本当に守るべきもの
エルは圧倒的魔力を放つ俺を見て気を取り戻すように笑う。
「ふふ…!そうだ…!そうだ!ミロク・プリンス!それこそお前の真骨頂!仲間を犠牲に我々を殺し!目的のためだけに動く!そうだろう!」
エルは剣を深くミナノに突き刺す。
「うぐっ…はぁ…はぁ…ミロク…様」
「実に不愉快だな…」
俺は魔力圧だけでエルと白マント達を拘束する。
「あっがっ…」
エル達は重力に叩き潰されるように地面へと伏せる。
「どうした。それがお前らの本気か」
剣をエルへと向ける。
「殺す隙など、〇.一秒も与えない」
エルは屈辱的な顔を浮かべる。
「だからどうした!!私は創造魔法の使い手と言っておろうが!」
エルは魔力を使い、俺の下の地面を隆起させる。
「お前達!魔力を貸せ!」
白マント達はエルに魔力を送る。
エルの魔力量は周りを吹き飛ばさんとする程にオーラを放っている。
「この魔力量があればあなたを宇宙空間まで飛ばすことができる!さようなら世界の破壊者!!」
地面はものすごい勢いで俺を宇宙空間へと突き動かしていく。
地面はまたたく間に離れて行き、ついには雲すらも俺の下へと来ていた。
「さて、ミナノ・カーシャの回収を――」
エルがミナノを抱えたところで。
――ドガァァァァァッ!!
周りの地形は抉れ、隕石が降ったかのような衝撃の波動がエイメノカサスを包む。
「うぐぅおああああああっ!!」
エルと白マントは辛うじて魔力で防御するが、既に全身はボロボロだった。
「宇宙旅行楽しかったぞ。それと、俺は破壊者じゃない。支配者だ」
俺はなんともなく宇宙から帰還し、エルの元へ高速にも近しい速度で帰還した。
こんな状況ではあるが、地球とか月は美しかった。
今度行けたら行こう。
「お前達が今何をしようとしているのか…さぁ答えろ」
「答えるものかぁ!ミナノ・カーシャは依然!我々の手元にある!」
ボロボロになり、剣が刺さったミナノを見せつけるようにして俺の前に突き出す。
「はぁ…だからどうしたと言う?」
「見てみろ!お前の大切な仲間は!あと少し剣をズラせば一瞬で死に――」
――グシャッ。
何かが落ちる音がその場に響く。
「はあっ!?んな…なぜだ!」
エルの両手首は気付かぬ間に地面へへばりつく。
「ぐぅおおおお…!はぁ…はぁ…」
悶え苦しむようにエルはその場へとのたうち回る。
「分かったか。お前らなどその気になれば、瞬殺出来る」
俺は剣を白マント達に見せつける。
「貴様は…貴様は!一体なんなんだ!ミロク・プリンス!」
「なに…かって?俺は世界を支配し、全てを俺のものにするために…裏で活動する者だ…」
「まぁ、だがお前らを不用意に殺しはせん」
エルは屈辱的な表情を浮かべる。
「本気を出せば地球なんて簡単に壊せる…だがそれはしない。なぜか?」
――それは
「世界を支配するためには、"世界"。つまり土台が必要なわけだ。強者が頂点に立つための、弱者共の土台…それが無くなってしまえば、真に最強とは言えない。頂点には土台が必要。それが俺のモットーだ」
「なにを言っている…ディアマテ解放教に全て任せておけばいいものを!世界の支配などつまらんことを!」
白マント達は俺に怯えてもはや動くことは出来ない。
「お前らの目的の方がよほどつまらんがな…そもそも世界を破壊してなにをする?なにが残る?」
「ディアマテという全ての王が…我々に死の救済を与えてくれる!それが最終目標!!」
うわっ…本当に居たんだ。死が救済と思ってる奴。
アニメとか漫画だけだと思ってたよ。
「ふうぅ!」
エルは魔力を自身の体内へと過剰集中させる。
「おい、体が吹き飛ぶぞ」
俺は無関心に忠告する。
「だまれ!お前にディアマテのことを語るくらいなら…!」
それもそうか。だが、死さえ俺の前では自由に出来ない。
――ゴゴゴゴゴ。
エルの上に巨大岩石が生み出される。
「そんなに死にたいなら殺してやる」
エルが自死する前に巨大岩石はエルの頭上へと落ちる。
――ゴシャリ。
無残な音が響く。岩の下からは血が流れる。
「約束の剣士達は貰っていくぞ」
俺はミナノを抱え、屍となったエルを横目にその場を去る。
「あぁ、そうだ」
俺は振り向き、指に魔力を集中させ、白マント達に向ける。
「じゃな」
俺が言うと指先の魔力は弾け、白マント達は吹き飛ぶ。
「……」
俺は再び歩み、カオス・エデンへと戻る――。
◇
しばらく時間が経ち、夜。
ミナノはリビングのベッドの上で目覚める。
「ここ…は…あれ…?」
ミナノはゆっくりと起き上がり、そばの椅子に座る俺を目をパチパチさせ見る。
「ミロク様…どうなったんですか…?剣に刺されてからの記憶が…あまりなくて…」
「あいつらは俺が殺した。もう跡形も無いぞ!」
俺はニッコリ笑顔でミナノに言う。
「いやそんなに笑顔で言うことじゃないです…」
ミナノは真顔で突っ込むが、すぐに安堵の表情を浮かべる。
「でも…よかったです」
俺は目を瞑って考え事をする。
なぜあいつらは死を救済にしようとするのか、ディアマテの復活はどうすれば行われるのか。
「はぁ〜…分からん…ミナ――」
「ってあれ?」
ミナノはリビングから姿を消していた。
「ミナノ?」
部屋へ戻ったのだろうか。まぁ今日だけで色んなことがあったしな。疲れたのだろう。
夜の光がリビングの窓から差し込む。その静かな空気は嵐が過ぎ去ったあとの静寂を表すようだった。
「風呂に入るか…」
俺は風呂場へと行き、扉を開ける。
「えっ?」
「あ…」
扉の先にはまぁ…その…全てを解放したミナノが俺の前に居た。
「こんの…変態がぁぁぁぁっ!!」
ミナノは水魔法をビームのように圧縮して俺の顔面に放つ。
「ぶうっふふぉっぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は後ろの壁へと激突する。
「支配者だからってなんでもかんでもしていいと思ったら…大間違いですよ!!!」
ミナノは顔を赤くして風呂場の扉を勢いよく閉める。
「風呂行くなら先に…言え…よ…」
うん、これはミナノが悪いよな。
ちょっとラッキーと思いつつ、俺はここで意識が途絶えた――。




