それでも積み木は芸術だから
子はかすがい、という言葉にかっちり当てはまる。彼とわたしは別れた元夫婦、2人の子供は、
親権どうするの?
あなたでしょ。というあっさりした会話で1秒も揉めずに私の権利となった。(即答され当時は睨みつけていたと思う)
この人とわたしにいくらかは2人で育児したという時間がなければ、きっと今頃、先代の元彼達と同様に死んでも連絡が来ない間柄であったな〜と思う。
なんでそうなった!ってちょっと笑って人に話すのだけれど別れてからの方がお互いの気持ちに気づいて仲が良くなった。これは屈折気味の自慢になっている。
冷たい雨の中、傘を持たなかったから助けてとドラックストアの前で空を眺めた。南国にありがちなスコールなら良かったのにどうも止みそうにない。そういう土砂降りで電話の声もやっと聞こえる。‥え、やだよ、1人で帰って来たら。‥あ、はい。
電話する前から期待が薄かったのは彼が心を閉じてる目をしていたからだ。同じ部屋に子供2人残すのも少し気になるくらいの小さく淀んだ黒目だった。
こんなに降っていてビッシャビシャで買い物したリュックはパンパンで私以外にそんな人は見当たらないから、ぎりぎりの尊厳を保たせて悲しくない顔で家に帰る。
思えばこの頃から家に親は2人いるけどシングルマザーみたいに見える。最後の2ヶ月、長いお通夜にしか見えない。言えない感情を積み上げて作った暗闇に私はやっとお疲れ様をした。積み木は壊すためにある。私たちは積み木レベルの夫婦です。
彼はというと、感情表現が下手なので対して喋りもしない。ただ、娘の保育園に出す連絡ノートは夫婦で取り組んでいたのでその部分は読んでいた気配がある。
ぱぱも娘達も笑顔で順調に進んでいるのに私だけが一つの車の車輪を動かすことができない。家族という車の下敷きの様だ、と。書いたのは最初の一文で続きは自分の日記だけに書いた気がする。保育園ではお別れ会はせずに母の実家でひと休み、と扱ってもらった。担任の先生は元気になってお会いできるのを楽しみにしています。お大事に。とノートを締め括ってくれて、泣いてしまうからどこかに仕舞ったまんまだ。
こうして振り返ると、彼の
働かないの?あなたが動かないと娘の保育園生活も終わっちゃうよ!とか。(保育を必要とする家庭のみが通える仕組み)
精神科に連れて行けばいいの?と追い討ちをかけられた事を思い出す。私は2人目を産んだ後に首の座らない次女を後部座席に乗せ、長女を助手席に乗せてひとり、遠い遠い保育所まで1時間以上車を走らせていた。臨月に差し掛かる頃にトラブルがあり前の家を出されていた。元夫は飛行機でしか会えない島に働きに行ってしまった。なんでそんな職場を選択したのか、このことが離婚の決定打かも知れない。
暴れに暴れて電話で怒鳴る事2回、やっと仕事を辞めて帰った夫は離職の理由に妻の産後うつと言ってきたと言う。そのうえ、下手な冗談風を装い、あなたが居なければあの役職を失わなかったのに〜と食事の後に言った。
随分な話だけどあれから3年経過している。
わたしは元気になった。しかも当てつけではなく今の方が幸せだ。その幸せに彼との人間関係の回復が大きく関わっている。
書けばまだ涙が出るし、心が熱くなり興奮する気持ちが残っている。これは傷だろうか。
海のそばで赤ちゃんを抱いて小さな彼女達のためにやっと笑ってみたり、誰も居ないのがわかって大声で泣いたりした。
地元なんて好きじゃないけど去年もその前も今年も雪の中にいる。
精神科ではカウンセリングのみ希望して何度か通った。そこで体そのものが離れていた夫の遠過ぎる単身赴任よりも遠くても心が通ってることを望む、その本音を少しずつ見つけて語り合う。この気持ちは今も誰に対してもある。いくら毎日同じテーブルでいただきますっ!と声を揃えても関心どころか必要事項以外はあなたの話になんか興味はないとスマホを握られたら。ほんのりミステリアスでも顔も見れなくてもして当たり前だと互いに威張ってないで心から感謝できたほうがいい。2人して大人が並んで先に奪うか盗られるかと戦々恐々だった。
俺の色に染めたいタイプというのも私には一癖あり過ぎる。そんな男に合わせて程よく可愛く居場所を陣取って仕舞えばいい。私の様に真面目になって相手を怖がって口を縫い付けて仕舞いに自分を見失う、そんな人には無理だった。閉じた心で縋りつき我儘を聴かせたり報酬の様に愛を強請っては無理だ。あなたの愛に付き合うのはサービスよ♡と強気でいられたらいい。自立するしかない。飢えた心に愛に見える恋人は劇薬だった。境界線が曖昧になることをお互いに不安では無かったのだろうか。パーソナルスペースを侵すのは恋だからありなのか。でも夫婦になったらより奪った者がルールを握り出した。
自分の葬式を棺桶の中で演じながらそのままのポーズでお経も読んで何日もかけてお通夜を開いてしまっていたのでそれは辞めた。
彼は真面目だし、わたしは好奇心旺盛だ。わたしも真面目だし、彼は自由が第一でなければ彼ではない。
ありがとうございます。