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27 女騎士とレストランへ行く

 騎士団の本部内には、うまいと有名なレストランがある。

おしゃれな空間が苦手な俺は入ったことはなかったのだが、ノワールに誘われ始めて来店したのである。

白を基調とした明るい店内に入る。


「お名前をお願いします。」

「えーと…タクト・アミハマといいます。」

「はい、それではこちらへどうぞ。」


 かわいらしい、店員さんに案内される。

テーブル席にはすでにノワールがいた。

騎士団の制服を着ている。

騎士団の女性は美人が多いがその中でもだんとつに美しい。


「こんにちは、お久しぶりです。」

「久しぶりだな、元気にしていたか。」


 澄んだきれいな声でノワールは言った。

聞いたところによると、ノワールは名門貴族の令嬢なんだとか。

よく考えたら、俺なんかが同席していいのだろうか。


「どうした、早く座れ。」

「あ、はい。」

立ち尽くしていた俺は腰を下ろした。

近況報告など、話をしているうちに料理が運ばれてきた。


 ぱくり。うまい。何だこの美味さは。

鳥肉だろうか。焼いた肉と野菜の添え物である。

ただそれだけなのだが今まで食べたことのない美味さだ。

付け合せのスープも絶品。


「これは、その、信じられないぐらい美味しいですね。」

「そうだろう、タクトはここは初めてなのか。」

「ええ、なんだか入りにくくて。」

「有名なシェフなんだぞ。料理目当てでわざわざ用事をつくって、ここに来るお偉いさんもいるくらいだ。」

「どうして騎士団の食堂で働いているんでしょうね。」

「元々、ここの騎士だったんだ。腕の立つやつだった。共に戦ったこともある。」

「そうだったんですか。」

しばらく、二人で食事を楽しむ。



「ところで、私に直々にクエストの依頼がきていてな。」

ノワールが言った。

「そうなんですか。」

「討伐対象はグリフォンだそうだ。」

「グリフォンですか。それはまた…」

かなりの強敵だ。

素早さ、攻撃力、防御力すべて高ランク。


「何組ものA級パーティーが討伐に向かったが帰ってきたものはいないそうだ。」

「そうですか。」

「その、そこでだな、タクトにパーティーメンバーに加わってほしいのだが。どうだろうか?」

「ええと…大変光栄なのですが…実は、他のクエストの依頼がすでに入ってまして。」


バキ


ん、何かが壊れる音がした

よく見ると、ノワールの手元のナイフが粉々になっているような。

どうしたんだろうか…


「その話はどこから?」

「もちろん、ヴィレッタ団長からですよ。」

「ほう、お嬢様か、なるほど。私に黙って…タクトは私のパーティーに参加したくないということはないのだな。」

ノワールは身を乗り出して言う。


「もちろんですよ。予定がなければ喜んで参加します。でも、一度受けた仕事を断るわけには…」

ノワールの誘いを断るなんて心が痛い。

「そうか、少し席を離れるぞ。料理を食べていてくれ。」

ノワールは怖い顔をして出て行った。


 なんだろう、まあいいか。

俺なんかを誘ってくれるなんて嬉しいな。

しかし、またの機会はあるのだろうか。


「こんばんは、タクト君だね。」

ショートカットで背の高い女性から声をかけられる。

白い前掛けをしている。

ここで働いている人だろうか。


「ここの料理長のレイチェルだ。ノワールの昔馴染みでね。ちょっと挨拶に。」

「そうてすか、ノワールは外してまして。」

「いいんだ、君とも話したかった。僕も以前は戦士だったんだよ。」

「ノワールに聞きました。何で料理人になったんですか?」

「それは愚問だねえ。僕の料理はまだ食べていないのかな?」

「いや…あの、料理はとても美味しかったです。変な意味で聞いたのでは…」

「ははは、冗談だよ、ごめんごごめん。僕は戦うより料理が得意だった、それだけさ。それよりノワールのこと頼んだよ。ああ見えて弱いところもあるんだ。」

「はい、そうですかねえ…」

ノワールの弱い所なんて一つも思いつかないが。

「おっと、姫様のお帰りだ。」

ノワールがにこにこして帰って来た。


「ん、レイチェルどうしたんだ。」

「ノワールのお気に入りがどんなやつか気になってね。」

「な、何をバカなことを。」

ノワールはちょっと怒った感じで言う。


「それよりタクトの任務だが、諸事情により担当が変わったそうだぞ。」

「え、そうなんですか。」

「ああ、氷のスティッキーが代わりを務めるそうだ。暇になってしまったな…」

「おいおい、あんまり無茶はするなよ。」

レイチェルがあきれた声でノワールに言う。

「なんだ、人聞きの悪い、たまたまそうなっただけだ。どうだろう、私のクエストに参加してくれないか。」

「そういうことなら、喜んで。」

まさかノワールが手をまわして…

なんて、俺なんかにそこまでするはずはないか、たまたまだろう。


「そうか、よかった。グリフォンは強いぞ。気を付けないとな。」

ノワールは嬉しそうに言った。

「まあ、ノワールが楽しそうでなによりだ。じゃあ僕は戻るからね。」

そう言うと、レイチェルは厨房に戻っていった。


「ところで、他のメンバーはどうなっています。」

「それは、誰でもいいとワンダさんに言ってきた。」

「え?」

「ん?」

「……」

「そ、そこは最高の人材を希望するとワンダさんに言ってある。また決まったら知らせよう。」

「はい、お願いします。」

「すまないな、突然指名してしまって。」

「いいんですよ、俺も嬉しいです。一緒に戦えて。ノワールとは相性がいいんじゃないかなって思ってました。」

「そ、そうか。相性がいいか。そうか。」

ノワールは何かをこらえているような、赤い顔でいった。

怒らせしまったかな。

「すいません、新入りが生意気なことをいって。」

「いやいやいやいや、いいんだ。私も、その…相性がいいと思っていたのだ…」

最後の一言は消え入りそうなほど小声だった。

「そうですか、嬉しいです、ありがとうございます。」

お世辞でも、騎士団筆頭のノワールからそう言われると嬉しい。

防御しか能のない俺を買ってくれてるんだ、がんばるぞ。


 俺は残りの料理を食べる。

パクリ、やはりうまい。


「本当に信じられないほどうまいですね。」

料理を食べながら俺は言った。

「そうか、それは良かった。」

ノワールは嬉しそうに笑った。

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