幕間 祭の準備
妖艶な笑みを浮かべながら、女は次に何をすべきか考えていた。
「さぁ、次はどうしようかしら?自由に使える手駒が増えたのは良いけれど、まだ使う段階じゃないし……」
ランズラット傭兵団の団長のランズラットは随分前に籠絡し、可愛い妹分の新しい玩具の実験に利用していた。
先日には期せずして副団長のガレルエアも手駒に加える事が出来た。
団長と副団長両名の命令であれば、団員は異を唱える事は無いだろうから、傭兵団全てを意のままに操れるといっても過言ではない。
特にランズラット傭兵団はアルザイル帝国のクーデターで名を馳せ、その後も皇帝派の要人暗殺や残党狩り等、多くの汚れ仕事を行った事で、その悪名も高い。
今回のようなちょっとした非合法な事でも容認されやすい。
アルザイル共和国現政権は当然ながら、フォーガン王国の貴族の中にも、ランズラット傭兵団に残党狩りや暗殺を依頼した者がいるのだから。
その上、傭兵という立場上、世界の何処にいても目立たないので、色々と都合が良い。
それにもし不要になって潰したとしても、悪名高い傭兵団が何処で野垂れ死にしようが、面倒も迷惑も掛からない。
女は傭兵団が不要になった際にどうやって切り捨てるかを妄想して笑みを浮かべながら、人里離れたとある山の中腹にポツリとある工房を訪れた。
「お姉様っ!!」
来る事を事前に察知していたのか、それとも来るまでずっと待ち構えていたのか、工房の扉を開けた途端に、黒髪の少女が満面の笑みを浮かべて抱き付いてきた。
この少女を拾ったのは、ただの偶然だ。
憔悴しきっていて、放っておけば、簡単に死んでしまいそうな少女をただの気紛れで助けてみたら、異世界からの転移者だったのだ。
それだけでも幸運と言えるのに、更に彼女は、長時間触れていると気が狂ってしまう悪夢獣の素材に何日も触れていても、発狂する事も無く、精神が壊れる事も無かった。
それが異世界人の特性なのか、彼女自身の能力なのかは分からないが、女はその時に新しい遊びを思い付いたのだ。
そして女は少女に自分の持つ魔動技術を全て教え込み、少女に悪夢獣の素材から造り出した魔動機兵“魔動機獣”と、同じく悪夢獣の素材を使った人間サイズの武器である“魔獣器”を生み出させたのだ。
「お姉様!今回造った新しいのはどうでした?」
「ええ。結果は上々よ。効果もそうだけど、どちらかと言えば、その副次効果の方が魅力的だったわ」
「副次効果?」
「貴女は気にしなくても良い事よ。それよりも今度のお祭りの為に、あれを出来るだけ多く造って頂戴」
「は、はい!お姉様の期待に応えられるように頑張ります!!」
少女は女の事を完全に信頼し、信用し、憧れで、そして大好きであった。
その言葉は絶対で裏切る事は出来ない。
憧れの存在に頼りにされる事は少女にとって最上の喜びであり、最高の栄誉なのだ。
「良い子ね。頑張ったらご褒美をあげるわ。そうね、折角だし一緒にお祭りでも見に行きましょうか?」
「えっ?お姉様と一緒ですか?!」
「ええ。そうでなければ、貴女のご褒美にならないでしょ?」
「はい!頑張ります!!お姉様に喜んで貰う為にすっごく頑張りますから、見ていて下さい!!!」
喜色満面で少女ははしゃぐ。
それを見て、色気のある笑みを浮かべる女。
傍から見れば、それは仲の良い姉妹にしか見えないだろう。
造っている物が不穏な物でさえなければの話だが……。
次回より新章となります。
が、体調が良くなってからも執筆スピードがどうにも上がらないので、まだ暫くは隔週更新で行かせて頂きます。
というわけで次回はエイプリルフールに更新しますが、嘘じゃありませんから。




