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噂好きのカンパネラ

~~~


(噂好きのカンパネラ)の観測報告書


(噂好きのカンパネラ)は表面に大小蠢く唇を携えた一番外側の大きな鐘をはじめ段階的に鐘が重なっている存在である。

活動をはじめ鐘の音を鳴らすと、小さな鐘から連鎖的に大きな鐘の音が鳴り、直近にいた人物の経験した出来事に関する噂が、周囲の鐘の音を聞いた第三者本人に再現する。

再現される事象は障害も無視し確実に実行される。

稀に現実改変を引き起こす事例も確認されている。

多くの噂が集まる場所を好む傾向があるため、他の超常存在が多く脱走した際に対象も脱走を行う。

対象が脱走した際には小さな噂でも一瞬ですべてを埋め尽くす。

対処法としては、誰も、一切合切近づかないことだ。

間違えても破壊など考えない方が良い、なぜなら---それもまた、噂になるからだ。


~~とある日の観察記録〜〜


「あなたは今日はいいことがあったんですか?ずっと笑顔ですね。」


「聞いて下さいよ室長。うちの家内で娘が生まれたんです。」


「………それはめでたい。今すぐ帰って奥さんを介抱するといい。」


「え?そういうわけには行かないですよ。これからは俺が食わせていかなきゃいけないんですから。」


「…頼む。頼むから帰ってくれ。これは強制だ。ど、どうしてそこまで恐ろしいことをしでかしてここにいられるんだ。」


「え、そんなこと言ったっtーーー


ゴオォォォオン  ゴオオオォォォオンンン


鐘が鳴る。


「君にとってはめでたいと思うがね。……………噂好きにはどう聞こえると思ったのか、君はこれから目にするだろうよ。………恨むよ君を。」


おぎゃぁぁぁぁあああ!


そうして室長と呼ばれた男は赤ん坊を産むのだ。

たとえ腹が裂けようとも。

その赤ん坊は男とは似つかずどちらかというと面影が最初の愚かな男にどこか似ていて。

おそらく、いや…確実に娘なのだろう。

娘が産まれた喜ぶべきことがそこかしこで連鎖する。


噂は広がっていく。


〜〜〜〜


「こいつは………なんだ…?浮いてる…鐘?」


勇者は乱入してきた第三者、"者"と呼んでもいいものか怪しい存在に対し戸惑っていた。


突如そこで異変が起きる。

何も攻撃を受けていないのに体のそこかしこから裂傷が発生するのだ。


「……!?今度はなんなんだ!?……猟犬は今はいないはず。…どうしてヤツに襲われたような傷が…?」


横を見ると【温もり喰らい】にも同じ現象が起きていた。


「ぐはっ!どうなっている…?管制室は?(噂好きのカンパネラ)がいるということはよほどのことが起きているというのか…?」


そうして消耗続けている2人に知らせるように鐘が鳴る。

もっと噂を聞けと。


ゴオォォォオン  ゴゴオオオオォォン


「…まずい!?」


【温もり喰らい】が飛び退いて距離を取ろうと遠ざかる。


しかし、噂に距離など関係ない。


先ほど謎の攻撃を受けたところと同じ箇所の部分がより深く抉れる。


「…クソッ!!今この鐘に対処する余裕はないっ!……ならばこそ!!」


距離を離すのかと思いきや反転。

勇者に距離を詰める。

勇者は乱入してきた鐘の対処について考えていたため、少し反応が遅れる。


「…お前ぇ!!あの怪しい鐘も無視するのか!」


「無視するわけないだろう!?あれは意志のない災害のようなもの。であれば幾分か対処がしやすい方を迅速に処理するまで!ほぅら、私のために早く物語の世界へ帰ることだ!!!」


ゴォォォン ゴオォォォオン


二人の熾烈な争いを横目にそれでも鐘の音が鳴り響く。


二人の傷もより深く、またほかの部分も浅く切りつけられていく。


噂は伝われば伝わるほどより大きくなっていくのだ。

ここではないどこかで鐘の音を聞きながら新たな傷を得てしまった者の噂も載せて。


皆の不幸も幸せも全て共有していく。

たとえそれが重複している噂でも。

それが(噂好きのカンパネラ)。


ゴォォォン ゴオォォォオン


まだ鐘は鳴り続ける。


そうして、累積する傷は剣戟を繰り広げていた【温もり喰らい】の四肢を飛ばしていく。


「……はは…なぜ、鐘の音を聞きながらも、四肢が残っているというのかね…それも勇者の特権というやつ…か…。」


それはそうだ。

勇者はHPが無くならない限り同じパフォーマンスで活動をし続ける。

四肢を飛ばされる様な攻撃を受けても、断ち切られることを絶対に許さないのだ。

流れた血や、消耗した体力は元には戻らないが。


「本当にいつになったらくたばるんだと思っていたが、さすがに四肢もなければ限界か。」


足もなくなった【温もり喰らい】がその場に崩れ落ちる。


「……寂しいか…?」


「…そうやって同情を誘っても二度も同じ手には乗らないさ。放っておいても勝手にくたばる者に介錯は要らない。というより、どうせお前はただではくたばらないんだろう?俺はやけどしたくないんでな。」


「ハッ…つまらんな……デュエットは片方だけでは成り立たないというのに…」


【温もり喰らい】は独りごちる。

 

「…まぁ、いいさ。そんなものは」


そして【温もり喰らい】は循環させ始める。

結晶を。

積もりに積もった噂に対して、遥かに大きな結晶を。

そうして【温もり喰らい】は大きな一つの結晶に包まれていく。


その結晶は勇者にも届く勢いで、辺り一面を飲み込んでいく。


「もう、ここまで来たら後戻りする気など毛頭ない!専務!!あとは頼むぞ!私はここで一度幕引きさせてもらおうか!」


まるで吹雪のような結晶が大きな結晶を中心に吹き荒れていき、場が結晶で支配される。


「本当に、期待を裏切らないな!畜生!」


あまりの猛攻に対処しきれず、

勇者はその場を離脱しようとする。


ゴオォォォオン ゴォォン


それでも無慈悲に鐘は鳴る。

今度は新しい噂を載せて。


「くぅ!?」


それはとある女の不幸の噂。

"体全体が結晶に蝕まれいく"という噂。


「今度はなんなんだ、冗談であってくれ…!これはまずいだろ!」


突然の極限状態。

後方、鐘の方を向く。

焦りに体を突き動かされつつ新たな武器を取り出し、構える。

そして体内から刻一刻と全てを停止させる結晶に迫られながらもその武器を放つのだ。

乾坤一擲の投げ槍である。


ザシュッ---!


(噂好きのカンパネラ)に槍が深く突き刺さる。

すると、たちまち表面の口がすべて叫び始める。


「縺?◆縺?>縺溘>縺溘☆縺代※縺?◆縺!」


そして、鐘が外部の衝撃によって強制的に鳴らされたのだ。


((((ゴォォオオオン  ゴオォォォオン))))


その音は一際大きく鳴り響く。

それは悲痛の叫びとも言える鐘の音。

(噂好きのカンパネラ)自身の噂。


やつは悪事を働いた。

襲ってきた。

"敵"である。


その鐘の音は遠く、遠くのほうまで響き渡っていく。


〜〜黒き森の中のある1画〜〜


猟犬は喰らい続けていた。


逃げ惑う人々を、死体を飾っていた芸術家気取りの化け物も


「waarrrrrrrrrrrnnnnn…」


頭に3つのランプが付いている存在も。


「亜ヲヲヲoo0ん!!!!」


まだ足りない、神の、自らの安寧のために。


ゴォォオオオン  ゴオォォォオン


鐘の音が聞こえる。


敵がいるだと?敵も味方もない、すべてが被食者である。


喰らうのだ。喰らうために森を駆けるのだ。


ただ愚直にひたすらに。


〜〜{天翔生命}南区画第三通路内〜〜


「もしや今の音は、(噂好きのカンパネラ)の音か…?」


{天翔生命}の専務、【破雲万丈】が討滅した(懺悔の窓)の脱け殻の上でそう恐ろしい疑問を口に出す。


「専務!精神耐性の低い者たちが一斉にさらに南の方へ誘導されてます!」


信じたくもない事実が知らされる。


「……どこのどいつだ!(噂好きのカンパネラ)を攻撃した者は!…ふぅ、掃除してもいくらでもゴミは湧いてくるものだな…」


{天翔生命}の主力の集団も立て続けの連戦に半数近く殉職して消耗してる中での精神誘導、それも(噂好きのカンパネラ)の非常事態の鐘の音。


活路は一つしか無かった。


「しょうがない。我々もその地点に向かう!十中八九(噂好きのカンパネラ)の悲鳴だ!そこに我々の仲間、もしくは今回の主犯もいるはず!諸君、次が正念場だぞ!」


そうして、{天翔生命}の主力集団は勇者の元へ向かう。


〜〜{天翔生命}北東区画特級個室の一つ〜〜


「はぁ〜、こいつはまずいなぁ。おじさんがいなくても何とかなると踏んだんだがなぁ。」


薄暗い個室の中に1つあるデスクで【贖う壺】が呟く。

その目に映るのは一枚のモニター。


「本当に困ったもんだ…」


それは、{天翔生命}でも1体しか存在しない特級指定の超常存在の管制モニター。

その超常存在の名は…


「(拍動の生命器官)…か。社長、噂ごときにあんたが動くのかい…」


事態は終わりへと向かっていた。終末か、終焉か。

そのどちらであるかはこの瞬間では誰もわかりようがなかった。


〜〜〜

めっちゃ休んでました

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