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第10話 エコって大切だよね

 記憶の保存に成功してから1日、いまだに俺は勉強を続けていた。


 記憶が保存できるようになったら、少しははかどるようになるかと思っていたが実際のところ、保存するためには一度記憶として確かな情報にしなければいけないので、たいして変化は見られない。ついでに言ってしまえば、魔力が全く足りないから保存しても無駄である。結果として、俺は勉強から解放されることはなかった。


「なあ、この造形魔法ってなんだ?」

「造形魔法ですか、これは総体魔法の一種なのですが少し特殊でして見せたほうが早いかもしれませんね」


 そういうとミリィは、手のひらの上に火の玉を作って見せたそれをふわふわと動かし始めた。


「おお、すげぇ」

「今回は球体を作りましたがほかにも好きな形にすることができます」


 なるほど、便利なもんだな


 しかし、すぐに疑問が浮かびあがる


「あれ、でもこれがあればほかの魔法いらないんじゃない?」


 俺の問いに対して、ミリィは軽く首を振り否定する。


「残念ながら、この魔法の殺傷能力はほかの総体魔法に比べて弱く、火ならば、ただの火を作りそれを自由に扱えるだけでしかありません」

「ほかの魔法って、ただの火じゃないの?」


「はい、ほかの魔法は火に敵を燃やすなどの概念が含まれているために通常の火より強力になっております。造形魔法にもそのような概念を組み込むことはできますが非常に難しく、そのようなことをする人はあまりいませんね」

「そうか、じゃあ使えなくてもいいんだな」


 そんな俺の単純な考えをミリィはまた首を振って否定する。


「いえ、これは総体魔法を使うに当たって基本となる、波長の同調作業の練習にもなりますので多くの人は、使うことができます」

「じゃあ、俺もそれつかえるようにならないといけないのか……」


 そんな事を少し遠い目をして言うと、ミリィがすかさず言葉を挟んでくる。


「まずは大気中の魔力に気付けるようになってからの話ですけどね」

「頑張ります……」


 俺はその後も総体魔法の勉強を続け簡単な魔法の詠唱なども覚えたが肝心の魔力が感じられないので、どうしようもない。


 俺がその後もページを読み進めていくと魔石に関する説明が書いてあった。


――魔石

 魔力を含み蓄えることができる石であり、物によっては魔力を注ぎ込むことにより発火するものや水を生み出すものもあり、その用途は様々、現在は人工魔石も出回っており生活の基盤となっている。


「この魔石って、みんな使ってるんだよな?」

「はい、日常生活の中でも料理や明かりなどで用いられていますね、この部屋の明かりもすべて魔石によるものです」


 それならばと俺は疑問をミリィに投げかける。


「でも、俺魔力なんて注ぎ込んでないけど勝手に明かり点くぞ?」

「魔石は空気中の魔力を吸収して自動的に魔力を補給しますので多少使う程度なら何の問題もありません」

「便利なもんなんだな、魔石って」


 はっきり言って、明かりが点く仕組みは全く分からないし興味もないが、なんとなくすごいと思った。


「あれ?空気中の魔力はなくならないの?」


 自分で質問していてなんだが、これではまるで『なんで、なんで?』と訪ねる子供のようだ。


「基本的にはなくなりませんね、生き物が体内で生成した魔力は少しづつ大気中に漏れていきますし、死んだときにも自然の中に取り込まれます。そのあと魔力がどのような経緯でほかの属性に変化するかはわかっておりませんが、そのおかげで自然の中から魔力がなくなるということはありませんね」


 俺が自然の神秘に感動していると、ミリィが再び口をひらく


「ちなみに、そのことに関しては前のページに書いてあります」

「えっ!?」


 俺はあわててページをめくると、確かにそのことについて詳しく書いてあった


 俺は、あははとごまかすように笑うも、表情を一切変えないミリィからなんとなく怒気のようなものを感じた。



――2日後

 俺がいつものように勉強をしていると突然部屋の扉が開いた。


「リューヤ、今から街に買い物に行こうぜ!」

「グレイ、ノックしてくれっていつも言ってるだろ」


 俺は無駄だと思いながらも注意してみる。

 

「おお、悪い」


 そういってなぜか部屋を出ていくグレイ、俺は何事かと思って首をかしげる。


 そして、部屋にノックの音が響く


「リューヤ、今から街に買い物に行こうぜ!」

「やり直しても遅ぇーよ!!」


 そういって俺は近くにあった枕をグレイに向かって投げつけるも、グレイは難なくそれを受け止める


「まあ、気にするな」


 そういいながらグレイが枕を投げ返してきたが、俺もそれを難なくキャッチする……顔面で


「それで、街だっけ?」

「そうだよ、お前今まで一度もこの家出たことないだろ?」


 確かに俺はここに来てからというもの一度もここを出たことはない、せいぜい庭の散歩程度である。


 外に出てみたくないかと言われれば外の世界も少し見てみたいが、今までは勉強に追われる日々でとてもそんな余裕がなかった。


「ミリィ、今日の勉強って…」

「いいですよ、数学がなくなった分、予定よりも早く進んでいますし、たまには息抜きも必要かと」

「悪いな、明日は2倍頑張るから」

「グレイ様ではリューヤ様をお願いいたします」


 そういってミリィはグレイに頭を下げる


「何言ってるんだ?お前もついてこいよ、俺とリューヤだけじゃつまんねぇだろ?」


「わたくしもですか……? かしこまりました」


 そういって再び頭を下げるミリィを見てグレイは満足そうな顔をする。


「俺はライラたちも誘ってくるから後でもう一回迎えに来るな」


 そういってグレイは嵐のごとく去って行った


 そのあとグレイがまた部屋にやってきたがエリスは訓練がありこれず、ライラも用事で出かけていたそうだ。


 何はともあれ、俺達の買い物は始まった。俺の住んでいるレインさんの家はこの国の首都にある。


――首都ソリュード

 コーランド王国の首都ソリュードは巨大な港を有し、貿易・漁業の中心として栄えている、魔法学の発展に伴い、今は国内最大規模の魔法研究所が建てられ、魔法学の発展にも大きく貢献している。

人口は約100万人


 最近、読んだ本に確かそんな説明が書かれていた。


 この世界においては魔物の被害を防ぐためにこの規模の街には防壁が作られていおり、生活する範囲が限られているので、100万人と聞くと少ないようにも感じるがむしろ多いほうなのだろう。現に街を歩いていると多くの人で賑わっている。


「結構賑わってるんだな」

「当然だろ、首都だぜここ」


 首都と聞くと東京の事を思い浮かべるが、今は帰れぬ故郷に思いを馳せてもしょうがない。


「ところでどこ行くんだ?」

「まず、飯でも食おうぜ」


 俺もその案に賛成しグレイについていくがなんだか視線が気になる。

 グレイには好奇とも取れる視線が向けられているようだが、俺に向けられる視線はひとを邪険に扱うようなそんな雰囲気が感じ取れる。


 俺の自意識過剰かもしれないし気にせず歩くか。


 そのまま、気にしないようにしながら歩いていくとグレイが一つの店の前で立ち止まった。


「ここにしようと思うけどいいか?」

「俺は何もわかんないから任せるよ」

「私も大丈夫です」


 俺もミロォも否定しない事を確認した上でグレイはしゃべりだす。


「そうか、じゃあはいるぞ」


 グレイが扉を開けて店に入ると鈴の音が鳴りそれに気づいた店員がこちらにやってくる


「おう、グレイまた来たのか」

「ここ以外じゃ、落ち着いて飯食えないからな」


 どうやらグレイはここの常連のようで、店員にいつもの席で、と言うと店員は俺たちを個室の席へ案内してくれた。


 その後メニューを解読するのがめんどくさい俺はグレイに注文を任せ、ミリィはスープを頼みグレイは俺のと合わせてサンドイッチを2つ頼んだ。


 すぐに食事は運ばれてきて、食事をしながら俺たちは会話をする。


「ほかの店だと食事中にほかの客がこっちじろじろ見るもんだから落ち着けないんだけど、この店は個室用意してくれるから周り気にしないで食えるんだよ、リューヤも街中じゃ目立っちまうしな」

「あ、やっぱり俺見られてたんだ」


 ただの自意識過剰じゃなくてよかったと安心する。


「なんだ自覚なかったのか?」

「いやそんな気はしてたんだけど、気のせいかと思ってたよ」

「お前の髪と目の色は、あんまり好まれていないからな」


 そういったグレイはなんとなく悲しそうだった


「そうなのか?俺の住んでたところじゃ普通だけど」


 そう言って俺は黒い前髪をいじる。


「それが普通ってホントにお前は変わった奴だな」


 そう言いながら笑うグレイだがなんだかいつもと雰囲気が違って見えた


「でもなんで、この髪がいけないんだ?」


 俺がそう訪ねると一瞬の間を置いてグレイが答える。


「それは、子供のころに誰もが聞かされるおとぎ話が原因なんだよ」

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