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カシコイ叔父さんの愉快な家族たち①

トエムが生まれて3年が過ぎようとしている。


朝起きて朝のジョギングを足が痙攣するまで続けるようになったトエム。

飛行魔法に頼りすぎで筋力がなまったと言う事。


ふと思えば四季と言うものがなく、年がら年中春ような都合のいい気候だ。

冬は全裸、夏はセーターというウキウキファッションができずちょっと寂しいトエム。


そんな彼は半年前から多忙である。


カシコイの錬金術スキルにより雷魔石を完成した事を皮切りに工房の発明は飛躍する。


元々、発想の完成形を知るトエムは、ノウキーン工房の職人たちにガンガン発案書を送り付ける。


前世はブラック企業をマニュアルでホワイトにしてしまった男。

発案書や改善事項などはめちゃくちゃ読みやすい。


ドワーフが工房長ということで、最初は工房を造った時のメンバーしか居なかったが

あまりにも文明錯誤のオーパーツを造り続けるため

選りすぐり全40名の生産職が最終的に集まった。


初期メンバーで作った、蒸留器(酒用)・電動機モーター・プロペラ・電球・洗濯機・扇風機・沸騰機・マイクなど、


完成品を見て、集ったメンバーで、カメラ・クーラー・録音機・印刷機・電気コンロ・オーブン・ミシンなどがある。


そして今着手しているものが、電話・電気バイク・ヘリ・電車・戦員搭載型決戦ゴーレムなど。


遊びが少なすぎるので、リハージ・トランプ・将棋などを作り、


日用品では、泡だて器・七輪・ハサミ・洗剤・化粧品などなど


そしてインフレの代名詞、セメント。


とにかく思いつくままに造りまくった結果、

現在できている商品すべての生産が間に合ってない状態になる。


そこで思い切って設計図を高値で売り、

次の製造の予算にする方針に決めた。


そもそもトエムは自分の発想でもない物を秘匿する気はなく、

ガンガン流失してどんどん文明を世界で発展すればいいと思っている。


時には、トエム自身が間者を見つけ、

無理くり設計図を持たせ、放出することもあった。


そんなトエムを職人たちは崇拝し、

陰でトエム教を設立していた。


そんな濃い半年間が過ぎ、父親が帰って来た。





「ここは一体どこだ?」


半年ぶりに帰って来たプロティンの一言。


深夜だというのに昼間のような明るさ。


整備された平面の道路。


深夜に関わらず活気のある居酒屋通り(最近できた)


別の領土と間違えたかな?とプロティンは部下に尋ねようとしたとき、


「やや!領主様のお帰りだ道を開けろおおお」


一人の酔っぱらいを大声を上げると、盛大な拍手と共に道が開く、


「りょうしゅ!りょうしゅ!りょうしゅ!」


鳴りやまない拍手と歓迎ムードに困惑するプロティンと連れの騎士達。

この様な手厚い出迎えは真昼間でも行われたことはない。


今は深夜であり、近所迷惑が心配なほどである。


そもそも深夜に来たのは領民の不満を知っていたからであり、

プロティンや部下の騎士達は困惑しながら、それぞれの家へ帰宅していく。


プロティンが屋敷に戻ると、カシコイとニュウ、それに執事長のセバスが出迎えた。


「旦那様~おかえりなさいませ!」


満面の笑顔で出迎えた妻の顔には、以前のような顔の陰りは見えなくなった。

代わりに、領主代行を任せているカシコイの顔は物凄いクマが浮き出ている


「うむ、出迎えご苦労。それより、カシコイ殿は無事か!」


「もちろんです!以前より楽しすぎて寝る暇がありませんよ!」


「楽しい?ふむ…まぁ募る話はわしの執務室で聞こうか」



執務室


「なんだっそらッ!!!!」


プロティンは思わず立ち上がり大声を上げた。

あまりのも馬鹿げた話を聞いたからだ。


カシコイの話によれば、


納税率が一年間で721%向上。


数々のオーパーツを開発。


それによって職に就けなかった生産職や支援職の需要が急増。就職率が17倍に増加。


スラム街を解体、一大歓楽街へと改造。


スラムの子供や職に就けない人を支援するノウキーン家支援組織『寺子屋』の設立など。


もはや衰退気味の公爵家領地はどこ?ココ?状態である。


「いやぁ~カシコイ様の手腕には驚かされるばかりです。執事を長年やっていると様々な人に出会いますが、これほどの傑物と出会ったのは初めてですな!」


上機嫌の執事長セバスの話を聞いたところでプロティンは泣いてしまった。

ちなみにアイデアはすべてトエムなのだが、そこは執事長にも秘密である。


「カシコイ殿!切に!切に!感謝を申し上げる!他家の、しかも公爵家の領土を著しく発展していただいた事、お礼のしようがない…」


「かしこまらずとも良いですよプロティン殿、私もこれほど楽しく生活を送れる日が来るとは思ってもみませんでした…たった一年でこれですからね…もう自分の領土に戻ることはありませんよ!」


「…言い切られてしまうとそれもどうかと…しかし、カシコイ殿がいてくださる限り我が領の繁栄は約束されたようなものですな!ガハハハハッ」


「そうね!カシコイが居てくれて本当に本当に感謝だわ!」


「プロティン様、これから祖先から続く我が領土は最高の繁栄を迎えまずぞ~」


と、盛大なフラグと共に夜は明けてゆく。

「あれっ?カシコイ殿って家庭教師として呼ばなかったっけ?」というプロティンの野暮な思想は本人の胸にしまいながら…





そして、事件は翌朝起きた。


「プロティン様、大変でございます!」


勢いよく寝室の戸を叩くのはセバス。

となりで寝ているニュウとトエムを起こさないように戸を開けに起きる。


「どうした?こんな朝早くに?」


「王国栄誉魔術師マリーン・ビンカーン様がご家族を連れて屋敷の門前に参られました!!」


「……は?」



「ほっほっほ、久しいのう。小童」


「お久しぶりでございますマリーン老師」


マリーン・ビンカーン。

王国最強の魔術師にして、多くの魔法を生み出す魔導士でもある。

種火や身を清めるなどの生活魔法や、大爆発を起こし敵を一掃する魔法など様々。


魔法以外には興味はなく、魔法の事だけを考え生きている老人。御年67歳。

王に命令されるまで結婚に見向きもしなかった男。

結婚するまで、男と女の見分けがつかなかった男。


娘であるニュウをないがしろに育てたマリーンと言う男がプロティンはぶっちゃけ嫌いである。

しかし、王国栄誉魔術師というのは、王の次に偉いので渋々頭を垂れる。


仕方ないので、プロティンはとりあえず客室に招く


「それで、本日はどのようなご用件で?」


「単刀直入に、息子の事だ…と説明の前にホレっ二人ともあいさつしなさい」


「初めましてプロティン閣下、バイタールと申します」


大事なところがぎりぎり隠れる大胆すぎるドレスの、おっぱいボヨンボヨン色気むんむんの金短髪美女が深く頭を下げる。

思わず谷間に目が釘付けのプロティン。

この場にニュウが居なくて幸いだった。


「お初にお目にかかるバイタール殿、この領地の公爵家領主―――プロティン・ノウキーンと申します(キリッ)」


「ほらっあなたもあいさつしなさい!」


「は…初めまして…ヒンニです…」


人見知りなのか、バイタールの後ろから挨拶する少女。

灼熱の赤髪とくりくりとした大きな紅い瞳。

真っ赤なワンピースに似合うツインテール


3歳らしく、たどたどしくて可愛らしい。お人形のような娘。

どこかの大物3歳児も見習ってほしいものだ。


「さて…挨拶も済んだところで本題に入る。息子をビンカーン当主に返してもらおうか?」


至っっってその通り。当主の不在が1年続くなどマジアリエンティ。

即刻帰ってもらうのが当主としての答えなのだろうが、

どうしても帰ってほしくないプロティンは、鯉のように口をパクパクしている。


すると客室のドアがバタンッと音を立てて開くと、カシコイの姿がそこにあった。


「おや、皆さんお揃いで。父上、バイタール様、ヒンニ様、お久しゅうございます」


「旦那様!久しぶりに会ったというのに、なんという他人行儀なのでしょう!」


「他人行儀ではなく他人なのです。公務で忙しい旦那をよそに、さんざん色んな男と寝ていたとメイドから聞いているよ、そんな事よりプロティン殿、ヘリ開発の費用の―――」


「ちょちょちょ~~カシコイ殿?それどころじゃないでしょうが?浮気…ですよね(謎敬語)」


「え?そんな事ですか?もともと浮気癖がある事は知っていましたし、ヒンニが生まれたのであれば私は役目を果たしたでしょう?それより―――」


「それより!?あなたはいつもそう!いつもいつも自分の事ばかり!私やヒンニの事はほおっておいて仕事仕事、あなたにとって私って何?」


「子供産むための道具(即答)。もう用は済んだよ。どうせお前も私もお互い愛なぞ無いだろうに。ほら、邪魔な私が居ないのだから好きなだけくだらん男ども乱交パーティーでもして散財すればよかろう?何がヒンニをほおっておいて?鏡とでも喋っていろ!そんな事よりプロ」


「そんな事ちゃうわ(謎関西)!!もうわしは一旦外出るから皆さんで話し合って!!胃が痛いッシュ!!」


プロティンの悲痛な叫びも虚しく、隣に居たKYくうきをよまないジジイが淡々と話を続ける。


「うむ?なぜ胃が痛いんじゃ。まぁと言う感じで、この女が散々散財しておってのぉ…今回カシコイを当主に戻せたら今までの事は水に流す約束をしたんじゃ」


「チッ!余計な事を。」


「チッて何よチッて!」


「大体!この女がいる限り散財は続くでしょう?さっさと焼却したらよいではありませんか!私は今ノウキーン領の事で頭一杯なんです!」


「ちょっと!冗談よね?いくら何でも一度は愛し合った仲でしょ?」


「さっきカシコイが「お互い愛なぞ無い」と言っておったろう?話を聞かん女じゃのう。まぁわしがこの結婚を組んだからのう。アゲマン男爵家(バイタールの実家)もろとも燃やすかのぉフォッフォッフォッ」


「え?うそ?嫌ッ!待って待って!お願いよ!これからは貴方だけを愛するから許して、許して(涙目)」


「汚らしい売女がッ!気安く触るんじゃないッ!!」


「やれやれ、一件落着じゃのぉ(サイコパス)」


「いい加減にしろッ貴様らッ!!」


ガンッと客室の机を割るプロティン。

部屋には戦場の様な殺気が広がる。


すぐさま構えるマリーンと

顔が青くなるバイタール。

眠気でよくわかっていないカシコイ。


「貴様ち好き勝手言って、子供の前だろうがッ!!もういい!!王国栄誉魔術師など知った事か!わしはこのヒンニと言う娘を連れて寝室へ帰って寝る!この部屋は明けておくから好きに使え!」


すぐ優しい顔色になり、膝を曲げ、

震える少女の目線に合わせる。


「ごめんな。怖い思いをさせて」


そう言ってヒンニの頭を撫でるプロティン。

無骨に笑う大男の姿に、少女は涙を流し


「パパァッ―――」


と抱き連れた。


「「「  !!??  」」」


唖然とした頭を整理する。


カシコイは1年帰っていない。


バイタールはどうやら男をとっかえひっかえ。


ジジイはクソ。


もしやヒンニちゃんは誰が父親かわからない→優しくしたプロティンがパパ?


「ねぇヒンニちゃん。あそこの赤髪のメガネお兄ちゃんは誰かな?」


恐る恐る聞くプロティン。


「うえーん!わかんないよぉ!」


やっちまったなぁ!


そもそもこの様な事になったのはカシコイに頼り切りだった訳で、

この女の子が「パパ~パパ~」泣きついてるのも自業自得なわけで

部屋の外から寝起きのニュウ(愛する妻)が物凄い形相で見て―――――


「ッふえ?ニュウ?ち、違う違うぞ!これには訳が!」


「……何が?」


ガチ切れのニュウ。

冷汗が止まらないプロティン。

その隙を逃さないバイタール。


「旦那様~さみしかったの~!」


プロティンの腕に絡みつくバイタール。

物凄い柔らかいのに張りのあるダブルメロンに鼻の下が伸び、アレも伸びる。


遂には怒髪天になるニュウ。


「話をしよう!とにかく話を!」


「そうです!ヘリの開発予算をもう少し―――」


「そういう話じゃねぇ!!家族について!誰の子で!これからどうして!ビンカーン領をどうするかとかそっち!!」


「旦那様の筋肉ぅ~すっごいたくましぃ♡」


「気安く触ってんじゃねぇぞブス!」


「何怒っちゃってんの年増ちゃん」


「うきぃいいいい!」


「ところで、カシコイはビンカーン領に連れて行ってよいかのう?今更領地経営なぞ嫌じゃ!」


このカオスな状態の中に更に油を注ぐ幼児が姿を現す


「朝っぱらからうるさいよ!静かにしてよ!」


フヨフヨと飛んできたトエムを見て頭を抱えるカシコイ。

一番見せたくない相手がトエムを瞳孔ガン開きにして見している。


「ひょ…浮いてる…魔力を感じるぞい…まさか『飛行魔法』!?」


高速理解をすると、67歳という年を感じない見事な跳躍を見せ、

トエムの前で着地しながら、流れるようなジャパニーズDOGEZAどげざのポーズを取る。


「御身の名をこの老いぼれにお聞かせ願いまする~~~」


「うわっ?父上、この枯れ木ジジイ誰?」


左手にわんわん泣きつく女の子


右手にわんわん嘘泣きする女


男児の足に抱き着くジジイ。


怒り狂う怒髪天の妻


半分寝ているイケメンメガネ。


これからどうしたらいいのか。

女神に祈る事しかできないプロティンであった。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

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