エイメノカサスを支配するのは 後編
――ギィィィン!!
黒い剣と黄金の炎の剣がぶつかる。
衝撃が広場を震わせた。
「うはははっ!!」
アウルが笑う。
「どうしたミロク・プリンス!」
剣がさらに振るわれる。
――ガキン!
――ギィン!
――ドン!
剣と剣が何度もぶつかり合う。その衝撃波でエイメノカサスは所々木っ端微塵になっている。
俺は魔力を体内に巡らせ、身体能力を強化する。
筋力。反応。速度。
すべてを底上げする。
魔力量で言えば――俺の方が圧倒的だ。
アウルの剣が炎を纏う。
「ふんっ!それだけじゃ勝てねぇんだよ!」
――ゴォッ!!
黄金の炎が剣から弾けた。
俺は反射的に魔法陣を展開しようとする。
――だが。
「ちっ」
展開した瞬間。
魔法陣は燃やされる。
跡形もなく焼き消える。
「言っただろ?」
アウルが笑う。
「この炎は魔法を焼くってな…」
黄金の剣が振り下ろされる。
――ガキン!!
俺は黒い剣で受け止める。
「くっ…!」
衝撃が腕に走る。
「魔法が使えねぇお前なんて」
アウルは笑う。
「ただ魔力が多いだけの剣士だ!」
俺は後ろへ飛び退いた。
距離を取る。
そして。
手を振る。
黒い魔力が形を作る。
――ギィン。
剣。
さらに。
――ギィン。
――ギィン。
――ギィン。
無数の魔力剣が宙に浮かぶ。
「ほう?」
アウルが眉を上げる。
「飛ばす気か?」
俺は指を振る。
瞬間。
――シュン!!
黒い剣が弾丸のようにアウルへと飛ぶ。
「甘い!」
黄金の炎が広がる。
――ゴォォッ!!
剣は触れた瞬間、焼き消えた。
「無駄だ!」
アウルが笑う。
「全部焼いてやるよ!魔力を消費し続けるだけだぞ!」
剣を振る。
速度が上がる。
さらに上がる。
「くっ…!」
俺は魔力をさらに体へ流す。
身体能力を引き上げ、アウルを超える。
「遅ぇよ!」
アウルの剣がさらに加速した。
黄金の軌跡が空を切る。
――ガキィン!!
衝撃。
俺の体が数メートル吹き飛ばされた。
「ぐっ…!」
地面に着地する。
その瞬間だった。
――シュルッ。
何かが体に巻き付く。
「なにっ?」
足元を見る。
黒い鎖のような魔法具。
「捕まえた」
背後の白マントが笑う。
その瞬間。体内の魔力が乱れた。
「これは…」
魔力が毒のように体を侵食する。
魔法具。
しかも、魔力そのものを毒に変える拘束具。
「ぐっ…!」
体が重い。
膝が地面につく。
アウルが近づいてくる。
ケタケタと笑いながら。
「終わりだな」
――ドンッ。
俺の腹を蹴る。
体が転がる。
「世界を支配するんだっけ?」
アウルが剣を振り上げる。
黄金の炎が燃える。
「夢見すぎだろ」
アウルの剣が俺に振り下ろされる。
その瞬間。
――ピシッ。
俺の魔法通信石が光った。
『ミロク様!!』
サラムの声が電話で響く。
「……サラム?」
『今すぐ!!』
『サナの姿になってください!!』
「なに?」
だが。
考える暇はない。
俺はすぐに姿を変える。
魔力が体を包む。
俺の姿が変わる。小柄な少女、サナの姿。
アウルは目を見開く。
「は?」
一瞬だけ困惑する。
だがすぐに笑う。
「なんだそれ」
剣を振り下ろす。
「死ね」
黄金の剣が一直線に俺へ向かう。
――シュッ。
その瞬間。
俺の姿はアウルの前から消える。
アウルの剣は空を切る。
「なに!?」
広場の端。
そこに居たのは。
「危なかったですね」
――サラム。
俺を抱えている。
「助かりましたよ、サラム」
サラムは周囲を見渡す。
そして叫んだ。
「白マントが居たぞ!!」
次の瞬間。
――ドドドドドドド!!
地面が揺れる。
広場の入り口から。
魔族の群れが押し寄せた。
数十――いや百近い。魔族達が一斉に広場へなだれ込む。
「なっ…!?」
白マント達が動揺する。
サラムは剣を抜き、アウルへ向ける。
「さて」
軽く笑う。
「ここからは我々の仕事ですね」
「ここは…」
アウルは横へ移動する。
「戦略的撤退ー!!」
「あっ!」
サラムは目を丸くする。
だが。
目の前にまた新しい影が現れる。
広場の奥。
そこに一人の男が立っていた。
長身。
落ち着いた目。
「ロッドか…」
アウルの顔から笑みが消える。
ロッドはゆっくり指を上げた。
小さな魔力球。
ビー玉ほどの大きさだ。
「サナぁ〜大丈夫ぅ〜?」
相変わらずなマイペースな喋り方をする。
「あっ!はい…ありがとうございます…」
ロッドの実力を見れるチャンスだ。
「君達ぃ…勝手に魔族の倉庫から魔法具奪っちゃダメでしょぉ〜そろそろ怒るよぉ〜?」
ロッドは軽く指を弾く。
――シュッ。
魔力球がアウルに見えない速度で飛ぶ。
「っ!」
アウルが避けようとする。
だが、間に合わず。
――ドン。
一瞬でアウルの右腕が消えた。
「がああああああっ!!」
アウルが絶叫する。
ロッドは無表情で、もう一度魔力球を作る。
「はいはいぃ〜。もういっぱぁ〜つ」
球が放たれる。
アウルは剣を構える。
「くそぉぉ!!」
剣で受け止める。
だが。
――ボッ。
剣ごと、顔が消えた。
黄金の炎が霧散し、体が崩れ落ちる。
サラムが肩をすくめる。
「危なかったですねぇ…」
「あぁ…」
そしてサラムは思い出したように言う。
「あっ!」
「早くミナノって人も助けましょう!」
サラムは剣を構える。
白マントと魔族達の戦場へ飛び込んだ。
――エイメノカサスの戦いは、まだ終わっていない。




