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35 開戦前

「タクト君久しぶり!元気だった?」

俺が部屋に入ると、セシルが大きく両手を振っ言った。

いつもどおり、元気一杯である。

その隣にはベオウルフ、奥にはノワールもいた。


 魔物群討伐クエストの参加メンバーが、天空騎士団本部内の一室に集められたのだ。

結局いつものメンバーにヴィレッタが加わる形だった。


「なんだよ、結局いつものメンバーだな。」

ベオウルフは言った。

「今回はわしも参加するがな。」

団長のヴィレッタが言う。

栗毛色の髪の美少女である。

「団長がご一緒とは光栄だね。それに、タクトもまた一緒でうれしいぜ。」

ベオウルフはそう言うと俺の肩に手を回した。大きな胸が背中にぐりぐりと当たる。


「そ、そうですね。お互い頑張りましょう。」

「おいおい、あまりはしゃぐなよ。べオウルフもそんなにくっつくな。」

ノワールが険しい表情で言った。

真面目な人だからふざけた雰囲気はきらいなんだろうな。気をつけないと。

しかし、怒った顔もとびきり綺麗である。


「それでは、クエストの説明をします。集まった戦士は総勢300名です。」

秘書のワンダさんが言った。

抱えている書類が、いつもよりもだいぶ多い。


「協力して、魔物群の国内へ侵入を食い止めてください。モンスターの数は現時点で2000体を超えています。魔物群は周囲のモンスターを巻き込みながら成長していきます。数はさらに増えていくでしょう。」

「しかしよくもまあ、そんなにモンスターが集まったものだな。」

ベオウルフが言う。

「専門家の話では、環境の変化により魔力が減少したところに、魔力を大量に消費する巨大モンスターが現れてしまい魔力不足をおこしたようです。モンスターが魔力を求めて集団で移動しているのです。」

「ほう、それで必死に移動しているのか。」

「そうです、モンスターは魔力不足でパニックをおこしています。倒しても倒しても前進をやめません。」

ワンダさんは言った。


「それで、どうやったら止まるんだぜ?」

「核になってるモンスターを倒せば止まるはずです。」

「ほう、そのモンスターとは?」

「神獣ベヒーモスです。中心にいるベヒーモスを倒せば、群れは散り散りになり突進も止まるはずです。」

資料を見ながらワンダさんは言った。


「なるほど、300名の戦士と2000体のモンスターの力比べという訳か。面白い。受けて立ちましょう。」

ノワールが腕を組みながら言った。

「いや、残念ながら面白がっている余裕はないのじゃ。」

ヴィレッタはそう言うと立ち上がった。

「300名を2つの部隊にに分ける。第一部隊は進行を食い止める、第二部隊は後方から群れに突入してベヒーモスを打ち取る。モンスターの大群は、ここの防壁跡を通るはずじゃ。そこで迎え撃つ。」


 ヴィレッタはテーブルの上に広げてある地図を指さして説明する。

かつて国境の防壁だったところだが、今では朽ち果ててボロボロになっているはずだ。

まあ、無いよりはましだろうか。


「わしらは第二部隊としてモンスターの群れに突入して、ベヒーモスを打ち取る。激しい攻撃が予想される。タクトの防御力を期待しておるぞ。」

「はい、頑張ります。」

俺は言った。



 数日後、騎士団の本部の大広間で作戦に参加するパーティーの会合が開かれた。

300人の猛者たちが集まってる。


「タクトよ髪がボサボサじゃぞ。壇上に上がるのだから身だしなみを整えておくのじゃ。」

ヴィレッタ団長は俺に言った。

「俺も壇上に、上がるんですか?」

「あたり前じゃ。この作戦はわしらの仕切りじゃからな。成功すれば、わしらの功績となり、失敗すればわしらの責任になる。まあ、生贄のお披露目のようなものじゃ。」

「嫌な例えですね…」


 大広間に入ると、ガヤガヤと声が聞こえた。

強そうな戦士が沢山集まってるなあ。


「それでは、これより天空騎士団のヴィレッタ団長より、クエストの概要を説明いたします!お静かに願いまーす!」

案内係の人が大声でどなる。


「ほら、行くぞタクト。あまり、キョロキョロするなよ。」

ノワールが言う。


 俺は、ノワールに連れられて広い通路を歩いた。

壇上に上がり団長の隣に立つ。

緊張して周りを見ることはできなかった。



「ふう、やっと終わった。」

ただ立っていただけなのだが死ぬほど疲れた。


「この後は、部隊ごとに分かれて打ち合わせじゃ。わしらの部隊は30名ほどじゃな。こちらはわしが隊長をやるぞ。」

「もう一つの部隊はどうするのですか。」

俺は言った。

「防衛部隊は豪腕のキリアクに率いてもらうことになった。」

「豪腕のキリアクですか。名前は聞いたことがあります。」

「ああ、あいつですか…」

ノワールが嫌そうな顔をする。

「まあ、そんな顔はするは。腕はたしかじゃ。」


「よう、ヴィレッタ団長。」

山賊の親分のような見た目のいかつい大男が現れた。


「噂をすれば、やってきたか。やあキリアク。調子はどうじゃ。」

ヴィレッタが言った。

この人がキリアクか…

ずいぶんと個性的な見た目だなあ。


「おう、まあまあだな。」

「話は聞いていると思うが、第一部隊の隊長をやってもらう。大変だとは思うが、頼んだぞ。」

「それはかまわんがね。ところで、そこの兄ちゃんはなんなんだい。見かけない顔だか。」

キリアクは俺を睨んで言った。

「タクトのことか。少し前に入団した我が騎士団の戦士じゃ。」

「ずいぶん貧弱な能力アビリティのようだが。荷物持ちかい。」

「おいおい、タクトは我が騎士団で最強の盾役タンクじゃぞ。」

「最強だとぉ。S級モンスターの討伐実績が無いじゃねえか。」

「こいつは防御専門なのじゃよ。」

「ずいぶんとおかしなことを言う。防御ができる力があれば、攻撃だってできるだろうが。団長のお友達だから特別扱いをしていると聞いたぜ。」

「何をバカなことを…実力で選んでおるわ。場合によってはここにおるもので一番強いのはタクトかもしれんぞ。」

「なんだと、わしより強いというのか、このぬぼーっとしたやつが!」

どうやら、この人は俺が気に入らないようだな。

ぬぼーっとしてて悪かったな。


「それ以上侮辱をすると許さん。私が相手になるぞ。」

ノワールが大きな声で言った。

「おう、ノワールか。お前もお仲間をかばうのか。腑抜けたものだ。そんな、貧弱なやつがベヒーモスを倒せるものか。」

「なんだと。」

「落ち着け、もうよいだろう。」

ヴィレッタが仲裁をする。


「小娘どもにちやほやされて調子に乗っているようだが、あまり偉そうにするんじゃねえぞ。」

キリアクは俺を睨みつけてそう言うと、去っていった。


「ずいぶん変わった人ですね。なんか俺のせいですいません。」

「別にお前が悪いわけではない。それに、この作戦は、お前の並外れた防御力を見込んで立てているのじゃ。タクトかおらんと話にならん。」

ヴィレッタが言う。


「タクト、あまり気にするな。あいつは見た目どおりいかれたやつなんだよ。」

ベオウルフが言った。

「はい、そうします。」

「ただ、あれ以上何か言いやがったら、汚ねえケツに槍をぶっ刺していたがな。」


「気持ちはわかるがやめておけ。上の立場に立つとこういう目にあうのじゃ。言いたいやつには言わせておけば良い。実力で分からせてやればよいのじゃ。」

ヴィレッタは言った。

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