43 決着①
ノワールの後から、続々と戦士たちが現れる。
ヴィレッタにベオウルフ、セシル。
白銀の鎧の騎士など第二部隊のメンバーたち。
そしてジャンとブランさんもいた。
ベオウルフ以外、全員はあはあと大きく肩で息をしている。
まさか、ここまで走ってきたのだろうか…
「タクト、待たせたな!」
そう言うとベオウルフは槍で次々と敵を串刺しにしていく。
ヴィレッタはベオウルフに守られながら魔法攻撃をする。
いいコンビネーションだ。
「タクト、大丈夫か!」
ノワールが俺に駆け寄って言った。
「はい、何とか。」
「血だらけではないか…」
ノワールは俺の顔に軽く手を触れた。
「ダメージは大したことないんです。かすり傷ですよ。」
「くっ、よくもやってくれたな…許さんぞ…」
ノワールは怒りの形相でベヒーモスを睨みつける。
その場で両手持ちの剣を中段に構えると、剣を握る手に力を込めた。
ノワールの回りの空間が少し歪んで見える。
凄まじいパワーを感じる。
強力な攻撃スキルの準備だ。
「各パーティーの盾役は全員ノーワールを守れ!他の者は周囲のモンスターを倒せ。」
ヴィレッタが大声で言った。
ノワールの周りを屈強な戦士達が囲む。
その中にジャンやブランさんもいた。
「タクトさん大丈夫でしたか。」
ジャンが盾を構え攻撃を防ぎながら言った。
あいかわらず体格に合わないごつい盾を使っている。
「ああ、なんとか。でもなんでこんなに早く。」
「全員で全力疾走したんですよ。軍隊を編成したままフル装備で。」
「まさか、あの距離を走ることになるとはな。中年にはきつい。脇腹が痛いわ。」
ブランさんが防御をしながら言った。
渋い鉄製の盾を構える。使い込まれたいい盾だ。
「若くてもきついですよ。絶対に無理かと思ったけどなんとかなりましたね。」
ジャンが言った。
「戦闘前の行軍で全力疾走するなんて無茶苦茶だよ。よくみんな付いてきくれたね。」
「そりゃあねえ、漆黒のノワールが号泣しながら走っていったら追いかけるしかないですよ。」
ジャンが言った。
ノワールが、そんなことを…
「外では豪腕のキリアクが指揮を取って防衛線を引いています。モンスターは一匹たりとも国境には近づけないと息巻いておりました。」
ブランさんが言った。
「タクト殿、もう休んでいてください。」
他のパーティーのタンクだろうか、重装備の騎士が俺に言った。
「いや、ノワールは俺が守りたいんだ。」
「そうですか、分かりました。リーダーからドラゴンナイト様を助けるように言われています。微力ながらお力になります。」
騎士は大きな盾と斧槍を構えて言った。
この人が鉄壁のライカールトか。
近くで見ると高身長で筋肉ムキムキの美男子である。
そりゃあ、こっちに交代させたくなるよなあ…
少し先で戦っている、白銀の鎧の騎士が俺を見てかるく頭を下げた。
「いかん、ベヒーモスの角攻撃が来るぞ。」
ブランさんが言った。
ベヒーモスは俺たちに向かって鼻先から伸びた太い角を振り上げる。
「全員防御態勢を。なんとしても防ぐんだ!」
ライカールトが叫ぶ。
「俺に任せて!」
俺は一歩前に出ると、ベヒーモスの攻撃をジャストガードで防いだ。
ジャストガードが成功した時の甲高い音が響く。
ゴゴゴ…
ベヒーモスの巨体が崩れ落ちた。
ジャストガードはスタミナを削る効果があるのだ。
これまで、何十回とジャストガードを決めていたのだが、ついにスタミナが完全版に切れたようだ。
ベヒーモスは膝を折り、腹這いの状態で動けなくなった。
◇
「ゆくぞ!」
力を溜めていたノワールが声を上げた。
剣は燃え上がりそうな真っ赤なオーラをまとっている。
ノワールはベヒーモスを睨みながら、中段に構えた剣をゆっくりと振り上げる。
涙は渇き、凛々しいいつものノワールの表情に戻っている。
月明かりに照らされたノワールを全員が見ていた。
「くらえ、マキシマムバーストアタック!」
ノワールは叫びながら剣を振り下ろした。
剣から放たれた巨大な火の玉ががベヒーモスを襲う。
スタミナ切れで動けないベヒーモスに火の玉は直撃した。
直撃した火の玉は大爆発をおこし、大きな火柱が上がった。
爆風が回りのモンスターを吹き飛ばす。
後で聞いた話だが、その火柱は遠く離れた王都からも見えたという。
ベヒーモスは蒸発した。血一滴も残らずに。
◇
爆風が収まった。
「みんな無事か?」
ヴィレッタは言った。
「はい、事前に聞いていましたので、みな避難しています。ただ聞いていたものよりだいぶ威力か大きいようですが…」
白銀の鎧の騎士は、砂まみれの兜を払いながら言った。
「怒り具合で威力がかわるようじゃ。すまんのう。」
ベヒーモスが消えると、モンスターは夢からさめたようにバラバラに動き出した
「変異が始まったか。」
「ん?なんですか」
「モンスターが元に戻ったのじゃ。もはや群れとしてのまとまりはない。進行もせんじゃろう。各個撃破じゃ。蹴散らすぞ。」
300人のAクラス戦士達が、バラバラに動きだしたモンスターに一斉に襲いかかる。
低レベルのモンスター達はおののき、散り散りに逃げ去って行く。
ハイクラスのモンスターもAクラスの戦士たちの強力な攻撃により、次々と倒されていった。
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