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41 騎士の戦い①

「やはり国境前で追いつくのは無理じゃな。次の戦いは領内になるか…」

天空騎士団の団長のヴィレッタは難しい顔をして言った


 ヴィレッタの元には次々と状況の報告が寄せられる。

報告を受ける度にヴィレッタの表情は、険しくなっていく。


「早馬を出せ。国軍の出動を要請するのじゃ。国境周辺の街の住民は避難させるように伝えてくれ。それから、天空騎士団の騎士で動けるものは全員出動させろ。住民を守るように伝えろ。」

ヴィレッタは伝令兵に言った。

伝令兵は短く返事をすると、馬に飛び乗った。

「天空騎士団を勝手に動かしていいんですか。ギルドに許可を得ないとまずいのでは?」

ベオウルフが言った。

「かまわん。時間が無いのじゃ。」

「急げば、まだ追いつけるのではないですか。」

俺は思わず口を挟む。

「ただ追いついてもしかたないのじゃ。補給と編成を万全にせねば。集団戦を甘くみてはいかん。」

「俺が、みんなにもっと急ぐように言ってきましょうか。」

「止めておけ。みな、急いでくれておる。寄合所帯ではこれが限界じゃ。これ以上急かしても混乱するだけじゃ。」

「でも、あれだけの数のモンスターが国境を越えたら、無事ではすみませんよ。」

「多少の犠牲は、しかたがない。後は天空騎士団の騎士達を信じる他ないな。」

ヴィレッタはこぶしを握りしめて言った。

冷静を装ってはいるが目には涙が溜まっている。

よほど悔しいのだろう。


「責任問題になりますね。」

ベオウルフが言う。

「かまうものか。どんな罰でも受けてやるわ。」

「元々が無茶な作戦だったんですよ。ドラゴンがいるなんて誰も、わかりませんでしたし。団長のせいではありませんよ。」

俺は言った。

「引き受けた時点でわしの責任よ。わしの首ならいくらでもくれてやるが、民間人の被害は最小限にせねば。」

「そんな…」


 全員が沈黙した。

重苦しい空気が流れる。

俺にできることは、何かないのだろうか。

必死に考えた。


「要は準備ができるまで、あいつらを足止めすればいいんですよね。」

沈黙を破って、俺は言った。

「そうじゃが、そんな都合のいい方法があるか。」

「俺にいい考えがあります。馬を貸してもらえませんか。」

「ああ、それは構わんが。何をするつもりじゃ。」

「俺がやつらの足止めをします。」

「何を言っておる。お前一人でどうするつもりじゃ。」

「とにかく、できる限りやってみます。」


 詳しく説明したら反対されそうだし…

俺は近くの馬に飛び乗り駆け出した。



「おい、ちょっと待てよ。」

ベオウルフか走って追いかけてきた。

馬に追いつくとは、さすがスピードタイプだ。


「一人で勝手に行動しやがって。」

「はい、すいません。」

「まあいい、何か考えがあるんだろう。俺が運んでやるぜ。」

そう言うとベオウルフは俺をひょいと、肩に担ぎ上げた。

「お前は、先に戻りな。」

そういういって馬のお尻を押す。

馬は拠点へと、戻って行った。


「スキル発動、高速移動。」

ベオウルフの両脚がホワンと赤く光る。

そして俺を肩に抱えたまま走り出した。

「大丈夫ですか?」

「ああ、まかせろ。俺は馬より早いんだぜ。」

ベオウルフの走るスピードはどんどん速くなる。


「ところで、何をするつもりなんだ?」

ベオウルフは走りながら言った。

「ベヒーモスが群れの核になっているなら、ベヒーモスを止めれば、群れの進行も止まると思うんです。」

俺は抱えられながら答えた。

「そうかもしれねえが、どうやって止めるんだぜ?」

「えーと、その…盾でガードして。」

結局のところ、俺にはそれしかできないのだ。

「3000体のモンスターの群れの中に一人でつっこむのか?」

「まあ、そうなりますね。」


 ベオウルフの、脚が止まった。

「危険すぎる。まともな考えじゃねえぞ。」

ベオウルフは俺を肩からおろした。

「大丈夫です、俺なら出来ます。」

「そんなこと、出来るわけねえだろうが。だめだ、援軍をまつぜ。多少の被害はしかたがねえ…」

「弱い人達を守るために、命をかけて戰うのが騎士じゃないんですか?」

俺は言った。

まあ、ノワールの受け売りなのだが…


「なんだよ、ずいぶんと偉そうなこと言うようになったじゃねえか。」

ベオウルフの顔つきが変わった。

騎士の顔だ。


「すいません、でも…」

「タクトの言うとおりだ、命をかけて民を守るのが騎士だ。ただし、お前が死んだら俺も死ぬまで戦うからな、弔い合戦だ。」

「そんなことは、しなくていいですよ。」

「それが嫌なら生き残るんだな、それなりに自信があるのだろう。」

「はい、まあ。なんとかなるだろうとは思っています。」

「ぷはっ、まったく。ほんとにお前は、大したやつだぜ。」

ベオウルフは少し笑ってそう言うと、俺をひょいと担ぎ上げ、再び走り出した。



 べオウルフの高速移動のスキルにより、あっという間にモンスターの大群に追いついた。

日はすっかり落ちている。満点の星空がひろがる。


 群れの上空にワイバーンの姿は見えなかった。

シルバードラゴンが追い払ってくれたのだろう。

まだ、どこかで戦っているのだろうか。


「あれだけ倒したのに、まだ全然残っていやがるな。本当にあの中に突っ込むのか?」

ベオウルフは言った。

月明かりに照らされて、モンスターの大群が怪しく浮かびあがる。


「はい、必ず足止めしてみせます。」

「そうか、俺は戻って準備しているやつらのケツをひっぱたいてくるぜ。なるべく早く戻る。」

「はい、お願いします。」

「頼んだぞ…」

ベオウルフはそ言うと拠点に向かって走り出した。



 ベオウルフと分かれた俺は、単身モンスターの群れに近づいていく。

身屈めて音を立てないようにこっそりと潜入する。

モンスターは一心不乱に前進を続けている。


 ベオウルフには無茶だと言われたが、実は俺に3つの勝算があるのだ。

勝算その1、こいつらは進行の邪魔をしなければ、襲ってこない。

おそらく頭の中は魔力のことでいっぱいなのだろう。

潜りこむだけなら一人のほうがいい。


 俺は気配を消しつつ、モンスターの群れの中をコソコソとすすむ。

目標のベヒーモスはちょうど群れの真ん中にいる。このまま行けるだろうか。

息を殺して中央を目指す。


ビュン


 目的地まで半ばを過ぎたあたりで、ふいに後ろからスケルトンが切り付けてきた。

俺は慌てて盾で攻撃を防いだ。

「うわ、なんだよ急に。」

どうやら、気づかれたらしい。

「おいおい、邪魔しなくても襲ってくるのかよ。後少しなのに。」

いきなり想定外の事態だ。

スケルトンの攻撃に誘発されたのか、回りのモンスターも攻撃に加わる。

やばい、袋だたきにされる。


キンキン…


 俺は四方八方からくる攻撃を盾でガードし、モンスターをすり抜け走った。

攻撃を転げ回りながら避ける。

必死で走っていると、急にモンスターの攻撃が止んだ。

見上げると、巨大なモンスターがノシノシと歩いていた。

ベヒーモスだった。


 べヒーモスの周りにはモンスターのいない空間が出来ている。

ヴィレッタは、ベヒーモスが魔力を大量に消費するのでモンスターは近づかないようにしているのだと言っていたな。

俺は戦士なので、魔力のことはよくわからないが、空間があるのは好都合だ。


「ここから先は、通さないぜ。」

俺はベヒーモスの巨大な体の正面に回り込んで言った。


ズシン…


 ベヒーモスは歩みを止めて俺を見下ろす。

その顔は笑ってみえた

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