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第7話 怖い次女と頼れる長男 え、長女? 完璧じゃないの?

――魔法

 この世界における魔法は大きく分けて2種類に分けられる。自然の中に存在する魔力と自身の魔力を混ぜて発動させるものと、自身の魔力の持つ力のみで発動させるもの。自然の中に存在する魔力は火、水、風、土の四大属性と光、闇があるが自身の属性が光およびそれに付随するものに属さないもの場合は、光の魔力を感知できない、闇も然り。


 前者は総体魔法とよばれ、誰が使っても強さや効果の大小をふくめず、同じ効果が得られる。しかし、発動のためには、その魔法の本質を理解し、それを明確にイメージすることと、自然にあふれる魔力の波長を、自身の魔力のそれと同調する技術が必要となるため発動にはたいてい多少の時間がかかる。明確なイメージと本質を言語化した詠唱を用いるのが一般的である。


 後者は自身の持つ魔力の固有属性によって効果が異なり、その属性の種類は、基本型と呼ばれる四大属性および光と闇の六種類と、特殊型と呼ばれる再生、洞察などのようなものの二通りがあり、その種類は数えきれない。こちらは発動にかかる時間はほとんどないが、総体魔法に比べ魔力の消耗が激しいのが難点である。


 人間は魔力を生まれたときは持っておらず、大抵が自身の固有波長と波長が近い親などによって、体に魔力を注ぎ込んでもらうことによって覚醒する。これは別に波長が似ている必要はないが波長がかけ離れている場合、ひどい吐き気や頭痛などの拒絶反応が出て、子供ならば耐えられずに精神が崩壊することもありうる。


 この説明を受けたのが、勉強を開始した日である。そこで、固有波長と固有属性をを調べるからと血を採られたわけである。



――そして現在

「保存?」


 俺はそれがどのようなものなのか理解できなかった。


「はい、この属性についての詳しい説明は、のちほど魔法研究所より資料を取り寄せておきます」


 つまり、クロンさんもわからないってことか。


「ありがとうございます」

「なー、クロン結局、誰の波長がリューヤの波長にいちばん近いんだ?」

「そうですね、これだとエリスお嬢様が一番近いかと」


 エリスっていうとあの時のちびっ子か。


「なんだよ、俺じゃないのか。でも、エリスはまだ実地訓練中だろ?」

「はい、明日戻られる予定ですが」

「なあ、リューヤ苦しくても気にしないなら俺がお前の魔力、覚醒させてや――」

「明日を待ちます」


 子供なら精神崩壊起こすって言ってるのに、そんな苦痛気にしないわけがない


 そして話が終わるとクロンさんは一礼して部屋から出ていき、グレイはなんだかいじけた感じで部屋を出て行った。


「おし、じゃあ明日に備えて寝るかな」


 そう言って、立ち上がりベッドのほうに向かおうとすると、俺は腕をつかまれ、ゆっくりと振り向くと、そこには怖い笑顔のミリィがいた。


「まだ、終わってませんよ」

「じょ、冗談に決まってるじゃないか」


 今寝たら、どんな悪夢が待っているかわからないので俺は素直にまた勉強を始めた。



――3時間後


「まぁ、大体は大丈夫になりましたね。明日からは本格的に勉強を始めるので今日はしっかり休んでおいてください」


 俺は、脱力し椅子の背もたれによりかかる。


しばらくそうしているといつのまにかミリィはいなくなっていたので、俺は風呂に入りベッドの上に転がった。


 明日から魔法がつかえるという期待と、全く知らないことを勉強することへの不安を心の中に抱きながら俺は眠りについた。


「…き……さい」


 誰かの声が聞こえた気がするけど、眠いしいいや。


「…きて…ださい」


 その次の瞬間、耳をつんざくような高音に俺は驚きの声を上げる。


「うわっ」

「おはようございます、リューヤ様」

「ああ、おはよう」


 俺は片耳を押さえながら、起き上がり着替えると告げると、ミリィはすぐに理解して部屋の外に行ってくれた。


 しかし、いったいさっきの音はなんだったんだ。


 そんな疑問を覚えながらも、俺は着替え食堂に向かう。


 俺は食堂に足を踏み入れてすぐに、見慣れない人物がいつも俺の座っている席の隣に座っていることに気が付いた。


 その少女は、ウェーブが掛かった金髪を背中の中ほどまで伸ばし、その碧眼は少し釣り目気味で多少近寄りがたい雰囲気を持っている。しかし、どんな特徴よりも背が小さいことが大きな特徴であろう。


 140cmあるのだろうか? 今は座っているからわからないがおそらくはないだろう。


「やあ、リューヤ君おはよう。」


 俺に気が付いたレインさんがそう声をかけてくる。


「おはようございます。えっと、この子は?」

「つい先日会ったばかりなのに、もう忘れたのか?」


 つい先日? それにこの少し偉そうな喋り方もしかして……


「エ、エリスか?」


「いきなり呼び捨てか随分と礼儀がなっていないのだな、ハシモトリューヤよ」


 ああ、やっぱりそうか。にしてもこいつイラつくな。


「あ、悪いじゃあ、エリスちゃん?」


 そういうとエリスはすごい勢いでこちらを睨んできた。


「もう一度そう呼んでみろ、貴様の口をきけないようにしてやる」

「あ、はい」


 こんな小さい少女の気迫に気圧されるなんて、俺ってつくづくダメなやつだな。


「呼び捨てでいい」


 そう一言だけ言うと、エリスは俺から視線を外し正面を向いた


「リューヤ君、エリスは口は悪いけれど、根はいい子だから仲良くしてやってくれ」

「父上、私はこのようなものに仲良くされる必要などありません」


 それを聞いて俺が苦笑いをしながら席に着くと、扉が開きライラがやってきた。


 俺はいつも通りあいさつをし、その後にやってきたアマリアさんとグレイにもいつも道理に接したのだが。なぜだろう、俺の横でエリスがすごい眼光で睨んでくる。


 食事中に会話をしていても、時々背中に寒気が走るような気がした。


 食事を終え食堂を出て少し歩くと、俺を呼び止める声が聞こえた


「ハシモトリューヤ、話がある」


 結構怒っている雰囲気のエリスを見て、俺はミリィに先に部屋に行っておいてくれと伝える。

十分にミリィが離れたのを確認して俺は口を開く。


「んで、なんだ?」

「今日、貴様の兄上と姉上に対する態度を見ていたが少し馴れ馴れしくしすぎではないか?」

「グレイとライラに対する態度?」


 別にいつもと変わりわないし特に変なことをしたつもりもない


「貴様のような者が、姉上や兄上のような高貴なものに対して敬語を使わ図に話すこと自体が不敬だと言ってい――」


 次第に大きくなるエリスの怒声を誰かの声が遮る。


「エリス」


 エリスの言葉をさえぎったのは、グレイだった。


「兄上、何か用でしょうか?」

「あんな、大声で叫んでたらだれでも気づくっての」


 そう言われるとエリスは顔を伏せる。


「お前はリューヤが俺らのことをバカにしていると思って怒っているんだろ?」

「はい、この者は……」


 続けようとするエリスの言葉を手で制し、グレイがしゃべりだす


「それは違うんだよ、リューヤは初めて話した時は敬語を使っていた。でもそれじゃあ仲良くは、なれないんだ、だから俺がたのんで敬語をやめてもらったし、ライラだってそのほうが気が楽なはずだ」


 そう言って、エリスの頭をなでるグレイは何だかいつもと違ってしっかりしているように見えた。


「じゃあ、エリス俺はリューヤと話があるから先に部屋に戻っててくれ」


 そういうとエリスは少し不満そうではあるが部屋へと向かった


「グレイ、お前本当に兄貴なんだな」

「なんだそれ?」


 グレイはいつものように無邪気に笑う


「まあ、俺もふだんはふざけてるように見えるかもしれないけど、一応あいつらの兄貴だからな」

「見えるんじゃなくてふざけてるんだろ?」

「ちがいねぇ」


 俺らはお互いに笑いあった、そこでグレイが少しだけ真面目な顔になる。


「昔はエリスももっと可愛げがあったんだが、いつのまにかあんなふうに育っちまって。今回のことだって、俺らのためを思ってやってくれたことなんだ、許してやってくれ」

「わかってるよ、家族思いのいい妹じゃねぇか」

「ところでお前、自分の部屋帰れるのか?」

「あっ……」


 この家は広すぎて、未だに自分の部屋がどこにあるのかすら把握できていない。当然一人でなど、部屋に帰れる訳がない。


「連れてってやるよ」


 そういった時のグレイはさっきのような頼もしい兄の顔をして微笑んでいた。

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