大会の目的
――壊れた街の前、俺は手を前へとかざす。
「この程度、すぐ直せる」
魔力を手に込めると、周りの瓦礫は再構築されていき、全てが元通りになっていく。
「おぉ、なんと!」
エルは目を輝かせる。
「これは再構築魔法…!こんなものが使えるだなんて…あっそういえば君達、今更ながら私の大会に参加してくれていた人じゃないか?」
俺とミナノは反応する。
「あぁ、そうだ」
「確かマルスくんとミナノくんだったね。こんな活動もしてただなんて知らなかったよ。今回は闘技場が破壊されてしまって本当にすまない。あの魔獣…一体どこから放たれたものなのか…」
白マントのせいだ。早いとこ潰さなければ…あんな宗教団体よりもカオス・エデンの方がいいに決まってるだろ!!
「そういえば。剣士たちのために闘技場を建てたと仰ってましたが、あれはどういう意味なんですか?」
エルは真面目な顔になり、修復している街を見ながら口を開く。
「あれはね…剣士達が戦う場所が欲しい。実力を高め合っていきたいと、そうずっと言ってたから建てたんだ」
「そうなんですね。エルさん優しいです」
「いや、そんなことはないよ。それだけの理由なら、きっと建ててなかったと思う」
「どういうことですか?」
「"ディアマテ解放教"って…知ってるかい?」
俺は思わず反応しそうになるが、修復の手を止めずに街を直すのに集中する。
「いや…知らないな」
俺はミナノと意思疎通魔法を使い、会話する。
『ミナノ。ディアマテ解放教ってのは…』
『きっと、白マント達のことですよね…?なんで白マントの名前が…』
『とにかく、話を聞いてみよう』
意思疎通魔法を切り、エルの話に耳を傾ける。
「私はね、闘技場と剣士を使い、賭博をしていたのだよ」
俺とミナノはエルの方を向く。
「えっ…それってダメなはずじゃ…」
「ははは、分かってるよ。『アヴァド』と『カミノ』って居ただろう?あれは私が君達を落とすために仕組んだんだよ」
「なんだと?聞き捨てならないな」
「あの二人には期待してたよ。それぞれ十万は賭けたかな。君達は私の予想を大きく上回ったけど…」
エルは顔を下げて喋りだす。
「そもそも、賭博と言うなら、誰かと一緒に賭けているということか?一体、誰と賭けている」
俺はエルを睨む。
「ははは。察しが悪いね、君は。なんで私が最初にディアマテ解放教について聞いたか…」
「……なるほど、その宗教と繋がっているわけか…」
「そう。ディアマテ解放教はその名の通り、ディアマテという魔神を復活させるための宗教なのだが…なぜか邪魔してくる輩が居るようでね?実力のある剣士はディアマテ解放教に戦力として送り込む。私は経済が回る。向こうも私もいい関係なのだよ。潰されては困る…」
コイツは白マントと関わりがある。
ここで殺すか。いや、それでは剣士二十人をこちらに譲るという契約は無くなってしまう。
まずは様子見なのか。
「ところで…」
エルの声色が変わる。優しい雰囲気は無くなり、その場の空気が重くなる。
「マルスくん。君は白マントについて知ってるいることをなぜ隠すのかな?」
「なぜ…?なぜもなにも本当に知らないな」
「隠す必要はない。ミロク・プリンス」
「っ!」
俺は再構築魔法の手を止め、エルに向け魔法陣を向ける。
「なぜ、俺を知っている?」
「それを教える義理はないよ」
その瞬間、エルが俺の前から姿を消した。
「ほう…?」
――ザクッ。
俺の後ろで肉の裂ける音が鮮明に聞こえる。
「ミナノっ!」
「あ…ぅ…」
ミナノの腹に剣が刺されている。
血が滴り、苦しそうにしているミナノの姿が俺の前にあった。
「ふっ!」
俺は魔法陣を再び展開し、エルに向ける。
「おっと、動かないで頂きたい。ミロク・プリンス。この娘がどうなってもいいのか?」
ミナノにさらに剣が深く刺さる。
「あがあっ…ミロクさん…私は気にしないでください…私はあなたの手下です…私もろともでも…」
「馬鹿がっ!」
俺は魔法陣を解く。なぜだろう。この感情はどこから湧いてきている?
俺はミナノが死のうが死ななかろうが、俺には関係無いことだ。
なのに、なんでこんなにも腹の奥がざわざわするのか?
「お前は…お前たちは…!なにが目的なんだ!」
エルは『ふっふっふ』と笑い、不敵な笑みを浮かべる。
「ディアマテの復活。君も知ってるだろう」
「違う…ディアマテの復活が目的なら、なぜ関係の無い者を巻き込み、信仰させる?そして殺そうとする?」
「知ってるだろう。ディアマテは人間の理想そのもの。他の人間が居て、変な魔神になっても困るのだよ。だから」
エルは片手から魔法陣を展開する。
「ディアマテ信仰教以外の奴らは皆殺しにする。それが我らの目的なのだ」
後ろから白マント共が十何人か俺の後ろに立つ。
「さぁ、ミロク・プリンス。君ならこの状況でも一秒無くたって私達を始末出来るはずだ。まぁやろうとした瞬間にこのミナノ・カーシャは死ぬがね」
俺は足も、手も動かない。
動こうとする気さえ、俺には全くない。
あぁ、俺は勘違いしていた。
結局のところ、俺は転生前からなにも変わっちゃ居なかったんだ。
弱くて、弱みを握られてしまえば、なにも出来ない。
そして、どこか心の奥底で仲間という存在に俺はまだ可能性を夢見てるのかもしれない。
「はっ…はっはっはっは…ふはははははは!」
俺は片手で顔を覆い、笑い声を上げる。そして片手に魔力で生成した剣を持つ。
「タダで帰れると思うなよ…クズ共――」
魔力を纏いし眼力で周りの空気はゾワッと震え、この場の空気は蛇に睨まれた蛙のように、恐怖を感じるものとなった――。




