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第22話 夜更かしだけはやめておけ、いやマジで

 ジンは2丁の拳銃を持った腕を下げ、俺の様子を伺っている、どうやら向こうから攻めてくる気はないらしい。

 今の距離が20mほど、相手の武器が遠距離武器である以上、懐に潜り込めなければただ一方的にやられるだけだ。


 俺は強化を施しジンに向けて駆け出す。


「やっと来たか」


 ジンはその一言とともに二丁の拳銃の銃口を俺に向け、引き金を引く。


 音もなく発射された弾丸は魔力そのものであり、速度は普通に魔法を撃つよりは早いが、俺の知っている銃弾よりは遅いだろう。


 俺は横に跳びそれを避けるが、休む間もなく次の銃弾が迫ってくる。俺はなんとかそれを躱していくが一向に向こうが弾切れを起こす気配はない、おそらくは魔力を撃っているのだから空気中から集めれば制限数などほぼないに等しいのだろう。


「いつまでも避けてるだけじゃ俺にはかてねぇぞ」


 そんなことを言われても、避けるだけで精いっぱいなのだ、相手との距離は約10m強行突破出来なくはないだろうが弾丸を食らうことは必至だ。


 俺は覚悟を決め、ジンへ向かって走り出す。


 俺が今確認できている俺に向かってきている弾丸数は4発、これから増えることも計算に入れるのならば計7発程になるだろう。


 まずは1発目を体をそらし躱す、2発目は姿勢を低くし避ける、3発目の弾丸は剣で防ぐ、4発目を躱しきれずに右脇腹に食らうが強化と制服のおかげで大きなダメージはない、しかし明らかに動きが鈍り躱す余裕はなくなる、俺は剣で顔面に向かってくる弾丸を防ぎ、そのまま姿勢を低くし強行突破を試みる。1発は頭上を通り過ぎ、もう1発は左肩に命中する。


 なんとか剣の間合いに入り、俺はジンの左肩から斜めに切りおろす様に剣をふるうが、それを軽く後ろに下がりジンは躱す、振り下ろした剣をそのまま切り返すが、ジンは右手の銃をホルスターにしまい、代わりにナイフを取りだしこれを防ぐ。


 ナイフと剣が合わさる瞬間に俺の手元から剣が消える、ジンは予想外の事態に一瞬驚いた顔をするが俺の左手から突き出される剣に気付き、半身になって躱し俺の額に銃口を当て、口を開く。


「全く、攻撃ばかりで防御が全然なってないな」


 そう言いながらジンは額に当てていた銃をしまう。


「しょうがないだろ、今まで戦いとは無縁だったんだから」


 本格的に戦いを学んできた人間に、せいぜい戦うといっても喧嘩程度しかない人間が勝てるはずもない。


「なら俺は武器なしで戦ってやるから安心してかかってきな」


 この時は武器なしなら何とかなるかも、などと思っていたが実際は俺の攻撃はかすりもせず、投げられ、蹴られ、殴られ、授業が終わるころには満身創痍といった状況だった。


「大丈夫かリューヤ?」


 散々痛めつけた本人が今頃になって俺を心配するが、どうせ心配するならもう少し早くしてほしかった。


「大丈夫だ……」


 実際はかなりきついが、俺はそういって強がる。


 今日の授業はこれで終わりなので、俺はふらつく足取りで部屋に帰りすぐに汗を流す。

 

 俺がシャワーを浴び終えゆっくりしていると部屋にミリィがやってきた。


 俺は、何かあったのかと尋ねる。


「いえ、今日は随分とやられていましたので治療にと思いまして」


 ああ、見られてたんだななどと少し恥ずかしくなリ、ごまかすようにひきつった笑顔を浮かべる。


 ミリィが俺に手を向けしばらくすると体の傷が治っていく。


「なあ、俺にもその魔法つかえるのか?」

「回復魔法ですか?」


 俺は首肯で意思を示す。


「この魔法は魔力消費が激しいのであまりお勧めはできませんよ?」


 はっきり言って、ほかの人に比べて圧倒的に魔力の量が少ない俺にとって魔力の消費が激しい魔法など使う余裕はないが、いざという時に使えるかもしれないのなら学んでおいて損はないだろう。


「そうか、とりあえずけがはもう大丈夫そうだ、ありがとな」


 覚えたいのなら教えようか、といわれたがいつまでもミリィに頼ってもいられない、自分で調べてみると告げ俺は晩飯も食べずに床に就いた。


――次の日の授業を終えた俺は学校の図書館へと向かう。


 流石これだけでかい学校なだけはあり、図書館もかなりの大きさがある。


 図書館の中では多くの生徒が机に座り勉強をしていたり、本を探していたりする、図書館では静かにするというのはこちらの世界でも共通のようだ。


 俺は妙に静かな図書館独特の雰囲気の中を進み、魔法に関する書物の棚から回復魔法について書いてありそうな本を探していく。


 とりあえずそれらしい本を見つけ、俺は1時間ほど図書館でその本を読むが複雑すぎて、その時間では理解できなかったので借りていくことにする。


 部屋に帰ってからも読み続け、なんとか本質を理解したころにはすでに外は明るくなっていた。


「もう、朝か……」


 そうつぶやくと同時に部屋に響いてくるノックの音、当然ながらノックをしたのはミリィであり、それはもう学校に行く時間だということを表してもいる。


 おれはそのまま、ミリィに連れられ眠くてふらつく足取りのまま学校へと向かう。


「勉強をするのは結構ですが、限度というものを考えてください」


 俺は軽くうなずくだけでそれに答えるが、実際眠すぎて何も考える余裕などなかった。


 その日の授業も終わり、静まり返った教室にミリィの声が響く。


「この間、授業中は寝ないようにと言いましたよね?」


 俺はミリィの前でうつむき小さくなった状態で正座をしている。


「はい……」


「そんなことで今後やっていけるとでも思っているんですか?」


「思ってないです……」


「大体、私はレイン様よりリューヤ様の世話を任されているんです、もしリューヤ様が学業をおろそかになどしていたら、私もそれなりの方法で対応しないといけなくなります」


 それなりの方法というのが気になり俺は視線を上げ尋ねる。


「たとえば?」

「徹底的な監視下に置いたうえで生活をしていただくことになるやもしれませんね」

「いや、それはちょっと……」

「それが嫌ならちゃんとしてください、大体、リューヤ様は……」


 その後も説教は続き解放された時には、正座のしすぎで足の感覚がなくなっていた。


 この日の教訓は、夜更かしだけはやめておこうということであった。

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