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裏切らない契約

 ――崩壊した闘技場の煙を背に、俺はただ走る。

隣を歩くミナノもまた、何も言わない。

エイメノカサスの中心部は騒然としている。警鐘、怒号、逃げ惑う人々。

俺はそれらを避けるように、裏路地へと進んだ。

やがて辿り着いたのは、使われなくなった倉庫街。

人気はない。

風が吹き抜ける音だけが響く。


「……あんな目にあっても…まだ追う気か?」


「ディアマテを…」


ミナノは少し間を置き、答える。


「…」


「姉も含めて、か」


「はい…」


俺は小さく鼻で笑う。


「命を賭ける価値があると思っているのか?」


「思っています」


ミナノは真剣な表情で言う。


「なぜだ?」


「……私は、姉さんを見つけたい。それだけです」


「なら、俺の支配下に入れ。その方がいい」


「……」


ミナノは黙る。


「そうすれば、姉探しもディアマテも、俺が利用してやる」


ミナノはゆっくりと顔を上げる。


「……分かりました」


「ほう?」


「ミロクさんの支配下に入ります」


「ただし」


ミナノは続けた。


「姉さんを見つけること。それが条件です」


「条件だと?」


「それまでは、仮契約です」


沈黙が続く。


「はぁ…俺は仮契約が嫌いだ」


「裏切るかもしれないからですか?」


「違う」


「中途半端だからだな」


支配は絶対でなければならない。

だから俺は揺らぎは嫌いだ。

だが、戦力は必要だ。

ミナノの爆発水魔法…あれは間違いなく将来性がある。

そして何より――。

"この俺に真正面から条件を出した"。

面白い。


「いいだろう」

 

「仮契約だ。姉を見つけるまでな」


「はい」


「その代わり、俺を裏切れば容赦はしない」


「えぇ、分かっています」


ミナノは真っ直ぐに答えた。

その瞳に、恐れはあっても迷いはない。

俺は小さく笑う。


「あぁそうだ…」


「?」


俺はポケットに手を入れる。


「帰ったらサラムにもやらなくてはな…お前にこれをやる」


俺はとあるものをミナノに投げて渡す。


「顔は隠せ。その方がいい」


「え?」


「さっきの爆発で、俺達の顔はそこそこ見られた可能性がある。見られてなかったとしても、正体がバレると指名手配とかされて面倒くさいからな」


ミナノに渡したのは、金で作られた細工の美しいドミノマスク。


「これを使え」


「わぁ……すごい……精巧…これ結構作るの大変なんじゃ?」


ミナノは目を輝かせる。


「目立つなよ」


「金で目立ってますよ!?」


「あっ……威厳だ」


「絶対違いますよね?」


「……」


「むっ無視…」


ミナノは苦笑しながらマスクを受け取る。


「……これで、私も本当に裏の人間ですね」


「後悔するなよ」


「しませんよ。姉を見つけるためなら…」


その言葉に、俺は一瞬だけ視線を逸らす。

風が吹く。

遠くで警備隊の声が響く。

そして――


「あぁぁぁぁ!」


「えぇ!?どっどうしたんですか…!?」


「……はぁ」


完全に忘れていた。


「ま…ん…」


俺は膝をつく。


「え?」


「百万円が……」


「はい?」



「大会が消えた……優勝賞金が……」


「そこですか!?」


「当然だろうが!あれを元手に勢力拡大する予定だったんだぞ!」


「いやさっき街半径数百メートル吹き飛ばしましたよね!?」


「必要経費だ!」


「規模がおかしいです!」


俺は地面に手をつき、肩を震わせる。


「時間遡行者の手がかりも掴めなかったし……」


「……」


「はぁ…俺は何のために来たんだ……」


「ミロクさん……」


「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」


咽び泣く支配者。あまりにも哀れな光景だろう。ましてや、部下の女子の前で。

風が吹き抜ける。

金色のマスクをつけた少女は、その姿を見て心の中で笑った。


『この人が……世界を支配する人……?』


だが。彼女は『嫌いじゃない』。そう思った。

俺は涙を拭き、立ち上がる。


「行くぞ」


「どこへですか?」


「拠点を作る」


「でも…百万円無いのにどうやって作るんですか?」


「……それを今から考えよう…」


「そうですね…」


「あの…ミロクさん」


「どうした?」


ミナノは自身のスカートを掴む。


「姉は本当に見つかるんでしょうか?居る前提で話しているけど…自信が持てなくて…」


「自信を持たなくてどうする。お前は将来の夢を語る時、"〇〇になれれば良いな"と考えるのか?俺はそんな甘い考えはしない。"〇〇になる"絶対に。それだけを目指す。自分を信じろ」


ミナノは目を輝かせる。


「そう…ですね!」


「それと…」


「ミロク"さん"じゃなくて…ミロク"様"…と言え」


「はい…!分かりました」


見ているか?女神。これが真の支配者だ。


「あぁ…そうだ。服も着替えておくといい。俺の部下も裏での活動はそれを着るように言っている」


俺は黒いコートをミナノに渡す。白い線が何本か入っている。


「おぉ…カッコいいですね」


「ふん。当たり前だ。中々いい見た目が思い付かなくて一ヶ月は考えたからな」


「あっ…そう…ですか」


ミナノは苦笑する。俺を馬鹿にするように。


「今絶対暇なのかなって思っただろ!」


「えぇ!思ってませんよ〜!」


「あ!あ〜…!それより!早く拠点探ししましょー!」


――こうして。

仮初めの主従が結ばれた。

俺はこれからもどんどん手下を増やして、最強の支配者への道を深めていく。

今回もまた一段。着実に支配者への階段を上っていけた。支配出来るその日まで、俺はこの余興を楽しもう――。

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