表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/38

第33話 盛り上がるのもほどほどにしておけよ

 ボスを倒してからは早かった、残りの魔物たちは動揺からか動きが鈍り、ノアたちの手によって、次々に狩られ物の数分で収束した。


「これが最後だな」


 そう言いながら、ノアが鎌を振り下ろし、最後の一匹と思われる魔物にとどめを刺す。


「やっとおわったな」


 俺は伸びをしながらそう言うが、実際仕事をしたのはボスを倒しただけで、他はみんなに任せていたのでそれほど疲れていない。


「皆、よくやってくれた。特にリューヤ、まさかシャドーウルフを倒すとはな」

「シャドーウルフ?」


 俺は首をかしげる。


「さっきお前が倒した魔物の名前だ、中級の中でも最速の分類に入るほどの速度を持つ魔物だ、大した攻撃力はないがその速さ故に奴を倒すのは至難の業だ」


 俺は、そんな魔物だったなんてこと当然知るわけがなく、へーとつぶやく。


「とにかく、すげーってことだよ、喜んどけ」

といいながらジンが俺の背中をはたき、俺は前のめりになる。


 俺が、前を見るとクレアがこちらを睨んでいる。


「まあ、合格点ね、次からもがんばりなさい」


 そう言ってクレアは、振り返りすぐに洞窟の出口の方へと歩きだす。


「なあ、あれはもう少し何とかならないのか?」

とジンに尋ねると、ジンは苦笑を浮かべる。


「まあ、無理だな。あいつが口悪いのは、今に始まったことじゃないし」

「あ、やっぱり?」

「うん、やっぱり」


 俺はため息を吐き、出口に向けて歩き出し、先に進んでいたミリィとリタに追いつく。


「あ、二人ともおつかれー」

「お疲れ様です」


 俺とジンもお疲れと返し二人に並んで歩く、ノアは一番後ろで確認しながら歩きクレアは先頭を歩いている。


「そういえば、この後ってどうするんだ?」

「基本的には、魔物の残党を探して、もういないようなら帰るだけだよー」


 なるほど、それにしても残党さがしとは面倒くさいな、一匹でいる魔物など見つけられるのだろうか?


「ま、残党なんてほとんど無視だがな、軽く探していなかったらそれでおしまい」

「そんなのでいいのか?」

「別に魔物の一匹や二匹だったら、俺らでなくても余裕で倒せるからな」


 そう言えば大抵の人は戦えるんだったな、この世界じゃ。

 そんなことを考えながら、歩き、洞窟を出るとすでに太陽は天高く上っており、俺たちを照らしつける、ちょうど今は正午程だろうか?

 その後も適当に雑談をしながら、山を下り、宿に戻って昼飯を食べ終え、部屋へと戻る。さっきまで戦闘をしていただけに、なんだか気が抜けてしまった。

 ベッドに転がり、気合のかけらもない俺に向かってジンが話しかけてくる。


「なあ、リューヤ今から酒場でもいかねぇか?」


 こんな真昼間から酒とは、また何とも元気なこったな。


「俺はいいや」


 そういって、枕をうずめる。


「そうか、みんなで打ち上げやろうって話だったのに。まあ、来たくなったら来いよ」


 俺はそれに対して適当に手を振って対応し、ジンが扉を開けて出ていくのを音で確認したのを最後に、俺は眠りについた。



「あれ、寝ちまったのか」


 俺重い瞼を開け、部屋の中を確認するが薄暗くなっておりよく見えない。とりあえず、俺は部屋の明かりをつけ、時計を確認する。

 

「5時間も経ってるのか、そういえば酒場がなんとかって言ってたな」


 ここにいても、やることもないし、とりあえず行ってみるか。


 俺は、部屋の鍵を持って宿を出て、昨日行った酒場へと向かう。昨日行った酒場は、魔物の襲撃では壊れなかったみたいだから多分そこだろう。


 酒場に近づくにつれて、次第に人々の騒がしい声が聞こえてくる、なんだか面倒なことになりそうだと思いながらも、闇夜の中、光を放つ酒場の中へと足を踏み入れ、俺は後悔する。


 酒場の中はすでに戦場のようになっていた、酔った男どもが暴れまわり、喧嘩をしている者もいればそれを見て、爆笑しながら酒を飲み干すものもいる。


 俺は何も見なかったことにして、店を出て行こうとすると、聞き覚えのある声が俺のことを引き留める。


「リューヤ、やっと来たか、ほら飲めって」


 そういって、ジンがジョッキを渡してくる、俺はジョッキとジンの顔を何度も交互に見る。ジンは顔が赤くなっており、酔っているのは明らかであるが満面の笑みで俺のことを見て、さっさと飲めと無言のプレッシャーをかけてくる。

 もうなんだか面倒くさくなった俺は、ジョッキの中のビールを一気に飲み干し、ジンにジョッキを返す。


「おお、いい飲みっぷりじゃん、じゃあ次って、あれ? 酒がないじゃねぇか、ちょっと待ってろよ」


 そう言って、ジンはカウンターに向かって走り出す。

 俺がそれを呆然として眺めていると、肩を叩かれ、振り向くとそこにはミリィがたっていた。

 まさか、こいつまで酔ってるんじゃないよな?


「リューヤ様、ここにいますと延々とお酒を飲むこととなりますので、ひとまずあちらへ」


 ミリィが指差した先には、個室らしき場所からリタが顔をのぞかせている。俺も寝起きで酒をそんなに飲みたくはなかったので、とりあえずミリィの言うことを聞く。

 個室中にはノアとクレアもおり、一応酒は置いてあるものの、それほど飲んでいるような感じではなかった。


「一体これは何の騒ぎだ?」


 俺の問いに対して、クレアがため息をついて答える。


「あのバカが、打ち上げをしようとかっていうから来てみたら、村の人たちまで巻き込んでの大宴会にしちゃったのよ」


 ああ、あのバカがやりやがったのか。

 そんなことを考えていると、個室の扉が開く。


「リューヤ、酒持ってきたぞー」


 なぜこのバカがここにいるのだろうか?


「なあ、ミリィ、ここにいたら安全なんじゃないのか?」


 俺はジンのことを無視するかのように、一切ジンの方を見ずにミリィに問いかける。


「一言もそのようなことは、申し上げておりません」

「ほらリューヤ、酒」


 まいったな、ここで断るのは簡単だが、断ったところで引くだろうか?


「ジン、酒はいらないからお前が飲んでおけ」

「遠慮するなって」


 ダメだこいつ、話が通じない。


「リューヤ様、お諦めください」


 俺は他の誰かに助けを求めようとするが、ノアとクレアは視線を逸らし、リタは面白がっているようにしか見えない。


 結局その日俺は、酔いつぶれるまで酒を飲まされる羽目になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ