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名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!  作者: チンポジ博士


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第23話 ガチャです

名作をパク――参考にすれば、名作になるに決まってるじゃない!


第23話 ガチャです


「王都冒険者組合、特別福引を開催します!」


組合前の広場で、受付嬢がそう宣言した。


俺は黙った。


リナも黙った。


勇者アレンは少しだけ目を輝かせた。


ミリアは腕を組んだ。


セイルは穏やかに微笑んだ。


ガルドは景品置き場の重そうな木箱を見ていた。


いつも通りだった。


広場には、冒険者たちが集まっていた。


中央には大きな福引箱。


横には景品一覧。


そして、やたら派手な垂れ幕。


一等・伝説級装備!


リナが小声で言った。


「見たことあります」


「言うな」


「ガチャです」


「言うな」


「レア装備が出るやつです」


「言うな」


「でもユートさんの場合、運搬性を見そうですね」


「そこだ」


受付嬢はにこにこと説明した。


「最近、組合に寄贈品や未使用装備が増えまして。倉庫整理を兼ねて、貢献冒険者向けに福引を行うことになりました」


「倉庫整理」


俺は言った。


「はい」


「つまり、在庫処分ですね」


受付嬢の笑顔が少し固まった。


「夢のある言い方をすれば、特別福引です」


「現実的な言い方をすれば、倉庫圧縮」


「その通りです」


正直でよい。


アレンは景品一覧を見ていた。


「一等は、伝説級装備か」


ミリアがのぞく。


「二等、上級魔道具。三等、希少素材。四等、冒険用品詰め合わせ。五等、保存食。参加賞、靴紐」


ガルドが言った。


「参加賞が実用的だ」


セイルもうなずく。


「靴紐は大事です」


リナが聞いた。


「ユートさんは何が欲しいですか?」


「参加賞でもいい」


受付嬢が困った顔をした。


「夢がありませんね」


「靴紐は消耗品だ」


「それはそうですが」


福引は、依頼達成数や組合貢献に応じて引けるらしい。


俺たちはこれまで、妙に組合や王都の制度改善に関わってきた。


そのため、引ける回数が多かった。


受付嬢が券を数える。


「勇者パーティ一行として、十回引けます」


「十回」


アレンが真剣になった。


「一等を狙うぞ」


「当たっても持てるか確認する」


「まず当ててから考えればよい」


「それが事故の始まりだ」


最初はリナ。


福引箱を回す。


ころん。


白玉。


受付嬢が言う。


「参加賞、靴紐です」


リナは嬉しそうに受け取った。


「使えますね」


「かなり使える」


次はガルド。


ころん。


白玉。


「参加賞、靴紐です」


ガルドはうなずいた。


「悪くない」


次はセイル。


ころん。


青玉。


「五等、保存食です」


小さな袋が渡される。


中身は硬パンと干し肉。


俺は確認した。


「賞味期限は?」


受付嬢が即答する。


「三ヶ月です」


「よし」


次はミリア。


ころん。


赤玉。


受付嬢が少し声を上げた。


「三等、希少素材です!」


木箱が運ばれてきた。


中には、青く光る結晶が入っていた。


ミリアの目が輝く。


「氷属性の結晶ね。珍しいわ」


俺は鑑定札をかざした。


氷結晶

用途:冷却魔法補助

希少度:中高

保管条件:高温不可

直射日光不可

衝撃注意

湿度管理推奨

長時間素手で持たないこと


「保管が面倒だな」


ミリアは少し肩を落とした。


「でも使えるわ」


「使う予定は?」


「……たぶんある」


「たぶんで荷物にするな」


「分かったわよ。組合の保管庫に預ける」


成長している。


次はアレン。


ころん。


金玉。


広場が沸いた。


「一等です!」


受付嬢が叫んだ。


冒険者たちが歓声を上げる。


アレンは胸を張った。


「当然だな。勇者だからな」


「強運は俺の神のはずだが」


俺は言った。


アレンは聞こえないふりをした。


受付嬢が、組合職員に合図する。


奥から、巨大な長箱が運ばれてきた。


四人がかり。


かなり重そう。


木箱の側面には、こう書かれている。


伝説級装備

雷鳴大槍グランヴォルト


アレンの顔が輝いた。


「伝説級装備!」


俺は箱を見た。


「大槍」


ガルドが言った。


「勇者は剣だろう」


ミリアも言った。


「槍、使えるの?」


アレンは少し黙った。


「……勇者なら使える」


「その発想は危ない」


俺は鑑定札をかざした。


雷鳴大槍グランヴォルト

等級:伝説級

攻撃力:高

雷属性付与

使用条件:筋力A以上、槍術B以上

重量:非常に重い

全長:三・八メートル

屋内使用非推奨

雨天時使用注意

保管:絶縁布必須

運搬人数:二名以上

注意:雷を呼ぶことがある


沈黙。


アレンは箱を見た。


俺はアレンを見た。


ガルドは槍の長さを想像している。


ミリアは笑いをこらえている。


リナは素直に言った。


「長いですね」


聖剣が背中で光った。


『我より長い』


「誇るところではない」


受付嬢が少し気まずそうに言った。


「伝説級装備です」


「使える人は?」


「現在、組合には登録がありません」


「だから倉庫にあったんですね」


「はい」


在庫処分だった。


夢のある在庫処分だ。


アレンは槍を見つめた。


「伝説級……」


「使えない」


「だが伝説級」


「使えない伝説級は重い荷物だ」


「しかし」


「屋内使用非推奨。雨天注意。絶縁布必須。運搬二名以上。雷を呼ぶことがある」


リナが小声で言った。


「雨の日に持ちたくないですね」


「絶対に持ちたくない」


セイルが言った。


「使える方が現れるまで、組合保管がよいのでは」


ガルドがうなずいた。


「槍術B以上が必要なら、今の俺たちには荷だ」


アレンは苦しそうに言った。


「では、預ける」


「よし」


「だが、所有権は俺に」


「所有するなら保管料は?」


受付嬢が書類を見た。


「伝説級大型装備保管料がかかります」


アレンが固まった。


「いくらだ」


金額を聞いて、アレンは静かに箱を押し返した。


「辞退する」


受付嬢が驚いた。


「よろしいのですか?」


アレンは目を閉じた。


「持てぬものは置いていけ」


俺は少し感動した。


「成長したな」


「かなりつらい」


「だろうな」


一等は再抽選になった。


広場の冒険者たちは、少しざわついた。


「伝説級なのに辞退?」


「でも保管料高そうだしな」


「槍術ないと使えないのか」


「雷呼ぶのは怖いな」


「倉庫に戻るのか」


戻る。


たぶんまた眠る。


伝説級装備も、使える人がいなければ倉庫の重荷である。


次に俺が引いた。


ころん。


緑玉。


受付嬢が言う。


「四等、冒険用品詰め合わせです」


「実用的だ」


「こちらです」


渡されたのは、中くらいの木箱だった。


中には、火打ち石、油布、小型ランタン、補修用針、糸、靴紐、折り畳み式の小さな台車が入っていた。


俺は台車を見た。


「これは」


受付嬢が言う。


「折り畳み軽量台車です。旧式なので四等に」


俺は台車を広げた。


小さい。


軽い。


車輪はしっかりしている。


荷台は布張りだが、補強もある。


石畳でも、屋内でも、平地なら使える。


折り畳めば背負い袋に外付けできる。


俺は鑑定札をかざした。


折り畳み軽量台車

等級:一般

用途:小荷物運搬

耐荷重:八十キロ

重量:軽

折り畳み可

修理容易

悪路非推奨

保管:乾燥

注意:下り坂では手を離すな


俺は静かに言った。


「当たりだ」


アレンが振り返る。


「四等だぞ」


「当たりだ」


ミリアが台車を見て言う。


「確かに便利そうね」


セイルも頷く。


「小分け搬送に使えます」


ガルドが車輪を確認する。


「作りも悪くない」


リナが笑った。


「ユートさん、すごく嬉しそうです」


「かなり嬉しい」


受付嬢は少し困惑している。


「一等より四等のほうが?」


「俺たちには」


アレンは伝説槍の箱と台車を見比べた。


「伝説級装備より、台車か」


「使える道具のほうが強い時がある」


「……悔しいが、分かる」


アレンは本当に分かってきた。


さらに福引を引く。


結果。


白玉、靴紐。


青玉、保存食。


白玉、靴紐。


黄玉、簡易防水袋。


赤玉、希少素材。


二つ目の希少素材は、古代樹脂だった。


鑑定結果。


古代樹脂

用途:接着、封印補修

希少度:中

高温不可

開封後硬化

手につくと取れにくい

保管:密封、冷暗所


ミリアが言った。


「また保管が面倒」


「使う予定は?」


「封印補修に使えるなら、封印局に売るのがよさそう」


「良い判断だ」


福引は終わった。


俺たちは景品を整理した。


靴紐。


保存食。


防水袋。


折り畳み軽量台車。


氷結晶は組合保管。


古代樹脂は封印局へ売却予定。


伝説大槍は辞退。


アレンはまだ少し未練がある。


「一度くらい持ってみても」


「持つだけで二名以上」


「ガルドとなら」


「雨が降りそうだ」


空を見ると、確かに雲が出ている。


アレンは黙った。


強運が効いているのかもしれない。


いや、ただの天気だろう。


広場の隅で、若い冒険者が一等の再抽選に当たっていた。


彼は喜んで伝説大槍を受け取ろうとした。


俺は止めた。


「槍術は?」


「ありません!」


「筋力は?」


「Cです!」


「保管場所は?」


「宿です!」


「宿に三・八メートルの大槍を?」


若者は固まった。


受付嬢も説明する。


「保管料もかかります」


若者は槍の箱を見た。


長い。


重い。


雷を呼ぶ。


彼は静かに言った。


「辞退します」


伝説大槍は、また戻った。


受付嬢が困り果てていた。


「これ、ずっと倉庫に残るのでは」


「槍術B以上、筋力A以上、保管場所あり、雷対策ありの人が来るまで保管ですね」


「いつ来るでしょう」


「分かりません」


ガルドが言った。


「むしろ王立武具庫へ移したほうがいい」


「組合の倉庫に置くものではないな」


俺も同意した。


受付嬢はメモした。


「伝説級大型装備の保管先見直し、と」


また制度が動く。


福引なのに。


その後、俺たちは折り畳み台車の試運転をした。


市場までの道。


石畳。


小さな段差。


坂。


人混み。


台車はよく動いた。


ただし、下り坂では本当に手を離してはいけなかった。


少し転がりそうになり、ガルドが止めた。


「注意書き通りだ」


「注意書きは読め」


俺は言った。


台車に保存食と水を載せる。


かなり楽だ。


背中の負担が減る。


腰も楽だ。


ステータス札をかざす。


腰:注意軽減

装備重量:適正

台車使用:有効

注意:悪路では畳むこと


素晴らしい。


「これは当たりだ」


俺はもう一度言った。


リナが笑う。


「今日、何回目か分かりません」


「当たりだからな」


ミリアが言う。


「折り畳み台車でここまで喜ぶ主人公、なかなかいないわね」


「主人公ではなく荷物持ちだ」


アレンが言った。


「だが、俺も少し欲しくなってきた」


「マントを載せるなよ」


「載せない」


「本当か?」


「式典用を買ったら」


「買うな」


アレンは黙った。


セイルが台車を見て言った。


「負担を減らす道具は、旅を長く続けさせてくれますね」


「そうです」


ガルドが言う。


「武器より使う時間が長い」


「その通り」


背中の聖剣が光った。


『我より台車が当たりなのか』


「状況による」


『今日は?』


「台車」


聖剣は黙った。


少しして、ぼそりと光る。


『我も載せられるか』


俺は台車を見た。


聖剣を見る。


長い。


台車より長い。


「はみ出る」


『ぐぬ』


市場で、防水袋と追加の固定紐を買った。


台車用だ。


景品をもらっただけで終わらない。


道具は運用して初めて役に立つ。


固定紐。


雨除け布。


車輪用の油。


予備の軸ピン。


折り畳み部の点検。


使うなら、手入れも必要だ。


リナが言った。


「台車にも保管条件があるんですね」


「どんな道具にもある」


「伝説級じゃなくても?」


「一般級の道具ほど、雑に扱われて壊れる」


ミリアが頷く。


「魔道具じゃないからって油断するやつね」


その日の夕方、受付嬢から連絡が来た。


「伝説大槍グランヴォルトですが、王立武具庫への移管が決まりました」


「早いですね」


「倉庫担当が泣いていたので」


「でしょうね」


「それと、福引景品一覧の表示順を変更します」


「表示順?」


「等級順だけでなく、使用条件、保管条件、運搬条件も併記します」


「良いですね」


「一等でも、使えない人には辞退を推奨するようにします」


「かなり良い」


福引は、ただ当てればいいものではなかった。


当たったものを使えるか。


持てるか。


置けるか。


維持できるか。


それを考えないと、当たりは当たりにならない。


夜、宿に戻り、俺は台車を部屋の隅に置いた。


折り畳む。


思ったより小さい。


よい。


かなりよい。


ステータス札で再確認。


折り畳み軽量台車

状態:良好

保管:乾燥

明日の使用推奨:あり


道具に推奨されるのは初めてだ。


リナが嬉しそうに言った。


「明日から楽になりますね」


「平地ならな」


「悪路では?」


「畳む」


「注意書き通りですね」


「注意書きは大事だ」


アレンが少し離れた場所で言った。


「一等を辞退したのに、少しすっきりしている」


「持てないものを置いたからだ」


「だが、伝説級だった」


「伝説でも持てなければ荷だ」


「分かってきた。分かってきたが、悔しい」


「それでいい」


ミリアが氷結晶の預かり証を見ながら言った。


「私も保管庫に預けて正解だったわ。持ち歩いてたら気を使って疲れそう」


セイルが保存食を整理する。


「五等もありがたいですね」


ガルドが靴紐を見ている。


「参加賞も悪くない」


俺は木札に触れた。


「神よ。今回はどうでしたか」


『よい当たりだった』


「台車ですか」


『台車だ』


「伝説大槍は?」


『持てぬ伝説は置いていけ』


「はい」


『使える一般道具は持て』


「かなり分かりやすいです」


『等級は荷を軽くしない』


「はい」


『当たりとは、今の旅に合うものだ』


「名言ですね」


『採用済みだ』


「早い」


神も台車を気に入ったらしい。


その夜、俺は荷物台帳に新しい項目を追加した。


折り畳み軽量台車

入手:組合福引四等

状態:良好

用途:平地小荷物搬送

注意:悪路、下り坂、雨天時の滑り

評価:大当たり


四等だが、大当たり。


それでいい。


こうして俺たちは知った。


当たりとは、等級で決まるものではなかった。


伝説級でも、使えなければ重荷になる。


長すぎる槍。


高すぎる保管料。


雨の日に雷を呼ぶ装備。


それは、誰かにとっては伝説でも、今の俺たちにはただの危険物だった。


一方で、四等の折り畳み台車は、明日の腰を守ってくれる。


保存食は腹を満たす。


靴紐は足を守る。


防水袋は中身を濡らさない。


旅に必要なものこそ、本当の当たりだった。


伝説大槍は辞退された。


折り畳み台車は採用された。


アレンは少し泣いた。


聖剣は台車に載らなかった。


福引景品一覧には保管条件が追加された。


物語は、きれいに一区切りを迎えた。


そう。


ここで終わっても、何の問題もない。


俺たちの抽選結果は、これからだ。


「参加賞も忘れるなよ」


第二部・完

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