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観測者の時間

 ――夜の森。

魔王城から離れた俺とサラムは、その場で膝をつく。

爆撃は――起きなかった。


「……おかしい」


サラムが低く呟く。


「戻したのは確かに数分前です。はず…なんですが……未来が存在しないことに…?」


「いや、存在はしていた」


俺は拳を握る。


「俺は“爆撃が起きた世界”を確かに観測した」


時間遡行魔法は、単に時間を巻き戻すものではない。 “観測者が認識した未来”へと遡る魔法だ。

つまり――。


「観測された未来が、別の何かに上書きされた…?」


サラムが息を呑む。


「……あの場に居た誰かがやったってことですか?」


「かもしれない。だが、時間操作をあの場で出来そうだったのはレヴィア…他のあの場に居た魔族と白マント共では出来ないはずだ」


「でも、レヴィアはあの場に居ましたもんね?それに、一回目の世界線で爆破させたのに、わざわざ次の世界で爆破を無かったことにするのはちょっと意図が分かりませんね…俺達にバレたらマズかった理由があるんでしょうか?」


「そこが謎なんだ。何をしたいんだろうか?俺達にバレたらマズイことがあるんだとすれば…白マント以外の世界の破壊を企む奴が他にも居るということ…なのかもしれんな。そこでその説が正しいとすれば俺は一つ考察をしている」


「なんですか?」


「時間を戻した瞬間、俺は分岐した」


「分岐……?」


「爆撃が起きた世界線と、起きなかった世界線。そのどちらかに移動した」


「では、元の世界は……?」


「爆撃が起きたまま進行している可能性がある」


沈黙。

夜風が木々を揺らす。


「えっとつまり…相手は未来を確定させる前に結果を選別したということですか?」


俺は笑みを浮かべる。


「正解だ。あの爆撃は――“俺が時間遡行を使うかどうか”の確認…いや、促す罠だったのかもしれない。俺と同じで今は戦争を起こすつもりは無い。時間遡行を促すことで、今のうちに俺達の実力を測った…そんなところだろう。まぁ、要するにハメられたというわけだな…」


時間を弄る者を炙り出すための爆撃。相手はかなりの戦略家だ。


「ということは今後は…」


「軽率に時間は戻せないってことだな」


因果に触れる度に、こちらの存在も観測される。


「面白い。昔から考えて攻めるのが大好きだったものだ」


俺は夜空に浮かぶ月を見る。


「ならば先に観測してやる。この世界の裏側を」



翌日――勇者学園。

昨日の爆撃は起きていない。 当然、戦争の予兆もない。

教室ではいつも通りのざわめき。平和だ。

数分してレオルが教壇に立つ。


「えー、急ではあるが校外学習が決定した!イェーイ!」


レオルはパチパチと手を叩く。

教室はざわつく。


「期間は一ヶ月。行き先は自由だよ。ただし必ず魔物討伐、地域調査、文化交流のいずれかを行い、報告書を提出すること!」


一ヶ月――。

長い。これだけあれば、戦争への準備も十分済みそうだ。


「勇者を目指す者にとって、世界を見ることは重要だ。都市外での実地経験を積んで、様々な意見を皆に持ってほしい」


メノンが俺に小声で言う。


「旅行みたいだね!」


「そうだな」


カナリは拳を握る。


「よっしゃー!実績作りだぁ!」


俺は窓の外を見る。

ちょうどいい。

時間を弄る存在がいるなら、 都市の外に何か痕跡があるかもしれない。

そして――白マント達も動くだろう。


「マルスくんはどこ行くの?」


メノンが聞いてくる。


「まだ決めてない」


嘘だ。

既に決めている。

ここ。大都市カメアノサスの隣。

交易都市――エイメノカサス。

商人、傭兵、情報屋。 あらゆる裏の流通が集まる街。

時間系魔法の痕跡を探るなら、 あそこが最適だ。



――放課後。

俺は荷物を最小限だけ用意する。 剣、簡易魔力変換装置、偽造した身分証。

門を抜け、都市外へ出る。

カメアノサスの巨大な白壁を背に、俺は振り返らない。


「さて」


マルスの姿のまま、街道を歩き出す。

遠くに見える別の城壁。 砂色の都市。

エイメノカサス。

情報と金と裏取引の街。


「ミロ…あっいや…マルス!」


サラムが俺の後ろへと息を切らして走って来てた。


「あっサラム。どうした?」


「いや…勇者学園の話、盗み聞きしてましたけど、魔王城での仕事はどうするんです?一ヶ月も居ないとなると…レヴィアかロッドが怪しむんじゃ?」


「そうか…忘れていた…あー…魔族って風邪とか引くのか?」


サラムはポカンとした表情を浮かべる。


「えぇ、人間と似てはいますからね」


「ならサナがヤバい病気にかかったとでも言っておいてくれ。それで一ヶ月稼ぐ」


「えぇ!一ヶ月は流石に難しいですよ…余程の病気じゃないと…」


「魔力暴走病で全身がボロボロ…とか言っておいてくれ」


「分かりました…とりあえずそう言っておきますね。また何かあれば連絡します!」


「頼んだぞ」


「了解です!」


そう言いサラムは走って魔王城へ戻っていった。


――一ヶ月間。

その間に時間を弄る“何か”を探し出す。

あとは、エイメノカサスで新しい手下を作れると戦力増加で嬉しいところだ。


「いい情報期待してるぞ」


夕陽の中、俺は隣都市へと歩みを進めた――。

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