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シブヤ

「と言うか、割りとあっさり入れたなー。ダンジョンカードも使えたし。……位階レベルもスキルもリセットされてるっぽいけど、マナはいっしょってことなのかな」


 渋谷ダンジョン第一層。


 ダンジョン内は空間が歪曲しているとしか思えないような広さを誇っている。外部から観測したなら明らかに道理が合わない異界。それがダンジョンだ。最奥は行き止まりか、それともどこかに繋がっているのか……以前として底が見えないほどに広大なことだけは間違いない。


 渋谷ダンジョンも例外ではなく、第一層から第五層までは既存の設備をコピー&ペーストしたような構造が入り組んだように広がっている。第六層はダンジョンには自動修復機能が備わっているにも関わらず『廃墟』のようになったもの。それが第九層に至るまで少しずつさらに荒廃した風景になり……第十層は階層主、フロアボスの階層だ。


 この身体はスキップできるのか、それとも『まだ一度も戦っていない判定』を受けるのか――十層ごとにあるフロアボスの間には『一度倒したことがある』者だけが見える『扉』が出現し、それを通ればフロアボスと戦うことなく階層を進むことができる――それはわからないが、この身体の感覚を掴むまではまだ先のことだろう。



「……とりあえず、どこまで通用するか、かな」



 シブヤの第一層は人が多い。良くも悪くも『MOBモンスターよりモブ(群衆)が多い』なんて言われるくらいには人が多い。ほんとうに良くも悪くも人が多いので初心者向けの講習なんかも行われているが……さすがにそれに混ざるのは申し訳ない。身バレの可能性もあるし。



(と言うか、ボク、戸籍が存在しない身体だった。注目受けるの気持ちいいとか言ってる場合じゃなかったな。ダンジョンカードに登録されてある人と違いますけど? ってされたら面倒くさいことになりそう)



 今更になってアオイはそのことに思い至った。『せっかくこんな美少女になったのだからチヤホヤされたい』という思いが強すぎてつい忘れてしまっていたらしい。



(でも、ダンジョンカードはその人のマナの……固有波動係数? だっけ? なんかそういうのを参考にして個人識別をしているとかって話だったし、これが使えてる時点でボクのマナは前の身体と共通している。ただ、ステータスはリセットされてるっぽいんだよなー。スキルボードも何にもないし……ボクの身体、どうなってるんだろ)



 自分の体はいったいどうなってしまったのか。今更過ぎる思考だが、未だにその謎を解く手がかりすら一つも見つけることができない。

 まあでも考えたところで解決できるとは思えないのでアオイは考えることをやめた。あきらめがはやい。



「……でも、マナがあるってことはぜんぶがリセットされてるってわけじゃないよね」



『ダンジョンカードを使用できる』ということは、すなわち、その身にマナが備わっているということだ。


 マナ――魔力でも魔素でもなんでもいいが、これがどういうものなのかは未だ判明していない。ただ様々な用途に転用可能なフシギエネルギーだということであり、ゲームなんかに出てくるような『謎のエネルギー』ということだ。


 既存の物理法則から外れている力。自然法則を超越した魔。故に『魔力』と呼ばれることも多い。


 他にも『第五の力(フィフス・フォース)』や、単に『フォース』などと呼ばれることも。『Dフォース』や『Dファクター』、『ダンパワ』や『力』……とにかく個人個人が好き勝手に呼んだためにしっちゃかめっちゃかになり非常に検索しにくい言葉になってしまっている。

 ちなみにダンジョン管理局は『マナ』と呼ぶことが多い。(たまに内部でどんなブレがあるのか『魔力』と表記されることもある)



 とまあ名前はどうでもよく、とにかくその謎のフシギエネルギーであるマナだが、言うまでもなく地球に存在していたとは思えない力だ。


 実際、一部の例外を除けばダンジョンに入ったことがない人間はマナを持たない。


 ただ、一度でもダンジョン内でMOBを倒すことがあれば――その身にマナが備わる。


 レベルゼロからレベル1に。


 その人間に不可逆的な変化をもたらす。


 理屈は未だに解明されていないが――『そういうふうになっている』。



「……まあ、難しいこと考えてもわかんないし」



 アオイは転がる石ころ――ここを通った探索者が壁や床を破壊してできたものだろう。ダンジョンには自動修復・清掃機能が備わっており、一定時間が経てば元通りになってしまうものだが、それが働く前であれば取得することは可能――をいくつか拾い、スカートの中に忍ばせた。



「レベル上げしながら、行けるとこまで行ってみますか」



 ちょうどそのとき、物陰からポップしたスライムが顔を出した。


 アオイはそれに視線を向けることすらなく石を投げる。


 大した速度も出ていないそれは、しかし、的確にコアを捉えており。


 もちろん、第一層にポップするスライムとは言え、少女の一投でそのゼリー状の身体を貫くことはできず――ただ凹み、石がコアに触れるだけにとどまり。



「まずは、一匹」



 その凹んだ場所をアオイは踏み抜きコアを砕いた。


 ……うん。この身体でも、行けそうかな。


 スライムは経験値効率悪いし、そもそも人が多すぎてなかなかエンカウントすらできないし――もうちょっと稼ぎやすそうなところまで潜らなきゃ。


 経験値的な意味でも、金銭的な意味でも稼がなければいけない。


 せめて今日の食費くらいは。


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