていた。

 係の者の説明によれば、四方の門から司会者が前口上と共に1機ずつ姿を現すのが定例であり、キングス工房所属であるシルブレイドは4機目。つまり最後の登場となる。

 登場順は昨年の闘機大会の順位から決定され、初参加のクローブ商会が最初でエイボルフ商社、王立魔動研究所と続く。

 初参加が一番最初という、その順番からも分かる通り、最後であるキングス工房は昨年、優勝している。

 つまりは今年の大本命であり、最もマークされる対象なのだ。


「うぅ……なんか胃の辺りが痛い気が…………」


 数日前ならそんなショウマの呟きに返答があったのだが、今はただ沈黙だけが返ってくる。

 大会という事でそんなに長期戦にはならず、ショウマ自身の気分的に条件を同じにしたいという思いから、アーシェライトには客席で応援に回って貰ったのだ。

 レリアを1人にするのも可哀そうだという事もあったが、技術の粋を集めているだろう他の3機の魔動機兵をじっくりと観察するには客席の方が良いだろうという配慮をした結果である。

 シルブレイドに乗っていた方が客席に居るよりも間近で見る事は出来るだろうが、どうしても機体の損傷などの各部のチェックに目がいってしまったり、激しい動きをしていては集中してじっくりと観察が出来ないと思ったからだ。

 ショウマは痛いような気のする腹部に手を当てながら自身の出番を待つ。

 目を瞑ると怒号のような歓声の向こう側で、司会が魔動拡声機で拡大させた声を張り上げているのが聞こえる。


『…果たして今年は王立魔動研究所は雪辱を晴らす事が出来るのかぁ~!!!』


 どうやら昨年、惜しくも敗れた王立魔動研究所の魔動機兵が紹介されているようだ。

 間も無く、シルブレイドの番だ。


『さぁ、最後に南門から登場するのは昨年の覇者にして、魔動技師や機兵騎士じゃなくてもその名を知る程の超有名工房!キングス工房の機体・シルブレイドの登場だぁぁぁぁ!!!!!』


 目の前にあった門がゆっくりと開いていくのに合わせ、シルブレイドがゆっくりと歩を進める。

 闘技場内に踏み入れると、陽光を照り返して輝く白銀に観客は目を奪われ、続いて歓声が巻き起る。


『ななななんとっ!今回登場予定だった操縦者であるアークディは体調不良によって欠場。その代わりを担うのは、かの騎士養成学校であるシンロード魔動学園に在学中の学生にして騎士候補だという情報が今、手元に届きましたぁぁ!!!!』


 先程とは一転、どよめきが会場内を包むが、その情報を今知ったというのは真っ赤な嘘だ。

 大会開始の2時間前には登録機体の変更は受理されているし、賭けの対象にもなっているので、事前にその情報は周知されている。

 これも大会を盛り上げる為のパフォーマンスの1つに過ぎないのだが、観客の中には、その事前情報を知らない者も居るだろうから、それに対する配慮と言えた。


『流石に学生という身分である為、名前の公表は控えさえて頂きますが、この学生がキングス工房の名を背負うに足る実力があるのかどうか見物ですねぇ!』


 それを聞いて再びショウマの胃がキリキリと痛む。


「くそっ、ハードル上げやがって……」


 独りごちるショウマの心境など意に介さず、司会は興奮を隠す事無く、進行を続ける。


『東にクローブ商会のブラックサイズ!西にエイボルフ商社のエヌワース!北は王立魔動研究所のグランディル!そして南のキングス工房、シルブレイド!果たして今年の栄冠に輝くのは、どの機体なのかぁっ!!』


 司会の紹介したのとは逆の順にショウマはそれぞれの魔動機兵を確認する。

 自分の真正面にはグランディルと呼ばれる、まるで盛り上がった筋肉のような鎧甲を身に纏い、厳つくありながらどこかスマートさを感じさせている。

 何の変哲もない一般的とも言えるロングソードをそれぞれの手に持っている超接近型の二刀流スタイルだ。

 左手側を見れば、そこには樽のような丸みを帯びた重厚な鎧甲を纏ったエヌワースがいる。

 両の上腕にはラウンドシールドと呼ばれる大きめな円形楯を装備し、手には棘の付いた鉄球付きのフレイルを持っている。

 防御に特化した機体だというのが一目で分かる。

 そして最後に右手側に視線を移すとそこには異様な姿の機体があった。

 ブラックサイズと呼ばれた機体は、その名の通りの漆黒のマントを羽織り、その全身を覆い隠している。

 唯一露出している頭部は赤く光る単眼が特徴と言えるだけ。

 マントの下にあるであろう手からは魔動機兵の全高と同じくらいの長さの刃を持つ大鎌が伸びており、さながら死神を彷彿とさせる。


『それでは開始に先立ちまして、今年の特別ゲストである“剣聖”ソディアス様に激励のお言葉と開始の合図をお願いしたいと思います!』


 すり鉢状になった観客席の更に上に位置するバルコニーのある特別観覧席、いわゆるVIPルームの1つから老人が姿を現す。

 老人とは思えない引き締まった筋肉を純白の鎧で覆った精悍な顔付きの彼の姿を見て、ショウマは驚きで目を見開く。


「はっ?!あの爺さんが剣聖だって!?」


 同じタイミングでレリアもその事実に気が付く。


「そうか。どこかで見た事があるとは思っていたんだ。あの方が剣聖殿であったか……ふむ、それならショウマを軽くあしらったのも頷ける」


 最強の騎士の称号である“騎士の中の騎士ナイト・オブ・ナイツは、悪夢獣の討伐数や総合的な能力を加味して与えられるものであり、その称号を持つシルフィリットがこの世界の誰よりも強いという意味では無い。

 剣の腕前という1点だけに関して言えば、ソディアスの方が遥かに上であろう。

 だからこそ剣では他に比肩しうる者が居ないという証である“剣聖”という称号を戴いているのだ。


『若人の台頭は嬉しい事なのじゃが、こんなジジイが未だ現役を張っている。そろそろ儂を引退させるような強き者が現れるのを望む所じゃ。故にこの大会に勝利した者には、儂と闘う権利を授けよう。もし儂に勝てるようならば現役を退き“剣聖”の称号を譲り渡してやるぞ!』

『え?あ、ちょっ、ソディアス様?』


 司会が困惑している事から、これは事前に打ち合わせをしていないソディアスの独断なのだろう。

 だがこの宣言で会場内は一時のざわつきの後、今まで以上の盛り上がりを見せる。

 なにせ最新鋭とも言える魔動機兵の乱戦を見た後に、現役騎士の最高峰とも言える剣聖との一騎打ちが見れるのだから、盛り上がらない方がおかしい。

 そしてソディアスの言葉に感化されたのは、観客だけでない。

 各魔動機兵の操縦者も、先程まで以上に勝利の意欲を高めていた。

 優勝するだけでも機兵工房の名とその実力が示されるというのに、その上、剣聖に勝つ事が出来れば、次代の剣聖として認められる上に、優勝した時以上に魔動機兵の性能をアピールする事が出来る。

 たった一度の勝利で魔動機兵業界のシェアを一変させる事も可能なのだから、気合が入るのは当然だ。


『では、健闘を祈るぞ。試合開始じゃぁっ!!』


 ソディアスは高らかに闘機大会の開始を宣言した。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *



 フォーガン王城大広間。

 天井まで3階分くらいはあるだろう高さまで吹き抜けとなっており、正面に見える階段の上にある豪奢な扉の向こう側には玉座のある謁見の間が存在している。

 大広間の隅にある一段高くなった場所にはオーケストラが並び、優雅なBGMを生演奏し、反対側にはシェフが巨大なテーブルに下品にならない程度に料理を並べている。

 中央ではオーケストラに合わせて、思い思いに優雅にダンスを楽しみ、その周囲では煌びやかな服で着飾った者達がワイングラスを片手に談笑している。

 そんな大広間には名立たる人物達が集まっていた。

 この王城の主あるフォーガン王は当然として、アルザイル共和国首相にウェステン連合国家元首。更にはサイヴァラス聖教国の大司祭に、ナイングランド国の外交官。

 そして各国の有名貴族や、各国に多大な貢献をし、流通の要を担っている大商人などの姿も見える。

 もし今この場を爆破でもされたら、フォーガン王国のみならず、世界全てがひっくり返ってしまうだろう。

 そんな場所にシアニーは居た。


「はぁ……私も闘機大会の方に向かいたかったなぁ」


 茶会の時と同様、大広間の隅で椅子に座り、たった1人で不満を口にする。

 彼女の両親は王位継承権第5位のシェバ家当主と共に王族の代表として闘機大会の会場へと赴いている。

 騎士を目指すシアニーとしては、闘機大会を観戦した方が色々と今後の役に立っただろうし、何より楽しそうだった。

 だが母のメアニーに「もっと社交の場を知っておきなさい」と言われて、この場に出席するはめになってしまったのだ。

 部屋に閉じ籠るという手が無かった訳ではないが、他の家の者が1人以上参加している手前、アメイト家を代表する彼女が出席しないのは失礼にあたる。

 王族としての高いプライドが今回は仇となった形だ。

 ただ幸いなのはアレスが居ない事くらいだろうか。

 彼は王国騎士団長という立場上、何かが起きた場合にすぐに対処出来るよう、こういう場には参加していないのだ。

 薄紅色で肩の出た上半身の線が良く映えるロングドレス姿で、流れるような金色の髪を下ろし、王家の家紋の付いたティアラを被った彼女の姿は誰が見ても美しいと思える程。

 だが不機嫌を隠す事無く振り撒いている為か、近付く者は居ない。

 時折、光に吸い寄せられる虫のように何も知らぬ貴族の子息が近付こうとするが、それも彼女に声を掛ける前に誰かしらに止められる。

 止めた者は、彼女が王位継承権第1位のオーレリア家の長男、アレスの婚約者だと知っている者達だ。

 つまりどんなに美人であろうと、声を掛けた所で脈が全く無い人物に声を掛けるよりは、他の婦女子に声を掛けてお近付きになった方が建設的だと理解しているのだ。

 婚約破棄の内容については両家の近しい者にしか知らされていない為、その内容を知らない者にとっては、下手に彼女に声を掛けて、オーレリア家からあらぬ不審を持たれたくないというのが本音という所だろう。

 おかげで彼女にとって最悪な場所ではあるが、煩わしい思いもしなくて済んでいた。

 ただ例外は存在する。


「これではせっかくの美人が台無しだな」


 シアニーに声を掛けて来たのは、温厚そうな笑顔を浮かべた壮年男性だった。


「お久しぶりですね、シアニーさん」


 彼の名はアーガス=オーレリア=ド=フォーガン。

 王位継承権第1位の次代の国王に最も近いアレスの父親であり、シアニーが婚約破棄の条件を満たせなければ、義理の父親となる人物だ。

 彼は今現在、内務執政長官という職に就いており、フォーガン国内を今以上に住み良い場所にする為の施策の殆どを取り仕切っている。

 誰もが納得する税制を生み出し、効率的な農耕法や治水法を編み出し、窮屈さを感じさせない法律を考え出す。

 フォーガン王国が世界で最も豊かでもっとも争いの少ない国となったのは、現フォーガン王の人徳に寄る所もあるが、アーガスの手腕があったからこそというのも多大にあった。

 人々の間では彼が国王になれば、更に王国は潤うだろうとまで言われている。

 シアニーもアレスの事は好きになれないが、アーガスの事は父親と同じくらい尊敬出来る人物だと思っていた。


「あ、アーガス様」

「う~ん、どうせならお義父様と呼んで欲――」

「それだけはお断りします」


 間髪いれず否定の言葉を口にするシアニーに、アーガスは機嫌を悪くする事無く、笑顔を浮かべ、それに対してシアニーも笑みを浮かべる。


「やはり君にはそういう笑顔の方が似合う。ともあれ、あの婚約に関しては私も早計だったと今では思うから、君の気持も分からんでも無い。ただ父王の前で公言した手前、私の口からは撤回は出来ない。君自身に頑張って貰うしかない。だが君の気持ちは別として、私も君のような綺麗な子を娘に持ってみたいという気持ちはあるんだよ」


 オーレリア家にはアレス1人しか生まれなかった為、娘という存在に憧れでもあるのだろう。


「そのお気持ちだけ受け取らせて頂きます。私もアーガス様のようなお義父様なら喜ぶべき事なのですが、ご子息の事はどうしても……」

「あはは、どうしても反りが合わない者が居るのは仕方が無い。それに親である私が言うのも何なのだが、息子はどこか冷めているような感じで、何を考えているのか読めんのだよ」


 内政を司るだけあって、アーガスは人の僅かな機微に敏感だ。

 たった1つを見逃しただけで反乱に繋がるかもしれないのだから、必然的にそういう能力が身に付いたとも言える。

 だがそんなアーガスでもアレスが考えている事、その内に秘めている事などは全く見通せ無かった。


「私は恐ろしいのだ。あやつはいつかとんでもない事を仕出かすのではないかと」

「はい、私も同じです。初めてお会いした時から、あの人にはどこか底知れない恐ろしさを内包しているように感じてました。私が苦手と思うのもそれが要因ではないかと思うのです」


 アレスに感じるのは恐怖というより畏怖。

 その笑顔の裏でドス黒い闇を抱えているように思えるのだ。

 長い間、親と子として共に生きて来たアーガスと、王族という仮面を被り続けて自身の想いを胸に秘めて来たシアニーの2人だからこそ感じた共通の認識。

 モヤモヤとした不安は2人の心の底に沈んでいくのだった。

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