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異世界の機兵騎士  作者: 龍神雷
第3章 王都祭典編
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第42話 激闘!八首の炎蛇

 八つ首の焔蛇へと変形したレグラスの魔動器“獄炎の守護者インフェルノガーディアン”を前にショウマ達は身構える。

 宣誓をしたのはレグラス。

 8つの首からそれぞれ業火球が吐き出され、真っ直ぐ襲い掛かる。

 しかし足場がしっかりしている今の状態で、そんな直線的な攻撃が当たるはずも無い。

 難無く避けるが、それはレグラスも承知済み。

 炎球は地面に着弾すると激しく爆発し、ごっそりと地面を穿つ。


「今のはただの挨拶代わりだ。最強形態となり、威力は今までの数倍も上がっている!それでもまだ立ち向かうと言うのかね?」


 防御形態である大楯状態では内部の炎を緩衝剤代わりにして大楯が受ける衝撃をかなり吸収させる事が出来る。ただしその分、攻撃に炎を割けないので炎弾の威力は落ちるし、高威力の炎弾を生み出す為には、かなりの集中力と時間を要する。

 しかしレグラスが最強形態と呼ぶこの攻撃形態時では、防御を捨て、全ての炎を炎弾を生み出す事に注いでいる為、威力が跳ね上がるのだ。しかもそれが8つもあるのだから、最強形態と呼ぶのも当然と言えた。


「へっ、誰かが言ってたぜ。どんなに威力が高い攻撃も当たらなければどうって事は無いってな!」

「確かにその通りね!」


 ショウマとシアニーが同時に駆け出す。

 示し合わせた訳ではないが、ショウマは左回りで、シアニーは右回りでそれぞれレグラスへと向かう。

 左右に別れれば、単純に炎弾の数は半分になるし、操作する人間が1人である以上、意識も分散されて隙も出やすい。

 だがそんな初歩的な事はレグラスにも分かっている。だから敢えて迎え撃たない。

 炎弾を自身の足元へ放つと、その威力で地面が抉り取られ、大量の土砂となって周囲に飛び散る。


「うわっぷ」


 ショウマは思わず腕で顔を庇う。

 マーチョの岩礫とは違って、土砂そのものにはそこまでの威力は無い。

 だが向かってくる相手、それも高速で向かってくる相手には相対速度的に避け辛いし、それなりに痛い。しかも土砂が大量である為、突き抜けるのが難しくて足止めになるし、目潰しにもなる。

 レグラスは2人の足が止まった事を確認すると、余裕の表情を浮かべて後退。そして十分に間合いを離した所で、炎弾を放つ。


「こんな小細工が通用すると思わないでよね!」


 迫り来る土砂を凍らせる事で降り被るのを防いだシアニーだが足を止めてしまったのは事実。

 レグラスに間合いを離され、炎弾を放たれてしまった事に歯噛みしながらも回避行動に移る。

 8つの首から放たれる炎弾は、その1つ1つが強大な威力を持ち、地面に着弾すれば、爆発する。

 少しでも気を抜けば、あっと言う間に倒されてしまうだろう。


「ショウマ!このままじゃ、こっちの体力がもたないわ!!」


 今はレリアの風によって速度を落とされ、軌道をずらし、回避に専念しているから避け続けられているが、このままでは近付く事もままならない。

 分散しようにも、動こうとした先にやや威力は低いがスピードの早い炎弾を放ってくるので、思うような位置取りが取れない。

 しかも周囲に炎が舞い踊っているせいなのか、なんとなく空気が薄く感じられ、徐々に息苦しさも感じ始めて来ていた。

 攻撃しているレグラスは魔動力を消費しているとはいえ、これまで目立った大きな動きはしていないので、体力的には余裕があり、シアニーの言う通り、激しい動きを繰り返しているショウマ達の方が先に体力が尽きてしまうだろう。


「なんか手を考えないと……」


 ショウマは状況を打開する策を頭を捻って考える。

 怒っている時は、あれほど頭が冴え、冷静に分析して最も効率的で効果的な方法が思い付くと言うのに、今は何も思い付かない。

 何か弱点や隙が無いか、レグラスの観察を続ける。それと同時に迫り来る炎弾にも集中して、回避を続ける。

 だから彼は気付かなかった。気付けなかった。

 それに気付いたのは支援に徹し、後方に居たレリアだった。

 レグラスの遥か後方で、槍を杖代わりにヨロヨロと立ち上がろうとしているマーチョの姿に。

 続いてシアニーが気付く。

 地面が再び砂状となっている事に。


「「ショウマ!!」」


 2人が同時に声を上げた時には既に遅かった。


「しまっ――」


 ショウマが迫り来る炎弾を避けようとした瞬間、足元の砂がまるで蟻地獄のように渦巻き、ショウマの足を捉え、その動きを捕える。

 まるでその瞬間を狙っていたかのように、炎蛇から吐き出された炎弾がショウマに襲い掛かった。

 炎が巻き上がり、爆音が轟き、爆風が吹き荒ぶ。

 爆発によって舞い上がった砂煙の中、ショウマはゆっくりと目を開ける。

 周囲はやけに静かだった。

 爆音で鼓膜がやられた訳ではない。その証拠に耳を澄ませば、舞い上がった砂がパラパラと落ちる音が聞こえるし、観客席からであろう、どよめきも聞こえてくる。

 なにより炎弾の直撃を食らったはずなのに、吹き飛ばされても居ないし、身体に痛みも感じない。それどころか防御魔動陣が発動した形跡すら無い。

 どういうことなのか全く理解出来ない。

 だが、砂煙が薄れるにつれ、その理由を理解した。

 最初に見えたのは白っぽい半透明な壁。

 キラキラと光を放っていたので、それがシアニーが咄嗟に張った氷の壁なのだとすぐに気が付く。

 これのおかげで難を逃れたのかと胸を撫で下ろそうとした瞬間に、それは見えた。


「……な…なんで………」


 氷の壁の向こう側にまるで張り付いているかのように人影が見える。

 光を反射してキラキラと光っているものだとばかり思っていたものは、その人影の頭部から流れる黄金色の髪の毛だった。


「なんで、お前がそっちに居るんだよっ!!!」


 ショウマの叫びに呼応したかのように氷の壁は解けて消え、支えを失った黄金色の髪を持つ少女がゆっくりと倒れていく。

 膝下まで砂に埋まった足を強引に動かし、精一杯手を伸ばして、倒れ行く少女を受け止める。

「シア!なんでこんな事を!!」


 防護魔動陣のおかげで抱きかかえたシアニーに目立った外傷は見当たらないが、直撃の衝撃は生半可なものではなかっただろう。

 薄く目を開ける事は出来たようだが、身体を動かす事が出来ない程のダメージは受けている。


「…えへへ……流石に……動けない…みたい……」

「バカッ!なんで自分の前に氷の壁を作らなかったんだよ!!」

「……悔しいけど、魔動力だけならあいつの方が上……私の氷じゃあの炎は防げないけど…爆風程度なら防げるから……」

「けど…なら……」


 それならば自身の身を守ればいいのに、何故庇ったりしたのか。

 レグラスと戦うなら、魔動力が無く、魔動器も使えないショウマよりも、シアニーの方がまだ勝負になるはずだ。


「……さっき、ショウマが言ったじゃない……大切な人を守るのに…理由なんて無いって………勝手に身体が動いちゃったんだもん…仕方無いじゃない………」


 そう言われてはショウマも何も言えない。

 逆の立場だったなら、恐らく同じ事をしただろうから。

 そこで視界を覆っていた砂煙が収まり、ショウマとレグラスの視線が交錯する。


「おやおや。これは思わぬ僥倖だね。最大の脅威だった氷結姫がまさか、そんな下民を庇って倒れてくれるとはな。これで勝利は確実。しかし使用人が主人に守られるとは笑いの種だな。今日の祝勝会ではこれは大いにネタになるな」


 ショウマの瞳に様々な感情が灯る。

 だがそれはレグラスの安っぽい煽り文句に対しての怒りでは無い。

 もしこれが実戦ならば、彼女を失っていたかもしれなかったという恐怖と悲しみ。

 騎士として誰かを守るという強さを思い出した彼女に対する喜び。

 そしてあの日と同じように少女に守られた不甲斐無い自分自身に対しての怒り。

 様々な感情が渦巻けば普通は混乱してしまう所だが、彼の場合、感情が激しくなればなるほど、その心は平静に、冷徹に、冷酷になっていく。

 だからこそ取り乱す事無く、静かに声を発する。


「彼女はもう戦えない。離れた所に下がらせてもいいよな」

「まぁ、いいだろう。お荷物を抱えていたせいで負けた等と後で文句を言われてはたまらないからな」


 最大の脅威となるシアニーを退けた事で、勝利をほぼ確信し、余裕の生まれたレグラスは二つ返事で承諾する。

「ああ、済まないな。少しだけ待っていてくれ」


 レグラスの指示でマーチョも砂の操作を止めているので、砂に埋まっていた足は簡単に抜ける。

 シアニーを抱え直し、ショウマはレグラスに無防備に背中を見せて、後方に居たレリアの方へと向かう。

 いくら承諾したとはいえ、無防備過ぎる。

 今、小さな炎弾を1つ放つだけで、ショウマを倒してしまえるだろう。

 だがレグラスには出来ない。

 普通に戦っても勝てる見込みがあるというのもあるが、学園長を始めとした多くの者が見ている前で卑怯な真似は出来ないというのもある。

 しかしそれよりも無防備のはずのショウマの背中に何故か怯えのようなものを感じていたのだ。

 何故、そんなものを感じたのかは分からない。

 ただレグラスは、その背中を見ているだけにも関わらず、じっとりと手に汗が滲んでいたのだった。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *



 ショウマはゆっくりと、レリアの元へ満身創痍のシアニーを運びながら、彼女へ向けて、ある作戦を伝えていた。


「悪いけど、もう少しだけ無理して貰うぞ」

「……うん……それくらいなら体力はあまり使わないし……」


 ほんの今さっき思い付いた作戦は彼女次第でその成否が大きく関わってくる。

 この勝負に勝つ為には、ゆっくり休んで後は任せろとは言えない状況なのだ。

 それ程までにレグラスは強いのだ。


「レリア。シアの事を頼む」


 レリアの足元にシアニーを寝かせる。


「ショウマ!私はまだ全然、余力が残っている。彼女程ではないが――」

「いや、正直に言って、足手纏いだ」


 レリアの言葉を遮り、一言で完全に切り捨てる。


「ああ、悪い。言い方が悪かった。あれは正直、俺やシアでも避けるので精一杯だから、レリアには荷が重いと思う」


 風と気圧変化によって空気抵抗を減らしたスピードアップは確かにショウマのスピードに匹敵する。

 だが薄くなった空気の中で動く為、体力の消耗が著しく、長時間の使用は不可能。

 近付いて攻撃出来る方法が無い限り、無駄に消耗するだけだ。


「それにレリアには色々とやって貰いたい事があるからな。詳しい事はシアに聞いてくれ」


 ショウマはそれだけを伝えると、レグラスに向き直る。


「待たせたな。再開しようぜ!」

「なんだ?後ろの女に助けを求めんのか?」

「ああ。俺一人で十分。さっきの個人戦での借りも返さないといけないしな!」


 そしてショウマは剣を構えて駆け出す。


「ふん。何か他の策でもあるのかと思えば……」


 レグラスが肩を竦めて嘆息するのに合わせたかのように、地面を覆っている砂が動き始める。

 だがすぐに砂は動きを止めて踏み込んでも沈まない程硬くなる。


「ちっ。まだそんな余裕があったか」


 レグラスが視線を奥へ向けると、レリアに支えられて起き上がったシアニーが地面に剣を突き刺している。

 マーチョがやった事と同じ事をしたのだ。

 しかも個人戦での戦いではっきりしているように、シアニーの方が強い魔動力を持っている為、上書きされて、砂は完全に氷へと変わっている。

 背中からの風を受け、滑るようにレグラスに接近するショウマ。

 レグラスは慌てて炎弾を放ち、地面の氷を溶かすが、その対応は少しだけ遅い。

 上昇気流を纏いながら炎弾をかわすように大ジャンプ。

 空中であれば、足場を気にする必要は無い。


「馬鹿め!空中に居ては回避は不可能だろう!!」


 8つの炎蛇の口腔が赤い輝きを放ち始め、徐々にその熱量を増していく。


「今だっ!!!」


 ショウマの合図にシアニーとレリアが自分に出せる最大の魔動力で雪と風を放つ。

 2つの力は混ざり合い、猛吹雪となってショウマとレグラスを覆う。


「こんな目眩ましが通じると思ったかぁ!」


 炎蛇の熱量が増し、雪と風の吹雪は水と風の嵐となり、そして大量の水蒸気へと変わる。


「さぁ、これでお終いだ」


 水蒸気で霞む奥にある人影に向けて、8つ首から同時に炎弾が放たれる。

 人間に対して完全にオーバーキルな容赦無い攻撃がその人影を襲い、激しい炎と爆発の渦に飲み込んでいく。


「おおっと、これはやり過ぎてしまったかな?」


 完全に勝利を確信したレグラスは“獄炎の守護者インフェルノガーディアン”の攻撃形態を解き、元の大楯へと戻す。


「……ああ、やり過ぎだな。おかげで良い目眩ましになってくれたよ」


 それは背後、それも頭上から聞こえてきた。

 レグラスがその声の出所を探ろうと振り返った瞬間、彼の脳天に剣が振り落とされた。

 防護魔動陣が斬撃のダメージの多くを防ぐが、いくら軽減されたとはいえ、脳を揺さ振られては、まともに意識を保つ事など出来ない。

 白目を剥いて、レグラスが崩れ落ちる。


「ふぅ~、なんとかなったな。さて、後は……」


 ショウマは1つ大きく息を吐いてから、視線をマーチョへと向ける。

 そのマーチョはというと、攻防の要であるレグラスが倒され、彼自身もかなりのダメージを負って、槍を支えに立っているのがやっとの状態。もう1人に至っては人形が無ければ、何も出来ない。

 対するショウマ達はといえば、シアニーが戦闘不能とはいえ、疲弊はしているもののまだ余力のあるショウマと、援護に徹していた為に無傷のレリアが残っている。

 勝ち目など完全に無かった。

 マーチョは槍から片手だけ離すと上へと上げて、もう戦意が無い事を示し、それとほぼ同時に地面に転がっていた人形の頭部がパカリの割れて、その中から白旗が上がる。


「勝負ありだ。カキヨンチームの勝利!!」


 タンニの勝利宣言を耳にしたショウマはその場に大の字になって倒れる。


「はぁ~……なんとか勝てたか~」


 この対抗戦は肉体的な疲れもあるが、シアニーの件による精神的な疲労が最も大きかった。

 ただこのチーム戦の最中に何かしらを得て、壁を乗り越え、吹っ切れた様子になった事は喜ばしいことだった。

 これで暫くはゆっくりと出来そうだ。

 ちょうど来週からはフォーガン王国の建国記念を祝う王国祭が開かれ、同時に学園も少しの間、休みに入る。

 王国祭ではキングス工房のような大手の魔動工房の多くや魔動具の王国最大研究機関である王立魔動研究所が、自分達が造り出したり、改良した魔動具を発表し、世間に技術力の高さをアピールしたり、各国の騎士達が実力を競い合う闘機大会なども開催される。

 シンロード魔動学園ではこれらを見に行くだけでも良い経験となるとして、王国祭の開催される時期に合わせて、長い休暇を設定したのだった。

 またこの休暇には実家が遠方にある生徒が一時帰省するのに利用するという意味合いもある。

 更に言えば、騎士本科の場合、休暇後からは本格的に魔動機兵による訓練が始まる為、もし魔動機兵の準備が出来ていない場合の準備期間という意味もある。

 ちなみに購入費用は最も安い量産魔動機兵の費用分は学園から補助を受ける事が出来、それ以外の改造費は自己負担となっている。

 だが元々騎士を目指して入学しているだけあって、余程の貧民でない限り、独自の改良が加えられた魔動機兵を所持している者が殆どである。


(王国祭か……息抜きくらいはしてもいいよな……)


 ぼんやりと天井を眺めながら考えていると、ゆっくりとした足取りで誰かが近付いてくる。


「やぁ、お疲れ様。最後に一体何が起きたのか教えてくれるかな?外から見ていただけでは、吹雪やら雨やら水蒸気やらのせいで、レグラス君が全く逆方向を攻撃したくらいしか見えなかったんだけど」


 視線を声の方に向けると、そこに居たのは穏やかな笑みを浮かべたイーグレット学園長の姿があった。

 地位としてはアイリッシュ理事長に次ぐ2番目だが、アイリッシュが学園の殆どの事を彼に任せている為、実質的には学園のトップと言える。

 普通なら居住まいを正して対応すべきなのだろう。

 実際、ショウマの元に歩いてくるまでにレリアにも声を掛けたのか、彼女は何故か緊張した面持ちで地面に正座している。その隣にいるシアニーは力尽きて意識を失っているのか、単に疲れて寝ているだけなのかは分からないが、地面に倒れたままだ。

 そしてショウマはというと……


「ああ、あれの原理は単純ですよ」


 寝そべったまま顔だけをイーグレットに向けて話し始める。

 敬語を使ってはいるが、その不遜な態度に約半数は唖然とし、約半数が苦笑いを浮かべ、ごく少数だけが、彼らしいと思いつつも頭を抱える。

 表情を見る限り、イーグレット自身はそんな態度を気にしていないのか、話の続きを促してくる。


「単純とは?」

「鏡ですよ。シアを後ろに運んでいる間に彼女にはレグラスの頭上に大きくて分厚い氷を生み出させていたんです。そして表面はなるべく平らでツルツルにして貰ったんです。ただ、さすがにそのままだとすぐにバレるので、彼女達2人の力で吹雪を起こして目眩ましにして、正面に居るのが氷に映った俺だと思わせないようにしたんです」


 レグラスが炎を操り、魔動力の強さだけで見ればシアニーより上である事から、雪が解けて蒸発し、水蒸気になる所まで織り込み済み。

 大量の蒸気は吹雪以上の目眩ましになるだろうと思ったのだ。


「後はレリアの風で俺と氷の位置を調整して、氷に映った俺の影を本物と間違えてあいつが攻撃し、倒したと油断した所に一撃を加えたってだけですよ」


 咄嗟に思い付いたにしては上出来だったと思いますね、とショウマは最後に付け加える。


「事前に打ち合わせた作戦では無く、あの場で考えたと?」

「まぁ、そうですね。そもそもあんな火力があるなんて試合前には分からなかったですし」


 そんな練習をしていた訳ではないので、失敗する可能性は極めて高かった。

 だがショウマは、シアニーとレリアにはそれをやれるだけの実力があり、絶対にやってくれると信じた。

 そして彼女達もショウマに応えてくれた。

 3人が信頼し合い、チームとしてしっかりと機能したのだ。

 それに対してレグラス達は事前に打ち合わせた作戦通りの動きをしただけで、そこに信頼関係は皆無。

 レグラスの選民意識の高さが、他の2人を駒としてしか見ず、自分1人でも十分だという考えだったのだ。

 それではチームとして成り立たない。

 もし信頼関係が築けていたら、最後の攻撃の際、遠めの場所に居たマーチョならば頭上の氷に気が付いただろうから、レグラスに注意を促したり、岩の防御壁を張ったりと守る事も出来ただろうし、結局最後まで姿を見せなかった人形遣いが身を呈して守る事も出来たかもしれない。


「そうですか。それでは改めて、勝利おめでとうございます。今はゆっくりと身体を休めて下さい」


 会話をしている間に体力が回復したのか、ショウマは起き上がり、労いの言葉を掛けるイーグレットの前に片膝をついて右手を自身の左胸に添えて頭を垂れる。


「はっ。ありがとうございます、イーグレット学園長」


 それはそれまでの不遜な態度とは真逆の立派な騎士の礼であった。

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