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ハルヒトダンジョンシティ

ハムエッグ伯爵の一件が片付き、ハムエッグ一家とさよならしたヤデレとトエムはようやくノウキーン領土に戻ってきた。


「トエム様だ!トエム様が来たぞーーー」


「おお神よ!ありがたやありがたや~」


「トエム様を拝めるなんて今日はいい日になるぞ~」


などなどトエムに熱狂的な民衆を無視してズカズカと一直線に屋敷へ帰って行く。

程なくして屋敷に到着。


「ただいま~」


「「「おかえりなさいませ坊ちゃま、ヤデレ様」」」


使用人達が出迎えてくれたのだが、家族は居ない。


「ゾヒィやサードりゃんと、ついでに母上と父上はどこに行った?サニーはどこに行ったか解かるか?」


昔ヒンニと一緒にビンカーン領から来て、現在ノウキーン屋敷のメイド長となったサニーが一礼をして、


「坊ちゃま、ヤデちゃん、まずはおかえりなさいませ。」


ヤデレに熱い視線を送りながら続けて話し出す。


「現在、ノウキーン一行の皆さまは、魔導学校の長期休暇で帰ってきたヒンニ様共々、‟例のダンジョン”に出立されました」


「え?ハルヒトのとこの?」


以前ハルヒト自らこの地に遊びに来た時に、【転移魔法陣】を〈ミスリル〉という魔導敵性の高い希少金属(カシコイおじさんの《錬金術》でその辺の石からたくさん創って在庫がある)から創り出したものがある。


ハルヒトいわく、【転移魔法】とは物質が物質たりうるため、空間に存在するために必要な《こん》と呼ばれるエネルギーを一度分解し、転移先で再構築する魔法との事。


一度物質を粒子化し、もう一度再構築する。もし再構築できなかった場合そのまま2度と存在できない結構リスキーな魔法だ。


なので何度もマウス実験(例の魔道具店の地下施設)を繰り返し、ようやく実用化までたどり着いたのだ。

しかし悪用されたり、未熟なものが使うと存在できなくなってしまうので魔導理論の公開はない。


そんな【転移魔法】粒子化→再構築を行う装置がノウキーン工房の庭に設置している【転移魔法陣】である。


魔導術理を固定化しているので、誰が魔力を通しても世界のどこでも【転移魔法陣】が設置されているところなら低魔力で飛ぶことができる。


そしてこの魔法陣は現在ノウキーン領とミノタウロス集落、そして『ハルヒトダンジョンシティ』と呼ばれる最近できた世界初のダンジョンテーマパークの3か所のみである。


事前に転移魔法陣の使い方をレクチャーされているトエムは早速『ハルヒトダンジョンシティ』用の魔石を魔法陣中央に設置し、魔力を込める。


「兄様!私も行きます!」


意気揚々とヤデレも魔法陣の中に来た。

しばらくすると眩い光を魔法陣が放ち、光が収まるとヤデレとトエムの姿は跡形もなく消える。





ハルヒトダンジョンシティ 入口


「「……」」


圧巻の門にトエムをもってして息を呑んだ。

全長約10メートルの巨大外壁。左右には阿吽あうんらしき8メートル級のゴーレム。


そして特殊コンクリート(鋼鉄のハンマーでも傷つかない強度)で出来ているためドラゴンのタックルでもビクともしないらしい。


門をくぐると案内人のスーツ姿のゴブリンが話しかけてきた。


「ようこそ『ハルヒトダンジョンシティ』へいらっしゃいました。門をくぐられた方に必ずこの【善悪の水晶玉】に触れてもらってます。善心は光り輝き、悪心は黒く濁る水晶玉の魔道具です」


【善悪の水晶玉】。以前ハルヒトとトエムが共同で作り上げた魔道具。

《魂》を直接色で反映させる魔道具(厳密に言えば‟魔”道具ではない)なのでパッと善悪がハッキリ解かる。


「お二人とも透明ですね。大概の人間が善悪どちらかに傾くのに…清らかです!」


善心でも無いくせに清らかとはこれいかに?と思う人もいるだろう。

しかし善意であれ過剰な感情ははた迷惑なものでしかない。


ストーカーが純粋な気持ちで愛していたとしても迷惑でしかない。

俺が先端を切開く!とかかっこつけて敵に突っ込む奴は迷惑でしかない。

俺は貴族で平民はゴミとガチで考えてる奴は迷惑でしかない。


行き過ぎた正義感は悪意より迷惑なので、まばゆい光を放つ人も帰ってもらっている。


「あなた達の入場を許可いたします!ようこそ『ハルヒトダンジョンシティ』へ!」


ようやく中に入れると意気揚々と門をくぐろうと2人の後ろから汚い怒声が響く。


「オイこのゴブリン野郎!C冒険者である俺様がダンジョンに入れないたぁどういうことだ!?あ”あん!」


ザ・テンプレートいちゃもん荒くれオジサンがそこには居た。

蝶ネクタイにスーツの案内ゴブリンのえりを掴み締め上げる。


しかし、ゴブリンは何ら慌てる事無く淡々と対応する。


「この魔道具が黒くよどんだお客様は通すなとBOSSから言われております。言い方を変えれば、この水晶の魔道具さえ通過すれば亜人だろうが人族だろうが魔族でも通っていいとなっております。あなたは不適切です。おかえりください」


「調子に乗るんじゃねぇ!E級(最下級)モンスターがッ!!」


荒くれオジサンは腰の長剣を引き抜き、今振り落とそうとする瞬間、


ガンッ


音と共に荒くれオジサンは倒れ込む。ゴブリンは優雅に着地し他の客に一礼。

それを見た冒険者やら商人やらから拍手が巻き起こる。


「あのゴブリン…強いです。身長は私達と変わらない程度なのに…」


とヤデレが呟く。ゴブリンの身長は成長しきっても130cm程度。

しかしゴブリンと言うのは小柄ながらとても器用な生き物。


「ハルヒトの奴、相当鍛えこんだな」


剣を抜かれた瞬間、猫手の握りで顎先ジョーを精密に打ち抜く。

相手は何もわからぬ意識があるままに倒れ込んでしまっただろう。


着地した後も残心を荒くれオジサンに残し、かかとを一目でわからぬ程度に上げやや重心をオジサン側に寄せている。余力で襲い掛かっても万が一は無い。


これらを解らずとも感じ取れるまで成長したヤデレに感心しつつ、トエムはきびすを返し街の中へ歩を進む。




ハルヒトダンジョンシティ『テーマパークエリア』


以前完成前に来た時よりテーマパーク感が強くなっている。例を挙げるなら某大阪のところやネズミが幅をきかせている千葉のところの様な作りだ。


しかし、出店が圧倒的に多い。粉もの専門店(お好み焼き・焼きそば・たこ焼き・ピザなど)、ほかにもイタリア、中華、ベトナム、フランス、アメリカ料理とやりたい放題だ。


さらにジェットコースターや観覧車、アスレチックや大型プールもある。

好きな物を好きなところに詰め込んだ誰でも頭空っぽで楽しめる施設がここにはあった。


様々なアトラクションや出店に目を奪われながら中央のダンジョンへの階段を降りるとさらに驚く。


まず見えたのは城。しかもこれが高級宿泊施設だというから驚き。

前世の価値観で普通のホテルも有り、ほかに旅館なども豪華絢爛ごうかけんらん

どことなく熱海の駅近くの様な創り。


温泉や海もあった。海と言ってもダンジョンの中なので限りがあるのだが、それでも半径3キロ深さ30メートルの超ド級サイズ。


海の生物や海藻は全て食用、人間に被害を及ぶ物は無く自由に遊泳できる。

更に砂浜もあって海の家もあり、つりたての魚やさらに地下のダンジョンエリアから仕入れた肉でバーベキューができる。


なぜか太陽らしき光がサンサンと照り付け、36°程の熱さと朝がずっと続いている。

ダンジョン地下1階『夏エリア』と呼ばれる区間である。


トエムとヤデレは先程、テーマパークエリアのインフォメーションでノウキーン一家がチェックインしている事を確認し、更に下に行くために砂浜近くの整備された道路を歩いている。


右を見ても左を見ても、ものすごい数の冒険者や商人たちでにぎわっている。

開園して半年、ダンジョンマスターがいる凶悪なダンジョンと言う危機感を感じられない。

地上エリアもそうだったが、人も亜人もかなり賑わっている様だ。


しばらく歩いていると…


「あっ!あいつは…」


以前、邪神やらと女神やらの中に割って入ってきたおかっぱロリ美少女が砂浜でパラソルを立てラウンジチェアでくつろいでいる。


サングラスとスクール水着らしき恰好で、青い透明の液体を優雅に飲んでいる。

隣にはムキムキのアロハシャツ海パン眼帯白髪おじさんがこちらもラウンジチェアで寝ている。


「お~い、たしかアマテラスさん…だよな?こんなところで何してんだ?」


「お?シシド君じゃん?ちわー」


旧スク水の胸元に〈あまてらす〉とかかれた黒髪おかっぱはのそっと起き上がる。

それに気が付いた隣のダンディな眼帯白髪マッチョは一礼をして、


「初めましてだなシシド君。いや、トエム君だったか?私はオー…おでんという。ちょっと巷で名前が有名過ぎてな、私の行きつけの店の‟しゅんぎく”と言う店の大好物料理の名前を使わせてもらおう」


「片目でおでんねぇ、隠す気無いじゃん。てか‟しゅんぎく”ってハルヒトの店じゃねぇか!あいつをこっちに呼んだのはおっさんか?」


「出来るならそうしたかったが、この世界はエロース神の管轄でな…まぁ結果オーライ。こうして海の幸を楽しみながら毎日だらだら過ごすのは最高だ!ガハハハハ!」


「はぁ~この中世レベルの世界でこんな贅沢とかチートじゃん?あやかってる訳よ~。もう地球に他の神の目を盗んで遊びに行かなくてもココにほとんどあるから当分はぐーたらするってわけ」


「いや~アマテラス殿にここを紹介してもらった時は驚いた。こんな素晴らしいところがあったなんてねぇ。正直[アースガルズ〕よりいい。しかも春人くんの料理がこの世界でも食べれるなんてありがたいねぇ~」


なんだか楽しそうに話しているのをポカーンと聞いているヤデレ。彼女は事情を全く知らないので蚊帳の外だ。


「おっとっと?デートを邪魔して悪かったねぇ~へっへっへ」


オヤジ臭い絡みかたをするがに股おかっぱロリに対して「そんな~兄様とは‟まだ”そんな関係じゃないです~」とまんざらではない様子で返答するヤデレ。


「そういえば、君のご両親と兄弟が地下3階にまた来ていたねぇ。会いに来たのかい?」


「え?父上も母上も良く来るの?ずるぃ~」


おでんおじさんから地下3階に両親がいる事を聞いたので早速2人は更に奥へ向かう。

ちなみに、地下4階まではエレベーターが通っているのだが、物珍しいのであえて歩いて階段で観光している。


しばらくして地下2階、『冬エリア』に到着。

ここはゲームセンターや漫画喫茶、展望台、スポーツジム(サウナ兼用)、スキー場やスケート場などがある。


このエリアはー15°の極寒エリアであり、ずっと夜が続き、このエリアは巨大なプラネタリウムになっている(実際に星や宇宙は存在しない)。

地下通路が駅地下の様に繋がっており、その中では暖房がガンガンに聞いているのでTシャツでも歩ける程の温度である。


外で雪のかまくらを作ったり、街灯の中でスノボージャンプを楽しんだり、はたまた漫画喫茶で勝手に翻訳されている前世のコミック(ハルヒトやトエムと‟謎の人物”が読んだことのあるものだけ)を読みながら寝落ちしたりと、冒険者から大変人気なスポットになっている。


しかし、トエムにとってめぼしいものは無かったのでちゃっちゃと地下に降りる。


地下三3階、『秋エリア』。

ここには100メートルほどの巨大な山が真ん中を占領し、周りに学校・図書館・美術館・ドーム・スポーツショップなどが所狭しと建てられている。このエリアは朝と夜が交互に来る


トエムとヤデレが『坂本ドーム』なる東京ドームにクッソ似た施設に入ると、そこでテニスを楽しむ中年カップルが一組。


「父上、母上、探しましたよ?」


「あっ―――トエム」


「トエム!久しぶりね~半年でまた大きくなって!」


テニスを一時中断してトエムとヤデレの元にひと汗かいたプロティンとニュウが集まってきた。


「学校に息子の出迎えにも来ないで何やってんですか?」


「トエム、お前に出迎えなんていらんだろう。それにせっかくハルヒト君にダンジョンへいつも招待してもらってるんだ。楽しんでよいだろう?」


「ごめんなさいトエム。久々の旦那様とのデートだったからつい…ね♡」


「ごちそうさまでーす。そんな事よりゾヒィとサードは大丈夫なんでしょうね?」


「心配いらないよ!」


テニスコートの後ろから現れたのはミノタウロスの夫婦。ミノスケとミノリ、つまりハルヒトの両親だ。ミノリさんの腕の中には気持ちよさそうにスヤスヤ眠るゾヒストとサードの姿があった。


「アタシらで面倒見てやったのさ。もうプロティンとニュウは親友みたいなもんさ!なぁアンタ!」


「うむ」


「あーあー人見知りで困るねぇ!そういう事だから心配ないよ!そういえばハルに暇だったら会いに行ってやってね。言葉にはしないけどアンタに会えないと寂しそうだったからね」


ガンガン喋る大阪のおばちゃんの様なミノタウロスのおばちゃん。

正反対の寡黙なおっちゃん。いいコンビ漫才ができそう。


ゾヒストとサードを一通り抱っこで堪能して地下4階の冒険者ギルドに向かう事にした。

ハルヒトは知り合いであればギルドに出向いてくれるのだ。


「兄様!私も参ります!」


「お前はここで父上たちとゆっくりしてな。ハルヒトとは男同士で話したいこともあるのさ(前世の話題じゃ退屈だろうしな)」


「はい、わかりました…」


飼い主に怒られた時の犬の様にしゅんとなるヤデレには目もくれず、ずかずかと地下へ進むトエム。


地下4階 『春エリア』。


このエリアは超農業エリア。建物は最低限しかなくそのほとんどが田んぼや畑や果樹園、もしくは牧場。

気候は穏やかで、20°前後の温度にキープされ朝と夜があるが朝の方が5時間長い(この世界の一日26時間計算)。


中央にはダンジョン唯一の巨大な冒険者ギルドがあり、その奥には超本格的地獄ダンジョン(カモネーギ感想)が地下99階まで増築されている。


早速ダンジョンギルドに向かうトエム。心地よい風が黄金の稲をせせらぎと共に流れてくる。

田舎感が半端なく、本当にこの道で会ってるのか途中で不安になるほど殺風景であった。


50分ほど歩くとようやくダンジョンギルドとご対面。


「よぐぎだねぇトエムぐん、ちょいまっどっぐぺよ」


訛りが激しい緑髪の美人は、以前トエムドームに突っ込んできたS級指定魔獣『ギガントタートル』のシバリ。《人化》した姿でイソイソと駆けてきた。


冒険者ギルドの大きさはノウキーン領より二回り大きく、東京ドーム2個分くらいのバカデカ規模である。


客室に通され、しばらくしてハルヒトと再会した。




「おっす~シシド…久しぶり…」


顔がげっそりとしたミノタウロスが姿を現す。

目にクマがくっきりついている。


「しばらく見ない間にげっそりしたなハルヒト」


「以前、シシドの血を一滴ダンジョンコアに垂らしただろ?そしたらお前の触れた物も一気に増えただろ?」


「そうだよ」


「つまり、‟〈前世持ち〉から血をダンジョンコアが採取すれば、人魔関係なくその〈前世持ち〉の経験がそのままダンジョンコアに反映できる”って事だよな?」


「そうだよ」


「で…な。魔の森に迷い込んだ人族の〈前世持ち〉を保護したんだが…ついにプレイ出来ちゃったんだよ『流星のノクターン』を!」


「―――ファッ!?」


『流星のノクターン』。

この世界のベースになっているらしいスマホゲーム。

怒涛のネタバレをネタバレ世界で体験できるという、何ともおかしな状況になった。


早速トエムはハルヒトからゲームアプリがダウンロードされているスマホを貸してもらいプレイする事にした。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。


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