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異世界の機兵騎士  作者: 龍神雷
第1章 魔動学園春嵐編
10/106

第10話 シアニー=アメイト=ラ=フォーガン

連休で筆が乗ったので突発的に更新です

 ショウマが目を覚まし、シアニーと一騒動があった翌日。

 病室にアイリッシュの使いとしてエルアが姿を現した。


「この度は大変な目に合わせてしまい、申し訳ありませんでしたね。まさかシアニー様がここまでやるとは思っていませんでしたので」

「いえ、これは俺の力不足が招いた結果です。エルアさんのせいではありませんよ」


 昨日よりは大分良くなったとはいえ、相変わらず動かそうとすると全身に痛みが走る。少し我慢すれば動かせない程ではないので、今はベットの上で上半身だけ起き上がって会話をしている。

 しかしこんなに早く回復するものなのだろうか。だがショウマのその疑問はすぐに解決する。


「この病院には治癒と回復力を促進する魔動陣が組み込まれています。ショウマ様の怪我、特に左肩の怪我は本来であれば全治に3ヶ月は掛かる所ですが、この病院にいれば1ヶ月で今までと同様に動かす事が出来るようになるでしょう。ですが流石に今期の授業は1週間後から始まりますのでそれには間に合いませんね」

「え?授業って……俺、学園に入れるんですか?」


 エルアの言葉につい疑いの言葉を掛ける。

 正直に言えばあの内容で入学出来るとは思っていなかったのだ。

 確かにシアニーに勝利はしたらしいが、直後に意識を失った為その実感は無く、見た目だけで言えばショウマのボロ負けだ。この3年の血の滲む様な修行で剣の腕にはそれなりに自信はあったのだが、結局は防戦一方だったし、実力を示せたとは言いにくい。

 勝てたのは運が良かったとしか言いようが無い。


「シアニー様が今期の本科1年生でトップクラスの実力だというお話はしましたよね?」

「え、あ、はい」

「剣技だけでしたら間違いなく上級生を含めても学園で10指には入る実力でしょう」


 対戦したショウマだから分かる。

 シアニーは的確に迷い無く急所を狙い、刺突剣という扱い辛い武器を難無く使いこなしていた。

 刺突剣の軽さも手伝って、その斬戟スピードは驚異的だった。


「ですが魔動器や魔動機兵を使ってとなると、彼女は少々分が悪くなってしまうのです。冷気である以上、火を扱う魔動器とは相性が悪いですし、魔動機兵相手ではそもそも相手の居る操縦席まで冷気が届きません。刺突剣にしても魔動機兵には急所や鎧の隙間というものがありませんから」


 そんな状況でも総合的にトップクラスであるという事は、シアニーが相当な腕前だという事を意味している。


「つまりそんな彼女に全力を出させ、且つ魔動器も無しに打ち勝ったショウマ様の実力は、未だ粗削りではありますが、学園に入るには申し分ないと思われます」

「それじゃあ!」


 エルアの言葉はアイリッシュの言葉と同義である。

 つまりは相手が相手とはいえ、あんな不甲斐ない戦いでもその力を認めて貰ったという事だ。いや相手が相手だったからこそ、あそこまで善戦出来た事が評価されたのだろう。

 ショウマが入学できる事に喜びかけた次の瞬間、すぐにそれがぬか喜びだと知らされる。


「実技試験に関しては合格点です。ただしこれだけで入学を認める程、シンロード魔動学園は甘くはありません。この学園は文武両道を旨としていますので、次は文、つまりその教養を試させて頂きます」


 編入試験は未だ半分が終わったに過ぎなかった。


「そうですね、ショウマ様の身体の怪我の事もありますし、1週間後に筆記試験を執り行いたいと思いますが、いかがでしょうか?」


 いかがと尋ねられてもショウマに拒否する権利も理由も無い。

 このままの回復力なら数日で痛みも和らぎ、筆記試験程度なら問題無くこなせるだろう。ただ1つ問題がある。


「筆記試験につきましては分かりました。ですが病院のベットの上で何も出来ずに筆記試験の日までずっと暇を持て余すのもなんですので、出来れば過去の試験問題集とかの勉強道具があると助かるのですが……」


 この3年間、身体の鍛錬だけでなく勉学にも励んでいたので、これから筆記試験をやると言われても驚きはするだろうが、やる覚悟は出来ている。

 記憶は未だ完全に戻っていないが、そのおかげで記憶に空白領域が多い為なのか物覚えはかなり良い方である。

 ただしどんな問題が来ても合格出来る自信があるかと言われれば、流石に首を捻る所なので、1週間という猶予期間を得た訳だから、それまでに付け焼刃と言われようと出来る事はやっておきたかった。


「それに関してなら……そろそろお入りになられたらどうですか?」


 エルアが音も無く入口のドアに近付き、一気にドアを引く。


「えっ?あ?うわわっ??」


 ドアに耳でもつけて部屋の中の様子を伺っていたのだろう。突然ドアを開かれて支えを失ったシアニーがバランスを取るように腕をグルグルと回している。が、その努力は実る事無く、ドシーンという派手な音と共に部屋の中に顔面から倒れ落ちる。

 今日の服装は流石にナース服では無く、最初に路地裏で会った時に着ていた黒地に赤のラインが入った服だった。今だから分かるが、それはシンロード魔動学園の制服であった。

 盛大に転んだため、短いスカートは捲れ上がり、白い布とそれに包まれた柔らかそうな桃が丸見えになっている。

 なんとなくわざとやっているんじゃないかと思えてしまうが、慌てて立ち上がり真っ赤になった鼻を押さえながら、それと同じくらいに顔全体を真っ赤にして羞恥と怒りを湛えている姿を見ていると、それが素なのだろうと理解出来てしまう。

 ショウマは脳内の友人リストからシアニーを探し出し、その項目に“天然”と付け足して更新する。


「えええっと、そそその何か大事な話をしてるみたいだったから、終わるまで待ってようかと……べ、別に何を話しているのか気になったとかそういう訳じゃないんだからね!!」


 どう考えても気になっていただろうというのは丸分かりなのだが、敢えて誰も指摘はしない。

 彼女の性格はまだ会って間も無いショウマですら分かるのだから、エルアには完全に筒抜けだろう。


「こんな子ですが、仲よくして上げて下さい。ショウマ様にこんな大怪我を負わせてしまって、ずっと心配をして悔んでおりましたから」

「ええ、それはよく分かっています」


 優しい笑みを浮かべるエルアにショウマも笑顔で答える。


「ななな何を勝手に変な事を言っているのですか!!わわ私は別に心配なんて……それは少しはしましたけど……けど、ほんのちょっとですよ!!ひひ人として当然の心配をしただけです!べべ別に深い意味とかは無いんだから、勘違いしないでよね!!」


 相変わらずシアニーは顔を真っ赤にして喚くが、わざわざ今日も見舞いに来るぐらいなのだから、その言葉に説得力の欠片も無い。


「ああ、そう言えば入院中の勉強の事でしたね。それに関してはシアニー様にお願いしたいと思います。彼女がトップクラスなのは剣技だけではありませんので」

「って私の話をちゃんと聞いて下さい!!」

「はいはい、ちゃんと聞いています。と言う訳で立ち聞きしていたならば知っておられる通り、シアニー様には、ショウマ様の筆記試験を行うまでの1週間、彼の勉強を見て差し上げて下さいますようお願い致します」


 シアニーの心とはかけ離れた言葉を軽く流しながらエルアは話を続ける。

 彼女が来ただけで静かだった病室は途端に騒がしくなったが、個室で防音もそれなりにされているおかげか、廊下や隣の病室にはさほど影響も無いようで看護師が注意をしに来る事は無かった。

 もしかすると治癒や回復だけでなく、防音の魔動陣も備わっているのかもしれない等と考えながら、ショウマは2人の遣り取りを眺める。


「ええ?!私がですか!?えええっと…まぁ、そそその……そこまで言うんだったら、いい嫌…だけど…その仕方がない…けど……」

「シアニー様が渋々なのであれば、不肖このエルアが手取り足取り腰取りでショウマ様にお教え致しま…」

「私が教えます!私にやらせて下さい!!」


 エルアの言葉を遮り、シアニーが強く言い放つ。その態度に対しエルアは満足そうな表情を浮かべているので、まんまと乗せられた形だ。

 面倒臭い性格だが分かってしまえば扱いやすい性格とも言える。

 ショウマはシアニーの項目に更に“単純”を追加しておく。


「そんじゃあ、シアニー。手取り足取り腰取りでしっかり教えてくれ。よろしくな」

「手と足はともかくこここ腰なんて取らないからっ!!このエッチスケベ変態バカッ!!!!!」


 何を想像したのか赤かった顔を更に赤くさせたシアニーが怒鳴り散らす。


「おやおや?仲が良くて羨ましいですね。それでは後は若い2人に任せて老体は去るとしましょう」

「だだだから変な事は言わないで下さいってば~!!」


 シアニーの抗議もなんのその。

 エルアは「おほほほほ」と感情も何も感じられない作り笑いを浮かべながら病室から出ていく。

 そして残されたのはショウマとシアニーだけ。

 昨日の事もあり、なんとなくお互い黙ってしまう。

 つい先程まであれ程騒がしかったのが嘘のように沈黙が病室を支配する。

 気まずい雰囲気になりかけた所で意を決してショウマが口を開く。


「えっと、あのさ。ちょっと気になったから教えて欲しいんだけど……」

「ひひゃい!なななんでひょうか!!」


 声を掛けただけでシアニーは物凄く動揺をして声が裏返る。

 相変わらず顔が赤いのは先程までの怒りがまだ引いていないせいなのか、2人っきりになった事で緊張しているせいなのか。


「たしかシアの姓って“フォーガン”だったよな?それってこの国の……」

「え、あ、そ、そう。うん。なんだ…聞きたいってのはそれの事か……」


 その後に凄く小さな声で「腰を取って教えてって言われるかと思った……」と聞こえて来たが、きっと本人は声に出している事にすら気付いていない様子だったので、ショウマは敢えて聞こえない振りをする。


「え、え~っと…あ、あ、オホン。そういえばちゃんとした自己紹介をしてなかったわね。私はシアニー=アメイト=ラ=フォーガン。名前から分かる通り、フォーガン王家の血筋を引く一応は王族よ」

「一応?」

「うん。王位継承権は37位……あ、いや、この間、26位の伯父さんが病気で亡くなったから36位ね。つまりは私にとって王位なんて程遠い存在なのよ」


 確かにこれ程継承順位が低くては、一応と言いたくなる気持ちは分かる。

 普通に待っていたら王位がシアニーに回って来る頃には、恐らく彼女は老衰で亡くなっている事だろう。


「でも、まぁ、そのおかげで好きにやらせて貰えてる訳だけどね。私は昔から身体能力が高かったし、親や兄達が騎士になる姿見て、ずっと憧れていたの。この魔動器も学園に入学した時にお父様から頂いたものなんだから」


 王位継承権を持つという事は王女であり姫という事だ。

 普通ならばダンスや礼儀作法等、王侯貴族に相応しい習い事や嗜みをするだろう。

 当然、彼女の母親である第7王妃も王族としてお淑やかな女性に育って貰いたい気持ちが強かった。しかし、父親の方が彼女が騎士を目指す事を容認したのだ。

 継承権争いにはほぼ無縁である事も要因の1つだが、シアニーが幼少の頃から高い身体能力と、併せて高い魔動力も示していた為というのが最大の要因だった。その才能を埋もれさせておくのは勿体無いと考えたのだろう。

 そのおかげでシアニーは騎士を目指す事が出来、この学園の門戸を叩く事が出来た。

 だがシンロード魔動学園は地位や身分に差をつけたりはしない場所。

 例え富豪であろうと貴族であろうと、ましてや王族であろうともその実力が十分で無いと判断されれば入学する事すら出来ないし、逆に身分や出身に関係無く力があると判断されれば入学を許可される。

 つまりシアニーが今ここにいるという事は、自身の実力でこの学園に入ったという事を意味する。

 しかし身分に差をつけないこの学園とはいえ、そこに通う者達はどうしても身分の差を気にする者は多い。

 シアニー自身は王族である事を喧伝をして回っている訳ではないが、特別隠している訳でもない。その上、誰もが羨む程の美少女だ。

 だからだろうか。

 彼女に近付く者は誰も彼もが、美少女と仲良くなろうと、そして王族と繋がりを持とうとして、彼女に取り入ろうと必死だったし、遠巻きに見つめる者は王家という威光の前に足踏みする。

 上辺だけの笑顔を振りまいてくる者。奇異の目で見てくる者。恐縮して近付いてさえ来ない者。羨望の眼差しで見つめる者。地位と美貌に目が眩んだ者。

 同級生だけでなく、上級生や一部の教師にまでそんな目で見られては彼女としては辟易するしかなかった。

 彼女は王族であるという事が嫌いではなかった。寧ろその事に高い誇りを持っている。

 だから末席とはいえ王家の名を持つ1人として責任を胸に秘め、王族として恥じない毅然とした態度を振る舞い続けていた。

 更に授業ではその高い身体能力と知力、そして弛まぬ努力でトップクラスをキープし続けている。

 そんな振る舞いと彼女の魔動器の能力から、いつしか“氷結姫”などという2つ名で呼ばれるようになっていた。

 しかしそれは上辺だけの事。

 彼女の本性は氷とは真逆で炎のように正義感に燃え、真っ直ぐでプライドが高く、けどドジで怒りんぼうで感情表現が激しいただの女の子なのだ。


「しっかしシアがお姫様ねぇ~」

「なな何よ!なんか文句ある!?」

「あ、いや、俺のイメージだとお姫様ってのはフリフリの綺麗なドレスを着てて清楚で大人しいってイメージが強かったもんだからさぁ」


 ショウマはそう口にしながら、シアニーのお姫様姿を想像してみる。

 胸元を強調したオフショルダーの白系のドレススカートと首元を飾る煌びやかなネックレス。頭には銀色のティアラを乗せ、金色のツインテールがなびくと、その容姿と相俟ってとても似合っている。


(あ、意外と…いや結構良い感じかも……)


 更に想像を膨らませるとにこやかな笑顔を浮かべて、何故かその手には刺突剣が握られている。そしてこちらに向かって突き付けた所で、スカートの裾を踏んでド派手に転んだ。


「ああ。やっぱりシアみたいなガサツで粗暴な奴には姫なんて似合わがぼぇあおぇ~~!!!」


 ついつい思った事が口に出てしまったショウマの顔面に鋭い痛みが走る。


「悪かったわねっ!ガサツで粗暴で姫らしくも女らしくも無くて!!!」


 ショウマの顔面に突き刺した拳を引き抜きつつ、シアニーはむくれた顔で明後日の方を向く。

 昨日といい今日といい、病院で傷を癒しているはずなのに、ショウマの顔には怪我が増えていくのであった。



 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *



 そんなこんなで翌日からショウマの病室ではシアニーによる勉強会が開催される事となった。

 彼女曰く、


「私が教えるんだからもう合格間違い無しよ。感謝しなさい!!というか剣で私に勝ったんだから、筆記試験なんかで落ちたら承知しないんだからねっ!!」


 という訳で、過去の入試問題をやったり、傾向と対策を練ったりと瞬く間に1週間は過ぎていった。

 ちなみにショウマの顔には毎日最低1つは新しい痣が出来ていたりするが、それは些細な出来事だろう。

 そしてエルアとの約束の筆記試験の日。

 まだ病院内から出る事を許されていないショウマはエルアの監視の元、病室で筆記試験を受け、そして見事に合格を果たす。

 正直に言えば、試験対策としてシアニーから勉強を教えて貰っていなければ、少し危なかったのだが合格は合格である。

 合格後はシアニーの方も学園の授業が始まって学業優先という事で、週に1回の休日に顔を出す程度となり、ショウマの方も各種手続きやリハビリで忙しない日々を送っていた。

 魔動力が無く魔動具の使えないショウマの為に、アイリッシュが特別に、魔動具を使わなくても生活が出来る部屋を用意してくれ、身体の方も完全とまではいかないが回復した。

 気が付けば、あっと言う間に1ヶ月は過ぎ、遂にショウマは念願のシンロード魔動学園に入る日がやって来たのだ。


「ええ~、本日はまず皆さんに新たな友人でありライバルをご紹介します」


 朝の教室に教師が入ってくると、それまでの喧騒が嘘だったかのように静まり返る。

 ただ1人を除いて全員が、これから来るであろう中途編入生を固唾を飲んで待つ。

 噂が噂を呼んで大変というか物凄い尾ヒレ羽ヒレがついているので、どのような人物か見極めようとしているのだろう。

 ただ単純に仲良くしようと、王侯貴族なら取り入ろうと、強そうなら配下に置こうと、自身より優秀そうならあれこれどうこうと、思惑はそれぞれ様々。


「少々不幸が重なって大きな怪我を負ってしまった為にこんな半端な時期になっての初顔合わせとなりましたが、皆、仲よくするように。では入りなさい」


 その言葉に1人、シアニーだけがチクリと胸を痛めるが、この教師は事の顛末を知らないのだから彼女を責めている訳では無いというのは分かっている。とはいえ怪我をさせた本人としては責任を感じてしまうのは仕方が無い。

 教師の言葉に促されて、黒地に赤いラインでアクセントが施された真新しいシンロード魔動学園の制服に身を包んだ黒髪の少年が姿を現した。

 その姿を目にした生徒達の間から感嘆とも落胆とも驚きとも取れる声がポツポツと聞こえる。


「はいはい、静かに静かに。それでは自己紹介をお願いします」


 少年は1歩前に出て周囲を見回す。つまらなそうな表情をする知り合いの少女の姿を見つけ、少し笑みを浮かべてから声を発する。


「ショウマ=トゥルーリです。宜しくお願いします」

「ちょっと待って!!ショウマ!今、あんたなんて言ったの!!」


 知っている人物の自己紹介だったので、興味も湧かずに次の授業の準備を進めていたシアニーだったが、“トゥルーリ”という名を聞いて、思わず大きな声を張り上げてしまう。

 初めて名乗った時に聞いていたはずだし、その後も“造聖”と関わりがある事は言っていたし、ブレイドソーという特殊な武器を所持していた事から、その時は頭に血が上って偽物と断じて認めようとしていなかったが、冷静になって考えてみれば分かりそうなものである。

 しかし敗戦のショックやその後のゴタゴタでシアニーの頭の中からは、その名が抜け落ちていたのだった。

 突然大声を上げた事で全員の注目がシアニーに向く。


「急にどうしたんだ?」

「あの氷結姫が取り乱しただと?!」

「なになに?もしかして知り合い?」

「そういえば今、ショウマとか呼び捨てにしてなかったか?」

「はっ!まさか、氷結姫の彼氏?それとも許嫁?!」

「お、俺達の姫にそんな奴が居てたまるかぁぁぁ~~~!」


 シアニーの驚きの声を皮切りに生徒達の間にざわめきが起こり始める。


「え、あ……い、いえ、ななな何でもありません!何でもありませんからっ!!」


 編入生の噂の対象の1つになってしまったシアニーは、浴びせられる視線から逃れるように顔を俯かせてしまう。ショウマからは見えないが、恐らくいつものように顔を真っ赤にさせている事だろう。

 シアニーが顔を伏せて黙り込んでしまったせいで今度はショウマの方へ好奇と嫉妬の混じり合った視線が集中する。


「え~っと、その……一体なんなんだろうなぁ~。あ…あははははは………」


 ショウマとしては、シアニーが何故あれ程驚いたのか分からないので、何も言えず、誤魔化すかのように笑うしかない。

 こうしてショウマの学園生活は好奇と嫉妬が交錯する波乱含みで始まるのであった。


ようやく入学しました。

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