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第9話 便利なものでも使えなかったら意味ないよね

――保存

 ありとあらゆる物質・情報を魔法を発動した瞬間の状態で別空間に保存しておくことができる。

保存中は保存している物質なら大きさと重さ、情報ならその情報量に比例して体内の魔力を消費していく。

 物質を放出するときは、流体及び極小の物質以外の物質が無い場所で物理的に視認可能もしくは自身に接している場所にしか物質を出すことができない。

 保存は自身の1m以内に一部分が含まれるものにしか発動することができず、放出も同様に1m以内にその物質のうちの一部が含まれることが条件となる。

 情報の保存とは自身の発動しようとしている魔法の保存や記憶の保存があり、記憶は保存したからといって一時的に忘れるということはなく、自身の記憶としてとどまる。

 保存中に体内の魔力がなくなった場合、情報なら消滅するが記憶の場合は覚えている間なら再び保存できる、物質は強制的に近くの出現可能な空間に放出される。

 保存可能な限界量は自身の魔力量によって決まる。


「なあ、これがあれば勉強すごい楽になるんじゃないか?」

「無理ですね、リューヤ様では記憶を保存するのは今の状態では不可能かとおもいます」


 俺の提案はミリィによって切り捨てられた


「なんでだよ!?」


 俺は不満を隠せずにそう尋ねる。


「たとえば、今リューヤ様がお持ちのペンですがそれを保存することは可能でしょう。そこにあるものをしまうことをイメージすればでしょうから」


 俺はその言葉を信じてペンをしまうということをイメージする。


 するとペンは突如として手元から無くなった。


「おお、できた」


 俺が喜んでいるとまたミリィが口を開く。


「では今度はそれをどこかから出すことをイメージしてみてください」


 また言われて通りにすると突然、目の前にペンが表れて机の上に落ちた。

 

「なんだよ、簡単じゃないか」

「実際に行って分かったと思いますが、固有属性に帰属する魔法はイメージするだけで使えます」


 俺はミリィの話を聞きながら、ペンを出したり消したりして遊んでいる。


「では、記憶を保存することのイメージができますか?」

「へ?」


 俺はその質問を受けてペンを落としてしまう。


 記憶を保存する?セーブ?でもそれだとイメージできないし……


「えーっと、ちょっと難しいかな?」


 俺が苦笑いしながらそういう。


「それができなければ記憶の保存は不可能です、さらに言ってしまえば今のリューヤ様では魔力不足が懸念されます」

「魔力不足?」


 俺の言葉に、ミリィがうなずき口を開く。


「はい、魔力とは使えば使うほどその最大量は多くなり、回復速度も速くなります」


 俺はその説明を聞きながらうなずく


「しかし、今まで隆也様は魔力を使ったことがありません、故に今のままでは記憶を保存できたとしても魔力切れを起こしてすぐに忘れてしまいます」


 ああ、なるほど俺が想像力乏しいうえに魔力が少ないから無理ってことか……


「無理じゃん!!」


 俺の驚きなど気にしないかのように、ミリィは淡々としゃべりだす。


「はい、だから無理だと申し上げました。魔力のほうは何かを保存したまま生活すれば自然と鍛えられますが、記憶の保存のほうは思考錯誤するしかありませんね」

「よしじゃあ、考えるから手伝ってくれ」


 俺がそういうとミリィが呆れたようにため息をつき口を開く。


「その時間があるなら勉強してください、とりあえず今はそこにある本を保存して魔力を増やすほうだけでもやっておいてください」

「は、はい」


 ちょっと怒ったような口調になったミリィにすこしおびえながら、俺は本を保存して勉強を再開した。



――3時間後

 突然、俺の頭上から本が降ってきて、俺の頭に落ちる。


「痛って」

「どうやら魔力切れみたいですね」


 その言葉を聞いて俺は納得したように口を開く。


「さっきから無性にだるいのはそのせいか」


 俺は頭をさすりながら、魔力切れのだるさに耐えつつ、勉強を再開する


「もう少ししたらもう一度その本を保存しておいてください」


 俺はその言葉に対して驚いたように口を開く。


「またやるの!?」

「今のリューヤ様の魔力は10歳の子供にも劣りますから、できるだけ鍛えておいたほうがいいかと」


 俺って10歳以下なんだと少し落ち込みながらも、俺は勉強を続けた。


 それからの数日間の生活はとにかく保存しながら勉強をし、本を保存したまま食堂に行き、魔力切れで本がエリスの頭の上に落ちて、思いきり脛を蹴られたり、寝ているときに魔力切れを起こして顔面に本が降ってきたりと、ろくなことのない日々だった。


――7日後

「おし、とりあえずこれで世界史も終わったな」


 そういいながら俺は伸びをする。


「では休憩にしましょう、紅茶を持ってまいります」


 そう言って一礼をしたミリィが部屋を後にしようとする。


「ああ、たのむ」


 俺はこの7日間眠る前に必ず記憶の保存の方法を考えてきた。そこで考えついたのが、覚えたことを頭の中のメモ帳に書いていくというイメージなのだが、いまだに成功した試しがない。

いつも途中で、書くイメージに集中しすぎて書いた内容が変なものになってしまう。


 なにか、いいアイディアはないものか……


「リューヤ様、どうぞ」


 俺は突然現れたミリィに驚く。


「おお、ミリィ戻って来てたのか」

「ノックをしたら返事がありましたので部屋の中に入ったのですが?」

「ああ、無意識のうちに返事しちゃってたんだな」


 保存も無意識のうちにできるようになればいんだけどな……


「この後はなんの教科やるんだ?」


 俺は紅茶を飲みながら、尋ねる


「次は魔法学の勉強をしようかと」

「確か、誰でも同じのが使えるのって、総体魔法だっけか?」


 俺は以前聞いたこと思い出して尋ねる


「はい、そうですね」

「でもさ、なんでみんな同じのをつかうの?みんな自分が使いたいように魔法使えばいいんじゃない?」

「以前も話した通り総体魔法の発動に必要なのは、その本質の理解とイメージ、さらに波長の同調です。ここで問題となるのが本質の理解です、これは一般的にはとてもすべてを理解ができるようなものではありません」


「え、じゃあ誰も使えないじゃん!?」


 俺はつい、身を乗り出す


「はい、ですからそれを補助するために、特に複雑な部分を言語化した詠唱、もしくは形としてあらわした魔方陣を用いるのが一般的です。もし理解できたとしても、魔法を組み立てる際には、かなり微妙な調和のもとに本質は成り立っていますので、ただ付け足すだけというわけにはいきません。よって、既存の魔法を使う以外、普通の人が魔法を使う方法がないのです」

「なるほどね、つまりはわからないことを具体化したってことか」

「そういうことです」


 わからない事を具体化か……もしかして


 俺は、突然ペンを持ち文章を日本語で書いていく。


「どうしたんですか?突然、わけのわからない記号を書きだして?」

「これは俺の住んでたところの言語だよ」


 今まで俺は書くイメージもそれを頭にとどめるイメージもできていた。でもそれができなかったのは記憶するものがはっきりしていなかったからだ、つまり実際に書き、それと並行してイメージする。そして書き終わった時には、目の前に保存すべき記憶があり、頭の中には書いたというイメージあとはそれを合わせてとどめるだけ。


「できた…」


 俺がそうつぶやくと不思議そうにミリィが訊いてくる。


「何ができたんですか?」

「記憶の保存だよ」


 ミリィは少し驚いた顔をしたがすぐにいつもの表情に戻り、口を開く


「おめでとうございます」


 俺は喜びを隠せず笑顔でそれに答えた


「ありがとう」


 その時俺が感じた達成感は、今までの人生の中でも特に大きなものであった。

 今までの何もしていなかった日々では味わえなかった達成感、俺はその時少しこっちの世界にこれてよかったと思えた。

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