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第3話 尋問の時かつ丼出しちゃいけないらしい

「おいリューヤ、起きろ、朝飯だぞ」

「あと少し……」


 俺は聞きなれない声に対して返答をし、徐々に覚醒し始める頭で今の声の主を考える。それがだれの声なのか気づいたところで、俺は完全に覚醒する。


 体を起こして、まわりを見渡すが、やはり昨日の牢屋の中であり、これが夢でないことが確定する。そんな事実に、落ち込む俺に、スキップが話しかけてきた。


「ほら、お前の分の飯だ」

「あぁ、さんきゅ」


 どんな状況であろうとも、人間、腹は空くものでとりあえず朝食を食い始める。量は大したことないので数分で食い終わってしまった。俺は、また机で脱走計画でも考えているのであろうスキップをよそに、どんな質問をされるのだろうか、などと一人考えを巡らす。


 俺がそれを考えるのにも飽きてからある程度たったころ、俺らの牢の前で看守が立ち止まる。


「おい、そっちの黒髪の少年、事情聴取だ」


 俺は、ついにこの時が来たかと意気込み、開けられた鉄格子の扉をくぐる。その時に、スキップが頑張れと声をかけてきたので、軽く返事をし、看守の後をついて行った。


 しばらく歩くと、看守は一つの扉の前で立ち止まった。おそらくはこの部屋で取り調べを行うのであろう。


 扉は鉄製でのぞき窓となるところには、向こう側からだけ開けられる仕組みになっていて、鉄格子がはめられている。


「不法入国の容疑で投獄中の少年を連れて参りました」


 スッと、のぞき窓が開き、確認をすると入るように言ってきた。


 俺は看守につれられてその部屋にはいり、周囲を観察する。石造りの壁の高い位置に窓が一つ、あとは机と椅子、そして入口の反対側に座っているのおそらくは昨日のガキであろう人物を確認した。


 看守は俺を部屋に入れるとそのまま帰っていき、俺を取調べするであろう男性が椅子に座り、俺に机を挟んで反対側の椅子に座るように促した。


「さて、まずは名前を教えてもらってもいいかな」


 取り調べというので、もっと荒々しい感じで来るのかと思っていたが意外と優しい感じで話しかけられたことに安心感を覚える。


「橋本隆也です」


「なるほど確かにこの国では聞きなれない名前だね、じゃあ君のファーストネームはハシモトでファミリーネームはリューヤでいいのかな?」


「あ、逆ですファーストネームが隆也でファミリーネームが橋本です」


 ついつられて、ファミリーネームとか言っちまったよ。


「なるほど、名前の文化も違うとなるとかなり特殊な国の出身かな? ちなみに出身は?」


 日本て、特殊なんだろうか? まぁ、特殊と言われればそんな気もするが。


「日本です」

「うーん、聞いたことがない地域名だね」


 なに? 日本を知らないだと? 日本って有名だと思ってたが違ったんだろうか……


「次に年齢を教えてもらってもいいかな?」

「18です」


 聞いた情報を紙に書き留めていたその男性は、しばらく手元においてあった紙を読んでから話しかけてきた。


「入っている情報だと、演習場には気が付いたらいたって話だけど本当かな?」

「本当です」


 嘘をつく必要はない、すでにそのことは後ろでだまってこちらを見ているガキに話している。


「なるほど、じゃあ昨日後ろの人に話したことは全部本当なんだね?」

「はい」

「まいったな、まさか本当だとは……」


 ん? どうしたんだ?


「何かまずいことでもありましたか?」

「いやー、そのことが本当だってことがわかってしまったから困っているんだ」


 どういうことだ?


「はは、まだわかってないようだね。僕は洞察の属性の持ち主で嘘を見抜けるんだよ」


 洞察? 属性? なんのことだ?


「まぁ、晴れて君の無実が証明されたわけだよ」


 なんかよくわからないが、もっときつく取り調べられると思っていただけに拍子抜けしてしまったと同時に、無実が晴れて安心する。


「じゃあ、後の話は僕じゃなく後ろの彼女に頼むとするよ」


 なるほど、後はあのガキと話せってことだな……彼“女”?


「女だったのかーーー!!」


 完全に男だと思ってただけに、驚きのあまり叫んでしまった、反省している。


「女だったら悪いのか?」


 ガキが不機嫌そうな声を出す。


「あ、いや悪くはないです」


 むしろ勘違いしててごめんなさいって感じだ、でもその胸じゃ…おっとこれ以上失礼なこと考えちゃかわいそうだな。


「まぁ、よい」


 そういってガキ…もとい少女は、男と入れ替わるように、俺の向かいに座った。


「じゃあ僕はこれでお暇させてもらうよ、後の仕事がつかえてるんでね」

「うむ、感謝する」


 男が部屋を出たのちに、目の前の少女が話しかけてきた。


「まずは自己紹介と行こうか、私の名はエリス・ファンデール・フォン・グランツ。グランツ家が次女にして現在は、この第7演習場の指揮官補佐をしている」


 あ、どうもと軽く返事を返すと、なんだかいぶかしそうな目で俺を見つめてきた。俺何か悪いことでも言ったんだろうか?


「とりあえず、これが今回押収していた品だ」


 そういって俺の持ち物を袋に詰めてよこした。


「まず今回の件に関してだが、拉致被害者として本国に送り返すのが本来のやり方である」


 うん、これで俺は帰れるわけだな。


「しかし」


 え、なにかあるの?


「我々は日本という場所を知らぬゆえに送りかえすことができない」

「え、いや、調べれば……」

「すでにお前から聞いたときに調べたが我が国に日本という場所の情報は一切ない」


 え? どうゆうこと? いくらなんでもそりゃないだろ? てか、調べた素振りなかったじゃん?


「せ、世界地図ありますか?」

「待っておれ」


 そういうと、しばらくして丸めた紙を持った男がやってきてエリスにそれを手渡した。


「これが世界地図だ」


 そういって広げられた地図に乗っている地形は俺の知っているものとはかけ離れていた。


「うそ、だろ?」

「嘘でも偽物でもない、これは本物だ」


 ここで俺が昨日寝る前に思い付いた、最もありえないと思い一瞬で笑い飛ばした考えが最もありえるものになってしまった。


――俺はいま異世界にいる


 もしそうなら、どんなありえないことも説明がつく。なによりも異世界に来たなんてことが一番ありえないのだから。


「なにか思うところがあるようだが、話を進めてもいいか?」


 その一言で俺の意識は深い思考の海から引き戻される。

 正直な話まだ納得はできていないが、こんなことが起きたのならば生きるために何かをしなければいけない。


「あ、はい」

「今回は送り返す先がわからないので、特例として貴公を我が国の国民として受け入れようかと思う」

「え、そんなことできるんですか?」


「本来ならばありえないが、担当者が私であり特例と認められるに十分な材料はある。まぁ、そのための準備もあるゆえに少しばかり時間がかかる。それまでここには泊まる場所が、牢獄しかないのでそこで過ごしてもらうことになるがかまわないか?」

「はい、全く気にしません」

「では、取り急ぎ準備をするので再び牢の中で待っていてくれ」


 俺は、昨日いやな奴だと思っていたエリスに感謝しながら部屋を後にした。


 生きるすべが見つかった、それはおそらく異世界に来たという特殊条件下ではかなりいいことであろう。しかし、まだ希望は見えたとしても周りは分からないことだらけである不安がないといえばうそになるが、今はとりあえず喜んでおこうと思う。


 看守につれられてまた牢の中に戻った俺は、スキップにどうなったかなどを聞かれそれに答えた。


「へー、じゃあお前ほんとになんもしてなかったんだな」

「してないって言ったよな、信じてなったのか?」


 そういうとスキップはうなずき笑いながら話し続ける。


「まぁ、よかったじゃねぇか」

「そういえばスキップは何でつかまったんだ?」

「あぁ、不法侵入だよ、一回脱獄っていうのがしてみたくて牢屋に侵入したら、そのまま捕まっちまった」


 そういいながら笑うスキップと呆れる俺。なんだか昨日から呆れさせられてばかりだなと思いながら、その後もスキップのばかな話を聞きその日はすごした。

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