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とある空虚な英雄譚

~警告~


(とある空虚な英雄譚)の続きがありません。


エンディングを迎えます。


~~エラー!~~


物語に終わりなどありません。


終わるならば始めてください。


ひとえに世界はそれを求めています。


~~~~


「ーーー!?ーーーーーーー!!!!!!!」


誰かが叫んでいる。


なんだ?体が動かない。


「ーーーー!!ーーー…ーーー!!!」


なんだかぼーっとする。

何が起きたんだっけ?

確か、突然目が覚めたら、超絶別嬪さんが俺を起こしてくれて、そのままハネムーンに行ったんだっけ。

あれ?そんなだっけ?…あれ?

しっかりしなきゃ…でも、まだ眠い気がする…


ーーバgyん!!!


微睡む意識をたたき起こされるほどの爆音が耳のそばで鳴り響いた。


「馬鹿野郎!!!待機命令が出ただろう!!?!?死にてぇのか!!!」


「でも、アニキ!!二人目の勇者なんて聞いてないですよ!!死ぬことは覚悟してても、おいそれと…馬鹿みたいに殺されるのを待てるほどの肝っ玉は俺には積まれてねぇってんだ!!ちくしょう!」


「上からも異常事態通告(イレギュラー)が降りてんだ。命令違反で死ぬのと、勇者に殺されるのも死ぬって点では同じだろっ…!いつも冷静でいろってのは忘れたのか!?」


「…でもよぉ!?待機は無理だろ!てめぇの死に方ぐらいは選ばせてくれよ!やられる前にやれって言ったのはアニキだろ!!!」


「落ち着いてください二人とも…こちらを見てます。」


何が起きてるんだ?

目を覚ました時に一番最初に襲ったのは強烈な異臭であった。くさい。

でもそれよりも、気になるものが目に飛び込んできた。

今日日見たことないほどの重装備をした人がこちらの様子をうかがっているように見える。

その手には…撃ち切って硝煙を上げる、銃のようなものが…………じゅう?

え?え?え?

なんで?

なんで???

しかもーーーいたい。体中が痛いのだ。

俺は足を大の字に広げ壁に倒れこんでいるようだった。

何か冷や汗のようなものが額に流れる。

それをぬぐってみれば、真っ赤なのだ。

撃たれている…?………俺が?

頭が真っ白になる。


「あああああああ!?」


パニックに陥る。

当然だ。

呆然としていた中、突然の極限状態に対して、取り乱すなと言っても無理な話だからだ。

本能が逃げろと警鐘を鳴らしている。

しかしながら、立ち上がろうとも、足が動かない。

その場でもがくことしかできなかった。


「ひ、やめて!こっちにく、くるなぁ!」


”唯の日本人”である俺が咄嗟の状況に対して取れる行動は、ささやかな抵抗として、周りの石などを相手に投げることくらいだった。


ただの石などであればどれほどよかっただろう。


それはぱっと見では靴だった。

だが特徴が一つあった。

ーーー中身がまだ入っていたのだ。


赤い飛沫を飛ばしながら靴は3人組の手前に落ちる。

あまりの出来事にすぐ自分の足が残っているか確認し、

自分が誰かのものを投げてしまったこと、手に持った時に気づけなかったリアルな重量に吐き気を覚えた。


「おぼえぇえええ!」


それでも依然として脅威からは逃げきれてないのだ。


「た、助けて!誰か!!殺される!!」


芋虫のようにもがきながら逃げようとしてもうまくいかず、無為に体力を消耗するだけ。

暴れるだけ無様をさらし続ける俺に対し、警戒する3人は静観を決めこちらの様子を注視し続けていた。

笑ってしまうほど場違いな静寂の中に俺の焦り切った吐息と血生臭い風埃のみがこの場を支配していた。

そして、その静寂を断ち切ったのは先ほど、喧嘩の仲裁をしていた、眼鏡をかけた男性だった。


「アニキ、あの様子はまるで貧相街民と同じです。我々は鎮静対象と見間違えたんじゃないんですか?」


「馬鹿野郎。確かに(とある空虚な英雄譚)から出てきたのをお前もみただろ。」


「アニキぃ、おれぁ…あいつを見てっとイライラしてくるぜ…。なんだ?俺らは、あんな…あんなっ!………拍子抜けなやつにっ!昨日同じもの食ってきた仲間を殺されたってのか!?」


「…見たものをそのまま受け取るな。奴さんらは俺らとは全く別の存在だ。もしかしたら、記述にあった”盗賊”かもしれん。いつこっちの首が飛ぶかわからんだ。警戒を怠るんじゃない。」


何を言っているか完全にはわからなかったがこちらをすぐ害する気配はないと…思う。

そう思ったからこそ、

活路はこの時これしかないと思ったのだ。


「あのっ!!!…ここは…どこなんですか…?俺は!何もしてません…。本当にぃ!!お願いしますおえがいします!!助けてくれませんか!!?」


命乞いだ。

何もできない詰みの状況。

取れる選択肢が少ない中、一番選んではいけない選択肢を選んでしまったのは”唯の日本人”だからであったからこそなのであろうか。

であるからこそ、


ーーバsyゥッ!!


自分の頬が持ってかれる衝撃と、そのあとの鋭い痛みに反応が遅れてしまったのだ。


「あがぁあああああああ!!!」


今まで経験したことのない痛み。


「モルデェエエエルゥウ!!!!!!!」


「でもっ!!!でもよぉ!!やらせてくれよ…!あんなの聞かされて……黙っていられんのかよ!」


「アニキ。今回ばかりは僕も賛成です。やっぱり化け物は化け物なんです。…本当に不快だ。鎮静どころじゃない。討伐しましょう。」


「やめろ!お前ら!どうせただの固定文句だ!頭に血が上れば相手の思うつぼなんだ。俺は物語のかませ犬なんぞで終わる気はないぞ。」


「フーーっ!!!フーっ!!クソがぁあ!!!」


即座に銃身を構えだす。

それをアニキと呼ばれる男性が羽交い絞めにしていた。


「やめとけ!モルデル!!!ここで出て、死んでったヤツをたくさん見てきただろ!!」


「おれ…俺にもやれそうなやつが…へへっ…でてきたんですよ?このくそったれの勇者もどきどもにやり返せるチャンスが目の前にあるんだ…おれぁはやりますよ。」


異常事態通告(イレギュラー)だ。無駄に命を減らすんじゃない。」


「……アニキ…モルデルさん。でも………よく考えてみてください。こいつの討伐褒賞は確実にうまいですよね?」


「………何言ってんだ?…もうこの話は終わりだ。やめろ。」


「あんななりでも(とある空虚な英雄譚)から出てきた存在ですよ?そんなの…僕らの報告で言い訳はいくらでも付くでしょう?」


「……おい…それは…」


「2人目の勇者も強大であった。それでも、2人を顕現させた負荷か、不完全体であったため、我々3人で命からがら討伐が精一杯であった…。これでいきませんか…?」


「それは…まzーー


「それがいい!!そうしようや!!!なぁ!?アニキ!これでうちも零細組織から脱出できますよ!1級対象の超常存在討伐実績有りなんて箔が付きゃ、競合に圧倒的な差をつけられるんですぜ!?」


「う、ううぅ…あ…」


話の流れでなんとなくわかる。

俺のこれからの話をしているのだ。

しかも…希望はないらしい。

あまりに俺が無力なせいで。


「…命令違反なんだぞ。」


「さすがにアニキでも忘れたなんて嘘は言えないはずです。今作戦のオブザーバーは初戦の勇者に瞬殺されたのを覚えてないんですか?」


「……」


「相手は超常存在!ことが終わった後に現場検証もできやしない!これは勝ちが決まった賭けなんですよ!!!」


「アニキ!!!!」


俺の命が吹き消される瞬間をただ痛みで虚ろになってしまった目で見届けていた。

…それでも。


「………………だめだ。」


「「は??」」


ことの行く先は想像とは違った方向に進もうとしていた。


「お前らの兄貴として、命令する。待機だ。」


「…はっ!!腰抜けが!!」


眼鏡がこちらに狙いを定める。


「おい!!ルートヴィヒ!!!!」


無慈悲な暴力は狂いなくこちらを向いていて。

そして躊躇もなくその引き金が引かれ、俺の意識はーーー


「狼藉はそこまでにしていただこうか。」


…俺と3人組の間に人がいた。

先ほどまでには確実にいなかったはずなのに。

真っ黒なロングコートが薄暗い今の時間に紛れているようで際立ち、

相手に不快を与えない程度にスーツを少し着崩して、

鋭い剣を思わせるような堂々とした立ち振る舞いに似つかわしくない、

己の身長に届くような異常なほどに大きな剣を携えた女性がそこにいた。


「ここから先は、我々{天翔生命}が引き継ぐ。関係者以外は帰投することだな。」


「……なんだと…!?{天翔生命}が動くのか…!?」


「おいおい…我関せずを貫いてた有名企業さんが今更のこのこ動くだとぉ?随分と厚顔無恥なやつらもいるもんだなぁ!?」


「………アニキっ…!」


「…?」


「…あいつはっ……!?まずいです…”名前持ち(ネームド)”です…【温もり喰らい】、{天翔生命}の部長クラス、気性が荒いことで有名な奴です。アニキここは…」


「!?…それは本当なのか…?……今回は、そのレベルが出張るくらいだというのか……くそっ貧乏くじにもほどがあるだろっ!…馬鹿が。」


乱入者によって3人組の空気が俺に対峙してた時に比べてあからさまに張り詰めだしていた。

俺は…助かるのか…?

先ほどのこともあってか迂闊に助けを求められそうにもなく、ただ痛みに耐えて無言を貫くことしか今の俺にはできなかった。

ただ天命に任せる。そのくらいしか。


「いいだろう…こちらは手を引く。……それでいいか。」


「アニキ…?で、でも最初からこの件はうちの{群民連合}が仕切ってましたよね?譲っていいんですかい?…本当に?だ、騙されてたり…」


「モルデル!いいから!今h


「あーーーーーーーーーーーーーーーーー…」


長い、とても長く間延びした声が響き渡っていた。


「「「…………………」」」


3人組どころか俺までも、その異様な様子に汗が噴き出すほどの緊張感を覚えていた。


「あーーーーーーーー……まぁいいか」


その瞬間、モルデルと言われていた男の上半身が吹き飛んでいた。

素人目に見ても、どう見ても死んだ。

あまりの出来事に、生々しく凄惨な状況に恐れおののく前に、ただ、

ただただ呆然としてしまった。

それは3人組の残された二人も同様なようで。


「ど、どういうことだ!?俺らが何かそちらに不都合なことをしたっていうのか!?」


「ーーーじゃぁ…ないだろぅ?」


「……は?」


「いいだろう。………じゃあないだろう?」


意味が分からない。


「な、何を…言って…」


言葉の意味が分かっても意味が分からない。

頭の隅ではこの意味合いのことを叫んでいるが認めたくない。

合っていたのだとしたら、ただの言葉の綾で。

人を殺したのか…?


「私は{天翔生命}の部長だ。貴様らみたいな雑兵ごときが話しかけることすら叶わぬほどの存在だぞ?」


「いや…そ、それは。」


「それが、いいだろう……だと?何様のつもりだ?」


絶対的な強者の威圧。

俺に向けられていないとはわかっていても失神しそうだと感じられるくらいだった。

目を背けたい。それすらも許さない。

そんな存在感。


「しかも…うちの社長から貴様らの飼い主伝手でわざわざ待機命令を出していただいたのに。」


「ひぃ!!」


俺を見る。

化け物が。


「これは一体どういう思考回路で行動した結果だ?」


「ち、違います。我々は待機命令を受けましたが対象に抵抗され、止む無く対抗しただけです!」


また一人。


「…………………ここまでの……出来事は報告させてもらうぞ【温もり喰らい】。」


「なんだ?私はただ、貴様らの仕事の引継ぎをしただけだぞ…?

そう。ゴミ掃除だ。」


「その行動が{群民連合}と事を構えるきっかけになるやもしれんことは……わかっているのかっ!!!」


「猿山に引きこもってるやつらがどう出たところで猿山の大将の威を借りてるくらいじゃうちの社長が出るまでもないさ。というかなんだ?お仲間がゴミ呼ばわりされてキレてるのか?」


「お前!!!」


「あっはっは!!そうだったな。曲がりにもうちの保険を利用してるんだ。お客様と呼んだほうがいいのか!?いーや!違うか!!……金があれば、の話だもんなぁ?債務者さん?」


「銭ゲバの犬がーーーーあ?」


そうして俺と女の二人きりになった。


「ふー。やあやあ。どうも勇者さん。いーい冒険日和…か?」


勇者?何を言ってるんだ。

女がこちらに近づいてくる。

もう俺はだめらしい。

昨日までの温度差に風邪をひきそうだった。

これから死ぬらしいが。

……ダメだ。怖い。


「2人目の勇者と聞いて、あまりに見え見えの貧乏くじかと思いきや、小話する余裕もあるみたいだし、もしかしたら、楽な仕事かもしれないな。」


無理無理無理。

なんで血まみれの大剣持った女に迫られなきゃいけないんだ。

勇者?かなんかと俺を勘違いしているらしいし。

何か誤解を…無理だ。口を開けない圧がある。


「ま、これからわかるか。…ちょっと待ってろ。人生最後かもしれないんだ。吸わせてくれ。」


しかもタバコみたいなものを吸いだした。

焦らしプレイはベッドの上だけで頼む。勘弁してくれ。


「…吸うか?……って勇者が吸うわけないか。」


先ほどと比べての空気の変わりように戸惑いしかなかった。

それでmーーー


「じゃあ、やろうか。」


前言撤回。

まじむり。

全部の穴から全部チビる。


「死合ってがらじゃねえ分、こっぱずかしいな…」


そうして、俺の首を。


「私が魔王だ!!!!!!」


意味の分からない言葉の意味を理解する前に俺の意識は遥か彼方に飛んでいた。



とばっちりもるでる

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