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23 シルバードラゴン

 タイレルの領主から、手紙が来届いた。

騎士団宛とは別に、わざわざ俺宛にゴブリン討伐のお礼状が届いたのだ。

宿舎の自分の部屋で手紙を読む。


「偉大な勇者様に無礼な態度をとったことをお詫びする。タクト殿にはとても感謝している。」


ふむふむ、なるほど。


「あの一件で娘が何より大事だとわかった。娘に嫌われないような立派な領主になろうと思う。それから、娘はタクト殿のファンになったようだ。近くに来られたらぜひ立ち寄っていただきたい。」


ファンになったか…社交辞令でもそう言ってもらえると嬉しい。

清楚できれいな人だった。

帰り道で、お父さんのこと悪く言っちゃったけど大丈夫だったみたいだな。



「おい、タクトあてに面会希望の女の子が来てるぞ。」

手紙を読んでいたところ、突然呼び出された。

誰だろう、ギルドのニーナさんかな…

ニーナさんはなかなかの読書家で、本の話をする友達になっていたのだ。


 待合室に行って見ると、全然知らない女の子だった。

女の子は大きな布をスッポリと被ったような変わった服装をしている。

布はサイドの大きなボタンで止められている。

まっ白い肌に、きらきらと輝く銀色の髪。


「ごめんなさい。誰でしたっけ?」

もしかして、遠い親戚とかかな。全然思い出せない。


「覚えてないのですか?あんなに仲良くしてくれたのに。」

「えーと、人違いでは?」

「タクトさんは、私を守ってくれるって約束してくれました。」

じっと睨むその目は、どこかで見たような気がする。

「あれ、もしかして…」

「そう、私はシルバードラゴンです。」

以前とは全然見た目が違う、わかるわけがない。

「ずいぶんと大きくなったね。でも本当にあの時の聖獣なの?」

「ドラゴンは成長が早いのです。今は人型ですが、ドラゴンの姿に戻るともっと大きいのです。」

そうなのか、まあ信じるしかないか。


「それで、シルバードラゴン様がなんの用事でしょうか?」

「シルバーと呼んで欲しいのです。タクトさんは私のドラゴンナイトなのに全然会いに来てくれないから、私から来たのですよ。」

「ドラゴンナイトって何?俺が?」


 やれやれ、と言う感じでシルバーは説明を始めた。

「シルバードラゴンは100年ごとに生まれ変わるのですが、生まれ変わると子供に戻って力が弱くなるのです。だから成長するまで人間に守ってもらうのです。それがあの神殿なのですよ。」

「なるほど、そうなんだ。」

「直接誓約をかわすこともできるのです。私を守る誓約を交わしたものがドラゴンナイト。対価としてドラゴンの恩恵を受けるのですよ。」

「誓約なんかかわしたっけ?」

「頭に触れ、私を守ると宣言することで誓約は成立するのです。」

「そんなことあったかな。」

「ひどい、ひやかしだったのですね。」

シルバーは顔を両手でおおって下を向く。


「いや、ごめん、突然のことでよくわかっていなくて。」

「一生守るって約束してくれたのに。」

泣きそうな声でシルバーが言う。

「いや、そこまでは言ってないと思うけど…」

俺がそう言うと、壁の向こうで物音がした。

誰かいるのだろうか…


「きれいだ、かわいいと何度も言ってくれました。」

「まあ、確かに言ったけれども…」

「タクトさんに、体じゆうを撫で回されました!」

「いや、それはそうだけど。」

その言い方はちょっと。


「タクトよ、お前というやつは。なんとはしたない!」

ノワールが壁の向こうから突然現れて言った。

立ち聞きをしていたようだ。いつから聞いていたのだろうか…

完全に誤解されてるな、これは。

「いや、違うんですよ。」

「そのような相手がいたとはな。別にいいのだ。どうせ私はただの同僚だし、しょせん仕事上のつきあいだ。ただ公共の場で、そのような話を大声でするのは感心せんな。」

「何を言ってるんですか、この子は以前助けたシルバードラゴンですよ。」

「……」

「ノワール?」

顔が真っ赤だ、大丈夫だろうか。

「シルバードラゴンなのか、あの時の?」

ノワールはシルバーに聞く。

「そう、私はシルバードラゴン、人類の守護者。今はタクトさんと大事な話をしているのです。」



「なるほど、そういうことか。」

事情を説明すると、ノワールは納得して言った。


「それで、俺がドラゴンナイトだとして、何をすればいいの?」

「特に今のところは何もないのです。何かあったら、私を守って欲しいのです。」

「それくらいなら、別にいいけど。」

「それと、たまには神殿まで会いに来てほしいのです。神官の人たちは、いい人だからもてなしてくれます。」

「わかった、そうするよ。」

「三日に一回ぐらいでいいのです。」

「それはちょっと無理かな…遠いし…」


「ところで、恩恵とはなんなのだ。」

ノワールが聴いた。

「ささやかなものです。魔法防御力が上がるのですよ。」

「それじゃあ、助けた時から今まで、俺はずっとその恩恵を受けてきたんだ。」

「そうなのです。」

「全然気づかなかったよ。ごめんなシルバー。」

「それはいいのです。助けてくれたお礼でもあるのです。それにタクトさんは攻撃を避けるのが上手なので、あんまり必要ないかもって思ったりもします…」

「そんなことないよ、凄い助かる。」

実際、魔法攻撃は盾役タンクの泣きどころなのだ。


「では、そろそろ戻ります。神官たちが心配しますので。タクトさん、近いうちに会いにくるのですよ。」

そうい言うと俺をぎゅっと抱きしめて、シルバーは出ていった。


 しばらくすると、外からバサバサと大きな羽ばたく音がした。



 その後、俺は一人で団長のヴィレッタに、ドラゴンナイトになったことを報告しに行った。


「ふむ、珍しい話もあるもんじゃな。それでは、わしが能力を鑑定してやろう。」

ヴィレッタはそう言うと、俺に向かって両手を突きだし、低い声で呪文を唱えた。


「なるほど、確かに魔法耐性が上がっておるわい。」

「そうですか。やったあ。」

本当だったんだな、これは嬉しい。

「炎属性の魔法が、ん…完全無効…だと。」

「どうかしましたか?」

「氷属性魔法、完全無効。水属性魔法、完全無効…雷属性魔法、完全無効。呪い属性魔法、完全無効。神聖属性魔法、完全無効。毒属性魔法、完全無効…そんな馬鹿な。」

「何を言ってるんですか。よく解りませんが?」

「おぬしは魔法攻撃が全く効かない体になっておるようだ。」

「え?本当ですか?」

そんなことがあるのだろうか。

自分の腕や体を触ってみる。特に変わったところはないが…

「物理攻撃を伴わない攻撃スキルも効かないであろうな。全く信じられん。これが聖獣の力か…」

そう言うと、ヴィレッタはしばらく無言になった。

何かとんでもないことをやらかした気分になる。


「よし、いまから実験じゃ、闘技場にゆくぞ。」

「どういうことですか?」

「おぬしに魔法攻撃をして、実際の効果を確かめるのじゃ。」

「絶対にいやですよ。」

「一番確実な確認方法じゃ。優しくしてやるから。」

そう言うと、ヴィレッタは嫌がる俺を無理やり闘技場へと連れていった。


 そこで、ヴィレッタから様々な攻撃魔法を何十発もくらい、魔法ダメージを受けないことを確かめたのだった。




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