戦いはアート
――闘技場中央。観客達は息を呑む。
「第二試合開始ィィ!!」
実況の声が響いた瞬間――。
カミノの姿が会場から消える。
「っ!?」
次の瞬間、ミナノの横にカミノが現れる。
ミナノに剣が素早く振り下ろされる。
――ガギィン!!
ミナノは水の盾を生成し、辛うじて受け止める。
「ミナノは水魔法使いなのか…」
俺は初めて知る。ミナノの水はカラフルな色をしていて芸術家らしい。
「反応は悪くない…だが」
カミノの低い声。
次々に重い一撃、二撃目。 炎を纏った斬撃が連続で襲う。
「洗練された炎は水をも上回る…守っているだけでは勝てない」
ミナノの水盾が砕け、 ミナノは後退する。
その状況に観客席が沸く。
「――やっぱりカミノだ!」
「――格が違う!」
カミノは追撃しない。 ただ構えたまま。
「君の魔法は綺麗だ。だが戦場では美しさは隙になる」
ミナノは呼吸を整える。
――ザァッ!
カミノの連続斬りがミナノを襲う。
速く、重く、無駄がない。
完成された技術。 積み重ねた年月の重み。それは、どことなく恐怖すら感じる。
再びカミノは踏み込み、強い炎の一撃が一直線に走る。
ミナノはふっ飛ばされ地面に手をつく。
「うぅ…水彩陣!」
ミナノの魔法は芸術性だけじゃない。しっかりと洗練されている。ミナノの水魔法は上級クラスだ。
この世界ではミナノみたいに水に色を付けたりなどの自身の魔法になにか特徴が付いているのは珍しい。それはその人が個人の魔法を鍛え続けた証でもある。芸術の力…それを戦闘にも応用するとは。芸術家としても、戦闘者としても上積みだ。水彩陣という固有で作り出した魔法も持っている。ミナノのことはまだ未知数だ。
そして水彩陣を使い、ミナノの地面に青い魔法陣が広がる。
水が弾け、 霧が舞う。
カミノは視界が奪われる。
「目眩ましか…」
炎の斬撃を放ち。霧を蒸発させる。
だが――。
霧の中に、無数の水の線。
まるで絵画のように空中へ描かれている。
「これは……」
ミナノの声。
「戦いは、破壊じゃない」
水の線が七色に発光する。
「表現です」
次の瞬間――。
水の線が爆ぜる。
――ドンッ!!
爆発。
観客席がどよめく。
水が弾け、蒸気が噴き上がる。
カミノは炎で防ぐが、衝撃で体勢が崩れる。
「ぐぅっ…爆発……だと?」
カミノは立ち上がる。
「水魔法はこういうことも出来るんですよ。器用でしょ?」
やはりミナノは魔法の才能が高い。
ミナノは指を振る。
空中に描かれた水の軌跡が次々と点灯する。
「色彩爆散!」
――ドドドドドドッ。
連鎖爆発だ。
「負けてたまるかぁ!」
カミノは剣を使い、乱舞する。
「――あれは!カミノさんの百連斬撃!」
観客も盛り上がっている。
――カキィ!カキィ!
カミノの連続斬り。水と炎が交錯し、 闘技場が光に包まれる。
カミノは防ぎきるも、やがてカミノが膝をつく。
「ふ…見事だ……」
剣を支えに立とうとするが、 足が震えている。
「若い発想……か」
ミナノはカミノの前に立つ。
「あなたの炎は洗練されていました。ですが――」
さらに一歩近づく。
「私は固定された型に収まりたくないんです。私は私の魔法を極め続ける」
水を一粒。指先から出し、その水をカミノの剣に向け放ち、破壊する。
審判が手を上げる。
「勝者――『ミナノ・カーシャ』!!」
戦場にはミナノの魔法で描かれた森の木々が地面にあった。
そして――。
歓声。
「――なんだあの魔法!?」
「――水が爆発したぞ!?」
「――芸術家どころじゃねぇ!」
カミノはゆっくり立ち上がる。
「……戦いを作品にするとは…驚いたよ」
ミナノは頭を下げる。
「ありがとうございました」
カミノは静かに笑った。
「いい戦いだった」
「えぇ、またいつかやりましょう」
俺はその様子を魔法画面で眺める。
「なるほどな……」
ただの水使いじゃない。
あれは――
型を壊す者だ。
闘技場の熱はさらに高まる。
それぞれの参加者達の願いが重なり合い、奪い合う。
俺も思った。戦いは本当にアートなのかもしれない。
――コンコン。
ドアがノックされる。
「マルスさん!勝ちましたよ!結構ギリギリでしたけど…」
ミナノが俺の控え室のドアを開けて笑顔で入ってくる。
「よかったな。俺もこのまま勝ち進めたいところだ」
次の番までかなり時間がある。なにをしようか…。
「なぁミナノ」
「ん?どうしたんですか?」
「――探検は、好きか?」
ミナノは一瞬固まる。
「探検…小さい頃好きでしたね。色々な所に行けるのって今でもワクワクします!」
いい返答が返ってきた。
「それじゃあここの会場を今から乗っ取るぞ」
「………へ?」
俺はマルスの変身を解いてミロクの姿を出す。
「すまんな。お前には色々と言いたいことがある」
「ちょちょ…?マルスさん…?」
ミナノは困惑した表情を浮かべる。
「俺の本当の名はミロク・プリンスだ。世界を服従させるため、今はカメアノサスで学生と…魔族をやらせてもらっている」
ミナノはあまり状況が飲み込めていないようだ。
「まぁ、困惑しても仕方ないか…単刀直入に言わせてもらうが、俺の手下になってくれないか?手下になるのなら、姉探しも手伝おう」
ミナノは顔を下へと向ける。
「ごめんなさい…ちゃんと説明してもらえないですか…?」
と、言われたので俺は転生から今までの目的を語った――。
「そうなんですか…。そんな目的が…」
「どうだ?姉探しも出来るなら、悪くない条件だろう」
「じゃ…じゃあ…私の資料探しも…手伝ってくれませんか…?」
資料――。
情報屋の時にもなにか言っていたやつだ。
「なんの資料だ?言ってみろ」
「魔神…ディアマテについてです――」




