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王都到着 思ってたよりショボくね?

「な…この…褐色プルンプルンは誰だ?」


トエムが奴隷を連れてきたというから驚き、

それが人間でないことにダブルショックのプロティン。


「この女はセラフィと言います。昨日の魔力の持主がコイツです。いろいろあってそのままだとやべーので奴隷にしちゃいました」


「うむ、その色々が気になるところだが…お前のやる事に突っ込んでいたら身が持たんからな、よろしい。朝食に向かうぞ」


「えっ?私は一応亜人で魔族とエルフのハーフ、ダークエルフと言うやつなのだが…人族が一番嫌いな種ではないのか?(そのせいで相当迫害を受けたのだ)」


「そうは言っても…慣れ、だな」


「はぁ…?」


朝食に一同顔を合わせる。


「誰だし!その女!パパの愛人!?」


「え?(ピキピキ)」


「ちっ!?違う違う!トエムの奴隷だ。」


「奴隷?トエムちゃん異性に興味があったのね!?まあまあ、おませさんね~」


「セラフィ・ゴットハルトです。短い付き合いでしょうがお見知りおきを」


「堅苦しい挨拶はいいーし!飯食べ終わったら町を一緒に遊びまわるし!バンジョーもついてくるしぃ!」


「わんわん!」


「(バンジョー?お前何時からヒンニの犬になったんだ?うらやましいだろ!)おいっ何突っ立ってんだよ。座って食べねーの?」


「トエム様、私は奴隷でございます」


「いや関係ねーし、面倒だから一緒に食べるぞ!〈命令〉だ」


「えと…お邪魔します…(顔真っ赤)」


「かわいい~いい子いい子」


「あうっ?奥方様!?私は子供ではありません!ので…えっと…その~」


「あぁ!アーシも!アーシも!ナデナデして~」


「わんわん」


いやいや馴染みすぎだろ!と思うトエムだが、大体はお前のせいなのだ。


朝食は美味しかった。


焼いた黒パンにハムのせ半熟エッグ。

甘すぎない果実水。

朝に程よいジャガイモのスープ。

彩のよい新鮮サラダ。


ここの料理はなかなかにレベルが高い。

といっても今世界水準でだが。


「うま!うま!」


「セラフィちゃんは…すごくワイルドなのね?」


クールビューティーな見た目の違って、教育など受けたことのないセラフィは当然鷲づかみ。

見た目17歳とは思えぬ汚い食べ方なのだ。


「そんな食べ方じゃダメだし!アーシが教えてあげるし!」


「ふぁい(もちゃもちゃ)」


公爵令嬢として英才教育を受けてきたヒンニは4歳にしてとても所作が美しい。

言葉遣いはアレなのだが。


「さて、ここからなら馬車でも一日かからない距離に王都があるぞ!」


プロティンの言葉に目を輝かせるヒンニ。


「すげーし!王都ってバカでけぇ城あるし?ノウキーン領よりもでけぇ街だし?」


「城も街も大きいぞ~楽しみに待っとけよ~(ガシガシ)」


朝食を終えたセラフィは、約束通りヒンニとバンジョーと一緒にお散歩。

食べ歩きしてきたらしく、帰ってくると2人と一匹は口をもちゃもちゃしていた。



‟飛行魔法”をすぐ習得したセラフィ。カシコイやマリーンと同じ存在だとプロティンとニュウが察したところで、一行は王都へ飛行する。




しばらくして馬鹿デカ壁門が見えたところで徒歩に切り替える。


飛んでくと何かと面倒であるというプロティンの言葉である。


魔法でゴールデンレトリバー並の大きさのシルバーウルフ、バンジョーの背中にヒンニを乗せて、王都の関所に向かう。



王都の関所


「コラァ!そこの亜人止まれ!」


ヤリを無数に向けられるセラフィ。世間一般の魔族や亜人の扱いはこれが正解。


「待て!その女は息子の奴隷でな」


「亜人の奴隷だと!どこの不届き―――プロティン閣下!?」


「すまんが、通してくれぬか?」


「オイ!お前等ヤリをどけろどけろ!公爵閣下の御一行だ!!」


セラフィにヤリを向けた衛兵達がすぐにわなわな離れていく。

そのぎこちない動きは、こちらにも焦りが伝わってくる。


「公爵閣下御一行とは知らず、ささッお通りください!」


仰々しく頭を下げる衛兵に「ご苦労」と一言労いの言葉。

その一連の所作に感嘆を感じるセラフィ。


「当主殿はすごいのだな…」


「あら?ホレちゃだめよ?」


軽い惚気をを受け流しつつ、一行は町の中へ。



「…なんか、思ってたより…ショべーし。」


とても壮大な街並みなのだが、超インフラ中のノウキーン領と比べてしまうと…まぁ、普通くらい。


「私も昔、王都に来た時はもっとすごいと思っていたけど…不思議よねぇ~」


「そっそうなのか!?これほど人がいて、壮大な街並みが普通?人族とはそれほど文明が進んでいるのか?」


セラフィがあたふたしていると、人並みの中から見慣れた王都のバイク乗りが2人歩いてくる。


「あれ~?ダデールとスポッティじゃん。お~い」


トエムが手を振る。それに気づいたバイク乗り二人。

物凄く険悪な表情で申し訳なさそうにおずおずと向かってくる。


二人の顔に気が付いた時、プロティンは思わず吹き出してしまった。

変装していても一発で見抜く。忠臣プロティンはさすがである。


「オッスオッス!今からノウキーン領にお出かけか?」


「う~~む、…おや、トエム君の御父上様とは、は・じ・め・ま・し・て、だな?私の名前はダデール、こちらは友のスポッティ」


「は・じ・め・ま・し・て公爵閣下、スポッティと申します」


「え?え?ナニコレ?何で?どうするの?どうなの?」


明らかに動揺するプロティンを見て、流石に悟ったトエム。

この動揺は公爵家より上。


「父上、ここは王城じゃないですよ。ここにおられるのは普通のダデールさんとスポッティさん…でいいですね?」


「ぬぅ…聡いなトエム君、そういう事にしてくれ」


「はぁ~まさか2日で来ちまうなんて、まぁ俺達帰るから…さっさと城に来いよ!」


「はっはひぃ!!」


消沈した顔でトボトボと帰っていく二人、姿が見えなくなってから鬼の形相でプロティンは確認する!


「トエム!?あの二人とは知り合いなのか?そもそも、なぜ、どうやってノウキーン領に!?」


「たぶん電動バイクで半年前からたびたび来てますよ?今じゃ父上よりノウキーンのお店に詳しいっすよ」


「あいつらわしを王都に呼んどいて?ごわああぁぁぁああああ!!!(怒りの奇声)」


「それじゃ、速攻で行って終わらせましょ…あっ忘れてた!セラフィ!」


何かを思い出したかのようにセラフィに目をやるトエム、

察したセラフィはうつ伏せ顔を青くする。


「ちょっと、こいつと用事があるんで終わらせに行ってきます」


「宿場町で言っていたいろいろか?」


「こいつと一緒にきた魔物の大群が王都近辺の森に潜んでるらしいので潰してきます」


「え?…いや、聞かなかったことにする。でも、対処ができないときはわしに連絡をよこせ」


「はいっ!行くぞセラフィ」


無言でうなずくセラフィ。

来た道を戻り衛兵さんに挨拶をし、人目につかないところで‟飛行魔法”を使う。


‟奴隷紋”で無理やり案内させ、

魔物の群れと、目立つ5体の三メートルクラスの魔獣が見えた。


皆ねんねしている。お昼寝の最中だろう。今日の陽気は最高だ。


三メートル級の魔物は、スズメ、リス、虎、兎、一角馬

その後ろにゴブリン、オーク、トロールが視界に収まらないくらいいた。


「う~む、【隕石メテオ】で一掃すればいいが…チャーシュー、オークがもったいない。セラフィ、お前のスキルでオーク以外をどかす事はできるか?」


「出来る…だが一つ頼みがある」


「へぇ~奴隷のくせに俺に指図するってか?いいじゃねぇかそう言うの好きよ」


「へッ!?いいの?では頼みなのだが、あの巨獣の連中は生かしてほしいのだ。私がケモカンキ帝国のコロシアムで苦楽を共にした友達なんだ…昨日殺された2匹と違って、あいつらはスキルの支配無しで一緒に来てくれたんだ…頼む…私はどうなってもいいから」


「お前…誰があいつらの世話すんだよ?それって自分が助かりたいって言ってるのと同じだぞ?」


「う~そうなんだが…」


「しかし、魔物を自由にできるなら、オークの農牧を作って自由に交配させ飼い殺しできるな…チャーシューの自給自足が可能かも…」


「今、オークにとってとても恐ろしい事を聞いたような…」


「よし、お前の利用価値は解った(チャーシュー)。あの5匹はオメエの奴隷紋の代わりになる保険として人質って事で生かす。それでいいな?」


「いい、いやそれでお願いしますご主人様。本当に大事な友達なんだ」


「ちゃんと世話しろよ!よし、〈命令〉だ!オークとあの5匹だけこっちにどけろ!」


「ウグッ(奴隷紋)!…うむ…まずは説得してくる!」


起きたビックサイズの魔物とセラフィが喋っていると

物凄い勢いで虎の魔獣が向かってくる。


「ニャギャアアアアッ!!」


いきなり飲み込もうとしてきたので、

口の空いた瞬間すべての歯を打ち砕く。


瞬間、虎の巨獣は実力差がはっきりしたのか、

仰向けの絶対服従ポーズをとる。先日、シルバーウルフのバンジョーがとったポーズそのものだった。


「まて!『ニャンタロー』!!」


急いで駆けつけて来た時には既に遅し、虎は牙をもがれ、泣きながら服従ポーズを取っている。


「申し訳ございませんご主人様!何卒!何卒お許しください~~!!」


セラフィだけでなく、後ろの巨獣たちも頭を垂れている。

実力差がはっきりした様だ。


「じゃれてきただけだろ?なあ?にゃんたろー?」


ペタペタと虎の歯茎を触る。するとメキメキと音を立てて元通りに歯が戻っていく!


「にゃにゃにゃああああ(何だこいつ!!ありえへん!!回復魔法かこれ!?)」


「私もあり得ないと思う…」


「ん?こいつの言葉が解かるのか?」


「ええ、魔族は先天的に魔物や動物の言葉が理解できるの」


「へぇ~すげぇな。動物園とかできそう」


その後、せっかくなので先日のセラフィに【闇太陽ダークサン】を見せてもらう事にした。

数万単位でいたであろうゴブリンやトロールが一瞬でチリも残らず消滅する。


そして、王都近郊の豊かな森の入り口付近にぽっかりとクレーターのような巨大な穴ができた。


「うわー…えげつな。アレを俺達に使おうとしたわけだ(チラッ)」


「も、申し訳ありません!…でもあの時、あれだけの魔法がなぜ消え去ったのですか?」


「意識が飛んでも魔法ってのは無意識化でも使い続けるものなのさ。そんで、イメージのなくなった魔法にそのまま魔素を注ぎ続けると勝手に拡散するって事。だからお前が生きてんの」


生き残った残りのオークは巨獣たちと一緒に一掃する。セラフィは極大魔法でお疲れなので世界樹葉袋の冷蔵庫の中で冷えているスポーツドリンクを飲みながら休んでいる。


スズメの魔物は周辺一帯を嵐の様な魔法で血祭りにし、


リスの魔物は鋭い前歯でオークたちに気付かれることもなく首を落としていく。


うさぎの魔物の音速程の突進は、オークの肉片を粉々にし、


馬の魔物は、額に生えた大きな角から雷を起こし、消し炭にしていく。


最後に、先ほど歯が生えてきた虎の魔物、ニャンタローは、鋭い牙と爪で切り裂いていく。


こんな魔物が王都に攻め込んだら、さすがに被害が甚大であっただろう。

ちなみに、オーク一匹と王都の新米騎士の実力は同じぐらいである。


あっという間にオーク2千体近くが狩られたのだが…


「うわぁ、半分以上使えねえな…」


雷に打たれたり、突進で粉々になったりで、どうやら食料にはできないようだ。


「しかし、このまま放置したら腐るだけでは?」


至極真っ当なセラフィの意見に頷くトエム。


「だから、今からある場所と繋ぐ!」


トエムの魔力によって魔力サークル(魔法陣の外側の部分)が何もないトエムの前方に現れる。

その中心から、どす黒い重力場が螺旋状に広がっていく。


「ご主人様、あの黒い何かは一体?」


「プラックホール…」


重力魔法を強めていった結果生まれたのがこのブラックホール。


時間と空間を捻じ曲げる超重力エネルギーは、自分の魔素のあるところであれば距離と物質的干渉を無視してつなぎ合わせる事ができる。言うなればワープ。


「【虫食重力場ワームホール】」


ブラックホールの内側から覗き見える、トエムが繋げた場所、それは


「麺固め、カヤクタシタシ、野菜少なめお待ちッ!!」


三郎ラーメン娯楽街中央通り店であった。

トエムのスキルで創った世界樹ユグドラシルは、トエムの魔力による独立した存在として魔力を何故か保っている。


ブラックホールの内側からニンニクの香りがガンガン届いてくる。

不覚にもセラフィはよだれが出てくる。


「ぬ?トエム!?トエムではないか!フハハハハハ!ついに空間を超越する魔法を生み出したのか!そしてこの私、ヴァンパイアロードに何の用だ?」


調理作業を止めずこちらに話しかけてくるジョージ。


「(ヴァンパイアロード?魔王と同格と呼ばれる伝説の…じゃないか、料理作ってるし)」


セラフィはゲートホールの外から三郎ラーメンをガン見。

どうやら、三郎ラーメンいけちゃう派の女性らしい。


「ほほう?そこのダークエルフ。おなごのくせになかなかの見る目ガール。どれ、一杯作ってや―――」


「それどころじゃないんだジョージ!1000体近くのオークが腐ろうとしている!極大世界樹葉袋を持って急いでこっちに来てくれ、【虫食重力場ワームホール】は三分が限界だ!急いでくれッ!!」


「何ィ!!ノウキーン領周辺の狩りつくされた(主にヴァンパイアに)オークが1000体だと!?すぐ選りすぐりのヴァンパイアと我が行く!!持ちこたえてくれッ!!」


その問答を聞いた店内の顧客(7割ヴァンパイア)はその身そのまま即座にワームホールに入ってくる。

空間を渡った驚きと、計17人ヴァンパイアであった事に驚きすぎて腰をぬかし、立てないセラフィ。


サンタの様な極大世界樹葉袋を持って来た先頭の男。

『ヴァンパイアロード』のジョージは集まった連中に号令をかける。


「この極大世界樹葉袋は二つの魔法が込められている。『冷蔵アイス』と『小人化スモール』だ!故に!この袋に入れればチャーシュー、もといオークの品質は保たれるであろう!眷属たちよチャーシューを袋にぶち込めィ!!」


「「「オオオオオオオォォォ!!!!」」」


トエムは【虫食重力場ワームホール】の魔法を閉じ、セラフィや巨躯の魔物達と休んでいた。


2メートルあろうオークの巨体を、160センチほどの女性ヴァンパイアが軽々と片手で持ち上げる。

そして目にもとまらぬ速さで袋に押し込んでいく。


600体ほど詰め込んだところで、どうやら袋に限界が来たらしい。

そもそも2メートルのブヨブヨオーク600体ほどの質量、どう持っていくのか?


「心配無用。我の『ヴァンスパイアロード』のスキル《重力無効》でこの通りだ」


指先のみで持ち上げたジョージ。


「しかし、袋一つでオークが入りきると思ったのは我の失態…オイそこな娘よ、貴様が今期の『魔王』であることは解っている。お主がトエムの先程の魔法を唱えよ!」


「へ?私ですか?」


「魔王であれば《魔眼習得》を持っているであろう。先程の魔法を‟寸分の狂いもなく再現”するはずだ!やって見せよ!」


「まがんしゅうと―――あった!《魔眼習得》!!えっと【虫食重力場ワームホール】!」


できちゃった。


「よくやった娘!今度我の店に顔を見せよ!タダでこの世に存在する最高の料理を振る舞ってやろう!!よし新しい袋をもってこよう!!」


「あっ!ついでにこいつら(巨躯の魔物)【小人化スモール】かけるからゲートくぐって先にノウキーン領に帰っとけよ。オーイ!そっち(ゲートホールの向こう)に誰かいる?」


「私がいるぞ!」


返事をしたのはノウキーンのギルマス、ノースビレジ・アニキィだった。


「アニキィさんオッスオッス。そっちに今からわんぱく動物5匹送るからトエム農場まで送ってくれない?」


「いいぞ!魔道具神の頼みであれば安い物よ!」


「よーしお前ら、今からあそこのガチムチ筋肉に連れてってトエム農場ってとこまで案内してもらえ。先に言っておくが誰かに迷惑かけたり、襲ったりしたらセラフィの命は無いと思えよ」


「「「(コクコク)」」」


「よーし、全員言葉理解してんな!【小人化スモール】っと。農場についたら好きに実ってる食いモン食べ散らかしていいからな~」


全長いメートル程度のワームホールに【小人化スモール】をかけられた5匹の魔物達がおずおずと入っていく。


アニキィは、魔物達の知力に感心しつつ農場に送っていくのであった。


そうこうしているとジョージが戻って来たのでワームホールを閉じる。

大満足のヴァンパイア達。そこへ―――


「き、き、貴様ら!?いったい何者だ!!」


なんと王都から異常に駆けつけた、王都騎士団が来てしまった。

最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。

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