表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しょうもなおじさん、ダンジョンに行く  作者: 埴輪庭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

237/280

歳三という男

 ◆


「ちょっと! さっきから聞いていれば散々な言われようですけれど、私はモンスターでもないし蒼島さんが言うような危険な存在なんかじゃないですよ!」


 マリが憤慨しながら言う。


 目つきは険しく、顔は紅潮し、小さな手をぎゅっと握りしめている。


「というか、いきなり殺しに来ましたよね!? それに、私になぜこんなところにいるなんて質問をしていたのちゃんと聞いていましたよ。もしかして誰かと間違えているんですか? その人と蒼島さんの関係がどうであれ、いきなり攻撃してくるなんて、それこそ蒼島さんが言う"危険な存在"って言うやつなんじゃないですか? 歳三さんはどう思います?」


 そんなことを言われてもな、というのが歳三の偽らざる本音である。


 歳三が蒼島に対して思うところは危険な存在なんてものではなく、心は弱いが若いのに乙級にまで上り詰めた顔見知りの青年……といった所だ。


 探索者協会所属と思われる"同僚"にいきなり攻撃するというのは確かに褒められたことではないかもしれないが、それはあくまでも蒼島の価値観による行為であって、自身には関係がない……などと歳三は考えていた。


 これは非常にシビアでウルトラドライな価値観だ。


 要するに結局のところマリも蒼島も所詮は他人なのだから自分の知ったことではないということだからだ。


 ただ、仮に蒼島とマリが本格的な戦闘となった場合、歳三はもちろん蒼島に助太刀するつもりではあった。


 なぜなら所詮他人とは言っても、マリよりも蒼島の方がわずかに付き合いが長いからである。


 先ほど蒼島の攻撃を妨害したのも、マリを心配したからではなく蒼島が罪の意識を膨れ上がらせることがないようにという理由による。


 ・

 ・

 ・


「まあよくわからないけど、敵じゃないと言っているんだし信じてもいいんじゃないかな」


 歳三がゲロ甘なことを言う。


「……っ」


 蒼島は非常に渋々と言った様子で頷き、ふと歳三の目を、いやその精神をわずかに覗き見た。


 考えていることを読み取るというほど深くは覗かない。


 というのも、この手のマインドリーディングめいたPSI能力は察知することも可能だからだ。


 もちろん蒼島ほどの達人ならば能力の行使を隠蔽することもできるが、それとて相手による。よほど敏感なものならばどれだけ隠蔽しても察知されてしまうこともある。


 蒼島と飯島比呂らが遭遇した際、蒼島は隠ぺいされたPSI能力を行使しようとしたが、それを鶴見翔子によって察知された様に。


 しかし、そんな危険を侵してでも蒼島は歳三の真意が知りたくなってしまった。


 結句、蒼島は歳三の精神のその殺伐さに気づいてしまう。


 ──この人は口ではこんなことを言っているけれど、本心は真逆だ。敵じゃないと言っているから信じてもいい、なんて言っていたけど内心はそうじゃない。敵だと分かればその時始末すればいい、そう考えている。これ自体は僕も何とも思わない。そのくらい割り切れないと探索者になって仕事はできない。でも……


「佐古さん、1つ聞いていいですか。僕のことは味方だと思っていますか」


 蒼島の口調は奇妙に抑揚がない。


「なンですかい、急に。もちろん蒼島君……さん、は味方でしょうよ」


 妙にたどたどしいのは後ろめたいからというわけではなく、ここに及んでいまだにさん付けか君付けかで悩んでいるからだ。


 探索者としては自身が先輩にあたり、年もまた歳三が年上である。


 歳三のつたない社会経験から考えると、こういった場合君付けが多かったような気がするがゆえの懊悩。


 そこまで認識がない蒼島に対していきなり君付けというのは果たしてどうなんだろうか……そんなしょうもないことを考えている歳三であった。


 そんな歳三の答えを受けて、蒼島はただ「良かった」とだけ答え、笑顔を浮かべる。


 内心を押し隠したまま。


 ──違う。この人は僕に対しても()()思っている


 蒼島の推察通りだ。


 確かに歳三は()()思っていた。


 ()()とは、要するに必要があれば蒼島も手に掛けるという事だ。


 ただ、歳三は別に嘘をついているわけではない。


 歳三の考える味方と、蒼島の考えるそれが一致しないだけである。


 佐古 歳三という男にとって、()()とは身内ではない、ただそれだけの話であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20250508現在、最近書いたやつ


最新異世界恋愛。ただテンプレは若干外して、父親を裏主人公としました。裏ではヤクザみたいなことしてるパパ。
完結済『毒蛇の巣』


先日、こちら完結しました。47歳となるおじさんはしょうもないおじさんだ。でもおじさんはしょうもなくないおじさんになりたかった。過日の過ちを認め、社会に再び居場所を作るべく努力する。
しょうもなおじさん、ダンジョンに行く



女の子、二人。お互いに抱くのは好きという気持ち。でもその形は互いに少し違っていて
完結済『好きのカタチ』

男は似非霊能力者のはずなのに、なぜかバンバン除霊を成功させてしまう
完結済 GHOST FAKER~似非霊能者なのに何故か除霊してしまう男~

他の連載作


現代ダンジョンもの。もなおじは余りメインキャラが死なないが、こちらはバシバシ死ぬ
【屍の塔~恋人を生き返らせる為、俺は100のダンジョンに挑む】

愛する母に格好いい姿を見せたいがために努力を重ねた天才──悪役令息ハインのマザコン無双伝
悪役令息はママがちゅき

戦場の空に描かれた死の円に、青年は過日の思い出を見る。その瞬間、青年の心に火が点った
相死の円、相愛の環(短編恋愛)

過労死寸前の青年はなぜか死なない。ナニカに護られているからだ…
しんどい君(短編ホラー)

夜更かし癖が治らない少年は母親からこんな話を聞いた。それ以来奇妙な夢を見る
おおめだま(短編ホラー)

街灯が少ない田舎町に引っ越してきた少女。夜道で色々なモノに出遭う
おくらいさん(短編ホラー)

彼は彼女を護ると約束した
約束(短編ホラー)

ニコニコ静画・コミックウォーカーなどでコミカライズ連載中。無料なのでぜひ。ダークファンタジー風味のハイファン。術師の青年が大陸を旅する
イマドキのサバサバ冒険者

前世で過労死した青年のハートは完全にブレイクした。100円ライターの様に使い捨てられくたばるのはもうごめんだ。今世では必要とされ、惜しまれながら"死にたい"
Memento Mori~希死念慮冒険者の死に場所探し~

SF日常系。「君」はろくでなしのクソッタレだ。しかしなぜか憎めない。借金のカタに危険なサイバネ手術を受け、惑星調査で金を稼ぐ
★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)

ハイファン中編。完結済み。"酔いどれ騎士" サイラスは亡国の騎士だ。大切なモノは全て失った。護るべき国は無く、守るべき家族も亡い。そんな彼はある時、やはり自身と同じ様に全てを失った少女と出会う。
継ぐ人

ハイファン、ウィザードリィ風。ダンジョンに「君」の人生がある
ダンジョン仕草

ローファン、バトルホラー。鈴木よしおは霊能者である。怒りこそがよしおの除霊の根源である。そして彼が怒りを忘れる事は決してない。なぜなら彼の元妻は既に浮気相手の子供を出産しているからだ。しかも浮気相手は彼が信頼していた元上司であった。よしおは怒り続ける。「――憎い、憎い、憎い。愛していた元妻が、信頼していた元上司が。そしてなによりも愛と信頼を不変のものだと盲目に信じ込んで、それらを磨き上げる事を怠った自分自身が」
鈴木よしお地獄道



まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ