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支配を宣言する

 ――闘技場内部、混乱の渦。

ケルベロスの咆哮が空を裂き、観客が逃げ惑う中。

白マントが俺の前に立ち塞がっていた。


「残念だが……邪魔はさせない」


白マントの男は水色の魔力を纏っている。


「はぁ…魔力を隠すのが下手だな。水色なら水魔法か?」


男は怪訝な表情を浮かべる。


「ふーん…だからどうした?」


「教えるか。とりあえず場所を変えるぞ」


俺は白マントの男へ一気に距離を詰めて地面の下へと引きずり込む。

下は下水道となっている。白マントを地面へ叩き付ける。

湿った空気。濁流の流れる広い水路。


「ぐっ…くはは……下水道とは。随分と自信家だな?」


男の足元で水が(うごめ)く。


「水の使い手と分かってたのに…わざわざここに連れてくるとは…水場は私の庭だぞ?」


俺は魔力で創り出した黒刀を構える。


「あぁ知っている。だからここに連れてきた」


「ほう?」


「水は便利だが――相性の前では無力だ」


男の瞳が細まる。


「やってみろ」


男の後ろで水が弾ける。

俺は指を鳴らす。


――バチィッ!!!


稲妻が(はし)る。

電撃が水路へと流れ込み、広範囲へ拡散する。


「ぐっ……!」


白マントの男が後退する。


「電気魔法か……!?直前までなんの魔力波長なのかも分からなかったのに…!」


「だから言っただろう。お前も相性というものを知らないわけではあるまい。今ならお前らが何をしているのかを聞かせてくれさえすれば、逃がしてやっても構わん」


雷撃が何重にも分岐し、水面を暴れ回る。

下水道全体が光に包まれる。

優勢――かに思えた。

だが男は嗤う。


「フッ浅いな」


水の流れが変質する。


「なんだ…?」


男は嘲笑う。


「水の性質と形を変える。それが私の魔法だ!」


流れる水が濁り、重く、白く変化する。


「まさかこれは…」


「あぁ。分かるだろう?"塩水"だ」


俺は即座に電気魔法を解除しようとする。

――が。


「無駄だァ!電解質濃度を上げた!死ね!」


――次の瞬間。

俺の電気が俺自身へ流れ込む。


――ズドォォォォン!!!


電撃が逆流する。

高濃度塩水は電気を極めて通しやすい。

電流は暴走し、俺自身を貫く。


「……」


俺の全身が焼け、辺り一面は爆発する。

下水道の壁が崩落する。

煙が立ち込める。


白マントの男は肩で息をしながら立つ。


「ははっ…自爆とは……愚かだな」


焦げた空間。

周りの水路は瓦礫によって埋もれている。


「所詮、力任せか。理想なき者に神は扱えぬ」


男は背を向け、去ろうとする。

その時。


「……言いたいことは、それだけか?」


下水道に声が響く。


「んな!」


男が振り返る。

そこには、無傷の俺が立っている。


「な……?」


「まさかその程度で死ぬとでも?」


男の顔から余裕が消える。


「水の性質を変える、か。面白い」


俺の周囲に、炎と雷が同時に発生する。


「お前らは“理想”を語る」


「……?」


男の表情は困惑へと変わる。


「だが、俺は違う」


俺の魔力が膨張する。

空気が震える。


「俺は支配する側だ」


俺の雷が紅く染まり始める。炎だ。

そしてその炎が青白く変質する。


「理想の形でも無ければ、誰かに運命(さだ)められるものでもない…」


地下空間が耐えきれず崩れ始める。


「全ては俺が決める。俺の支配上なんだ」


俺の上位電気魔法である神電魔法が収束する。


「くそぉぉ…!ディアマテ様のなにが分かるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


男が水で創り出した百本の剣を飛ばしてくる。

――だが。


――カキィン。カキィン。


俺の魔力により全ての剣がへし折られていく。


「そんなっ…魔力圧力だけて…こんなっ」


俺の炎と雷が融合する。


「――炎と電気の怒り…」


世界が静止する一瞬。


「支配の瞬間を、刮目せよ。炎と電気の怒り(ヴォルカニックサンダー)」


魔力が極限まで圧縮。

そして一瞬の静寂。

音が出るまでも無く、光が地下から地上へ突き抜ける。


***


 ――闘技場上空。


「ぐぬぬぅ…強い…」


ミナノがケルベロスの炎を水で受け止めた瞬間。

地面が光る。


「……え?なになに!?」


次の瞬間。

地面が吹き飛ぶ。

紅雷と爆炎が半径数百メートルを飲み込む。

闘技場が崩壊する。

建物が蒸発し、ケルベロスが咆哮する間もなく、粉砕される。

三つの頭が一瞬で灰になる。

観客席は衝撃波で吹き飛ばされるが、ミナノの周囲だけ透明な膜が張られている。


「ミロクさん…」


***


「くそおおおお」


白マントの男は――

光に呑まれ、存在ごと消失した。

瓦礫の中心。

空は晴れ渡っている。

エイメノカサスの一角が消し飛んでいる。

もはやここが大会会場だったかだなんて爆破跡だけじゃ分からない。

ミナノが俺の隣で呆然と立つ。


「ミロクさん……」


俺の瞳は、怒りを越えた静寂を宿していた。


「宣言してやる」


崩壊した街に向けて。


「この街は、いずれ俺の支配下に置く」


風が吹く。

煙が流れる。

遠くで警鐘が鳴る。


「理想でも神でもない」


俺は静かに笑う。


「俺が基準であり、俺が正義だと言うことをな」


――その日。

エイメノカサスは、新たな脅威を知ることとなった――。

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