第24話 い、いつか見返してやるからな!
俺は今回はジンと距離をとったまま、ジンの様子をうかがう。
俺が突っ込んでいかないことを悟ったジンは引き金を引くが、その弾丸の軌道は明らかに俺の足元を狙っている。
ジンが何をしたいのかはわからないが俺はその弾丸を避けるために数歩分後ろに下がる。
弾丸が地面に着弾した瞬間に爆発が起こり、俺は何が起こったのかもわからぬままに爆風で吹き飛ばされる。
体勢をたてなおし、再びジンの方を見るとすでに次の弾丸が迫ってきており俺は横に飛び退く。
俺はとにかく避け続けるがこのままではらちがあかない、それにしても最初の爆発はなんだったのだろうか。
俺は隙を見つけジンへと一気に近寄る、目の前には弾丸が一つこの程度なら剣で防げる、そう思い俺がその弾丸を剣で防いだ直後、目の前で爆発が起こった。
剣は俺の手を離れ、はるか後方に飛んでいき俺自身も後ろに飛ばされる。
爆発自体のダメージもあり、立ち上がろうとするが力が入らずに立ち上がれない。
「そこまで」
俺の様子を見てノアが制止の声をかける。
俺はその場に大の字になって倒れこむ、先ほどの爆発はなんだったのか全く分からないが、ジンのやったことであることは間違いない。
俺は傷ついた体を癒すために回復魔法の詠唱を始め最後の一言を唱える。
「我に癒しを」
それと同時に体の痛みが引いていき、急激に魔力が減っていくのがわかる。
このままでは魔力切れになると思いある程度のところで回復を中断し、立ち上がる。
「リューヤ大丈夫か?」
俺のことをボロボロにした張本人が俺の元へとやってきて、手を差し出す。
「それなりにきつかった」
そう言いながら俺はジンの手をつかみ立ち上がる。
「ところで、さっきの爆発はなんだったんだ?」
弾丸に混ぜて魔法でも撃っていたのだろうか?
「あれは俺の魔力を弾丸にして撃ち出したんだよ、この銃はこのグリップのところの魔石から魔力を送って魔力を固形化させて撃つことと、直接魔力を注ぎ込んで弾丸を作り出すことの二つができる訳」
「それでお前の固有属性って?」
俺の問いを聞いて、ジンはニヤリとする。
「爆発だよ、そいつを弾丸にすることによって着弾と同時にドカーンてなるわけ。どうだ、すごいだろ?」
なるほど俺はわざわざ自分から爆弾に向かっていたわけか。
「爆発の規模もろくに操れないから、仲間を巻き込んだり、近くで使うと自分も吹き飛んだりするくせに随分とエラそうね」
クレアが冷ややかな視線とともにジンのことを罵る。
いつの間にやら、みんな俺の所に集まってきたらしい。
「こ、これから上手くなるからいいんだよ」
必死の反論もまるで負け犬の遠吠えのように聞こえる。俺に勝ったのに負け犬とは言いえて妙だ。
「ジンは危なっかしくて見てられないよー」
「まったくだ」
リタやノアにまで口々に責められジンはぐうの音も出なくなってしまった。
「とりあえず、星無し」
俺は突然のクレアの呼びかけに姿勢を正す。
「は、はい」
声が裏返ったが気にしない。
「あんたは役立たず決定、後ろで荷物持ちでもやってなさい」
「はい……」
まあ、役立たずなことは分かってたけど、直接言われると結構響くもんだな。
そのうち役立たずじゃなくなってやると一人誓う。
「じゃあ次はあたしとクレアだねー」
そう言いながらリタはカバンからナイフホルダーを取りだし腰回りや腕などに取り付けていく。
リタとクレア以外の4人は先ほど同様に離れる。
リタの準備の様子を見てクレアが口を開く。
「リタ準備はいい?」
「大丈夫だよー」
本当に今から戦うのかというぐらい陽気な声でリタが答える。
リタの様子を見てクレアがこちらを向く。
「ノア、合図お願い」
「わかった」
俺は本当に始まるのだろうかなどと考えていると、横からジンが話しかけてきた。
「一瞬だから見逃すなよ」
俺がどういうことだと聞こうとしてジンの方を見た瞬間にノアが口を開く。
「始め」
俺はすぐに視線を二人に戻したはずだが、さっきまでかなりの距離が開いていたはずなのに、クレアがリタの懐に潜り込んでいる。
一体、どんな速度で移動したのかわからないがかなりの速度であったことは間違いない。
クレアはリタに対して突きを繰り出すが、リタをそれを後ろに跳んで避けながらナイフを二本投げる。次の瞬間、一瞬でクレアは横に移動するがリタはそれを追うようにナイフを投げていく。しかし、俺が見た限りではリタの投げたナイフには隙間があり、そこを抜けて行けばいいのではと思えてしまう。
とりあえず解説のジンさんにでも聞いておくことにする。
「なあ、なんでクレアはナイフの間を抜けて行かないんだ?」
「間を抜けないんじゃなくて、間がどこだかわかんねぇんだよ」
余計俺は混乱する、そんな俺の様子を見てジンがさらに解説を始める。
「リタの固有属性は隠蔽って言ってな、物の存在を隠すことができんだよ」
なるほど、つまり間にナイフがあるかもしれないから、迂闊に近づけないってことか。
俺はさらに疑問をジンに尋ねる。
「でもそれなら自分の姿隠した方が早くないか?」
「最初から認識されていないものしか隠せないっていう制約があるらしいから、それはできないらしい」
もうここまで来たらとことん聞いておこうと思いさらに尋ねる。
「ちなみにクレアの動きが速すぎるのはなんでだ?」
「あいつは加速の固有属性だから一瞬で自分の出せる最高速の二倍の速度がだせるらしい、強化で速くなってるのに、さらに二倍だからあんなでたらめな速度になるんだよ」
つまり、クレアは最初の一撃で決める気だったのだろうが、それを読んでいたリタに避けられたってことか。
そんな戦況の把握をしているうちに、クレアが動いた。
クレアはリタに向かって大きめの火の弾を放ち、リタがそれを恐らくは闇属性の魔法であろう黒い槍状の魔法で相殺する。
その一瞬の隙を突き、クレアはリタの懐に潜り込み喉元に剣先を突き付けた。
「あちゃ~、まけちった」
リタは、まるで負けたことを気にしてないかのような様子で。
クレアは涼しい顔のまま細剣を収める
今日の訓練は後は各自での練習ということになり俺は素振りをしてその日の授業を終えた。