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09 ギルドでゴロツキにからまれる

「ごめんなさいね。ここらにたむろっている戦士で、ああ見えてA級パーティーなのよ。」

お姉さんは小声で俺に言う。


「おい、早くしろって言ってんだろ。聞こえねえのか!」

三人組は俺を突き飛ばして割って入ってきた。

「クエスト報酬をわざわざ受け取りにきてやったんだ。早く準備しろよ!」

まわりに響く大声で騒ぐ。

随分威張っているな。

なんだこいつら。


「兄さん、やり返そうっていうのならやめときな。このへんじゃ有名なゴロツキ戦士どもだ、裏社会にも通じていて、絡まれると厄介だぞ。」

隣にいたおじさんが教えてくれる。

「裏社会?」

「王都の闇さ。金になることならなんでもする。モンスターとは別の意味でやっかいなやつらだ。関わりにならんほうがいい。」


お姉さんは困った顔でゴロツキどもに対応している。


「申し訳ございませんが、順番におうかがいしますので、そちらのベンチでお待ちいただけますか。」

「ふざけんな、さっさとやれ!このブサイクが。」

ゴロツキが大声で怒鳴る。

受付のお姉さんの目に涙がたまる。

何いってんだこいつ。

めちゃめちゃ美人だろうが。


「おい、いい加減にしろよ。」

俺は、たまらずゴロツキどもに注意をした。


「なんだと、この野郎。文句あんのか!」

「順番でやるって言ってるんだからちゃんと待てよ。」

「俺たちはA級パーティーの戦士様なんだよ。お前らみたいなヘボ戦士とは身分が違うんだよ。思い知らせてやるぜ!」


 そういうと3人がかりで殴りかかってきた。

俺は人との対立はできる限り避けて生きてきたので、対人戦闘はやったことがない。

大丈夫だろうか。


 相手の攻撃を、手のひらで軽く捌いてみる。

うん、なんとかなりそうだ。

俺ぐらい慣れていると、素手でもジャストガードができる。

こっそりとスキルを使う。


「おい、全然攻撃があたらねえぞ。どうなってんだ。」

「しかも、殴った感触がまるでない。」

「何しやがったこの野郎!なめやがって。」

ゴロツキどもは、ヒートアップして攻撃してくる。

しかし、こいつらの攻撃はモンスターより単純だな。

片手でも防げそうだ。

本当にA級戦士なんですかね。


「ハア、ハア、くそ、この野郎。」

ジャストガードは相手スタミナを削る効果がある。

全員肩で息をしているし、汗だくだ。

スタミナは、ほぼゼロだろう。


「ヘロヘロじゃないか、もうそこのベンチで休めよ。」

俺は言った。

「ふけるな。許さねえぞ。」

ゴロツキの一人が剣を抜いて、切りかかってきた。


パシッ


 俺も剣を抜き軽く弾き返した。

ゴロツキは勢い余って一回転し、柱の角に頭をぶつけてのびてしまった。

うわぁ痛そうだ、大丈夫かな。


 その動きが滑稽だったのかあたりから笑いと拍手が起きる。

他の二人もヘトヘトで立ち上がれない。

床に座りこんでいる。


「兄貴、もうダメです。」

「ハァハァ、なんだお前は…弱小戦士のくせに。覚えてろよ。」

そういうと、ゴロツキどもはのびている一人を抱えて、逃げるように去っていった。



「本当にありがとうございます。私はニーナと言います。」

受付のお姉さんは両手で、俺の手を握りそう言った。

大人っぽい、いい匂いがした。

「いや。それほでも。」

俺がそう答えるとほぼ同時に、大柄な男性がギルドに駆け込んできた。


「ちょっと。お父さん、どうしたのよ?」

ニーナさんはびっくりした声を出す。

「おお、ニーナよ無事か。知らせを聞いて職場から駆けつけたのだ、もう心配で心配で。」

高級なお召し物を来た、非常に強そうな紳士であった。

俺は慌ててニーナさんの手を離す。


「もう落ち着いてよ、お父さん。私は大丈夫だから。ここにいるタクトさんに助けてもらったのよ。」

それからニーナさんは、俺に振りかえって言った。


「こちらは私の父です。ギルドの最高責任者なの。」


 ギルドのトップといえば、アノドア ・アルシア。

伝説の戦士じゃないか。

この人が、そうなのか。


「娘を助けてくれてありがとう。」

そう言って丁寧に頭を下げた。

「娘には危ないからこの仕事は辞めるように言っているのだが…」

「私は平気よ。仕事も大好きだし辞めるつもりはないわ。」

ニーナさんが拗ねた声で言った。

伝説の戦士も娘には弱いのか…


「言ったら聞かない娘でね、誰に似たのか。そうだ、何かお礼をしなければ。」

「いえ、そんな。とんでもない。」

「タクト君は前のパーティーのリーダーにギルド登録抹消されて困ってるのよ。お父さんの力で何とかならないかしら?」

「そんなことが…なにかの間違いだろう。すぐに再登録できるように取り計らおう。」

「本当ですか。」

そんなことが、出来るのか。

さすが伝説の戦士だ。


「しかし、嫌な世の中になったものだ。昔は戦士とは誰かのために戦うものだった。今はみな金のためだ。すまんな年寄りのたわごとだ。」

「いえ、肝にめいじます。」

「君のように、若くて立派な戦士がもっと増えてくれれば嬉しいよ。再登録の件は任せておきなさい。」

アドノア・アルシアは俺に言った。

良かった、これで騎士団への入団も何とかなる。


「タクト君ありがとう。ギルドで困ったことがあったら何でも言ってね。」


 ニーナさんは両手を振って見送ってくれた。

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