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第19話 第一印象を大事にしないと

 俺の睡眠を妨げる声が、今日もまた俺の部屋に響く。


「リューヤ様起きてください」

「今日は朝飯はいらないから、もう少し寝させて……」


 それに対していつも通りの反応をする俺。


「朝食なんてとっている時間はありませんよ」


 さて、こんな反応は今までなかったな。


 一体どういうことかと思い、重い瞼を開き制服姿のミリィの姿を見て俺は飛び起き、時計を見る。



 そう、今日は俺の登校初日であり現在の時刻から遅刻までのリミットは10分という状況であった。


 俺はミリィがいることなど気にせずに着替えを始める、初日から遅刻などしてはいられない。


 今日はまだ夏服なので着替えるのにはそれほど手間取らないが、それでも1分ほどはかかってしまう。


 着替え終わると同時に俺は部屋を飛び出し鍵を閉める。


 すでに俺が起きたのを確認して先に学校に向かったミリィはすでに見当たらず俺は強化を使い、自分の部屋のある4階の廊下の窓から飛び出す。


 着地した時に足が痛かったが気にせずに走り出す。


 後ろで窓から飛び降りるな、などという怒声が聞こえた気がしたが気のせいであろう。


 俺の寮から学校の入り口まで本気で走って約8分、そこから目的の教室を見つけたどり着くまでの残された時間は約1分。


 俺が本気で走る横を制服を着た生徒が何度か追い抜いて行った、おそらくは俺と同様の理由だろう。


 俺が学校に着いたのは予想通り8分後だった、そこから目的の教室のある3階まで階段を駆け上がる。


 3階に着き周りを見渡すとミリィらしき人物が腕時計を見ながら廊下の遠くの方で待っているのが見えた。


 俺が全力で走り、ミリィのもとに着いたときにミリィが口を開く。


「ギリギリ間に合いましたね」


 間に合ったことに安堵しながら俺は必至で肺に空気を取り込もうとする。


 その様子を見てため息を一つ吐く。


「はやく部屋に入らないと意味がないですよ」


 息を切らせている俺を余所に、ミリィは部屋の扉を開き部屋の中へと入っていき、まだ呼吸は落ち着いていないが俺もそれに続く。


 部屋の中にいた人数は5人、そのうちの1人は俺が編入試験を受けたときの試験官だった男である。


 この学校ではクラス単位ではなく5人を基本とした班による行動を基本としているらしいので、残りの4人はおそらく俺の班員であろう。


 赤髪をポニーテールにした女は俺を見て一瞬、顔をしかめるがすぐに表情を戻す。

 短い金髪の男はその金色の双眸を輝かせながらミリィを見ている。

 ウェーブがかかった明るいオレンジ色の髪をした女は茶色の瞳を輝かせ俺の方を見てくる。

 長い紺色の髪をした男はその長い前髪の隙間から見える紺色の眼で俺たち二人を無感動に観察する。


 俺たちの様子を見て灰色の髪をした男が口を開く。


「とりあえずこいつらが編入してきた二人だ、自己紹介とかは面倒くさいから俺がいなくなった後にしてくれ。

とりあえずミリィとリューヤ、俺が一応お前らの担当教官のジャン・ローランだ、とにかく面倒事は起こすなよ」


 そういってジャンはすぐに部屋を出て行ってしまった。


 しばしの沈黙。


 その沈黙を破るかのように金髪男が口を開く。


「とりあえず自己紹介しようか。俺はジン・ヘルムート・ルッセルだ、ジンて呼んでくれ」


 それに続いてオレンジの髪の女が口を開く


「私はリタ・シェルヴァジオよろしくね」


 この二人からは明るく友好的な雰囲気が感じられた。


 次に口を開いたのは紺色の髪の男。


「ノア・リーヴィスだ」


 たった一言自分の名前を述べそして黙り込む。


 次に口を開いたのは赤髪の女。


「クレア・ソロリオ・フォン・イグレシアです」


 後半2名はなんとなく友好的な雰囲気ではない、とりあえず俺とミリィが自己紹介を終えるとジンが口を開く。


「ところでミリィちゃんは彼氏とかいるの?」


 まあ、ミリィのこと見て目を輝かせていたんだから大体の予想はつくがいきなり直球で来るとは。

 確かに、世間一般で言えばミリィは美人の類だからジンがこのような行動に出たのもうなずけなくはない。


 まあ、そんなジンの下心などお見通しなミリィはやんわりと断るが、それでもなかなかジンは折れない。

 そんな二人にやり取りを見ていると、突然リタが目の前に現れ俺は驚く。


「あの、リタさん何かご用でしょうか?」

「うん、ちょっと聞きたいことが、あと呼び捨てでいいよ」

「えっと、聞きたいことって?」


 俺がそう尋ねるとリタは目をキラキラと輝かせる。


「その髪の毛は地毛なの?」


 なるほどね、確かに珍しい髪の色の人がいたら多少気になるのは当然だ、リタの場合はその好奇心が人よりも大きいだけであろう。


「地毛だよ、ついでに目の色も自前だ」


 リタは、俺の言葉を聞きまるで憧れの人に会えたかのようなそんな顔をする


「すごーい、ちょっと触っていい?」


 そういうとリタは俺が了承してもいないのに髪の毛を摘まんで観察し始める。


「この髪の色は不吉なんだろ、なんで嬉しそうに見てんだ?」


 そういうとリタは一瞬ぽかんとしたがすぐに何かに気付いたようだ。


「ああ、確か人間の間じゃ、この髪の色って嫌われてるんだっけか」


 人間の間?


「まるで自分が人間じゃない、みたいな言い方だな」

「うん、私人間じゃないよ」


 はて、この子はいったい何を言っているのだろうか、もしかして電波な人なのだろうか?


 俺がそんなことを考えているとリタは髪を掻き上げ耳をあらわにしながら口を開く。


「私は魔族なの」


 リタの耳は人間のそれとは違い、横に長く綺麗なオレンジの毛でおおわれており一瞬犬をほうふつとさせる。


「犬?」


 思わずそうつぶやいた俺の言葉お聞きリタの耳がぴくっと動いた。


「ひどーい、犬じゃなくて狼、狼人族!」


 一瞬、狼だってイヌ科じゃないかと言いそうになったがここでそんなことを言ったら怒られるだろうから黙っておこうと思う。


「それで、魔族の間じゃこの髪は別に嫌われてないのか?」


 とりあえず話を変えて逃れようとする俺。


「うん、それどころか羨ましがられるくらいだよ」


 まさか、嫌われ者から羨ましがられる対象にまで跳ね上がるとは思っていなかった俺は驚く。


 そのあとも散々髪をいじられ、終いには髪を抜かれたが、なんというかここまでやられるともうどうでもよくなってくる。


 ジンはことごとく断られ続けてすでに心が折れたようだ。


 そこでクレアが口を開いた。


「とりあえず二人のランクは何?」

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