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46 裁判

「裁判官の権限の下、あなたに有罪判決を言い渡します。罪状は12年間の辺境の地での強制労働です。」

裁判長はジェフリーに言った。

裁判長は若い女性だった。ぞろりとした白いローブを着ている。


 ここは、王都にある裁判所である。

ジェフリーの俺に対する殺害容疑の裁判が今終わったのだ。

俺は、ヴィレッタとノワールと一緒に傍聴席にいる。


「ふざけんな、俺は悪くねえ。こんなのはインチキだ、でっちあげだ!やり直しを、させろ!」

ジェフリーは大声でわめく。

判決に納得がいかないようだ。


「お静かに。裁判所ではルールに従ってください。罪状か増えますよ。貴族のご子息なのですから、誇りをもってください。」

裁判長は、ピシャリと言った。

ジェフリーはうなだれて座り込んだ。



「やはりエミリアの証言が決め手になりましたね。」

ノワールが言った。

「そうですね、身内にしかできない生々しい証言でした。」

エミリアは現場の状況やジェフリーの言動を完璧に覚えていて、裁判員の質問にスラスラと回答していた。

さすが魔法使い、頭がいいんだな。

「それに引き換え、豪腕のキリアクの証言はひどいものだったのう…」

「半分ぐらい擬音でしたね。何がなにやら…」


 証言を終えたエミリアが傍聴席に戻ってきた。


「ありがとう、エミリア。よくやってくれた。」

ノワールが言った。

「はい、すごい怖かったのですが。お姉さまのためにがんばりました。」

エミリアは言った。

「おぬし…お姉さまと呼ばせておるのか…」

「違いますよ。エミリアが、勝手にそう呼ぶのです。」

「いいじゃないですか、お姉様で…」

エミリアはそう言ってノワールの腕にしがみつく。

エミリアってこんな感じだったっけ…

もっとサバサバした性格だった気がするが。


「しかしたったの12年とは、量刑が軽すぎるのではないですか。タクトを殺そうとしたのですから。極刑でもよかったのに。」

「しかたがない、戦場での殺人罪は立証するだけでも大変なのじゃ。エミリアは本当によくやってくれた。」

「はい、ありがとうございます。」

「何か、希望があったら言ってくれ。出来るかぎりのお礼はするぞ。」

「本当ですか!嬉しいです。」



「さあ、立ってください。ジェフリーさん。」

警吏がジェフリーの腕をとる。

貴族への気遣いか、縄をかけたりはされていない。

「いやだ、行きたくねえ…辺境なんて…」

ジェフリーは机にしがみつき動こうとしない。

「ほら、しっかりしてください。」

ジェフリーは戦士に腕を取られ、引きずられるように退席した。


「なんとも、見苦しいものだな。」

ノワールが言った。

「わしも色々調べたてみたが、まあ最低の戦士じゃな。」

ヴィレッタが言う。

「よくもまあ、あんな男の下で戦っておったのう。」

「はい…パーティーなんてどこも同じかと思ってました。」

「例のゴブリン退治を失敗したのもあやつらしい。」

「本当ですか。あのタイレルのゴブリン討伐クエストでよね。」

「それ、わたしも参加しました。あの時はひどい目にあいました…」

エミリアが言う。

「モンスター強化についても何か関わっておるかもしれぬ。もう一度調べるように言っておいた。」



俺たちは、裁判室を後にする。


「よし、今日はわしがご馳走してやるぞ。」

ヴィレッタは言った。

「そうですね、お祝いと行きましょう。」

ノワールが言う。


 階段を下り出口に差し掛かったところで、二階から叫び声がきこえた。


「大変だ、捕まえてくれ!」


 振り返ると、ドサリと何か大きいものが上から落ちてきた。

ジェフリーだった。


 護送を振り切って逃げだしたのか、吹き抜けの二階から飛び降りたのだ。

数人の警吏がジェフリーを追いかけて、大慌てで走る。

ジェフリーはこちらの出口に向かって走ってきた。


「お前らどけ!」

奪い取ったのか、剣をもっている。

俺は一歩前に出る。

「リーダー何やってるんですか。」

「タクト!邪魔をするな!!」

ジェフリーは俺に向かって剣を振りかぶる。

物凄い形相だ。


キン


 俺は持っていた盾で、ジェフリーの攻撃をジャストガードで防いた。


「クソがああああああ!!お前はいつも邪魔ばかりしやがって!!!」


キンキンキン…


 ジェフリーは狂ったように剣を振り回すが、俺はそのすべてをジャストガードで防ぐ。


「もう少し工夫して攻撃しないと、俺のガードは崩せませんよ。」

「うるせえ、この野郎!お前なんかに…はあはあ…」


 ジェフリーはスタミナ切れを起こして膝をついた。

ジャストガードはスタミナを奪う追加効果があるのだ。


「逃がすな!」

「捕まえろ!」

 膝をついたジェフリーに追いかけてきた何人もの警吏がドカドカと飛びかかった。

ジェフリーは押しつぶされ、押さえつけられる。


「バカなまねをしやがって、刑期が増えるだけだぞ。」

警吏の一人はそう言うとジェフリーの髪を掴み引きずり起こした。

ジェフリーの口の端から血が流れる。


「タクト、エミリア、お前ら絶対許さねえぞ。必ずぶっ殺してやる!」

「うるさい、黙れ!」

ジェフリーは腕をひねり上げられ、後ろ手に手械を付けらる。そして屈強な警吏達に連れていかれた。



 騒動から、しばらくたったある日のこと、俺は団長室に呼ばれた。


 大きな机の奥に団長のヴィレッタが座り、その隣には秘書のワンダさんが、書類の束を抱えて立っている。


「前のパーティーにマキシムというやつがいたじゃろう。」

「はい、騎士のマキシムですね。」

偉そうでやなやつだったなあ…


「そやつが自供したのじや。モンスター強化はジェフリーの仕業だったらしい。特殊なアイテムを使用していたそうじゃ。」

「本当ですか。それってかなりの重罪なんじゃないですか。」

「ああ、死刑は回避されてらしいが、刑期が伸びたそうじや。」

「刑期は155年に伸びました。死刑相当の量刑です。」

ワンダさんが言った。

「まったく、おろかなやつじゃな。」

ヴィレッタが言った。


「でも、リーダーはなんであんなことをしたのでしょうね。」

「タクトのことが恐ろしかったのだろな。」

「恐ろしい?俺が?」

「やつはクズだが、バカではない。一緒に、戦っていてタクトの実力はわかっていたのじゃろう。認めたくなかっただけでな。」

「そうなんですかね、ずっと役立たずと言われてましたが。」

「それで仕返しをされると思ったのじゃろうな。単なる嫉妬かもしれんが。」

まあ、今となっては、どうでもいいことか。


「それからエミリアはここで働くことになったぞ。」

「天空騎士団でですか。」

「ああ、たっての希望でな。無給でいいから手伝いたいと言っておったがそうもいかんからのう。戦士としてではなく、ワンダの元で職員として働いてもらう。」

「はい、かなり物覚えがいいですよ。すぐに戦力になってくれると、思います。」

ワンダさんは言った。


 それから、ジャンとアレイシアはブランさんと一緒に冒険者を、続けるそうだ。

どこかの戦場で、また合うこともあるだろう。


こうして一連の騒動は終了したのであった。

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