テンシの俺、過去を思う
何もする気がしない。
朝起きて、仕事に行って、帰って動画を見て、寝る。
勤め先はブラック企業では無く、かと言ってホワイト企業とも言えない、普通の会社。
ドラマやアニメの様なイベントも起きない、何も無い日々。
彼女も出来たことは無いし、学生時代の友人とは長い事連絡を取っていない。
俺はそんな何も無い日々を、何もせず過ごしている。
「だけどなぁ」
時計は22時を少し過ぎた所。
もう視聴するのが何度目になったか分からない動画を流しながら、俺は1人呟いた。
「別にやりたい事も無いしなぁ」
今の時代、何もかもが溢れている。
いや、溢れ過ぎている。
自分で何かしなくても結果を知る事が出来るのに、改めて自分でもやってみようとは思えないのだ。
…歳のせいかもしれないけれど。
そんな事を考えながら、流していた動画に目を向ける。
いつの間にか動画が切り替わっていて、今は昔のRPGゲームの実況プレイ動画が流れていた。
「こんなファンタジー世界で生きていたら…いや、俺じゃあやる気無さ過ぎて無理だな」
この世界でもぐだぐだな俺が、厳しい世界で生きていける筈が無い。
自分のダメさに溜め息を吐き、軽く目を閉じ…目を開けると、洞窟の中だった。
「…はぁ?」
理解が追いつかない、瞬きの間に全く知らない場所にいるだなんて、理解出来るはずも無い。
頭はマトモに動いていないが、それでも可能性を考える。
最初に思い付いたのは、夢を見ている事。
だが、肌に感じる湿気と風があまりに現実的過ぎていて、この感覚が夢とは思えなかった。
次に思い付いたのは、どうにもオタクな考えで嫌になるが、異世界へ来たのでは無いかという事。
俺には持病も無いし、そこまで不健康な生活をしていた訳でも無いので急死というのも考え難い。
つまり転生では無く転移した、と言う事だろうか。
「どうせなら、カッコいい見た目に転生したかったな」
そんな軽口を呟きながらふと自分の手を見ると、そこには白くボンヤリと透き通った手があった。
恐る恐る足元を見ると…。
「俺の足が…無い?」
正確には、ゆらゆら揺れる何かが腰から下に伸びている。
それは、どう見ても…。
「幽霊みたいじゃないか」
よくある創作上の幽霊の下半身が俺に付いていた。
つまりは、俺は異世界転移したのでは無く、異世界転生した訳でも無い。
「異世界転死したって事かよ」
こうして、俺の異世界転死生活が始まったのである。
初めて投稿します。
無理しないように執筆を続けたいと思います。




