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誰かの為に出来ることは

 ――翌日。カオス・エデンの前。


「……本当に立てるんですか?」


ミナノが半目で見る。

そこには、木製の大きな看板。


【依頼受付中

 どんな問題も解決します

 ― カオス・エデン ―】


俺は腕を組み、最高だと思いながら頷く。


「完璧だ」


「どう見ても裏組織にしか見えませんけど」


確かに建物の雰囲気だけ見てればあまり表向きの仕事には見えない…。


「問題ない。堂々としていれば怪しまれないもんだぞ

?」


「それは理屈としてどうなんでしょう」


だが、目的は別にある。

依頼を受けること。 そして――

“依頼を受ける代わりに、組織へ勧誘すること”。


「理念で集まらぬなら、縁で集める」


「聞こえはいいですね」


「支配は縛ることではない。選ばせることだ」


「昨日と言ってることが微妙に違いますね」


――午前中。

カランカランとドアの鈴の音が鳴る。

最初の依頼人がやってきた。


「えっと……荷物の護衛をお願いしたくて来たんですけど……」


「可能だ」


「本当ですか!? 料金は……」


「金は要らん」


「え?」


「代わりに、我らカオス・エデンに所属してもらう」


客はポカンとした表情を浮かべる。


「……あ、やっぱり結構です」


帰った。


「ふむ。まぁこういうこともある」


「え?今絶対引いて帰っていきましたよね?」


「次を待とう」


――数時間後。


二人目の依頼人が来た。


「家畜が逃げてしまって……」


「捕まえよう。代わりに我らの一員となれ」


「は?」


そう言い二人目の依頼人は帰った。


「あの…やっぱり」


ミナノが俺になにかいいかける。


「言うな。今は待つ時だ…」


――数時間後。


三人目の依頼人がやっと来た。


「借金取りから逃げてるんですけどどうにかなりませんか!」


「守ろう。だが勇者と魔王を支配する戦争に協力してもらう」


「え…怖っそっちの方が無理だろ」


三人目の依頼人はそそくさと帰った。


ついに夕方。

看板の前。

風が虚しく吹く。


「……無理ですね」


「まだだ…うん…まだだ」


「条件が重すぎますよ。勇者と魔王との戦争に混ざって両方倒すなんて死にに行くのと同じですよ」


「未来への投資だ…」


「未来が壮大すぎます」


俺は夕日をぼーっと見上げる。

やはり無理なのか。 思想を理解する者など、居るわけが無い。


「ここが……カオス・エデンか?」


俺とミナノの後ろから低く、落ち着いた声が聞こえる。

振り向くと、一人の男が立っていた。

白髪混じりの黒髪。 鍛えられた体。 だがその目には疲労がある。


「依頼を受けると聞いたんだが」


「内容による。大体なんでも出来る」


男は看板を見上げる。


「私は『エル・ガノスラ』。エイメノカサス闘技場の建設責任者だ」


ミナノが目を見開く。


「闘技場の……?」


「とりあえず、中へ入れ」


俺はエルを部屋へと案内し、エルを椅子へと座らせる。

俺も向かい側に座る。


「闘技場もエイメノカサスの一部も爆破で崩壊した。復興には資材も人も足りん。このままでは再建は十年は先になる」


エルの拳が震える。


「あの闘技場は、夢だった。剣士達の居場所だった」


俺は黙って聞く。


「頼む。復興を手伝ってくれ」


「私は創作魔法を扱える。魔力を別の性質へと変換し、物体化できる。建築、武装、補助……用途は広い」


「ほう…?」


創造魔法。魔力という性質を別のものに変え、物体化出来る魔法。

魔力を新たな形にするというのは相当難しい技だ。

例えば炎を魔力で生成したとして、あれはあくまで性質。魔力を物体化させ、本物の鉄のように、硬く、掴め、錆びる。これを再現させるのはかなりの鍛錬が必要だ。


「いくら金を出せばいいだろうか?」


「金は要らん」


エルは驚きの表情を浮かべる。

口が開きっぱなしだ。


「な…んと?で、ではなにか他に?」


だが次の言葉で、空気が変わる。


「勇者と魔王を支配する。そのためにその戦いに協力しろ。それが条件だ」


ミナノが横で様子を伺う。


普通なら――ここで去る。


だが――。

エルは笑った。


「……面白い」


「ほう?」


「私は闘技場を作った。剣士たちの夢を叶えるためだ」


エルは目を閉じる。


「だが夢は壊された」


「……」


すまん。俺が壊した。


「ならば今度は、もっと大きな舞台を作ればいい」


「勇者と魔王の戦争? 世界規模? 結構だ」


エルは真っ直ぐ俺を見る。


「私は舞台を作る者だ。戦う者ではない。だが舞台があるなら、命を賭ける剣士はいる」


「何が言いたい」


「闘技場の剣士を二十人ほど連れてこよう」


ミナノが息を呑む。


「……本気ですか?」


「居場所を失った者たちだ。再び立てるなら、どんな舞台でも立つ」


俺はニヤリと笑う。


「いいだろう」


ミナノと目を合わせて相槌する。


「その依頼、受けよう」


エルは深く頭を下げた。


「感謝する」


「復興は手伝う。だが忘れるな。我らは“善意”で動くのではない」


俺は椅子から立つ。


「世界を取り込むための一歩だ」


エルは頷いた。


「構わん。誰かの為に動くことが、結果的に世界を変えるならな」


「その世界が終末のようになってもか?」


俺は念押しに聞く。


「それが、君の望む結果になるのならな」


「その覚悟。嫌いじゃない」


俺は魔法で契約者を作成する。

内容は――。


【契約

エル・ガノスラは街と闘技場の復興を願いに、カオス・エデンへの忠誠を誓う】


――と、言った内容。


「うむ」


エルは契約者にハンコを押す。


「契約完了。よし、行くぞ」


俺は勇者学園の制服をたなびかせ、外へと出る。

外は夕日と夜空が混じる、まさに混沌(カオス)とカオス・エデンの誕生を表すかのような雰囲気となっていた――。

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