少年少女の成長って早すぎて自分が情けなくなってくるんですけど!
未成年の男の子におっぱい触らせるのってどう考えてもダメだよね。
どうも、アオイです。未成年淫行と罵られても仕方ない犯罪者です。ちょっとお酒に酔っちゃったとは言え、さすがに反省しなきゃだよな~。
とは言え、めちゃくちゃ楽しかったことは否定できない。めちゃくちゃ……めちゃくちゃ楽しかった!
これ絶対ダメな思考なんだけど、ユートくんも悪い気持ちじゃなかったと思うんだよね。ボクならボクみたいな美少女に迫られるとか一生の思い出レベルだと思う。あと今のボクってどう見ても成年には見えないし。未成年同士の淫行に関してはセーフとかない? 法律とか詳しくないからわかんないんだけどさぁー。
ユートくんの反応もめちゃくちゃ良かったし。男の子って感じで良い。楽しい。すべて人類は美少女になって民衆を翻弄したいという欲求を抱いていると思うけれど、その例に漏れずボクも人々を翻弄したいという欲求を持っているわけですよ。からかいたい。からかい上手のアオイさんだね。
でも『えっちなお姉さん』枠になるのはなぁー。難しいところだよね。セルフプロデュース。この見た目だし、あんまりえっちなのはちょっと……ボクもあんまりえっちなのはアレだし。おっぱいとかハグまでかな。ちゅーとかは厳しい。と言うか粘膜接触全般? あと裸を見られるのも恥ずかしいかなー。
とか思ってたらおっぱい触られて「ひゃんっ」ってなっちゃったわけだけどね。「ひゃんっ」って。自分の口から出るとは思わなかったよね。うそです。割りと出てる。セルフなプレジャーなときにね。うん。ボクの声かわいすぎるから声出しながらヤるの良すぎるんだよな。自分で自分に興奮できる。池に落ちるのもなるほどって感じ。これがホントの自家発電、つって! ……さすがに下品か。
しかし、おっぱい触られるだけでああなっちゃうとは……開発を頑張りすぎてしまったかな。これでは『大丈夫? おっぱい触る?』がやりにくくなってしまう。そんなんやりにくいままのほうがいいって? それはそう。
まあユートくんも気絶するくらい喜んでくれたみたいだし結果オーライということにいたしましょう。その前にいろんな探索者の人もからかいまくったけど……割と一瞬で倒しちゃったからな。かわいさでノックアウトしてしまった。物理的に。そういう意味ではユートくんがいちばん『やりがい』があったかもしれない。ボクの魅力にあそこまで抗えるとは……ユートくんはすごいぜ。ボクなら絶対瞬殺だからね。ボクの欲望への弱さを……舐めるな!
ってことでカレンからのお説教も聞き流していたわけなんだけど……そこで思ったんだよね。途中で終わっちゃったし、ユートくんへの『ご褒美』を満足に渡せてあげられてなくない? って。
いや、ユートくんは喜んでくれたと思う。一生の思い出レベルで喜んでくれたとは思うよ? でも、ちょっと不完全燃焼な感も否めないわけじゃないですか。ボクはそう思う。
なら、他の『ご褒美』をあげないとね。
「ね、エドワードさん」
アオイはカレンの騎士、エドワードに声をかける。カレンたちを楽しそうに見る彼は眉を上げ、「何かな? アオイ嬢」とアオイに向き直る。
「さっきのカレンとユートくんたちの戦いの映像、ユートくんにも渡してくれない?」
その言葉には勇斗たちも反応した。驚きながら振り返る彼らを気にすることなく、エドワードは困ったように肩をすくめる。
「アオイ嬢、君は知らなかったようだが、あの訓練場はあの試合のときだけ『配信禁止』の設定になっていてね」
「だから?」アオイは微笑む。「べつに映像に残すのって『配信くん』の専売特許じゃないでしょ?」
勇斗がハッとして周囲を見る。そんな彼にアオイは「ああ、大丈夫だよ。他に録画してた人とはもう話がついてるから」と声をかける。
「それで? エドワードさん――と言うより、カレンかな。映像の提供は許可される?」
「べつにいいわよ」エドワードを飛び越えてカレンが答える。「エド。渡してあげなさい」
「誤魔化しようがありませんね」エドワードは懐からデータを保存しているマイクロSDカードの入ったケースを取り出す。「少年。形式は何が良い? USBメモリのほうが良かったかな?」
「どっちでも大丈夫です」勇斗が頭を下げる。「ありがとうございます。……参考にさせていただきます」
あの戦いを客観的に見返すことができるということの意味は大きい。カレンにとっても無意味ではないが、どちらかと言えば勇斗にとってのほうが大きいだろう。
「うんうん」アオイが満足げにうなずく。「あとは……アズサちゃんかな」
「へ?」梓がぱちくりと目を瞬かせる。「な、なんでしょうか」
「アズサちゃんは何か欲しいものある? キミも頑張ったし、何かご褒美をあげないとって思ってたんだよね~」
軽い口で言うが、梓としてはいきなりのことで動揺する。アオイにご褒美をもらうなら――アオイは美少女だ。性別の壁を超越している。梓だって彼女にしてほしいことはある。改めて考えるとこうやって間近で見られるだけで幸せだし――素直に欲望に従うなら、は、ハグとか、してほしいかも。
そう思うが、しかし。
「……ユートくんとわたしが強くなるためには、どうすればいいですか」
今聞くべきは、こっちだと思った。
「うん? ボクは今のままでいいと思うけど……カレンとの戦いで『すぐに』強くなりたいって思ったのかな」
すぐに強くならなくちゃいけない、か。アオイは眩しいものを見たときのように目を細める。
「まあ、アズサちゃんはやりようによっては今すぐダンジョンに潜ってもそのまま第百層にだって行けるだろうからね。キミのギフトはそういうギフトだ。そういう意味では『そう』することがキミにとっては最短の道だろうけど」
アオイはふるふると首を振る。「個人的に、それはオススメしない。ボクが逆の立場だったら絶対できないし。地道に頑張るしかないんじゃない? 楽な道なんてないよ。ボクだってそんなものがあるならそっちを選ぶけど、なかなか、ね」
しかし、梓の顔は晴れない。「……でも」
「また今回みたいなことが起こったら、って?」アオイは下唇を人差し指でむにと上げる。「んー、それはそうなんだけど……ふふっ、どうすればいいんだろうね」
「……師匠、それはどうかと思うわ」
『どうすればいいんだろうね』なんて無責任なことを言うアオイにカレンは呆れた調子で突っ込む。そんなカレンにアオイは「えー」と声を上げ、
「だって『自分より圧倒的に強いもの』といきなり戦うことになるー、って、そりゃないことじゃないけど……そのときにどうするかって『逃げる』しかなくない? 裏技で強くなれたとしても、それでもさらに上回る相手に来られたら負けるじゃん」
ボクだってそうだし、とアオイ。「逃げられなかったら戦うしかないかもしれないし、その場合はもちろん頑張るしかないんだけどね。あと、逃げる以外だったら『助けを呼ぶ』かな」
「助けを……」
「そうそう」勇斗と梓にアオイは指を振る。「ダンジョンだったら配信しかないかもだけど……それ以外の場所だったら、どうにでもなるでしょ。ボクも居るし、カレンもエドワードさんも……オオカミのお兄さんとも知り合いでしょ? それに何より、サキさんだって」
だから、とアオイは梓に微笑みかける。「地道に頑張っていくしかないんじゃない? それで満足できないなら……これ以上は弟子に恨まれたくないからやめておこうかな」
どうやら、梓は既にカレンに頼っているようだ。カレンにはカレンの考えもあるだろうし、とりあえずは自分が口出しするのはやめておく。ボクにも考えはあるけど――本当に、オススメしないからね。
人間はそんなに強くない。心を強く持てる人なんて少数だ。探索者なんて志す人はある程度心が強い人も多いけれど――それは『体力』でカバーできるところも大きい。いつ来るとも知れぬ襲撃に警戒しながら長時間歩き続けることが求められる探索を生業にすることを選ぶなんていう人間だ。最低限の精神力はないと難しい。ボクは……まあ、実際、歩くのはメンドいからね。だいぶ。警戒する必要がないってだけで。『気を張り詰める』がないだけでだいぶ違うと思う。もしそんな状況を求められるんだったらボクはすぐに挫折してるね。
そして、ボクの見立てではアズサちゃんは『こっち』に近い女の子だ。そのギフトが影響しているのか……彼女の場合は『体力』のほうを気にする必要がないだろうから。体力を考慮する必要がない。体力の消耗、疲労によって精神に影響を及ぼすようなことがない。
つまり、彼女は『精神』が強くて探索者になったんじゃない。
心が強いわけじゃない。
(……もっとも、それもちょっと変わってきたかもなんだけど)
さっき『強くなるためには』と聞いてきたときには驚いた。この年頃の子の成長は驚くほどに早いものだ。
ただ、それでもいきなりユートくんとかそのクラスにまで心が強くなったりはしないだろう。人は変わらないことはない。割りと変わる。急激に変わることも、なくはない――けど、ほとんどの場合はちょっとずつしか変われない。
ボクの考えるアズサちゃんのギフトの『最効率』を実践するのはアズサちゃんには厳しいだろう。ボクは絶対ムリ。アズサちゃんは成長したらワンチャンあるかも? レベル。カレンだと……どうだろ。ユートくんならたぶんいける。エアさんとかサキさんとかでも大丈夫そう。でも、そこらへんと比べたって仕方ない。できないことはできないわけだからね。仕方ない、仕方ない。
「……ねぇ、師匠」
すす、とカレンが静かに近づいてきてこそこそと話す。ん? なになに?
「アズサのギフトがやりようによっては『第百層まで行ける』って聞こえたのだけれど……」
「え? あー……」
アズサちゃんは……気付いてないっぽいけど、「わたし、がんばるね」なんて言うアズサちゃんに「そう、だな」なんて返してるユートくんは……気付いてるっぽいな。
でも、ユートくんは『やりようによっては』ってことも『それがアズサちゃんにはできないだろう』ってこともわかっているはずだ。ただ、改めてそう口にされると思うところがあるだけで。
カレンは――ああ、そうか。アズサちゃんのギフトがどんなものかなんとなくはわかっていても、その詳細までは知らない感じかな? まあ、直接聞いたわけじゃないっぽいから『なんとなく』わかってるだけでも察しは良いほうかなー。
「……今の、聞かなかったことにできない?」
「できるわけないでしょう。……いえ、いいわ。言わないで。アズサから直接聞くことにする」
「ん。そうしたほうがいいだろうね。アズサちゃんにとっても、カレンにとっても」
はぁ、とカレンが疲れたように息をつく。額に手を当て、髪をかきあげる。相当に衝撃が大きかったようだ。
「雷神級? いえ、いくら雷神だっていきなりそんなこと……神のギフトよりも上なんて……」
「声に出てる声に出てる」
「わかってるわよ。……師匠こそ、そんな情報をうっかり漏らさないでほしいわ」
「えへへー」
「かわいさで誤魔化せるのはアナタのファンだけだって覚えておいたほうがいいわよ」
おお、ボクのかわいさでごまかされないとは……カレンもやっぱりなかなかの精神力をしている。いやー、鍛え甲斐がありそうですなぁ。
「反省の言葉は?」
「ごめんなさい」
しかし逃げられなかった。
アオイは素直に謝罪の言葉を口にする。
「私じゃなくてアズサにでしょ」
「あっ、はい。……アズサちゃん、ユートくん、ごめんなさい」
「えっ……あ、いえ、だいじょうぶです。ここに居る人だったら、べつに知られても……ね? ユートくん」
「いや、それでも隠したほうがいいとは思うが……」
「えっ」
梓が唖然として口を開く。「……そ、そうだった? ごめんなさい……」
「いや、梓が謝ることじゃないけどな? まあ、アオイはもう知ってたみたいだし……カレン・ウォーカーにも話すつもりだったんだろ?」
「う、うん」
「なら、まあ……梓がそれでいいなら、俺から言うことはない」
ということで、アオイは許された。やったぁ! アオイはぴょんっと跳び上がった。
「すぐ調子に乗り過ぎでしょう」
「反省の色が見えない」
許されたと見るやすぐさま調子を戻すと苦言を呈されてしまった。
げせぬ。許して……くれたじゃん……! ふんわりと拳を握りしめながらアオイはぷるぷる震えた。怒りのポーズである。
ついでに反省もした。わかりやすいようにごろんと寝転んでお腹を見せる。わんわん。きゃうーん。
「降伏?」
「撫でろってこと?」
絶対反省してないじゃん……そう呆れた目で見る勇斗とカレンだったが、梓だけはととててとアオイに近づいて「よしよし」とアオイを撫でた。
沢木梓、犬派である。
絶対そういう問題じゃなかったが、微笑ましい光景に見えないこともなかったのでよしとする。
……いやらしい光景に見えたとすればそれは見る者の目が曇っているだけである。
反省してほしい。
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