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元親父 宍戸徹

「ふぁ~~やっと終わった。ハルヒトのとこのゴブリンの方が幾らか強かったやん」


「ふぇ!?ゴブリンってあの最弱の魔物ゴブリン?そんな強いのが居たら世界のパワーバランス崩れるよ?」


交流戦の帰り、軍事学校の宿舎に帰る途中であった。

トーストとトエムがだべりながら帰っているそんな時。


トエムのポッケから何かが振動する。


「お?スマホが鳴ってる。誰だ」


「すまほ?」


「ああ、遠くの人と電話する魔道具ですよ。…あーいもっしーハルヒト?なんだし」


[トエム!至急ダンジョンシティに来てくれ緊急事態だ!]


「うえっ!?なんかマジっぽいじゃん?おいおい、わーった。帰りは遅くなる感じ?」


[この前【転移魔法】の魔法を試したら、地球の実家に帰ってねーちゃんに会ったんだ]


「ブフォッ!?」


「えっ何?トエム君大丈夫なの?」


「異世界転生ってそんなポンポン元の世界に帰れるのもんか!?いや…まぁとにかくそっちに行くわ!わざわざ連絡ありがとな」


[いや、向こうでお前の親父さんに…それは後で話せばいいか。とにかくすぐに来てくれ。帰りが遅くなりそうなことだけ誰かに言っといてくれよ]


「親父?んあわかった。じゃあな。…よしと、トースト君!俺ちょっと用事ができて出かけなきゃいけなくなっちまった。学校には帰り遅くなるって言っといてくれ!」


「本当にトエム君って唐突だよね?わかったよ、でも早く帰って来なよ」


「おっすおっす。じゃ!【虫食重力場ワームホール】」


町中にもかかわらず唐突に開かれたワームホール。周りの目なんて気にせずトエムはそそくさとその中に消える。

ここからまさか5年もトエムと合わないなんて夢にも思うまい





―――ハルヒトダンジョンシティ 深階 ダンジョンコアルーム―――


「おっすおっす!来たぞ来たぞ!」


「よく来たな!早速だが地球に帰った時の話をするぞ」


「カモッ!?どこから現れたカモ!?あーなんかもう普通に話してるカモ」






ハルヒト回想


「ご、ごはッ―――息が…苦しい…体が痛い…」


ハルヒトがダンジョンの階層ワープの術式解析を進め、【瞬間移動ワープ】を試みた結果、思ったのと違う場所に出た。


今まで生きてきた中で‟一番なじみのある場所”を指定したはずがよく解らない所…?

いや見覚えはある!ありすぎる!!この古びた門前のたたずまいは―――


「俺の…料亭?」


前世の…料亭?

と、そこに


「ぎっ!?こ、コスプレ?ふぇッ?なにこの牛みたいなの?子供?」


ポニーテール黒髪の活発な妙齢の女性が中から現れた。


「ちょっ?大丈夫なの?汗凄いけど今救急車呼ぶから―――おっ!?凄いナマ感!これコスプレ…え?」


「ねーちゃん!冬美ふゆみねーちゃん!とりあえず客間の和室で休ませて!救急車はいいから」


「ねーちゃん??は?と、とにかく解かった?」


よろよろと客間に向かう坂本春人(牛7歳)と坂本冬美(ひと30歳)。

30分くらい客室で休むと少しずつ体調がよくなる牛。


「いや~一時はどうなるかと思ったぜ、ありがとなねーちゃん」


「あんた…まさかハルなの?嘘…牛じゃん?」


「ねーちゃんが12の時、親父の大事な皿割って俺に擦り付けたの今でも覚えてるぞ」


「ハルじゃん!マジでハルじゃんお前!嘘でしょ…成仏できないって訳?ハル、‟3か月前に死んだ”の覚えてる?」


「‟3か月前”!?そーなのか…こりゃ色々と…とりあえず酔っぱらって崖下に落ちてサドミちゃんが後追い自殺したまでは解る」


「おっ!?しっかり解ってる?あと触れれるしとりあえず幽霊じゃないわね?」


「えーっと…」


かくかくしかじか


「異世界転生!?あんた達そんな面白い事なってたの!はぇ~いいなぁ~旦那と娘が居なかったら私も行きたいって言うところね…てかアンタ地球こんなところに居ていい訳?」


「う~ん、何か来れちゃったし…あ、でもさっきまで体が適応しなくて全身苦しかったからそのままだったら死んでたかもね。それよりねーちゃん何で実家にいんの?」


「あんたがぽっくり死んだから実家を片付けてやってるんでしょ!お店畳んだり、荷物を整理したりでさ大変だったのよ?あとアンタのAVとPCの中身は全部捨てたからね?」


「ほげっ!…しゅいましぇ~ん…あざっす」


「はぁ~やっぱりハルなのよねぇ…それでこれからどうするの?家くるなら旦那に相談してあげるけど?」


「いや、魔法を試しただけだからすぐ元の世界に帰るよ―――あ!その前にいろんな物触らせて?(ダンジョンコア創生用)」


「それより!いろいろ聞かせて!アンタが…ハルが死んで、いろいろさぁ…辛かったんだから、そのくらいいいでしょ?」


「ねーちゃん…俺さ…ん?」


ハルヒトの体毛が逆立つ、ヒリヒリと切り詰めたような鋭い”何か”が近づいてくる。


「へ?どうしたのハル?」


「ねーちゃん!ちょっと外が?」


客間の窓から外を覗くと、先ほどまで快晴だったのにいつの間にか暗雲たちこもっていた。

しかもその暗雲の塊が、なんだかこっちに向かってくる。


「ねーちゃん!アレなんだかヤバイ!多分(狙いは)俺だと思う」


「何よアレ?なんか龍でも出て来そうね…逃げる?」


とその時雷が二人の客間めがけて落ちてきた。


ビッシャー―――ン!!


明らかにハルヒトは狙われている。その雷から姉を守ろうと魔法で【障壁バリア】を張ると、その【障壁バリア】を貫通してハルヒトは首を掴まれ宙ぶらりん。


雷の中から人…らしき何かが突如現れた。先程まで衰弱していたとはいえ反応すらできなかったハルヒト。


「異界から来た異物よ、我らは貴様らを許すことは出来ぬ」


体全身がバチバチと光っていたが…よく見ると人らしき‟ソレ”をハルヒトは見たことがある気がする。どこで?たしか―――


「あっ!?とおるおじさん!?徹おじさんじゃね?」


「…異物?いや待て…まさか!?」


スッとすぐ手を放しハルヒトを床に置く。

‟ソレ”が手を上げると何事もなかったように客室は元通りになり、暗雲も快晴に戻っている。


あんぐりと口を開けて‟ソレ”を見つめる冬美。次第に雷は収まり、中からスーツ姿のさえないおっさんが姿を現した。


「その魂…君は恵夢の友達のハルヒト君だったか?すまなかったね突然」


「いえ…それはまぁ…それより親父さん何者っすか?」


「俺は…『雷神トール』、君達人間が神と呼ぶ存在の一柱…という事にしてくれ」




回想終了


「それでその…徹さんから詳しい話をするからすぐトエム、というか恵夢を連れて来てほしいって実家に待たしてるから飛んで帰って来た訳」


「はぇ~(なんか話のスケールが)すっごい大きい。親父がねぇ…とりあえずさっさと行くか」


「行くのはいいんだけど、魂の操作『魂トロール』ってお前できる?たぶんだけど行き来するとなぜか世界から拒まれるみたいなやつがあるから、できないと多分死ぬよ?」


「まっ大丈夫でしょ、お前にチンたま負けてから必死に修行したから、とりあえず行ってから様子見で」


「そっか、まぁならいいか。あと、向こうには当たり前だけど魔素は存在しないから魔道具とかは一切機能しないから【ワンダーバック】置いてった方がいい」


「おっそうだな」


着々と準備をする二人。横で聞いてたが置いてけぼりなカモネーギはとりあえず煎餅を食べてる。


「よし、じゃあ行くか!カモネーギは俺が居ない間ダンジョンの事頼むな!」


「任せてカモ!」


「【転移魔法ワープ】」


二人の姿が跡形もなく消えた。




―――地球 ハルヒトの実家―――


「おっもう来た?早いわねぇ~」


料亭の広間に2人が突如現れた。最初の時同様2人とも苦しみだす。


「うひ~癖になりそうだぜ!」


「うわっこの死んだ魚の目をした子って恵夢君だわ、姿が変わっても昔っから変わんないねぇ…てかこっちに来ると苦しみだすのねぇ~徹さんは何でか知ってるの?」


「宇宙が違う」


「えっ!何それ神秘~」


「君の順応は大概だな…」


兎にも角にも二人の容体が落ち着くまで客間で休ませる事に


~~~30分後~~~


「いやぁ~すっかり良くなったわ。てか親父久しぶり~俺誰だか解かる?」


「恵夢だろう?‟恵まれた夢のような存在”と名前を付けたのは俺だからな…それよりお前に話しておかなければならない事、色々あるからな…」


大きくため息をつく徹、そこへ冬美がお茶を出す。


「これ、粗茶じゃなくていい玉露よ~はい四人分。長くなりそうなんでしょ?」


「う、うむありがとう。しかし君まで話を聞かなくてもいいのだが?」


「こーんな面白そうな事聞かなかったら一生後悔しそうじゃない?いいじゃないの一人ぐらい。『雷神トール』様なんでしょ?何とかしてね!」


「う、うむ。何というか、凄いな?」


「冬美さん数年ぶりに見たけど変わってねぇ~、よく嫁の貰い手が居たよな~」


「アンタもせっかく新しい人生になったんだかケツを調教だとか言ってないで今度は嫁さん貰いなさいよ~」


「ん~全裸の目隠し四つん這い散歩を毎朝付き合ってくれるような女が居たらね」


「いる訳無いじゃん!」


「「「ハハハハハ」」」


「えっと…話をいいか?」


「おっとそうだった。普段話をしない親父が口を開くって滅多にないよな!」


「……」


「おい、傷ついてるぞ宍戸、もっとオブラートに言えよ」


「…ゴホンッ!とにかく息子に話をしたい、長くなるが…聞いてほしい」


場が静かになり、改めて徹が口を開く。


「まず、‟異世界”からこの世界に来た時、凄く苦しくなったと思う。あれは‟宇宙”が違うからだ」


「ですって奥さん。なんか話がしょっぱなから(話が)おっきいね」


「ほらっ茶化さないでしっかり話を聞く「(ゴツン)いったぁ♡」」




「宇宙というのは星上に広がる海の様なモノだと考える者が多いが、実は途方もなく大きな生き物であり私たちはその中で生きている微生物にすぎない。

星は細胞、太陽は赤血球の様なモノ。生き物と言っても人間の様なものではなく、スライムの様な物に近いな。

その宇宙という超絶巨大生物にも寿命はあり、宇宙ですら逆らえない時間を刻む全ての存在の頂点的超位エネルギーは《こん》と呼ばれる。

これはこの世にある全ての存在に平等な力であり、存在が存在するためのエネルギーである。

宇宙は私が知る限り5柱。私や神と呼ばれる馬鹿どもが元々いた第一宇宙、そして第二次ラグナロクで死んだ第二宇宙。恵夢や春人君が転生した第三宇宙。この地球がある第四宇宙。まだ小さな成長段階で誰も魂が適正できない第五宇宙。

宇宙は個々で時間の流れや存在する元素の有無が違ってくる。もう気付いてるかもしれないが恵夢や春人君が居た星とこの地球では時間の流れが違う。

ここまでが前提、ここからが本題。

各宇宙それぞれで魂の適正が違うから、先程の恵夢や春人君の様に宇宙の行き来で魂が暴走する。魂の暴走をほおっておくと存在が永久に消滅し無に帰す。そのリスクを取り除くための実験が異世界、というか第三宇宙で行われているのが『テクノの箱庭実験』、そして『ユグドラシルシステム』。要はスキルとか勇者だとか魔王だとかそういう事だ。第四宇宙の中でも一番文明の進んだこの地球の生物を第三宇宙に無理やり拉致して、強力な『スキル』を使わせることで‟魂”を抜き取り、いまいる地球の第四宇宙に神々が適正できるようにするため、単純に回収した魂の力を使って侵略するための実験だ。

以前第二宇宙にラグナロクを仕掛けた結果、魂を安定できず多くの神を失う事になり、その大幅な力の乱れで宇宙自体が死んでしまった。

この第三次ラグナロク計画の中心には元妻のシヴとエロースという神の中でも格式の高い奴らがいる。ちなみにシヴというのは恵夢、お前の母『ともみ』の事だ」


「へ~あのバイオレンス不倫ババア、ただ者じゃなかったんですね~」


「あとシヴとエロースの不倫によって生まれたのがサドミちゃんだな。第四宇宙の地球で神の子を出産することで、この地球を神々から守る術を地球人に与える為だという話だったのだが随分色々騙された(ビキビキ)。結局シヴとエロースが不義をするために第四宇宙を利用しただけだったのだが、その責任あやふやにするためにこの第四宇宙世界を手に入れるとかで、他の神々を甘言で説得したらしくてややこしい事になっている。

そこでな、怪しい第三宇宙の動きをアマテラス殿に探ってもらっていたわけなのだが…そんな時、SM倶楽部で恵夢が死んだと誤報を聞いた。私は生まれて長いが、初めての感情になったぞ?」


「いやぁ~サーセン」


「ふぅ、そこでなアマテラス殿がこっそり仕込んでくれたのだ。まぁ以前から息子をトラックに襲わせていたのはこってり説教をしたがな。ちなみに春人君やサドミちゃんなんかもお前の周りの親しい人という訳でアマテラス殿がうら取引で転生させてくれたのだ」


「アマテラス様にサドミちゃんの件、お礼しなきゃな」


「それで恵夢にお願いだ。そちらの第三宇宙のどこかに転生した近藤武蔵と共にラグナロクを食い止める事と、シヴとエロースの行方を捜してほしい。どうやら第三宇宙のどこかにいるようなのだ。奴らだけは生かしておけぬ…」


「え?近藤師範?親父って近藤師範と仲がいいの?」


「武蔵に戦術や『魂』の基礎を教えたのは俺だ」


「「へぇッ!!」」


「だからこそ虐待で心身ともに衰弱したお前を武蔵に預けたのだ。お前の生前、ちゃんと謝りもしてなかったな。恵夢、シヴの虐待に気付かず放置してしまった事、本当にすまなかった。愚かな父を許してほしい…」


「え、今更?もっと早くに言うべきでねぇの?生存本能ってのかな~虐待当時の事もう覚えてねぇから謝られたからって解かんねぇよ」


「え…ああ、まぁそう。」


「そんな事より師範だよ!親父って凄いのな!今までただのしがないサラリーマンで顔すらあんまり印象になかった程度だったぜはっはっは!」


「……(´・ω・`)」


「宍戸!だから言葉気を付けろって~いじけちゃったじゃん」


「悪い悪い親父。ほんで話ってのはあのクソババアを見つけるってのと近藤師範と戦争止めろって事だけど、具体的にはどうすんの?」


「…まず、魔星エロース(トエムに転生した星)の衛星(月)に居る神共を滅茶苦茶にぶっ殺してほしい。そうすれば侵略推進派に大打撃を与えられるからな。そのために近藤武蔵の転生体を探してくれ。本当は自分の手でやりたいんだがここを離れると神共がすぐに攻め込んできそうでな、やむなくだ。そして次にシヴとエロースだが、奴だけは俺自ら手で下したい。親友のオーディンがそっちのどこかにいるから奴を通して俺に伝えるか、手間だがも一度こちらに連絡しに来てくれ。必ず生かしておいてくれ」


「オーディンさんならハルヒトのダンジョンでバカンスしてるだろうからそれでいいか」


「あいつ…いや、今はいい。それより…恵夢、すこし俺に時間をくれないか?」


「何その言い回し回りくどい。親父ってホント陰キャだよな」


「……(´・ω・`)」


「わかったわかった!んで何すんの?」


「侵略推進派の神共を殺し回るために鍛えようと思う」


「え、いいな宍戸~俺最初にこっち来た時、親父さんに手も足も出なかったから、この人相当強いぜ~」


「うお~。話が本当なら師範の師匠って事だからな」


「悪いが春人君には無理なのだ。第一宇宙、いわゆる神の宇宙世界の力の使い方の訓練だから、第一宇宙と一切繋がりのないハルヒト君には無理なのだ。あきらめてくれ」


「え、でも親父さんの息子っていっても、宍戸が前世の話じゃない?」


「『魂』が同一なら出来る。君は一足早く帰って恵夢の今の知り合いに安否を教えてやってくれると助かる。少々長くなる」


「あーい、しょうがないっすね。そんじゃあ俺はそろそろ帰りますか。ねーちゃん、いろいろありがとな」


「山梨の旦那の実家にもたまに顔出しなさいよ?かわいい姪っ子と待ってるからね。牛でもいいから。じゃあねハル」


【転送魔法】でシュンッと一瞬で消えたハルヒト。


「さてと、宿泊先がないなら取りつぶしまでなら料亭ここ使えるようにしとくから好きにしてね」


「さっすが~冬美さんは話が解かるッ!」


「ほら、僕にその手を汚しそうな事言ってないでお父さんと一緒に修行かなんかするんでしょ?いってらっしゃい」


「世話をかけた、冬美殿…」


元料亭の看板娘に見送られ、近藤空手道場に(元)親子で向かうのであった。

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