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エイメノカサスを支配するのは 前編

 ――カオス・エデンの一室。

エルの一件から数日。

俺は自室の椅子に深く腰掛け、窓の外を眺めていた。

エイメノカサスの街は今日も騒がしい。


「……まぁ、最初にはいいものだな」


剣士二十人。

新しい戦力は手に入った。

だがそれでも、まだ足りない。

世界を支配するには――。


「もっとだ」


俺がそう呟いた瞬間。

机の上に置いてあった魔法石が淡く光り始めた。


「ん?」


魔法通信の信号だ。誰からの連絡。

俺は石を手に取る。


「もしもし?」


すると聞き慣れた声が響いた。


『おーいミロク!聞こえるかー?』


「……なんだサラムか」


『え?今なんだって言われた気が…』


相変わらず軽い声だ。


「敬語を使うと言っているだろう…全く」


『あっ…あははぁ…すみませぇん』


「それで?どうした。わざわざ通信とは」


『実はですね、仕事でエイメノカサスに行くことになったんです』


「ほう?」


少しだけ興味が湧く。


『最近ですねー、白マントの連中がうるさいんですよ…』


サラムはため息混じりに言う。


『ディアマテ解放教とかいう連中。魔族の間でも嫌われ始めてるんです。それで各地の様子を調査することになって…』


「なるほど」


『期限は一ヶ月。色んな街を回る予定なんですけど――』


サラムは少し笑う。


『エイメノカサスがその一つなんです』


「ほう…」


『つまり!』


『久しぶりにミロク様に会えるってことです!』


「俺は別に嬉しくはないがな」


『ひどい!?』


サラムが笑う。


『まぁでも、ミロク様が居るなら面白いことになりそうです』


「それは保証しよう」


俺は窓の外を見ながら言う。


「この街は――」


その時だった。


――ピシッ。


通信石にノイズが走る。


『ん?どうしました?』


『なんですか?魔力の乱れ……?』


「いや、違う…」


俺は石を見る。


「別の通信だな」


『えー?割り込みですか?』


「後でかけ直す」


『はい、分かりました』


サラムとの通信が切れ、すぐに別の魔力が繋がった。


『よぉ〜ミロク』


知らない声が電話の向こうから響く。


「誰だ」


『今から言う所に来たら教えてやる』


一瞬だけ声が止む。

そしてすぐに別の声が響く。


『ミロク様!!』


カリンの声が電話から響く。


「カリンか」


かなり焦っている様子だ。


「どうした?」


『白マントです…』


「ほう…」


『エイメノカサスに……!』


『既に五十人ほど確認されています!!』


「……」


五十。

少しだけ増えたな。


「お前達はどうした」


『戦闘になりましたが……』


カリンの声が重くなる。


『申し訳ありません…』


『やられました』


俺は静かに立ち上がる。


「そうか…場所は?」


『中央広場です……!』


「分かった」


通信が途切れる。

ちょうどその時、扉が開いた。


「ミロク様?」


ミナノが顔を出す。


「なんだか辺りが騒がしいですが……」


「白マントだ」


「え?」


「五十人…白マントの奴らがここに来ている」


ミナノの目が薄くなる。


「……結構いますね」


「そうだな」


俺はコートを羽織る。


「だが問題はない。行くぞ」


ミナノがニヤッと笑う。


「暴れますか?」


「いや」


俺は扉を開けた。


「支配しに行く」



――エイメノカサス中央広場。

そこには異様な光景が広がっていた。

剣士達が倒れている。

カリンを含め、全員が地面に伏していた。


「ぐ……っ」


「くそ……」


まだ意識はあるが、まともに動けない。

そして――。


剣士達の後ろに、白マントの集団が沢山居た。

ざっと見て五十人ほど。

その中心に、一人の男が立っていた。

金髪で白い装束。

そして――。

男の手からは黄金の炎が揺らめいている。


「へー」


男は退屈そうに周囲を見る。


「この程度か…まぁエルの残党なんて大したこたぁねぇよなぁ…」


足元には、剣士達が転がっていた。


「勇ましく向かってきた割には……」


男は剣士の一人を踏みつける。


「実に脆いなァ」


男はニヤニヤとする。

その時。

――ザッ。

足音が響く。

白マント達が一斉に振り向く。


「誰だ?いや聞くまでもねぇな」


俺は広場へと歩き込む。

ミナノも後ろからついてくる。

倒れているカリンが、かすれた声を出す。


「……ミロク……様……」


「よくやった」


俺は短く言う。


「生きてるだけで十分だ」


俺は視線を前へ向ける。

黄金の炎の男。

男もこちらを見ていた。

しばらく沈黙。

そして。

男が微笑んだ。


「なるほど」


黄金の炎が大きく揺れる。


「てめぇが噂のミロク・プリンスか」


俺は首を少し傾ける。


「噂?」


「ああ」


男は軽く笑う。


「ディアマテ解放教の間では有名だぜ?」


炎が燃え上がる。

黄金の光が広場を照らす。


「教徒を何人も殺した危険人物…排除対象」


男はゆっくりと手を上げる。


「俺はアウル・ヘリオス」


アウルの黄金の炎がさらに膨れ上がる。


「ディアマテ解放教・黄金司祭」


ミナノが小さく呟く。


「司祭……?」


アウルは微笑む。


「ああ」


そして炎を俺へ向ける。


「ミロク・プリンス!お前はここで死んでもらう…!」


俺は少しだけ笑った。


「ほう…面白い。十秒は保てばいいな」


お互いの魔力が静かに広がる。

俺は心の中で呟く。

そしてアウルも心の中で呟く。


『この街を支配するのは――』


黄金の炎と黒い魔力がぶつかり合う。


『『俺だ!!』』


戦いの空気が、広場を包み込んだ――。

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