38 防戦②(追報サイド)
騎士のマキシム。レンジャーのリック。魔法使いのエミリア。
俺についてきたのは3人だけか…
今までさんざん世話してやったのに。
恩知らずな、くそったれどもめ。
あいつらは全員首だ。
小屋の外はモンスターだらけだ。
岩陰に身を隠しながら進む。
なんとかモンスターの群れを抜け出さねえと。
俺たちは見張り塔跡の反対側へ向かう。
「ジェフリー殿、大丈夫か?」
誰かに話しかけられた。
げっ、豪腕のキリアクじゃねえか。
どうしてこんなところに。
「目の前をベヒーモスが通りすぎたのだ。刺し違えてでも倒そうと思い追いかけたのだが、他のモンスターに邪魔されて追いつけなかった。無念だ。」
キリアクは悔しそうにいった。
「こちらは仲間とはぐれてしまってね。探しているところだ。」
俺は言った。
「この状態ではしかたあるまい。だが最後まで戦い抜いてやろうぞ。仲間をみつけたら見張り塔跡に来い。待っているぞ。」
キリアクはそう言うと、回りのモンスターとの戦闘に戻った。
「おう、そうだな…じゃあまた後でな。」
その場を離れようとして振り返ると、目の前にジャイアントオーガが立ち塞がった。
青い体の巨人である。
「グオー」
ジャイアントオーガは俺をにらみつけると、太い棍棒を振り下ろした。
「やべえ、やられる!」
慌てて盾を構えようとしたが、間に合わない。
すると、誰かが俺とジャイアントオーガの間にスルッと入り込んだ。
キン…
聞き覚えのある甲高い金属音が響く。
顔を見なくても誰だかわかる。
俺を助けた戦士はタクトだった。
「リーダー、大丈夫ですか。」
タクトはそう言うと、重たいジャイアントオーガの攻撃を、連続ガードする。
キンキンキン…
久しぶりに見たタクトの防御は、他のやつらとはレベルが違った…
「今です!」
タクトは言った。
ジャイアントオーガはスタミナ切れをおこし両手をついてうずくまっている。
「スパイラルフレイム!」
俺の攻撃スキルはオーガの弱点の頭に命中した。
オーガは苦しみながら逃げていった。
「あ、あの、久しぶりです。このクエストに参加してたんですね…全然知りませんでした。強力なモンスターもいるので気をつけてください。」
タクトは偉そうに言いやがった。
「ふん、余計な真似を、俺一人でも倒せたさ。天空騎士団に入ったからって偉そうな口をきくんじゃねえぞ。」
立場は向こうが上…
リックに言われた言葉が頭がをよぎる。
こいつ俺を見下していやがるのか、ゆるせねえ。
「お前こそ、こんなところで何をしてるんだ。」
「その、リーダーが危なそうだったので仲間と別れて助けに来ました。」
「だから、危なくなんかねえと言ってるだろうが。ふざけんな!」
まったく、相変わらずむかつく野郎だな。
ただ、仲間と別れて一人きりだと。
これはチャンス到来か。
「いや、その。ところでジャンとアレイシアがいませんが…」
「あいつらとははぐれた。見張り塔跡に行っているはずだ。」
「そうですか、探してみます。では、急いでいるので。」
タクトはそそくさと去って行った。
よし、今しかねえ。やるぞ。
周りを見回す。
キリアクはまだ近くにいるが、モンスターと戦闘中だ。
気づくまい。
すぐ横にはエミリアがいるが…
まあ、こいつなら後でなんとでも言いくるめられる。
俺は、ポケットから急いでガラスの玉を取りした。
中に強力な呪い魔法が詰まっているマジックアイテムだ。
パリンと、ガラス玉を手の中で握りつぶす。
ガラスが手の平に刺さり痛い。
手を開くと、手の平にどす黒い火の玉が現れた。
(タクトよ、死ね!!)
心のなかで叫びながら、黒い火の玉をタクトに投げつけた。
ボワッ
黒い火の玉はタクトの背中に見事に命中した。
タクトは気づかずに、走り去る。
あれは超強力な呪い魔法だ。
即効性はないが、数時間かけて体中が腐って死ぬ。
よっしゃあ、やったぜ。これであいつもおしまいだ!
ははは、やってやったぜ、まぬけ野郎め。俺の勝ちだ!
キリアクがちらりとこちらを見る。まさか見られたのか…
まあ頭の悪そうなやつだから、なんとでもごまかせるだろう。
「リーダー、今のは…」
横にいたエミリアが言った。
「あ?なんでもねえよ、モンスターを狙ったんだが間違えてタクトにあたっちまっただけだ。あまり余計なことを言うとお前もひどい目にあうぞ。」
俺はドスをきかせた声で言った。
エミリアは怯えた表情になり、それ以上なにも言わなかった。
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