トエム、初めてのお使い②
ヤギュウ→ハンニバル
なんか元の設定が残ってました。
ひと息ついたので改めて自己紹介。
「俺はトエム。3ちゃいだけど,ハムエッグ伯爵領まで護衛を引き受けている。たまたま助けた女がおっさんの知り合いで驚いた」
「改めてお礼も仕上げますトエム様。私、タルト男爵家次女のレモネーゼと申します」
「ヤデレ、ヤデレ・ハンニバル。3ちゃいです…」
「ヤデレちゃんと言うのか…この度は本当に大変だったね、何と言えばいいか…」
家族らしき死体はアジトの洞窟でトエムが確認している。
「ヤデレっつったか?お前帰るとこあんの?」
「……(無言で首を振る)」
「じゃあ、俺ん家来るか?」
「と、トエム様!ちょっとよろしいですか?」
「あー解ってるからいい。レモネーゼさんに比べて、発見した時も顔色はよかった。あんな連中が飯与えてたって事は、有名な家柄なんだろ?」
「教国の重鎮『ハンニバル家』が本当だったら…超有名どころさんですな…」
「こまけ―こといいんよ。俺が勝手に助けたんだから責任があるってこと。そっちのねーちゃんはおっちゃんが何とかすんだろ?ういうい!」
「ちょっと?肘でぐりぐりやめてください(ちょっとうれしそう)」
「護衛が終わったら連れて帰ってやる。デカくなるまでなら面倒見てやるさね(同じ年)」
「うん…じゃあ、行く!」
「すごいね…トエム君って。どう考えても3歳児には見えないわ?」
「えっ、普通でしょ?」
「私の知る限りでは、3歳児で山賊を壊滅させるというのは、物語でも聞いたことありませんわ」
「世間の常識であって、俺の常識ではない。俺さぁそろそろ帰らないと母上に叱られるから早く荷台に乗ってくれ!」
「?、トエム君はどうするの?」
「馬車を引く!!(まぶしい笑顔)」
「……(この子人間じゃないわ、考えるのやめよう)」
通常の馬車の何倍もの速さで走る子供を見て、レモネーゼは思うのだった。
ハムエッグ伯爵領
「そうか…大変だったな…だがこの程度で俺はお前との婚約を破棄する気はない。俺と一緒に永遠を誓ってくれるな」
「カバールさまぁああ!!」
商会長カバールとレモネーゼが、人目もはばからずちゅっちゅべろべろし始めて、
俺達は何を見せられてるんだ状態になる。
ここは町中央のグルジャン商会客相室。
隣にいるサイドンさんはこれでもかと言うほど落ち込んでいた。
トエムが軽く肩を叩く。
「女なんて星の数ほどいるさ…」
「トエム様、そっとしといてください」
しばらくして、大人のキスが終わると、
ようやく話がトエムの方に向かった。
「うほんッ!お騒がせした。私がグルジャン商会長カバール。あなた様の話は弟から嫌と言うほど聞いているトエム・ノウキーン様」
その言葉に瞳孔が開くほど驚く、隣に居たべろちゅー女。
「ノウキーン…あ、でも納得だわ!どう見ても噂通りの神童だもんね」
「え、神童?」
「さて、改めて礼をする。我が妻を救い出してくれた事」
そう言って深く頭を下げるカバール。
横で「カバール様、ぽっ♡」とかやっているのでいい加減うざくなってきた。
「礼ならサイドンのおっさんに言ってくれ、俺がここに居るのは巡る巡ってあのおっさんのおかげだ。他に用がないなら帰る」
「待ってくれ、せめて今晩だけでもここに泊って行かないか?贅の限りを尽くそう!」
「いらんよ、母上待ってるだろうし、このヤデレも紹介しないといけないし」
「いや、そう言わずに~」
「くどい!アンタは俺を困らせるために呼んだか?俺はただの3歳児だ!コネ作りや贅沢に興味ない!不快だ!」
「これは―――すまない(ただの3歳児がこんな威圧的なモノか!)」
普段ワザと子供らしさを出すための3ちゃい呼びを忘れるほど気が立っていた。
前世から飲み会やキャバクラなどのコネづくりが嫌いなトエム。
「もし、恩を感じるならそこの奥さんをもっと大事にしろ!今回の件で見た目以上に傷ついているだろう。ケア忘れんなよ!じゃあな」
そう言うとヤデレと共にズカズカと外に出ていく。
「ふーむ、どうやら対応を間違えてしまったな」
「兄貴が色ボケしてっからだろうが!トエム様の商談は現商会の70%も売上を占めているんだから考えて喋れよ!」
「すまんすまん、傷心のレモネーゼを落とせそうとか思っていたのだろう?そうカリカリするな弟よ」
「カリカリするわ!ずっと…好きだったのぃ…」
ハムエッグ伯爵領とノウキーン公爵領の中間地点上空
「空!飛ぶと早いねッ!」
「あぁ、本当はもっと早く飛べるが、お前さんは空中体験初めてだからな(ゲロメイドを思い出す)」
約時速40キロくらいの安全運転間隔で飛ばすトエム。
背中におぶさっている黒髪の女の子がぼやくように喋る。
「あのね…ヤデレね、うちからバイバイしちゃったの。かえるうち…ない」
「ふーん」
「おとーさんもおかーさんもわたちをいらない子だっていって、知らないおにーさんおねーさんにつれてかれたの」
「ん?となるとあの焼死体はお前の両親じゃないのか?」
「しうしたい?」
「まぁいいや、それでそれで?」
「どれいになって、『ハンニバル』はつよいこどもをうむってこわいおじさん言ってた」
「この世界じゃ血統で職が決まるらしいからなぁ、それで大事に生かされた訳か」
なかなかに酷な話だ。もしあの場にトエムが出向かなければ子供を産ませるため家畜にされていたであろう。
「おっ見えて来た…母上心配してるかも…」
夕暮れを反射する外壁を上から通り越すと、見慣れた風景が広がる
ノウキーン領に帰って来た
「ただいま~」
「あっ坊ちゃんおかえり~」
小太りの中年調理人トンデモがなぜか屋敷に居た。
トエムは特に気にすることなくセバスを呼ぶ。
「セバス、この子を適当なメイドに風呂に入れるよう言って」
「おや~トエム坊ちゃんにガールフレンドですかな。隅に置けませんな」
「そうだよ(肯定)。ついでにその子、俺の付き人にする予定だから教育もよろしく」
「畏まりました。君の名前をおじちゃんに教えてもらえるかな?」
「ヤデレ・ハンニバル…です」
「……坊ちゃん、この子をどこで拾ってきましたかな?」
「山賊のアジト、ハムエッグ領まで護衛をたのまれてさぁ、そのついでに助けた。あ!この事母上には内緒にしてくれよ」
「言っても信じないでしょうが、畏まりました。それとハンニバルは名乗らせない方がよろしいかと」
「そういうもんか?セバスに任せるよ。じゃ、母上のとこ行ってくる」
「実は、奥様はただいまお客様の対応中で…」
「あっそうなの?じゃあ俺、夕飯まで筋トレしてるわ」
「いえ…実はお客人が坊ちゃんに会いたいと…」
「そうなの?じゃあ、先に客室行くわ」
そう言って客室に向かうトエムをセバスは見送る。
トエムには見えなかった背中から汗が溢れている。
「(トエム様は…いったい何者なのだ?)」
セバスはその疑問を考えずにはいられない。
それは今日来た客人の正体を知っているからだ…
客室
「お邪魔しま~す」
バタンッと勢いよく客室のドアが開く。
客室に居たのは母上と
やけに威厳のあるちょび髭の金髪渋メン(たぶんちょび髭は付け髭)
鋭い威圧感のある、警察官の様なだせぇ帽子をかぶった目つきの悪い緑髪イケメン。
漆黒のローブの絶世の銀長髪美男子と
見覚えのあるラフな格好をした銀髪の美青年。
「HEYジョン!オッスオッス!」
「HEYトエム!オッスオッス!」
「へっ!?二人は知り合いなの?」
驚いて聞いてきたのはニュウ。
「んあ~、俺が畑を耕してるのは母上知ってると思うけど、そこのニンニクを言い値で大量に買ってくれる商人がこの人さ!つっても人じゃなくてヴァンパイアだけど。あっ、そこのちょび髭と目つきの悪いおっさん!このこと内緒な。よそだと魔物だ亜人だうるさいからさ」
「う、うむ」
「お、おう」
「ト…ト…トエム!?この人たちは旦那様の大事なお客様なの!!失礼のないように!」
「無理っですよ~だって3ちゃいだもの。そこの長髪のあんちゃんもヴァンパイア?初めて見る顔だな。俺トエムな、よろ」
「ほう、貴様があの神の食事を生み出した奇跡の男トエムか!!私は魔大陸を統べる四天王の一柱ジョージ・ヴァレンタインだ。あの新鮮なニンニクの提供もひょっとして貴様か!!切に切に感謝する!」
「あっはい。んで?俺を呼んでるってセバスに来たけど誰?」
「わしだ、ダデールという」
ダデールと名乗ったちょび髭。
「ダデールさんは俺に何の用?」
「実は、この領地で変わった物を君が創ってるとニュウ殿から聞いてね」
「え?母上、話しちゃっていいの?」
「いい相手だから、逆らわす丁寧に答えなさい」
「じゃあ言うけどアイデアだけだよ。アイデア出したら後は魔導士の変態2人と工房の職人が勝手にやっちゃう感じ!」
「つまりはおめえが原因って訳かぁ?」
「原因?」
目つきの悪い男の言葉に困惑するトエム。
「この領の異常な発展具合とか…自覚が無い訳じゃないだろうな?」
「以前セバスからこの領は過疎ってるって聞いたから、ちょっとインフレしたと思うけど」
「インフレ…は何だか知らんがちょっとでは無い!おっと、名乗るのを忘れていた。俺の名はスポッティとと言う。よろしくな」
「プッ、スポッティ…」
「ダデールよりマシだろがッ!それより、カシコイ様とマリーン老師を探しているのだが知らんか?」
「あの二人ならドラゴンの胃袋が欲しいって出て行ったけど…たぶん魔の森じゃない?」
「あの…魔大陸と人族の境目にある超危険地帯の事か?」
「上空ならあんま危険じゃないって、カシコイおじさんが言ってたよ。たぶん飛行魔法で探索してるんじゃない」
「飛行魔法!?【失伝魔法】か…むぅ」
なぜかため息を出すちょび髭。
「困ったな…工房見学がしたいのだが…」
「あぁ、だったら俺が案内やろうか、職人全員俺の顔知ってるし」
「む!よいかの!」
「夕飯ができるまでならいいよ」
「わーい、さっすがトエム君、話が解かるッ!」
「我もぜひ見学を所望する!」
「このガキ、何でも有りだな」
「(この少年が女神の使いで十中八九間違いなさそうだ…)」
様々な思惑が交差する、
ワクドキ工房見学が幕を開ける。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。