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ダンジョンマスターと交流

ハルヒト要塞


「さ、さ、さ、…佐渡美ちゃんが…」


大量のどら焼きを持ったまま震えが止まらないハルヒト。

こぼれ落ちそうになったどら焼きをひょいパクするトエム。


「こ、これは亀〇のどら焼きの生地!?甘いあんこと甘くない生クリームがうっまぁ」


「ああ…生前亀〇のどら焼きの生地を再現したくて頑張ったことがあってさ…まぁ佐渡美ちゃんが好きだったからなんだけど…自信あるよ?」


どうにもさどみの名前を聞いてからこの小さなミノタウロスは震えている。

「うっまぁ…いやこれはたまらん」「我の舌の上で踊るぞこの甘味」「うめ―し」「わんっ」

「絶品よこれは…ノウキーン領に持ち帰らねば」「この生地、食感が絶妙だよ」「わしはこんなうまい物を知らず生きておったのか…」「旨いっす!一個じゃ足りないっす…」


どら焼き大絶賛なのだがハルヒトは目が虚ろで震えが止まらない。


「なぁハル、お前フラれたか?」


「ひぎゃんすぅ!!」


しゃがんで泣き出し地面にのの字を書きだすハルヒト。

しまったと口をふさぐトエム。


「まぁ、さどみの事だから将来に悲観してお前が心配で―――」


「わーってるよそんなん!でもさぁ…やっぱりつらいんよ…」


突然泣き出したミノタウロスをなだめるトエム。不思議に思ったヒンニがアマテラスに聞く。


「ねー、さどみって誰だし?」


「あー、前世のね~トエム君の妹だよ。病気で床に伏せってたからハルヒトが告っても振っちゃったんだよ」


「あのミノタウロスって前世もミノタウロスじゃないし?」


「いやいや人だよ。だからこんな繊細な料理ができた訳~」


「(人だったんだ、どおりで…)」←ニュウ


「ふ~ん。そのさどみって人どうなったし?」


「後追い自殺しちゃった。可哀そうだったからこっちに転生させたけど…」


ピクリとハルヒトの耳が動いた。どうやら「後追い自殺」が聞こえたらしく今度は青い顔をしている。


「そういえばドン、わしらに魔王や魔族が勝てばこの星がもらえるとか聞いてたけど?」


「嘘っぱちだっての。そう言って利用し続けてるだけ。全て終わったらポイ。真面目に仕事なんてばかばかしい」


遠くでピクリとこちらも青い顔をするサトナカ。


「ん~…にしてもアンタらスキル使っても魂を抜かれてないね?」


「「え!?」」


「そりゃあリスクがあるのにホイホイ使わねぇって。魔素使えば魂とやらもある程度コントロール出来るしな」


「うん…」


「そう来なくっちゃね!おっとそろそろ時間じゃん。あたしら天界っていうかあそこの月に【転移魔法】で戻るよ。そもそも太陽はともかく、月が同じように異世界に存在するって相当おかしいよね~」


そう言って夜空の月を指さす。


「って【転移魔法】だって?全魔法使いが夢見るあれですかぁ⤴!!見たい見たい!!うひゃひゃ―――!!」


ここに来て今まで静かだったカシコイが騒ぎ出す。


「アマテラスよ。ここまで暴露して良いのか?天界の他の連中が黙っておるまい」


「大丈夫大丈夫!今めちゃくちゃテクノちゃんが焦って、イキリ散らしてるから浮足立ってるのよ。もちろん今日の事は内緒にしてもらえないと【神罰】を下すかもしれないけど?」


一瞬、凄まじい殺気が場を支配した。


(((ヒエッ!!)))


「ほらドカベンバッテリー(女神と邪神)、早くこっちに来い。戻らんとバレるぞ」


「そうであった、ではなハルヒト。失恋が辛いのであればわしが体で慰めてやるでの」


「うっす…(ほぼ聞いてない)」


「いやいや、勃起もまだのガキを誘うなよ(6歳)」


漆黒の翼ボインねーちゃんがおかっぱロリの元へ近づいていく。

そして白い翼のねーちゃんがトエムに話しかけてきた。


「シシド―――じゃなくてトエム、私の事を思いながら祈れば、この世のあらゆる情報を教えられます。そしてあなたの目的は勇者の補助と魔王の討伐…のはずだったっす…」


「争いの為って奴?」


「まぁ魔王を奴隷にしてる時点で正直もう訳わかんなかったっすけど…それとお供え物をして祈れば私のところに来るっす(転移魔法)。実は…ごにょごにょ(ラーメン三郎が食べてみたいっす)」


「ほーう!いい心がけだ!今度作ってやろう!」


「ほぎゃ!何で聞こえちゃうっすか!もうっ!そ、そういう事なんでよろしくっす!」


サトナカもおかっぱの近くへ行くと、瞬間に体が粒子となって消えた。

カシコイの「おほ~~~ッ!!」という雄叫びが静寂に鳴り響く。


「んじゃ…夜も遅いし…帰るか」


「なぁトエム、バンジョーちゃんを一日だけ貸してくれないか?転移紋さえあれば俺も【転移魔法】使えるから一回さっきのワームホールくぐって屋敷とか、どっかに転移紋を―――」


「ちょっと待ちたまえよハルヒト君!君は今何て言った!?」


「へ?【転移魔法】の事?俺さぁダンジョンマスターの《ダンジョン転移》ってのができんだけど、真似できた。さっき言ってた魂ってあるだろ?それに一度肉体を変換して転移紋の上で戻るって感じ。ただ変に使うと魂のまま肉体が戻らなくなるから、転移紋はきちんと肉体が戻る魔導回路を描けないと存在が消えちゃうぜ」


「ほ、ほほぉーん!?もう理論が完成してるのかい!!ねぇハルヒト君!ひづめ舐めるから魔導理論教えて!教えて!(ガンギマリ)」


「うひゃあ(ドン引き)!?」


「やっぱ枯れ木ジジイの血筋なんだよね~」


「ハルヒト君、少しいいかね?」


プロティンがハルヒトに話しかける。


「君はとても紳士的で、今回の料理も大変美味であった。どうだろう、【転移魔法】とやらがあるなら今後ノウキーン領と君を通して交流をしていかないかい?」


「大変魅力的なお話ですが、族長の父に話を通さなければ何とも…」


「ノウキーン領には香辛料や変わった食料も多い。ぜひ前向きに検討してほしい」


「はいっ!力づくでも説得します!!(交流確定)」


ダンジョンマスターという未知の脅威。そして前世は人でありトエムの幼馴染という幸運。

これは利用しない手はない。


領主としての仕事をしたたかにこなすプロティンは素晴らしいと、ニュウはいい年して惚気ている。

とりあえずトエムはバンジョーを説得してみる。


「なぁ、一日だけこいつにモフらせてやっていいか?」


「おんっ!」


どうやら先程の餌付け(デカ寿司)が聞いているのかこくりと大きくうなずく。


「ダメだし!バンジョーはアーシと一緒に今日も寝るし―――」


腕に抱きついてブンブン首を振るヒンニ。

困った顔でお互いに見つめ合うバンジョーとトエム。そこへ、


「んもゥ~BOSSには僕がいるじゃン!」


そこに草むらから現れたのはアルラウネのメープルとちょこちょこついてくる男の娘のキラリン。


「ま、魔物!?」


驚くプロティン。目を離した瞬間にキラリンと話し出すコミュニケーションお化けヒンニ。


「ずっと様子を見てたけド、BOSSを慰めるのは僕なんだかラ~♡」


「残念だけど、ハルヒトにはさどみが―――」


「うるさいんだけどブサイク!お前とは話してないジャン。地面でも舐めてろヨ人間!」


この時、トエムに衝撃走る。


罵るような冷たい声、蔑む瞳、冷淡にほほ笑む唇。

自分が追い求める女王様態度に、背筋がゾクゾクと震え始める。


「うっワ!ねぇ見てよBOSS~あいつニヤついてるヨ?キモいネ~何で空気吸ってんだロ~」


「は、はひぃ!!ごめんなさい!!」


「あ~なんだか急に飛び出たから疲れたな~どっかにちょうどいい椅子はないかな~(チラッ)」


「はいっ!こちらにございます(四つん這い)」


「うワ~魔物にへりくだるノ~?ウケるんだけド~!ほーらハイハイしてハイハイ♪」


「あい!あい!あい!」


「おっそ~イ、もっと早くしテ~ポチ~(ケツをばちーん)」


「わんわん♡わんわん♡」


「こらメープル!やめろよ、トエムがよだれ垂らして喜んでるだろ!シャレにならん。バンジョーちゃんが怖がって来なくなるだろ!申し訳ありませんプロティン閣下。こいつには言い含めますので何卒お目こぼしを…」


「よい、そもそもトエムの奴が喜んでおるでの…それより今後よい関係なる事を期待する!」


「ハッ」といって頭を垂れるハルヒト。キラリンとメープルも同調して頭を下げる。


「わしに頭を下げてよいのかアルラウネの少女よ、人族だぞ?」


「僕はBOSSがお客様だと連れてきたラ、何であれ従うだケ。でもこいつハ別、BOSSに酷い事したかラ(ケツばちーん)」


「おひぃん♡」と嬉々として声を上げるトエムは無視する。

先程の戦いを何だかの形で見る事ができたのか?これも交流を通して調べなくては。


「ちなみにアルラウネは両性だかラ、正確には少女じゃないけどネ」


ウインクをするメープル。若干引き気味のプロティンを差し置いてトエムのテンションは先程のカシコイ並みに爆上がりする。


「まさか!?ふた〇り!?ふた〇り!?おほォ~!!そんな事…理想を超えて夢じゃん!これ異世界ドリームじゃん!!」


「あぁ…こいつ前世からふた〇り好きだったなぁ~」


「うるさいよ黙れポチッ!」


シュルシュルと手からつたをだし、トエムの首を絞める。


「うにゅにゅッ♡」


トエムは思った。

女王様で、鞭があって(つた)、僕っ娘で、小悪魔系で、ふた〇り。


こんな自分の理想を詰め込んだ薄い本の様な存在がいるのか?

亜人という新たな可能性ジャンル。後に、ここでトエムは領地追放を確定したという。


「コラコラつたで首を絞めるな!こいつは前世でSM嬢の鞭首絞めプレイで死んだガチ勢なんだから!」


「なんだと?うーむ、聞かなかったことにしよ。」


近くに居たプロティンには聞こえてしまった。


「げほっげほっ、何で止めたんだよハルヒト!ってかお前ばっかりなんでこんな理想の女の子はべらせれるんだよ!ずるいじゃん!俺だって朝起きたら椅子にされてケツイジメられるような甘い生活してぇよ~」


「さも俺がそんな上級プレイを毎朝してるような言い方やめろ。お前だけだから。とにかく一旦お前の魔法でノウキーン領とやらに連れてってくれよ転移紋描くから」


「トエム君!僕からも頼むよ!転移の研究なんて一生の夢なんだから!」


「いや、カシコイおじさんは緊急で招集されただけで、ビンカーン領に置いてくから。あっ、スカイファッハ―百式があったっけ、誰か(操縦できる奴)連れてこないとな」


「そんなぁ~生殺しだよぉ~後生だよぉ~(涙)」


「男の涙に何の価値もねぇ!諦めろよおじさん!」


「やだーやだやだやだやだーーー」


背を地面につけ全力駄々をごねる23歳児の赤髪メガネイケメン。

プロティンとニュウがあやし、ヒンニにも引かれる有様。


「ここは我が【虫食重力場ワームホール】で送ってやろう。店を開けて不安もある。どれ…」


ブゥゥウンと言う鈍い音と共にワームホールが開く。


「あれぇ?何時の間に覚えたのダビデさん?」


「その名で呼ぶなッ!!我はヴァンパイアロードのジョージだ。千年前、神共の進行を止められない情けない男の名なぞ…忘れた」


「悪かったよジョージさん。ここくぐればノウキーン領だから早く来いよ!」


「うわっ?何だこのラーメン〇郎みたいな匂いは?くっそ~久々に嗅いだら食いたくなるじゃねぇか!ん?ヴァンパイアってニンニクダメじゃなかったっけ?」


「BOSS!僕もついてク~」


「ほら速く来るしキラリン!」


「置いてかないでぇ~」


何時の間に仲良くなったのかヒンニとキラリンが重力場の中へ消える。

そのままハルヒトとメープルも消えた。


「わしらも使わせてもらってよいかジョージ殿?」


「もちろんだ。なかなかに魔力を喰われる。早く中へ入りたまえ」


ぞろぞろと中に入って行く。ただしバンジョーはでかい図体なので、腹ばいの状態で引っ張られた。




ラーメン三郎 娯楽街中央通り店


本日いろいろあって疲れがたまっていたノウキーン一家は先に屋敷に帰って行った。

バンジョーも一旦帰ってしまって、寂しそうにするハルヒト。


「BOSS!これめっちゃうまいヨ!!」


「ちゅるちゅるうまうま~」


集落から来た二人は何も食べてなかったらしく美味しそうに食べている。

それを見てご満足のジョージ。


「うん…」


神妙な顔をするハルヒト。


「む?我のラーメンがまずいと申すか?」


「スープも肉も野菜もいい、でも麺が気になる」


「麺!?何度も作り直してできた至高のバランスぞ!?」


「うーん…ちょっと俺に麺打たせて貰っていいか?」


―――三十分後―――


「う、うまい!小麦の味がより鮮明になるだけでなく、スープとの絡みもより調和している!?な、なぜた?」


「水の量をちょっと足したのと、麺をやや平打ちにしたのさ。それと麺はもう少し寝かせた方がいいよ、食感に若干のばらつきがあったから麺の水分が均等になってない」


「すげぇ、さすが板前。そんなことまで解かるの?俺は全然気づかなかった」


「まぁこのぐらい解らないと出汁の細かい味付けなんてできないからさ…うん?」


目の前にはみごとなジャパニーズ土下座するジョージの姿。


「BOSS!!どうぞあなた様の偉大なる知能を我に授けてくれないか!!」


「いいよ。料理に情熱がある奴大歓迎さ!」


熱い握手と共に早速厨房で話し合う二人。

当初の目的を忘れ、2日間の徹夜の果てにニュー三郎ラーメンは完成した。


そのラーメンは一号店の味をも超え、一号店店主トンデモも嫉妬したクオリティであったらしい。

ちなみに転移紋は徹夜の翌日にノウキーン屋敷の工房前に描き、魔石を溶かしたものを流し込んで固めた。


結局バンジョーが集落に来る事は無く、代わりにジョージがハルヒトにそのまま師事を仰ぐこととなった。

それがハルヒトのちょうどいい気分転換になったそうな。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。


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