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42 騎士の戦い②

 ベヒーモスが立ち止まると、回りモンスターの進行も合わせて止まった。

よし、思った通りだ。

このまま、なんとかベヒーモスを足止めしてやるぞ。


「スキル発動、ジャストガード。」

手に持った盾が、かすかに光る。


 ベヒーモスの攻撃がくる。

ベヒーモスは少し顎を上げると、鼻の先から鋭くのびている太い角を、素早く俺に叩きつけた。

虫けらでも潰すような動きだった。


キン


俺その攻撃をジャストガードで防ぐ。

ベヒーモスは驚いたような顔をした。


 盾スキル『ジャストガード』はただ発動するだけでは効果がなく、攻撃を受ける度に追加の操作が必要になる。

攻撃を受けるタイミングで、グッと盾の表面に力を込めるのだ。

効果があるのは一瞬でタイミングを合わせるのが難しいのだが、決まればどんな攻撃でも無効化できる。

たとえ神獣ベヒーモスの超重量級の攻撃でもだ。


「何かの、間違いだろう。」

ベヒーモスはそんな感じでもう一度攻撃してくる。

首の力だけで太い角を叩きつける。


キン


俺は、それも弾きかえしてやった。

ベヒーモスの脚がよろける。

ジャストガードには相手のスタミナを削る追加効果があるのだ。


 俺がベヒーモスを足止めしていることに気づいたのか、回りのモンスターが魔力を吸われるのを覚悟で襲いかかってくる。

こいつらは、とにかく前に進みたいらしい。

モンスターはべヒーモスに全く近寄れないわけではないようだ。


キンキンキン…


 モンスターの攻撃をジャストガードと剣で防ぎながら、ベヒーモスの次の攻撃を待つ。

少しして、ベヒーモスは再び角を叩きつけてきた。

衝撃波で周囲のモンスターが吹き飛ぶ。

俺はジャストガードで防いでいるので当然無傷だ。


 ガードと同時にベヒーモスの顔をきりつけた。

俺の攻撃によるダメージはほぼゼロだろう。

攻撃力は一般兵に毛の生えたようなものだからな。

倒さなくていい。怒らせるのだ。


「ボモー!ボモー!」


 顔を切りつけられたベヒーモスは怒りの雄叫びを上げた。


ジリジリ、バリバリ


 周囲の空気が震える音がする。

ベヒーモスのまわりに青く光る玉がいくつも浮かび上がった。

青い玉はシュンと音を立てて収縮すると、青い光線となり俺に向かって飛んで切る。

ベヒーモスの魔法攻撃である。

魔法攻撃は俺に直撃するが俺はダメージを受けない。


「ベヒーモスよ残念だが、俺に魔法はきかないのだ。」

勝算その2。俺にはあらゆる魔法を無効にする耐性がある。

ドラゴンの恩恵だ。


「さあ、どんどん打ってこい。」

俺は手招きしてベヒーモスを挑発する。

ベヒーモスの魔法攻撃を利用して他のモンスターを倒すのだ。

魔法攻撃により回りのモンスターは次々と吹き飛ばされていく。すごい威力だ。


 そして勝算その3。俺はこいつらを倒さなくてもいいということ。

剛腕のキリアクの言うとおり、俺には強力なモンスターを倒す力は無い。

だけど、持てるスキルを駆使すれば防ぐことぐらいなら出来る。

このまま防御を続けていれば、援軍がきて俺の勝ちだ。



 ベヒーモスの魔法攻撃は激しさを増していく。

魔法攻撃は地面をえぐり、吹き飛んだ岩の破片が飛んでくる。

避けきれず体が傷だらけになる。

足元が穴だらけになり、そこにモンスターの死体が埋まっていく。地獄絵図だな。

それにしても足場が、悪すぎる。これは想定外だ。

ジャストガードは幾らでも出来るのだが、この足場を動き回るのは正直しんどい。


 ベヒーモスの魔法攻撃は果てしなく続く。

時々、思い出したように角での物理攻撃も、繰り出してくる。

モンスターは吹き飛ばされながらも次々と現れる。

どんどんと忙しくなってくる。


「痛っ。」

後ろからワーウルフの攻撃、腕をザックリと切られた。

「や、やばいか。」

切られた方の腕で剣を振り上げる。

普通に腕は動くか、良かった。

ワーウルフは魔力切れを起こしたのか剣で攻撃をはじくと、その場に倒れこんだ。

とどめは差さずに放置した。

どうせ3000体いるのだ。


 だんだんとガードが追いつかなくなってきた。

「スキル発動、『観察』」

回りのモンスターの位置を全て記憶する。

ガードが間に合わない攻撃は、紙一重で避ける。

ギリギリで避けているので、擦り傷が増えていく。

しかたがない、戦闘になればダメージを受けるのはあたりまえだ。


 しかし、ベヒーモスも見るからにフラフラになってきている。

何度もジャストガードを決めているのでスタミナが切れかけているのだろう。

ただ、神獣の意地か膝をつくことはなく攻撃を続けてくる。


 俺も少しフラフラになってきた。

ダメージは大したことはないのだが、血を流しすぎたようだ。

息が切れるし、たまに意識が遠くなる。

だめだ、まだ全然時間が足りない。

まだ、倒れる訳にはいない。

せめて皆が国境前までに追いつけるぐらいには時間を稼いがないと。



タクト…


ん?モンスターの鳴き声に混じって、ノワールの声が聞こえた気がした。

いや、まさか早すぎるだろう。

気のせいか。


「タクト、どこだ…」

ノワールの声と一緒にドカン、ドカンと爆発音がする。

間違い無い、ノワールだ。

どうやってこんなに早く?


「貴様ら、道を開けろ!バーストアタック!」

前方から大きな爆発音が聞こえ、爆煙の向こうからノワールが現れた。

ノワールはボロボロと涙をながし、ぐちゃぐちゃな表情をしていた。

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