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37 防戦①(追報サイド)

〈追放サイドリーダージェフリー視点〉


「ここがかつての国境の防壁跡か。すっかりボロボロじゃねえか。」

俺は足元の石を蹴っ飛ばしながら言った。

石が積まれた防壁は、各所で崩れていたり、土に埋まっていたりする。

「百年以上は放置されてますからな。まあ、ないよりはましでしょう。」

盾役タンクのブランが言った。

少し先には崩れかけの塔が見える。


「しかしタクトごときが天空騎士団とは、世も末だな。」

俺は誰に言うこともなくつぶやいた。

あのさえない野郎が天空騎士団の戦士になったとは、今でも信じられん。


「いや、タクトさんの防御力は尋常ではないですよ。俺がいつも言っていたでしょう。」

俺の一人ごとが聞こえたのか、もう一人の盾役のジャンが言う。

下手すると俺たちのパーティーの危機になるかもしれないのに、アホなやつだ。

もし、タクトが敵対して、今回のクエスト報酬が手に入らなかったら…

もうこのパーティーを続けていくことは難しいだろう。


「まもなくモンスターの大群がやってくる。モンスターの数はおよそ3000体だ。一匹たりともここを通すな。俺たちの力で王国を守るのだ!」

豪腕のキアリクが防壁に上がり、大声で演説をする。


「おー!」

「まかせろー!」

「やるぞー!」


 威勢のよい返事が飛び交う。

キリアクは巨大なハンマーを掲げて声援に応えている。

ノリノリである。


「来たぞ!モンスターだ!」

「初撃は引き付けてからの一斉攻撃だ!慌てるなよ!」

キリアクが全員に大声で指示を出す。


「少し見えてきましたね。」

大剣を構えながら、騎士のマキシムが言った。

「ああ、そうみたいだな。」

俺はやる気なさげに答える。


 あーあ、みんな張り切っちゃて…アホらしい。

クエスト達成しても、どうせ天空騎士団の手柄になるだけだぜ。

適当にやって報酬をゲットできればいい。


 それよりも、俺にはタクトを始末するほうが大事なのだ。

準備は万端だ。食らうと体中が腐って死ぬ呪い魔法を用意してきた。

乱戦に紛れて、なんとかにタクトに食らわせてやる。


「全員、構えろ……攻撃!!」

キリアクの野太い大声が響いた。


 魔法や攻撃スキル、弓、投槍…

ありとあらゆる遠距離攻撃が一斉に火を噴いた。

轟音が鳴り響き地面が揺れる。


 俺もスパイラルフレイムをお見舞いしてやった。

二本の炎の柱が螺旋を描きながら敵を焼き尽くす。

うーん、我ながら最高の攻撃スキルだぜ。


 一斉射撃にもひるむことなく、モンスターの大群はこちらに向かってくる。

後は各自防戦だ。割り振られた持ち場を守るのだ。


「お前ら、こんな戦闘でダメージ食らってもつまらんからな、適当に相手しろ。おいそこ、ポーションをあまり使うな。高いんだからな。」

俺は後ろから、各メンバーに指示をだす。

回りもAクラスのパーティーばかりだから、そいつらに任せておけば大丈夫だろう。

おっと。お隣さんは魔法特化のパーティーか、上位魔法をバンバンつかうな。

豪勢なもんだ。俺らの分もたのんだぞ。


「持ちこたえろ。押し返せ。別働隊がベヒーモスを倒したら、一気に攻め込むぞ!」

キリアクがバトルハンマーを振り回しながら叫んでいる。

よし、そのタイミングで、タクトを探すとするか。

それまでは体力温存だ。


「あ、あれは!」

「ん、どうした?」

「上を、まさか…ドラゴンです!」


 上を見上げると、黄褐色のドラゴンが飛んでいた。

こちらに向かってくる。


「はあ?なんでドラゴンがいるんだよ。」

「わかりませんが、まずいです。ファイヤブレスがきます。」

「うお、それはやべえ。ブラン!シールドを張れ!」

「おうよ、スキル発動!ファイヤシールド。」

そう言うとブランの前に青い透明の壁が現れた。

「ドラゴンブレスも防げるのか?」

こいつのシールドは、以前グリフォンの炎で簡単にやぶられてるからな、大丈夫だろうか。

「この前は慌てていてスキル発動が不十分だったのだ。まかせておけ。」

ブランは言った。

全員が体をよせ合っててファイヤシールドの陰に隠れる。


 ゴーゴーと轟音を立てて、ワイバーンのファイヤブレスが俺たちを襲う。

だが、ブランのファイヤシールドで防ぐことができた。


 ふう、なんとか持ちこたえたようだ。

鋼鉄をも溶かす高温のブレス。

食らったら一瞬で丸焦げだ。


 真面目に戦闘していたやつらは防御が間に合わなかったのか、かなりダメージを食らったようだ。

ヒーリングの呪文があちこちから聞こえる。


「もう一度くるぞ。」

「なんとか防げ!」

「弓兵、魔法使い、迎撃しろ!」

叫び声が響きわたる。


 ワイバーンは周りのモンスターなどおかまいなしに、次々とファイヤブレスを放ってくる。


「おい、また来たぞ。大丈夫か。」

「ああ、なんとか持ちこたえてみせるわ。」


 再度のドラゴンのブレス攻撃でもブランのファイヤシールドは持ちこたえた。

こんなおっさんでも、役に立つこともあるんだな。

だが、防衛部隊はもうボロボロだ。

地上と空からの同時攻撃でかなりのパーティーが戦闘不能になっている。

こりゃ、もうダメだな…


「あきらめるな、意地を見せろ!」

豪腕のキリアクは無事だったようだ。

元気にバトルハンマーを振り回している。

しかし、もはや防衛線は崩壊している。

モンスターはどんどんと通り過ぎて行くし、戦える味方の数も減っている。


「このままだとやばい、どこかに隠れるぞ。」

俺たちは持ち場を離れ、近くにあった石造りの小屋に逃げ込んだ。


 クエスト失敗かよ…もうここにいてもしょうがねえな。

タクトを始末できなかったのは心残りだが、命あってのものだねだ。

さっさと逃げ出そう。


「お前ら、撤退するぞ。」

俺は言った。

「部隊が崩れた場合は、見張り塔跡に集結するはずだが。」

ブランが言う。

そういえば、そんなことも言ってたな。


「作戦は完全に失敗だ。ドラゴンがいるなんて想定外だろ。今さらそんなところに集まっても意味がねえよ。死にに行くようなもんだ。」

「わしは残るぞ、他の連中を見捨てて行けるか。」

ブランが言った。

まったくアホなじじいだな。

「ああ。勝手にしろ。じゃあ置いていくぞ。後で文句いうなよ。」

「俺も残ります。ここで逃げたら、タクトさんに顔向けできない、ベオウルフさんにも…」

ジャンが言った。

なんだよこいつ、くそ弱いくせに、とちくるいやがって。

「勝手にしろ。自分で決めたんだからな、お前も後で文句言うなよ。」

別にこいつらがいなくなっても構いやしねえ。

残りのメンバーで脱出だ。


「ほらアレイシア行くぞ、もたもたすんな。」

女僧侶のアレイシアに声をかける。

「私も、残る…」

「はあ?なんでだよ。」

「なんとなく…」

アレイシアはぼそりと言った。

「もういい勝手にしろ!」

どいつもこいつも勝手なこと言いやがって。

勝手に残って、勝手に死ね。

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