39 反撃①
リーダーを救出した俺は、見張り塔跡へと急ぐ。
しかしリーダーは相変わらず気難しいなあ…
せっかく助けたのに、怒られるとは。
俺は、襲い掛かってくるモンスターをすり抜けながら防壁に沿って走る。
ベヒーモスは、すでに通りすぎているようだが、かなりの数のモンスターがまだ残っている。
少し先に、崩れかけの塔が見えてきた。
近づくと、ノワールとベオウルフ、団長のヴィレッタが戦っていた。
「遅くなりました。大丈夫ですか。」
俺はそういって戦いに加わった。
「防衛部隊は、ほぼ壊滅状態のようだ。」
モンスターを切り倒しながらノワールが言った。
よく見ると塔の周りには多くの戦士が倒れている。
黒こげになっている姿も見える。
「こいつらを追い払って、なんとか立て直さねえと。」
ベオウルフが言う。
「でも、どうやって…」
「セシルに何とかしてもらうしかあるまい。」
ヴィレッタが言った。
「セシルの回復魔法ですか。でも、もうかなりの人が命を落としているのでは…」
「大丈夫です。急げば、まだ間に合います。セシルにまかせてください。」
セシルは言った。
「タクトはセシルの前から離れるな。これからセシルは大魔法を使用する。大魔法の詠唱にはとてつもない集中力がいるのじゃ。かすり傷ひとつで台無しになる。本来はこんな状況で使える魔法ではないのじゃが、そうも言っておれん…しっかり守ってくれ。」
ヴィレッタは俺に言う。
「はい、わかりました。」
俺は答えた。
正直なところ、これから何をするのか、よくわかっていないのだが…
要はセシルをモンスターから守ればいいのだろう。
「じゃあタクト君。ちゃんと私を守ってね。」
「わかった絶対に守りきるよ。」
「ありがとう、タクト君…信じてる。」
そう言うとセシルは胸の前で両手を組んでひざまずく。
祈るような姿で、呪文の詠唱を始めた
俺はセシルに、ベタづきでガードする。
『観察』のスキルを発動。
回りを見回して全てのモンスターを記憶する。
近距離戦闘と合わせて、魔法攻撃や遠距離攻撃にも気をつけないと。
予測して全部防いでやる。
「スキル発動、ジャストガード。」
盾がうっすらと光る。
攻撃はノワール達にまかせて、とにかくガードに専念しよう。
セシルはうつむきながら呪文の詠唱を続けている。
あたりまえの話だが、強力な魔法ほど呪文は長くなる。
本一冊分ほどの長さになるものもあるのだとか。
魔法使いはその全てを暗記するのだ。
しかし、これだけの被害をセシル一人でなんとかできるのだろうか…
まあ、俺が、考えてもしかたないか。
キンキン…
ジャストガードが成功したときの、甲高い金属音が響きわたる。
モンスターとの戦闘を続けていると、足元の地面がキラキラと輝き出した。
「ん、何だこれは?」
光はセシルの、足元から徐々に広がっていく。
やがて、その光は、あたりをおおいつくす。
「アルティメットヒーリング…」
セシルがそう唱えると、金色の光は何倍もの強さになった。
地面から天に向かって強い光が立ち昇っていく。
「ま、眩しい。」
俺は腕で目を覆った。
腕の隙間からかろうじて回りを見渡すと、おびただしい数のホコリや何かの破片が光の風に乗って浮かび上がっていた。
それは、よく見ると肉片だった。
ちぎれた皮膚、指や腕や足、眼球、耳、色々なパーツがフワフワと飛び回っている。
もとの体に戻っているのだろうか。
なかなかすさまじ光景である。
倒れている戦士達は、少しずつ元の姿に戻っていく。
モンスターは聖なる光に苦しみ動きが取れない。
セシルは天使のような微笑みを浮かべながら、それらを眺め、呪文の詠唱を続けている。
いつものセシルとはまるで別人に見える。
セシルの髪が、光の風になびき、ふわりと浮かび上がる。
黄金の光はさらに広がって行く。
防壁に沿って、彼方へと…
しばらくして、光は止んだ。
「い、生きてるぞ。」
「何だ、どうしたんだ。」
「ヒーリングだ、助かったんだ!」
「モンスターを追い払え!」
目を覚ました戦士たちが次々と立ち上がる。
「凄い、これが…狂信のセシルか…」
俺は思わずつぶやいた。
「もー、その呼び方しないでって言ったじゃないですか。」
いつのまに俺の横にいたのか、頬を膨らませながら、いつもの口調でセシルは言った。
◇
「立ち上がれ!そして、戦え!」
豪腕のキリアクが大声で叫ぶ。
回復した戦士達は武器を取り立ち上がる。
あちこちで戦闘が始まった。
かなりの数のモンスターが残っていたのだが、戦士たちは、あっという間にモンスターを追い払った。
全快したAクラスのパーティーの戦士たちの敵ではなかったようだ。
「タクト君、守ってくれてありがとう。頑丈な壁に囲まれてる気分だったよ。戦闘中に、こんなに集中できたのは始めてだよ。」
セシルが言った。
「いやいや、セシルがすごいんだよ。」
「うふふ。えっへん、そうでしょう。セシルちゃんの実力を思い知りましたか?」
セシルは変なポーズを決めながら言った。
「あれがアルティメットヒーリングか。超一流のヒーラーのみが使える究極魔法。さすがは狂信のセシルといったところだな。」
後ろから野太い声が聞こえた。
剛腕のキリアクだった。
「そうですよ。小娘もなかなかやるでしょう。」
セシルが言った。
「むう。何も言い返せんわ。」
キリアクは困り顔で答えた。
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